自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

短編『神賜島の開発計画』

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Turo428

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    「おお、ここが神賜島ですか」
    旅客機から降り立った某財閥の当主が見たのは、全く、手付かずの島だった。
    「自然が豊かで宜しいですなぁ……」
    飛行場が造られたのは、神賜島の南半分である森林地帯の近く。
    神賜島庁から車で30分程の場所だ。

    「どうぞ、こちらへお乗り下さい」
    財閥当主は、神賜島庁へ行くために車に乗る。

    運転手が話しかけてきた。
    「この神賜島南方に広がる広大な森林地帯の多くがゴムの木だと言ったら、信じられますか?」
    「俄かには信じがたいですが、事実なのでしょう?」
    「はい。そしてこの森林地帯の北側には、無限に等しい油田や炭鉱、ダイヤモンド鉱などが広がります」
    「キツネにつままれたようですが、それも事実なのでしょう」
    「はい。東大の地質学博士のお墨付きです」
    「素晴らしい事です」

    自分の物でもないのに、神賜島の自慢話を延々と続ける運転手に
    相槌を打ちながら周りの景色を見ると、まさに森林地帯だった。

    遠く北の方にはうっすらと山脈が見える。
    あの山脈の向こうが、資源地帯なのだろう。

    「君は、ここに来て何ヶ月になるね?」
    「私は、まだ1ヶ月弱です」
    「ここでの暮らしは、どうかね?」
    「ここは何も無いですからね。楽しみと言えば、内地から持ってきた酒くらいなものです」
    「それは大変だな」
    「まあ、仕事の忙しさはそれ程でもないので、気楽と言えば気楽なのですが、する事が
     何も無いというのも辛いものです。だからこうやってお迎えに上がるのも楽しみなんですよ」
    運転手と会話を楽しんでいると、開けた場所が見えてきた。
    木造2階建ての小さな建物の前で、車がゆっくりと停まる。

    「お疲れ様でした。こちらが神賜島庁です」
    田舎の学校の校舎よりも威厳のない神賜島庁へ到着した財閥当主は、神賜島庁長官と面会する。
    お互いに自己紹介をすると、早速本題に入る。

    「本土では、神賜島は夢の島だ、神の島だと沸き立っていますが、実際の所は?」
    「将来的には、夢の島でしょうね」
    「現状は?」
    「ただの無人島ですよ」
    「しかし、石油やダイヤモンド等の埋蔵は確認されているのですよね」
    「はい、しかしそれらを採掘するのに、一体何年かかるやらです。
     アメリカの技術支援があればもっと早く出来るのでしょうが……」
    「アメリカですか……その話は、ここ数日だけでも何度も聞きましたね」
    財閥当主は、遠い目でその国の名を口にした。

    「計画としては、神賜島を北部と南部に大まかに分けます。
     北部は資源採掘地帯、南部は農林業地帯です。
     港も、それに合わせて南北に最低2箇所ずつ造ります。
     鉄道も敷きます。複線で、軌間は内地と同じ1435mmの標準軌です」
    「それはまた、壮大な計画ですな」
    「それくらいの輸送量が無いと、とても神賜島の資源を運び出せませんので」
    長官は、神賜島の開発計画を説明する。

    「何せ満州とほぼ同じ広さの島の、殆ど全ての地域が有効利用可能なのですから、
     これを見過ごす手はありません。本国の開発も重要ですが、神賜島の開発も同等以上に重要です」
    「それで、開発予算はどれくらいを見込まれているので?」
    「まだ、島全体の調査が完了していませんから何とも言えませんが、100億円単位の費用が
     必要でしょう。何せ、手付かずの島で、何から何までゼロから開発しなければなりませんから」
    つまり、初期投資としても数百億円の資金が必要なのだ。

    「将来の展望は解りましたが、では今現在、どこから手を付ける計画なのでしょう」
    「石油ですね。開発に時間がかかる上、内地の備蓄もそれ程
     潤沢ではありませんので、早急にモノにする必要があります」
    「油田開発ですか。開発の難易度はどれ程のものでしょう。
     満州の油田などはそれはもう苦労の連続でしたが」
    「油井は自噴している箇所もあるくらいで、難易度的には満州の油田よりずっと簡単な筈です。
     ですので、規模は満州よりずっと大きいですが、開発予算はそれ程の額にはならないと考えています」
    「それは好都合ですな」
    「ただ、開発予算を油田だけに100%投入する訳では、当然ありません。
     石油が第一ですが、鉄鉱石や金等も、同様に重要な戦略物資ですので」
    「鉄は、国内の屑鉄だけでは足りませんからな」
    「足らないでしょうね。完全に需要過多で、供給が追いつかない。
     転移以前であれば、アメリカから大量の鉄鉱石や屑鉄が手に入ったのですが」
    またアメリカだ。確かに、転移前の皇国はアメリカにおんぶに抱っこだった。
    世界経済、特に米英から切り離された皇国の最後の生命線が、神賜島なのだ。

    「……わかりました。前向きに検討致しましょう」
    「ありがとうございます。この島には1円1銭でも資金が欲しいですので、
     より良い神賜島開発のために是非とも協力をお願い申し上げます」


    財閥にお呼びがかかったのは、当然、神賜島への投資の呼び込みのためだ。
    現在、幾つもの財閥や富豪などに、政府から直々に投資の話が持ちかけられている。

    埋蔵される天然資源の種類と量を考えれば、将来性は抜群だ。

    現在、様々な所から神賜島開発へ名乗りが上がっている。
    一般国民向けにも、『神賜島公債』という形で投資を呼びかけている。
    小金持ちなどから、その利率の良さにかなり多くの応募があった。

    移民も大々的になされる予定だ。石油やダイヤモンド等の採掘を行うための人員は勿論、
    多くの農民が移住すれば、本土に次ぐ水田地帯を開発し、“皇国の米櫃”としての役割を十分に果たすだろう。


    神賜島の未来はこれから始まる。
    大量の資本を投下した島は、数年後、数十年後には莫大な富をもたらしてくれるであろう。
    天の岩戸開闢以来の好景気は、もう手の届く所にある。

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