自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

041 第33話 猛牛の復帰

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第33話 猛牛の復帰

1482年 7月4日 バルランド王国首都

その日、首都の空模様はどんよりと曇っていた。
その空模様と同じように、ラウス・クレーゲルもまた、体中から暗いオーラを放っていた。

「ハァ、めんどくさい。」

彼はそう呟きながら、書類の束を持ってとある施設に入っていた。
その施設は、彼が所属している、国立魔法研究所の本部であった。
彼は、施設に入るなり、まず何かの衝撃に備えて身構えた。咄嗟に、周囲をきょろきょろと見回し、

「よし、いないな!」

と、なぜか満足したように頷いて受付に向かった。
国立魔法研究所には、魔法使いの他に、軍から出向してくる兵や将校も多い。
バルランド軍は、魔法を使える兵を養成しており、その際のやり方などはこの魔法研究所に協力を仰ぎ、共同で
兵の訓練にあたっている。
最も、ここ最近は魔法研究所内部にも、ある事が流行りだしており、普段軍人や魔法使いで賑わうこの施設も、
今日に限ってはどこか静かであった。

「おはようございまーす。」

彼はのんびりとした口調で受付係りに声を掛けた。

「おはよう!」

いきなり、受付係りが飛び跳ねるような大声で言い返してきた。
一瞬、彼は驚いたが、その直後には、慌てて逃げようとした。が、

「逃がさないわよ〜。」

どこか引き伸ばしたような声が聞こえ、彼の腕に手が力強く掴まれ、逃げることはできなかった。
受付係りはふっふっふっと、不気味な笑みを浮かべてラウスを見据えた。

「お帰り!愛しのラウスちゃん!」
「ちゃんはいらん!」

ラウスは忌々しそうな表情でその受付係りに言い返した。

「あらら、すっかり不良になっちゃって、リエルは悲しいよぅ。」
「妄想はいい。それよりなんでお前がここにいるんだ!?」

ラウスは怪訝な表情で彼女、リエルに問い返した。

「ちょこっと、交換しただけだよー。おーい!ありがとう、もういいよー!」

リエルは奥に向かってそう言うと、着ていた受付係りの服を脱いだ。
緑色の制服の下から、ラウスと似たような服装が現れた。

「交換って・・・・何のために?」
「あんたを驚かすため、かな?」

彼女はニッコリと笑みを浮かべた。その笑顔で迫られると、どことなく文句が言えにくかった。

「ええい、うっとうしい。大体、こんなイタズラをしてるって事は、お前今暇だろ?」
「うん。」

即答された。彼は思わず顔をしかめる。

「全く・・・・・・これで俺と同等の魔法使いってんだから。世の中どうかしてるぜ。」

ラウスに敬遠されがちの彼女、リエル・フィーミルはラウスと幼馴染みである。
身長はラウスよりやや低いが、顔立ちはそこそこ良い。
髪は紫色のショートで、肌はやや浅黒い。体のバランスは良く、出るところは出て、締まるところはしっかり締まっている。
それでいて、やや筋肉質な体つきである。
明朗闊達な女性であり、バルランドでも有数の魔道士である。
本来なら、彼女もアメリカ合衆国召喚に参加するはずだった。
だが、リエルは明るすぎる性格が災いして、召喚メンバーの座をラウスに取られてしまった。
あろうことか、そのラウスは、

「お前なら、すぐにお呼びが来るぜ。」

と、リエルを応援していたのだ。
その応援した人物がメンバーに引っ張られるとは、世の中はなんと皮肉であろうか。

「あたしもどうかしてるよー!」

と、リエルは彼の耳元で叫んだ。

「おい!大声出すなって!」
「元気があたしの取り柄だからねぇ。出すなって言われたら余計にだしちゃうよ?」

と、目を輝かせながら彼に言う。

「全く、そんな性格だからお前は落ちてしまって、」

いきなり、首に腕がからみついた。リエルがいつの間にか背後に回って、首を絞める態勢を整えていた。

「じゃあ、あんたも落ちてみる?」

彼女は笑いながら、腕に力を入れていく。どうやら、まだ根に持っているようだ。

「俺を恨むのはお門違いだぜ。選んだのは上の連ちゅ、ぐえ・・・・」

言葉を続けたラウスは、首を絞められて気を失った。


それから5分後、
「馬鹿野郎が、いくら何でも、本当に首を絞めることはないだろう。」

彼にしては珍しく、怒気のこもった口調でリエルを詰問する。

「あそこで謝れば、あたしも寛大な処置で済ましたのに。」
「人の首に腕を巻き付けている時点で、寛大もへったくれもないと思うけどな。」

と、彼はため息をついた。彼は5秒ほど気絶したあと、意識を取り戻した。
その後、彼はリエルと共に局長の部屋に移動している。

「それにしても、こうして会うのは久しぶりだねえ。何年会ってなかった?」
「2年以上は会ってないな。この2年ほどは、色々充実していたぜ。面白い人にも会ったからな。」
「へえ〜。そういえば、アメリカはどうだった?」
「アメリカか・・・・・・・・」

ラウスは、アメリカを視察した時の記憶を探った。しばらく考えてから、彼は答えた。

「ハッキリ言って、凄い。この世界とは大違いだね。港湾地域を埋め尽くす建造ドックとか、
町中をしこたま走る車とか。俺達の培ってきた魔法技術が一瞬、子供のおもちゃみたいに感じられたぜ。」
「あら、極端な物言いね。」

リエルがむっとした表情で言う。最後の一言が気にくわなかったようだ。
彼女も、自身の魔法技術に磨きをかけるために、日々研究を行っている。
その日々の努力を否定されたように感じたのかもしれない。

「いや、別に今まで俺達がやって来た事を否定している訳じゃない。でも、お前だってアメリカに行けば分かるよ。
あの国がどんな物か。いや、お前だけじゃなく、首都や自分の領地にふんぞり返っている貴族連中達にも、
あの国は見てもらいたい。」
「どれほど凄いのか、自分にはさっぱりなんだけど。」

リエルは呆けたような表情になる。

「でも、あまり脚色しては駄目よ?ラウスは普段めんどくさ〜い、めんどくさ〜いとか言って、
たまに変な夢想を言う時があるから、ちょっと信用できないわねぇ。」
「暇を見つけては人にイタズラをしてる奴が言うか。俺にイタズラしようと考えている暇があったら、
アメリカに行って煙突の数でも数えて来いよ。お前の性格の治療にもなるぜ。」

と言い終えた時、肩にがしっと、リエルの手が掴まれる。

「なるほどね・・・・・とりあえず謝ってくれる?」
「ごめんなさい。」

これ以上気を失いたくないので、ラウスは謝ることにした。
リエルは時折、頭のネジが外れているような事を言うと思えば、いきなり邪悪な笑みを浮かべて謝罪を
要求する。
幼少のころからの馴染みであるラウスは、彼女が頻繁に恋人を変えていくのもこの訳の分からん性格が
原因なのだろうと、確信している。

報告は30分ほどで終わり、ラウスは局長室から出てきた。局長室から出るなり、彼は周囲の確認を

「お疲れさん、愛しのラウスクン。」

する必要はなくなった。歌うような言葉を発したのは、リエルだった。

「だから、それはやめてくれ。で、俺に何か用でも?」
「今日は予定ある?」
「いや、無い。報告だけさ。」

「じゃあ、久しぶりにやる?」

リエルは、拳をあげながら聞いてきた。
ラウス少しの間考えた。
リエルとは幼少の頃からの知り合いだが、彼女と付き合う遊び事にはいつもトラブルが舞い込んできた。
その事から、ラウスは彼女のことをやや敬遠していた。
友人という関係には替わりはないが、別の友人とリエルと、どちらかと遊ぶ時は、リエルを選ぶことはない。
しかし、ラウスとしてはこの間の借りを帰してやろうと、前々から思っていたので、
どうせなら付き合ってやるかと思った。

「いいぜ。俺も体がなまっていたからね。この間は君に叩きのめされたし。」
「あんたが本気で腹に拳を打ってきたから、ちょっとカッとなってね。」
リエルは悪びれた様子もなく、ニカッと笑う。
「ようし、めんどくさいが、付き合ってやるか。」
「あっ、出た、いつものめんどくさい!」
「いいんだよ。これが俺の地なんだから。」

ラウスはそう言いながら、リエルと共に施設を後にした。

「そう言えば、建物の中は嫌に静かだったな。」
「ああ、あれには訳があるのよ。ここ最近、魔法使いや軍の中で、アメリカに留学するっていう人が
続々と出てきているのよ。中でも軍人のアメリカ留学応募がちょっと多めみたい。」
「アメリカ留学か・・・・開戦以来、暴れ回ったからなあ。」
「あんたも、確かアメリカ艦隊に連絡役で乗り組んでいたそうね。」
「そうだよ。俺は上の命令で、第16任務部隊所属のエンタープライズに乗っていたんだ。
去年のレアルタ島沖海戦から、グンリーラ島海戦までの間、半年ぐらい乗っていたな。
任務部隊の司令部幕僚とも顔馴染みになったし。」

アメリカの参戦以来、バルランド国民は誰もが、アメリカを頼れる国だと思っている。
そんな中、バルランド軍の上層部では、レアルタ島沖海戦以来、獅子奮迅の活躍をしてきたアメリカ軍から学ぼうと、
アメリカ側に留学生の派遣を頼み込んだ。
最初、アメリカ側は渋っていたが、バルランドを初めとする南大陸側の熱意に根負けして、5月に、了承の回答を南大陸側に伝えた。
6月、バルランド王国は留学生の募集を行った。
その結果、定員の10倍を越える将兵や魔法使いが応募しており、上層部では定員を増やすなどして対応しているという。
「つい最近も、マオンドのいるレーフェイル大陸で、何かしらの大作戦をやったみたいね。本当、いい装備を持った
軍隊はどこに行っても敵なしねぇ。」

と、リエルは羨ましそうに呟いた。
その一方でラウスは、真剣な表情でリエルに言い返す。

「確かに連戦連勝だけど、アメリカ側も無傷で過ごせた戦いは無いんだな、これが。」

そう言って、ラウスは左腕の袖を巻き上げた。

「・・・あっ・・・」

リエルは思わず声を上げた。ラウスの腕には、痛々しい傷跡が残されていた。

「グンリーラ島海戦の時にね、シホールアンル側のワイバーンが、俺の乗っていたエンタープライズに
爆弾をぶち込んだ。これは、その時に受けた傷だよ。」

そう言いながら、ラウスは袖を元に戻した。

「あの海戦で、シホールアンルの艦隊は撃退されたけど、エンタープライズは大破し、護衛艦も1隻沈んでいる。
エンタープライズは損傷が酷くて、今も修理中だよ。」
「シホールアンルって、軍自体も精強揃いだから、いくら装備のいいアメリカとはいえ、損害をゼロには抑えきれないのね。」
「そうさ。勝つことは簡単だ。だが、難しいのは損害を軽くすること。戦いでは、勝つことよりも、損害をいかに軽くし、
後の戦いに備えられるか。それがこの戦争の勝敗を決定する。要するに、いくら勝利できても、味方もメタクソにやられたんじゃ
ヤバイって事かな。」

なぜか、リエルが目を丸くしてラウスを見つめていた。

「最も、この言葉はスプルーアンス提督の受け売りだけどね。」
「なあんだ。つまんないの。」
「はぁ?つまんない?」
「てっきりラウスが珍しい事いうなあと思ってたのに。でも、その人の言っていることはアタリね。」

そこでリエルは言葉を区切った。何かを思いだした彼女は、目を細めてから言葉を続けた。

「ちなみに、そのスプルーアンスって人。とある人達からは結構人気があるわよ。」
「人気?どうしてまた。」

リエルは、意味ありげな笑みを浮かべて、質問に答えた。

「原因は、1カ月以上前の祝賀パーティーね。」

7月8日 バルランド王国ヴィルフレイング 午後1時

「やあ、レイ。久しぶりだなあ!」

ウィリアム・ハルゼーは、入室してきた人物、レイモンド・スプルーアンス少将を見るなり、破顔して迎えた。

「元気そうだな、ビル。」
「ああ。まだ直りきっていないが、この通りさ。」

ハルゼーは嬉しそうな表情で両腕を見つめた。
既に、体中を覆っていた発疹は既に無くなっており、軍医長からはあと3日で退院できると言われていた。

「司令長官閣下のおかげで、あと3日もすれば艦隊に帰れるぜ。」
「嬉しそうだな君は。」
「当たり前さ。海軍軍人は船に乗ってこその軍人だ。病院で船を眺めているだけじゃあ、陸のカッパも良いところだ。」
「同感だな。とは言っても、君のエンタープライズは、まだサンディエゴのドックだ。修理にはあと3週間かかるようだ。
ビル、君の母艦を傷つけて、申し訳ないと思っている。」

スプルーアンスは申し訳なさそうに、ハルゼーに謝罪した。

「なあに、気にしとらんよ。君は母艦をここまで帰ってこらしたんだ。それに、ウチのボーイズ達も
シホットの機動部隊を叩きのめしている。それだけで俺は満足だ。」

ハルゼーはベッドから姿勢を起こし、用意していた自分とスプルーアンスのコップに水を入れた。

「遅れたが、君の南太平洋部隊参謀長への栄転と、俺の退院祝いに乾杯と行こう。
ただの水だが、今日はこれで我慢だ。」

と、互いに苦笑しながら水をあおった。
スプルーアンスは、グンリーラ島沖海戦の時以来、事後処理や、南太平洋部隊司令部の雑事などで
多忙な日々を送っており、しばらくはハルゼーとも顔を合わせる機会がなかった。
ここ最近は、司令部の仕事がやっと一段落したため、スプルーアンスはニミッツの許可を得て、
ハルゼーを見舞ったのである。

「レイ、南太平洋部隊の仕事はどうだい?」
「充実しているよ。ニミッツ司令官は出来る人だ。切り替えが早いし、洞察眼に長けている。
元々、航海局長という難仕事をやってい人だから、この南太平洋部隊の仕事もテキパキこなしているよ。」
「ニミッツは確かに出来る人だからな。それだけに、兵や下士官連中にも受けが良い。
南大陸側との軍人とも上手くやっているようだし、パイの後釜にして正解だったな。」
「ああ。」

スプルーアンスは深く頷いた。

「所で、君の方はどうだい?君は陸上勤務が意外と苦手らしいが。」
「そこはそこでしっかりやっているよ。面倒と思うのは前から変わらないが、参謀長という役職を
任されたからには頑張るさ。懸念事項が一つ消えれば、仕事もより楽しくできるんだが。」

と言うと、彼は苦笑した。

「懸念事項?ああ、あの事か。もはや太平洋艦隊ではその事であちこちから噂されているぞ。」

「いい迷惑だよ。私はマーガレットの手紙以外読もうとも思わない。」

そう言って、スプルーアンスはため息をついた。
スプルーアンスは、6月の23日に、ニミッツ中将を補佐する、南太平洋部隊参謀長に抜擢された。
いつもは地上勤務を嫌がるスプルーアンスだが、この時ばかりは自己研鑽に励もうと思い、参謀長就任を受け入れた。
しかし、それを見計らったかのように、6月の25日以来、ヴィルフレイングの南太平洋部隊司令部に、
連日いくつもの手紙がスプルーアンスに届けられた。
その手紙は、いずれもバルランドの有力貴族達の娘が書いたものであった。
スプルーアンスはグンリーラ島撤収作戦成功を祝って、開催された祝賀パーティーの際、貴族の娘達の誘いを断って
いつもの通りに帰って眠った。
スプルーアンスとしてはいつも通りの行動を取っただけだが、それがまずかった。
その結果、断った娘達を退かすどころか、より一層闘争心をかき立てる結果になり、今や、スプルーアンスを誰が
早く落とせるかで、貴族達の間ではその噂で持ちきりのようだ。
ちなみに、手紙を送られた当のスプルーアンスは、最初に送られた手紙は読むこともなくゴミ箱に放り込み、
「以降、あちらさんからの手紙は全て破棄するように。」

と従兵に命じ、娘達のラブコールはスプルーアンスの心を開くどころか、より一層堅くしてしまった。
その事に気付かぬ娘達は、今も無駄な紙を消費していることであろう。

「なあビル。南太平洋部隊司令部に、訳のわからん娘が押し掛けてきたら、ドーントレスの後ろに乗せて楽しませてくれんか?」
「いいぜ。飛行機の面白さをたっぷりと、ゲップが出るまで教えてやるさ。」

ハルゼーがそう言うと、互いに笑い合った。

「しかし、貴族連中の色恋沙汰に巻き込まれるとは、私もどうしたものかな。」

「君はおかしくないさ。おかしいのはあちらさんだ。何しろ、貴族って連中は普段は大層暇で、一番好きなのは
恋がらみの噂らしい。これはラウス君のから聞いた話だがね。」
「と、すると。私は噂に飢えていた貴族連中の餌食になったわけか。全く、困った物だな。」
「なあに、連中と顔を合わさなければいいだろう。そう気に持つこともない。」
「まっ、そうだな。」

したり顔でスプルーアンスは頷く。

「所で、他に変わった所はないか?」
「変わった所・・・・か。」

スプルーアンスはしばし沈黙する。そして、思い出したように言った。

「旧式戦艦のテネシーとカリフォルニアが、本国で改装を受けるために、明後日ヴィルフレイングから出港する。
それから戦艦のネヴァダとオクラホマも同様だな。これで戦艦戦力に穴が空くことになるが、その埋め合わせとして、
新鋭戦艦が2隻ほど、太平洋に回航されるようだ。その2隻というのが、ワシントンとサウスダコタだ。」
「ほう、ワシントンのみではなく、サウスダコタまでもか。」

ハルゼーはやや驚いた口調で返事する。

「そうだ。他にも、新鋭の軽巡サンファンと、10月初めにはクリーブランド級軽巡も回ってくるらしい。」
「本国もかなり気前が良いな。しかし、マオンドに対する備えはどうなるんだ?」
「その点については心配ない。マオンドはこの間の作戦で少なからぬ主力艦や輸送船を失っている。
マオンドは相変わらずレーフェイルに引っ込んだままだ。そこで、本国はより脅威度の高いシホールアンルに
備えるために、新鋭艦を段階的に太平洋に回すことにしたようだ。」

「空母はどうなっている?」

ハルゼーは一番気掛かりな事を聞いてみる。それにスプルーアンスは淀みなく答える。

「空母も、42年末までにはワスプ、ホーネット、レンジャーの3空母が太平洋に回される。
来年の4月には、新鋭空母のエセックス級も回してくれようだから、シホールアンルに対する備えは
より一層強化されるだろう。」
「ヒュウ、持つべき物は、物わかりの良い祖国だな。」

ハルゼーは口笛鳴らしながら、満足気に言った。

「後は、シホールアンル側の動向が気がかりなのだが、シホールアンルはカレアントの航空戦以外に目立った動きを
見せていない。私としては、そこが気になる。」
「シホット共は、うち続く敗北に怖じ気ついたのさ。」
「怖じ気ついた、か。そうでればいいが。」

スプルーアンスはどこか引っ掛かるような気持ちが内心に芽生えている。

「何はともあれ、今はやることをやるだけだな。3週間後にはエンタープライズも戻ってくる。
さて、戻ったら再びボーイズ達を鍛えなきゃならんな。」
と、彼はスプルーアンスの気掛かりを感じる事も無く、早くも、来るべき戦線復帰に胸を躍らせていた。
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