「NHKにんげんドキュメント・補給仕官と向き合う」
BGM:中島みゆき「地上の星」
ナレーション:田口トモロヲ
鈴木さん:F世界の入植最初期から補給所に長く勤める。
現地の人手不足から復興支援と現地運営も兼任し
F世界に日本の基盤を築く礎となった。
BGM:中島みゆき「地上の星」
ナレーション:田口トモロヲ
鈴木さん:F世界の入植最初期から補給所に長く勤める。
現地の人手不足から復興支援と現地運営も兼任し
F世界に日本の基盤を築く礎となった。
補給仕官の朝は、早い。
「陸自で体動かすより、書類書いてる方が向いてたんですね」
補給仕官の鈴木さんは手元の書類を確認しながら言った。
補給仕官の鈴木さんは手元の書類を確認しながら言った。
鈴木さんは今日も電話を片手にキーボードを叩く。
まず、書類の入念なチェックから始まる。
用途が怪しいもの、不明な書類は線を入れて弾く。
直接陳情をしに来た専任陸曹や一尉と対面し舌戦を繰り広げ、
無理な作戦をたてようとする連隊参謀に書類を突きつける。
まず、書類の入念なチェックから始まる。
用途が怪しいもの、不明な書類は線を入れて弾く。
直接陳情をしに来た専任陸曹や一尉と対面し舌戦を繰り広げ、
無理な作戦をたてようとする連隊参謀に書類を突きつける。
「参謀は戦略を語り、専任仕官は現場を語り、補給仕官は現実を語ります。
上と下のすりあわせが大事なんです」
上と下のすりあわせが大事なんです」
ドケチと呼ばれても構わない。
物資には国民の血税が使われているのだ。
米の一粒たりとも無駄には出来ない。
最近はトラックが足りないと口をこぼした。
物資には国民の血税が使われているのだ。
米の一粒たりとも無駄には出来ない。
最近はトラックが足りないと口をこぼした。
「やっぱり一番嬉しいのは皆さんが補給貰って喜ぶ顔ね。この仕事続けてよかったと思う」
「機械だけでは突発的なトラブルは対応できない。人間だから出来る仕事があるんです」
「機械が幾ら進化したってコレだけは真似できないんですよ」
「機械だけでは突発的なトラブルは対応できない。人間だから出来る仕事があるんです」
「機械が幾ら進化したってコレだけは真似できないんですよ」
視察の日。彼はファイルを鞄に詰め、補給基地へ向かった。
物資の輸送はコンテナが主流だ。
一口にコンテナといっても冷蔵専用コンテナやタンクコンテナなど多種多様であり、
取り扱いにも気をつけなくてはいけない。
物資の輸送はコンテナが主流だ。
一口にコンテナといっても冷蔵専用コンテナやタンクコンテナなど多種多様であり、
取り扱いにも気をつけなくてはいけない。
「上の意見を現場に理解させるのは大変だね。その逆もだけどさ」
作業監督に直接荷物の中身を説明してどうやって扱うのか注意を促す。
「辛いのは軍機で中身が説明できない時だね。
中を説明できないから作業員に納得して
働いてもらえないし、荷物の扱いもぞんざいになる。
そういうのに限って中は取り扱いが難しいものなんだ」
作業監督に直接荷物の中身を説明してどうやって扱うのか注意を促す。
「辛いのは軍機で中身が説明できない時だね。
中を説明できないから作業員に納得して
働いてもらえないし、荷物の扱いもぞんざいになる。
そういうのに限って中は取り扱いが難しいものなんだ」
ガントリークレーンや工作機械の改良で作業は自動化したとはいえ、
結局関わるのは人間なのだと鈴木さんは言った。
結局関わるのは人間なのだと鈴木さんは言った。
「コンテナ一つに人の生活、命も掛かっているからね。大事にしないと」
輸送科の大谷さんとはもう10年の付き合いになる。
輸送科の大谷さんとはもう10年の付き合いになる。
「0304号車のサスがヘタレた?回収車と代替廻せるから復旧まで3時間は掛かるか。
タングステン砲弾?輸送用のパレットと弾は此方にあるから次のサイクルで載せる。36時間」
大谷さんの手に掛かれば、聞くだけで到着時間が判ってしまう。
しかも積み込みや復旧時間全て込みで。
判断は速く正確で素人に真似のできる事ではない、匠の技である。
タングステン砲弾?輸送用のパレットと弾は此方にあるから次のサイクルで載せる。36時間」
大谷さんの手に掛かれば、聞くだけで到着時間が判ってしまう。
しかも積み込みや復旧時間全て込みで。
判断は速く正確で素人に真似のできる事ではない、匠の技である。
「運転だけ出来てもね。車種による車幅の微妙な違いとか
他社の輸送ルートや運転時間を理解してなきゃいけない」
「たいていの若い人はすぐやめちゃうんですよ。
弾を撃つため自衛隊に入ったとか、イメージと違うとか、話が違うとか
その癖レジスタンスに襲われると真っ先に逃げ出す。
輸送任務は増えています。でもそれを乗り越えられる奴は少ない
そうゆう根性のある奴がこれからの輸送科に必要とされています」
他社の輸送ルートや運転時間を理解してなきゃいけない」
「たいていの若い人はすぐやめちゃうんですよ。
弾を撃つため自衛隊に入ったとか、イメージと違うとか、話が違うとか
その癖レジスタンスに襲われると真っ先に逃げ出す。
輸送任務は増えています。でもそれを乗り越えられる奴は少ない
そうゆう根性のある奴がこれからの輸送科に必要とされています」
目下の問題は人材育成と人手不足である。
大型免許を持っているだけでは現場の役に経たないと彼は話した。
大型免許を持っているだけでは現場の役に経たないと彼は話した。
20年前はがらんどうだった補給科の事務所が
今では大量の機材が運び込まれ拡張されている。
数年前までは有事になることすら考えられなかった。
今では大量の機材が運び込まれ拡張されている。
数年前までは有事になることすら考えられなかった。
「輸送の手間は減ったのに扱う量は増えるばかりですよ。
物資が増えたのは機械化が進んだのと隣国がきな臭いせいですかね」
物資が増えたのは機械化が進んだのと隣国がきな臭いせいですかね」
部隊の状況と輸送力のバランスを考え配分物資量を計算する。
問題は物品の種類と量。
一度に運ぶ種類が多いと輸送効率が下がり、少なすぎても現場での作業に支障をきたす。
問題は物品の種類と量。
一度に運ぶ種類が多いと輸送効率が下がり、少なすぎても現場での作業に支障をきたす。
「船や列車の輸送が足りないと知っていても放り出す訳にはいかないんですよ。
移動が止まれば組織は死にます。それは自衛隊も民間も同じです」
移動が止まれば組織は死にます。それは自衛隊も民間も同じです」
現場では常にあらゆる物資が必要とされている。
その中から必要なものを抽出し、上限の決まった輸送力を使う。
この見極めが難しいのだと鈴木さんは語った。
その中から必要なものを抽出し、上限の決まった輸送力を使う。
この見極めが難しいのだと鈴木さんは語った。
現地の輸送状況を聞く。
この報告で輸送計画はガラリと変わってしまう。
重要なのが港の積み下ろしとそこからの輸送である。
後方での輸送は現地ゲリラや輸送路妨害を気にしなくていい分輸送は容易だ。
民間の協力も仰げ、道路や施設も整備されているためである。
道一つとっても大陸では10tトラックが何台も走れる道路や橋は限られている。
中世レベルの文明の道路ではさほど重量物が通ることが考慮されていないからである。
この報告で輸送計画はガラリと変わってしまう。
重要なのが港の積み下ろしとそこからの輸送である。
後方での輸送は現地ゲリラや輸送路妨害を気にしなくていい分輸送は容易だ。
民間の協力も仰げ、道路や施設も整備されているためである。
道一つとっても大陸では10tトラックが何台も走れる道路や橋は限られている。
中世レベルの文明の道路ではさほど重量物が通ることが考慮されていないからである。
他にも問題はあった。
港での積み下ろし作業と荷物確認、現地業者とのすり合わせや盗賊対策である。
輸送時間の大部分が移動と安全対策に使われる。
これまでは港でのコンテナ内の物資確認のためコンテナをひとつひとつ開封して調べていた。
コンテナの鍵を開け中の物資と個数を確認する。それを日に何百回と行っていた。
当然作業には時間が掛かりいくらあっても人手は足りない。
だが積み下ろし作業は中断できない。
港での積み下ろし作業と荷物確認、現地業者とのすり合わせや盗賊対策である。
輸送時間の大部分が移動と安全対策に使われる。
これまでは港でのコンテナ内の物資確認のためコンテナをひとつひとつ開封して調べていた。
コンテナの鍵を開け中の物資と個数を確認する。それを日に何百回と行っていた。
当然作業には時間が掛かりいくらあっても人手は足りない。
だが積み下ろし作業は中断できない。
そのため港や海岸には大量の未開封コンテナが並べられ、中の物資を腐らせていた。
そういったことが昔はあったのである。
そこで生み出されたのがRFIDの本格的な導入である。
コンテナに無線タグを取り付け、開封せずとも中を確認できるようにしたのである。
更に後方で各科別や作業段階別、仕事ごとに応じて一つのコンテナに複数種の物資を入れたのである。
各作業段階で設けられた重量確認と交通要所別に設けられたIDチェッカーにより
不良在庫は劇的に減った。
そういったことが昔はあったのである。
そこで生み出されたのがRFIDの本格的な導入である。
コンテナに無線タグを取り付け、開封せずとも中を確認できるようにしたのである。
更に後方で各科別や作業段階別、仕事ごとに応じて一つのコンテナに複数種の物資を入れたのである。
各作業段階で設けられた重量確認と交通要所別に設けられたIDチェッカーにより
不良在庫は劇的に減った。
「物資が届かないと困るのは私だけど、現場の人にとっては死活問題だね」
「もちろん輸送される物資はコンテナひとつまで私が確認していますよ」
「もちろん輸送される物資はコンテナひとつまで私が確認していますよ」
パソコン画面にはトラックのナビゲーションと道路状況、ID表示が映っている。
「この仕事を始めたばかりのときは情報の多さに混乱しましたよ。
でも現地の状況を見て、自分はしっかりしなきゃいけないと思いました。
あの厳しい光景が目に焼きついたからこそ今の自分が居るんです」
でも現地の状況を見て、自分はしっかりしなきゃいけないと思いました。
あの厳しい光景が目に焼きついたからこそ今の自分が居るんです」
鈴木さんが陸自の普通科から補給科に入ったルーツは意外なところにありました。
「現地では常に物が足りないんです。あの時車両の交換部品があれば撤退出来た。
いえ、62式の弾がもう少しあれば持ちこたえる事が出来た。
私達にはほんの少し物資が足りなかったのです」
いえ、62式の弾がもう少しあれば持ちこたえる事が出来た。
私達にはほんの少し物資が足りなかったのです」
彼はしばしば昔の仲間が眠る地へ向かう。
部署が変わっても前線の専任陸曹や一尉に学ぶことも多いとか。
部隊の視察をしようと輸送科について行った先で王国残党ゲリラに襲撃され
撃たれそうになることもしばしば。
部署が変わっても前線の専任陸曹や一尉に学ぶことも多いとか。
部隊の視察をしようと輸送科について行った先で王国残党ゲリラに襲撃され
撃たれそうになることもしばしば。
近年は新たな問題も持ち上がってきている。
RFIDが導入され遅延や間違いが前より少なくなって届くようになった。
しかし、たとえ部隊に物資を満載したコンテナが届いても
そこから更に個々の兵士たちの手にどうやって渡すのか。
結局はひとつひとつ開封してコンテナを確認しなくてはならなくなった。
RFIDが導入され遅延や間違いが前より少なくなって届くようになった。
しかし、たとえ部隊に物資を満載したコンテナが届いても
そこから更に個々の兵士たちの手にどうやって渡すのか。
結局はひとつひとつ開封してコンテナを確認しなくてはならなくなった。
大まかな物資配分はRFIDがある。
物品の大量輸送はコンテナが勝る。
しかし個々の物品配分に関しては個別輸送に軍配が上がる。
個別輸送の配分性とコンテナの大量輸送を備えた輸送パレットの開発は
多くの補給士官たちの頭を悩ませてきた。
物品の大量輸送はコンテナが勝る。
しかし個々の物品配分に関しては個別輸送に軍配が上がる。
個別輸送の配分性とコンテナの大量輸送を備えた輸送パレットの開発は
多くの補給士官たちの頭を悩ませてきた。
その究極の選択に、今再び――
現代の匠が挑もうとしている。
現代の匠が挑もうとしている。
「禿げ隠しですよ」
彼はそう言いながら帽子を脱いだ。
円形脱毛症。日頃の補給業務の厳しさとストレスを物語る。
彼はそう言いながら帽子を脱いだ。
円形脱毛症。日頃の補給業務の厳しさとストレスを物語る。
「職業病ですね」
補給仕官にとって物流機材や物資以外に
各部署の担当の性格や状況を把握しておくのは義務であり、また責任なのだ。
補給仕官にとって物流機材や物資以外に
各部署の担当の性格や状況を把握しておくのは義務であり、また責任なのだ。
ある日、彼は何気なく大手通信販売、密林の特集を見ていた。
バラバラに棚に並べられた商品。棚ごとに設置されたコード。
「これだ」
バラバラに棚に並べられた商品。棚ごとに設置されたコード。
「これだ」
棚ごとに番号を割り振り、一区切りごとに管理する。
開いた棚には順次物資を詰めスペースの無駄をなくす。
バラバラになった物資の管理は棚に割り振った番号で管理し、
棚間移動の手間はコンピューターが最短ルートを計算する。
開いた棚には順次物資を詰めスペースの無駄をなくす。
バラバラになった物資の管理は棚に割り振った番号で管理し、
棚間移動の手間はコンピューターが最短ルートを計算する。
新型輸送コンテナの試作が始まった。
コンテナ内に複数の棚を設け、輸送の際に中身がずれないよう
コンテナサイズを調整し規格化した。
コンテナ内部のスペースを一杯に使え、なおかつ取り出しやすいよう
棚をレールスライド式にした。
使用後の空になった棚を回収できるように棚を折りたたみ式にし
棚とコンテナを別の区分とした。
確かに「即使用できる棚」を設けることで
現地の兵士たちがコンテナを回収してひとつひとつ中を見て回る手間は減った。
コンテナ内に複数の棚を設け、輸送の際に中身がずれないよう
コンテナサイズを調整し規格化した。
コンテナ内部のスペースを一杯に使え、なおかつ取り出しやすいよう
棚をレールスライド式にした。
使用後の空になった棚を回収できるように棚を折りたたみ式にし
棚とコンテナを別の区分とした。
確かに「即使用できる棚」を設けることで
現地の兵士たちがコンテナを回収してひとつひとつ中を見て回る手間は減った。
しかしこのアイディアには欠陥があった。
コンテナサイズを規格化を徹底しすぎた為に過剰包装が出ることになったのだ。
通常、一つの棚ごとに一つのコードが割り振られ一つのコンテナが用意される。
その中には大小様々な製品が入る。
そのため出荷段階での倉庫内の無駄は少ない。
コンテナサイズを規格化を徹底しすぎた為に過剰包装が出ることになったのだ。
通常、一つの棚ごとに一つのコードが割り振られ一つのコンテナが用意される。
その中には大小様々な製品が入る。
そのため出荷段階での倉庫内の無駄は少ない。
だが輸送段階になると包装に無駄が出た。
例えばA5サイズのソフトカバーの単行本一冊があったとする。
これを段ボールの台紙を当ててビニールパックを施し
更にほんの2倍の大きさがある段ボール箱に入って送られるといった問題が発生した。
本自体の厚さは2センチ、段ボールの厚さは7センチ。
つまり、この箱には同じ本が6冊は入る計算になる。
たかだかソフトカバーの単行本1冊に段ボール箱は必要ない。
これは明らかに過剰包装であった。
鈴木は愕然とした。
例えばA5サイズのソフトカバーの単行本一冊があったとする。
これを段ボールの台紙を当ててビニールパックを施し
更にほんの2倍の大きさがある段ボール箱に入って送られるといった問題が発生した。
本自体の厚さは2センチ、段ボールの厚さは7センチ。
つまり、この箱には同じ本が6冊は入る計算になる。
たかだかソフトカバーの単行本1冊に段ボール箱は必要ない。
これは明らかに過剰包装であった。
鈴木は愕然とした。
これは包装容器のサイズを常にある程度の余裕を持つように規格化したことからきている、
サイズ別に別個の包装をするのは包装の生産ラインと資源の無駄だからである。
同じ包装は使いまわせるという利点もあったからだ。
箱に余裕があると余計に詰め込むことが出来、
空間には綿を詰めれば箱の中のずれが解決できるためである。
サイズ別に別個の包装をするのは包装の生産ラインと資源の無駄だからである。
同じ包装は使いまわせるという利点もあったからだ。
箱に余裕があると余計に詰め込むことが出来、
空間には綿を詰めれば箱の中のずれが解決できるためである。
包装は3つの段階に分かれている
1:ビニールパックに入れる・・・傷からの保護
2:段ボールの台紙を当てる・・・より大きい傷からの保護
3:2倍の大きさがある段ボール箱に入れる・・・発見率向上のため。
1:ビニールパックに入れる・・・傷からの保護
2:段ボールの台紙を当てる・・・より大きい傷からの保護
3:2倍の大きさがある段ボール箱に入れる・・・発見率向上のため。
本来1又は2の段階で輸送されることが理想であったのだが、
コンテナ内に複数種の製品を入れ輸送するに当たり、小さな製品には3が必要となった。
すなわち小さな製品は発見しにくいのである。
旧来では(例:本の専売)同サイズの同製品を同時に輸送することで
商品間の隙間をなくし、2と3の包装を省いていた。
コンテナ内に複数種の製品を入れ輸送するに当たり、小さな製品には3が必要となった。
すなわち小さな製品は発見しにくいのである。
旧来では(例:本の専売)同サイズの同製品を同時に輸送することで
商品間の隙間をなくし、2と3の包装を省いていた。
問題に対しコンピューターへ製品ごとに縦横の幅を入れることで解決しようとした。
既にある程度の大きさ別や保存法別によるコンテナサイズの調整はやってしまっている。
それでも過剰包装は出る。
もう限界だ、プロジェクトに暗雲がたちこめた。
既にある程度の大きさ別や保存法別によるコンテナサイズの調整はやってしまっている。
それでも過剰包装は出る。
もう限界だ、プロジェクトに暗雲がたちこめた。
鈴木は一週間悩んだ。
しかし答えは出なかった。
しかし答えは出なかった。
その時だった。
輸送段階直前まで頑丈な箱が必要であり。
貰い手はそこまで頑丈な箱を必要としていない。
「なら箱から抜いて渡せばいいじゃないか」
逆転の、発想だった。
貰い手はそこまで頑丈な箱を必要としていない。
「なら箱から抜いて渡せばいいじゃないか」
逆転の、発想だった。
大中小の箱を用意し、似たサイズの製品を1又は2段階の包装で箱に詰めた。
それぞれの箱に商品リストを貼り付け、箱にそれぞれコードを振った。
棚を箱に置き換え、区域別に輸送することで解決した。
更に兵士たちへ旧来より性能の良い弾帯ベストを持つことを普及させた。
すなわち一定の物資を消費する傾向にある兵士たち
各個人が持てる保存容器を増やした。
過剰包装は減った。
それぞれの箱に商品リストを貼り付け、箱にそれぞれコードを振った。
棚を箱に置き換え、区域別に輸送することで解決した。
更に兵士たちへ旧来より性能の良い弾帯ベストを持つことを普及させた。
すなわち一定の物資を消費する傾向にある兵士たち
各個人が持てる保存容器を増やした。
過剰包装は減った。
こうして、遂に国からも、この計画にGOサインが出された。
「数年以内に状況を好転させてみせますよ。物資を待つ人が居るからね」
彼はそう言い笑った。
「たまにね、家族から手紙が届くんですよ。仕事が忙しくて本土まで
会いに行けないですけど。私には一番の補給物資です」
「他にも現地住民からわざわざ手紙が届くこともあるんですよ。
ありがとうって。ちょっと嬉しいです」
「入植初期は文化の違いや欠乏で散々でした」
魔法ゲリラが激化した○○年には一時期撤退も考えられたという。
会いに行けないですけど。私には一番の補給物資です」
「他にも現地住民からわざわざ手紙が届くこともあるんですよ。
ありがとうって。ちょっと嬉しいです」
「入植初期は文化の違いや欠乏で散々でした」
魔法ゲリラが激化した○○年には一時期撤退も考えられたという。
ここ数年で飛躍的に増えた物資を管理するために鈴木さんは
数ヶ月前から整備され始めたインターネットを使った部隊別の個別管理を始めている。
スタッフは彼に現地住民との関係はどうだと聞いてみた。
数ヶ月前から整備され始めたインターネットを使った部隊別の個別管理を始めている。
スタッフは彼に現地住民との関係はどうだと聞いてみた。
「現地住民に仕事を任せているか?・・・ですか?
順次移行しようとも考えていますが当分はありません。社会システムが全く違う。
大陸は社会基盤がまだ確立してない。トータルで考えると此方の方が安く付きます」
「一度引退しようと考えたこともあるんです。
でもね、大陸の街を見ているとね。まだまだ飢餓や病気で苦しむ人たちが居る。
あれじゃ駄目だ!私ならもっと上手くやれるってね。
私を慕ってくれる多くの人達も居る。辞めなかったのは彼らのおかげです」
順次移行しようとも考えていますが当分はありません。社会システムが全く違う。
大陸は社会基盤がまだ確立してない。トータルで考えると此方の方が安く付きます」
「一度引退しようと考えたこともあるんです。
でもね、大陸の街を見ているとね。まだまだ飢餓や病気で苦しむ人たちが居る。
あれじゃ駄目だ!私ならもっと上手くやれるってね。
私を慕ってくれる多くの人達も居る。辞めなかったのは彼らのおかげです」
まだまだ必要とされている、それだけで彼は頑張れると言う。
近年、彼がしてきた長年の政策が実り日本国内の状況も改善してきている。
大陸の魔法技術と日本の技術者との仲介を行うのに忙しい。
全国からは魔物の生態に目を付けた科学者や企業などから依頼が殺到しているそうだ。
近年、彼がしてきた長年の政策が実り日本国内の状況も改善してきている。
大陸の魔法技術と日本の技術者との仲介を行うのに忙しい。
全国からは魔物の生態に目を付けた科学者や企業などから依頼が殺到しているそうだ。
「現在30人体制で特許管理や技術提供の場を設けていますが
需要の急増に対して供給が追いついていない状況です」
と、嬉しい悲鳴をあげている。
需要の急増に対して供給が追いついていない状況です」
と、嬉しい悲鳴をあげている。
今年の売上は10億新円を超える見込み。
日本本土の新聞でも取り上げられ、最近は自治も検討され始めている。
魔法を本土の人達に知ってもらおうと、安価なアーティファクトの提供も始めたそうだ。
最初は奇異の目で見られていたドワーフやダークエルフも日本の風景になじみ始めている。
海外でも貴族達の投資に注目されていると言う。
日本本土の新聞でも取り上げられ、最近は自治も検討され始めている。
魔法を本土の人達に知ってもらおうと、安価なアーティファクトの提供も始めたそうだ。
最初は奇異の目で見られていたドワーフやダークエルフも日本の風景になじみ始めている。
海外でも貴族達の投資に注目されていると言う。
NHKスタジオ
「と言う訳でアーティファクトのゴーレムを用意してきました」
テーブルの上で手の平サイズの人型ゴーレムが動いた。
「モーターやエンジンなしに!?どうやって動いてるの!?」
「刻印だよ。魔力で動いてる」
「と言う訳でアーティファクトのゴーレムを用意してきました」
テーブルの上で手の平サイズの人型ゴーレムが動いた。
「モーターやエンジンなしに!?どうやって動いてるの!?」
「刻印だよ。魔力で動いてる」
ぱんつみたいだけど恥ずかしくないもん
ぱんつの様な社章がトレードマークの名古屋市に本社を置く
山田工業所。
ぱんつの様な社章がトレードマークの名古屋市に本社を置く
山田工業所。
「いやはや、魔法刻印の再現に苦労しましたよ。刻む順番や使う金属が重要なんです」
苦労を語る山田さん。彼は○○年産業功労賞を受賞した。
手作業との決別。アーティファクトの生産を賭け、
ドワーフの伝統技術と日本の最先端技術が手を組んだ。
「戦車や戦闘機の装甲版には魔法刻印が刻まれるようになったんですよ」
苦労を語る山田さん。彼は○○年産業功労賞を受賞した。
手作業との決別。アーティファクトの生産を賭け、
ドワーフの伝統技術と日本の最先端技術が手を組んだ。
「戦車や戦闘機の装甲版には魔法刻印が刻まれるようになったんですよ」
将来の夢は何ですか?
「ストライクな魔法少女達を空に飛ばせるようになりたいですね」
ずれた眼鏡をなおしながら、
壁に貼られたポスターを見つめ真摯に語る彼の表情は職人のそれであった。
今、彼は新しい装備の研究をしている。
より使いやすく、より強力なエンジン。
「ストライクな魔法少女達を空に飛ばせるようになりたいですね」
ずれた眼鏡をなおしながら、
壁に貼られたポスターを見つめ真摯に語る彼の表情は職人のそれであった。
今、彼は新しい装備の研究をしている。
より使いやすく、より強力なエンジン。
「試行錯誤の連続ですね。
今朝、魔導エンジンの出力実験をしていたら実験場が吹き飛びましたよ」
「水冷式エンジンと合わせてみたら意外に相性が良くて、
アナログも捨てたものじゃないって思いましたね」
今朝、魔導エンジンの出力実験をしていたら実験場が吹き飛びましたよ」
「水冷式エンジンと合わせてみたら意外に相性が良くて、
アナログも捨てたものじゃないって思いましたね」
自分の作ったエンジンが日本の復興に使われ、かつての国の姿を取り戻す。
そうなるといいねと彼は笑った。
そうなるといいねと彼は笑った。
「○○年日本同時魔法テロの影響でもう工場は終わりかなと思っていました。
工場は全壊、従業員が全員無事だったことだけが救いでした。
明日から路頭に迷うことになる、私はエンジンを作ることしか知らない。
そんな私がどうやって家族を食べさせていけばいいのかと絶望していました。
その時、手を差し伸べてくれたのが鈴木さんです。彼には本当に感謝しています」
「自分達の魔法(技術)を使って大陸の魔法を見返してやろう」
「彼には励まされました。まだ全部無くなった訳じゃない。
人も希望も残っているってね。年甲斐もなく泣いちまいましたよ」
「魔法との融合が注目されている時代じゃないですか。。
魔法を科学技術と合わせる時にだからこそ
機械ではできない作業と機械作業を取り持つ職人技は必要になってくる」
工場は全壊、従業員が全員無事だったことだけが救いでした。
明日から路頭に迷うことになる、私はエンジンを作ることしか知らない。
そんな私がどうやって家族を食べさせていけばいいのかと絶望していました。
その時、手を差し伸べてくれたのが鈴木さんです。彼には本当に感謝しています」
「自分達の魔法(技術)を使って大陸の魔法を見返してやろう」
「彼には励まされました。まだ全部無くなった訳じゃない。
人も希望も残っているってね。年甲斐もなく泣いちまいましたよ」
「魔法との融合が注目されている時代じゃないですか。。
魔法を科学技術と合わせる時にだからこそ
機械ではできない作業と機械作業を取り持つ職人技は必要になってくる」
最先端だからこそ活躍するアナログな職人。
かつての日本を取り戻したい、守りたい。
そんな思いが今日の日本人の力となっていると語った。
かつての日本を取り戻したい、守りたい。
そんな思いが今日の日本人の力となっていると語った。
深夜2時、補給所の兵站管理部に突如異変が。
補給手順の変更。
決意を固めた部下達の報告を聞き、参謀本部の工藤さんは渋い表情を作った。
補給手順の変更。
決意を固めた部下達の報告を聞き、参謀本部の工藤さんは渋い表情を作った。
「時代が変わったんですね。
一方通行だった補給申請が現場からも行われるようになったんです。
現場主義の流れでしょうね。
でも大事なのは物資に限らず自衛官の命ですから。
これが我々のためになるなら老兵は身を引きます…」
一方通行だった補給申請が現場からも行われるようになったんです。
現場主義の流れでしょうね。
でも大事なのは物資に限らず自衛官の命ですから。
これが我々のためになるなら老兵は身を引きます…」
飢餓、オイルショック、肥料の不足…
初期の混乱から立ち直りつつある日本。
その力はこうした人々の努力から産まれているのである。
一部輸出解禁に伴い、日本の中小企業の持つ圧倒的な品質を持つ製品に
海外の人々も目を付け始めた。
先日締結されたレンドリース法ではエルブ国に貸与されることが締結されたのも
日本製の剣や食料であり特に加工食品は
海外でカレーラーメンブームを巻き起こすほどである。
初期の混乱から立ち直りつつある日本。
その力はこうした人々の努力から産まれているのである。
一部輸出解禁に伴い、日本の中小企業の持つ圧倒的な品質を持つ製品に
海外の人々も目を付け始めた。
先日締結されたレンドリース法ではエルブ国に貸与されることが締結されたのも
日本製の剣や食料であり特に加工食品は
海外でカレーラーメンブームを巻き起こすほどである。
鈴木さんの事務所の部屋には12人分のヘルメットが立て掛けられている。
どれも綺麗に磨かれ埃ひとつない。
どれも綺麗に磨かれ埃ひとつない。
「かつてエルブ国は私達を助けてくれた。火事にホースを貸してくれた。
今度は此方が貸す番ですよ。困っている隣人にホースを貸したい。水には困らないように」
今度は此方が貸す番ですよ。困っている隣人にホースを貸したい。水には困らないように」
「いや~本当すごいですね」
「輸送ってこんなに手間かけてるんですね」
「輸送ってこんなに手間かけてるんですね」
ライドナ王国軍に襲われた彼を助けたのは50年前のエルブ国であった。
エルブ国は食料と安心できる寝所の提供。安定した輸送路を保護した。
各種条約により飛躍的に日本の輸送は改善することになり国内問題も一応の安定を得た。
鈴木さんは異国で初めて食べたイケ麺(しょうゆ味)の味は忘れられないという。
日本のカレー、ラーメン、食べ物の相互理解はどれだけ時代が移り変わろうとも
変わらないもの、なのかもしれない…。
エルブ国は食料と安心できる寝所の提供。安定した輸送路を保護した。
各種条約により飛躍的に日本の輸送は改善することになり国内問題も一応の安定を得た。
鈴木さんは異国で初めて食べたイケ麺(しょうゆ味)の味は忘れられないという。
日本のカレー、ラーメン、食べ物の相互理解はどれだけ時代が移り変わろうとも
変わらないもの、なのかもしれない…。
今日も彼は、日が昇るよりも早く書類の整理を始めた
明日も、明後日もその姿は変わらないだろう
明日も、明後日もその姿は変わらないだろう
そう、補給仕官の朝は早い───
輸送の歴史~補給仕官の朝~
完
完