山の麓にぽつんと建つ、木造の小さな小屋。
その小屋に向かって歩く、二つの人影があった。
片方はまだ幼さの残る、眼鏡をかけた少女。
名を、氷室実咲という。
もう片方は、槍を携えた筋肉質な青年。
彼の名は、日本号。長き時を過ごしたことで付喪神となった刀剣、「刀剣男士」の一人である。
もっとも彼の場合、厳密には刀剣と言いがたい槍が原型なのだが。
その小屋に向かって歩く、二つの人影があった。
片方はまだ幼さの残る、眼鏡をかけた少女。
名を、氷室実咲という。
もう片方は、槍を携えた筋肉質な青年。
彼の名は、日本号。長き時を過ごしたことで付喪神となった刀剣、「刀剣男士」の一人である。
もっとも彼の場合、厳密には刀剣と言いがたい槍が原型なのだが。
「あの小屋でいいのか、お嬢ちゃん」
「はい。たぶん、地形とかを見るとあれだと思います」
「はい。たぶん、地形とかを見るとあれだと思います」
日本号の問いに、実咲は手にした地図を見ながら答える。
数十分前、偶然遭遇した二人はお互い敵意がないことを確認し、共に行動することにした。
そして実咲に支給された武器のありかを示した地図をたどって、ここまでやってきたのである。
なお実咲は日本号の素性について聞いているが、彼女の常識ではとうていあり得ないものだったため深く考えないことにして心の平穏を保っている。
とりあえず悪人ではないようなので信用している、という具合だ。
数十分前、偶然遭遇した二人はお互い敵意がないことを確認し、共に行動することにした。
そして実咲に支給された武器のありかを示した地図をたどって、ここまでやってきたのである。
なお実咲は日本号の素性について聞いているが、彼女の常識ではとうていあり得ないものだったため深く考えないことにして心の平穏を保っている。
とりあえず悪人ではないようなので信用している、という具合だ。
「しかしまあ、俺たちを殺し合いなんぞに巻き込みやがったやつが用意した武器に頼るってのも、ちょいと癪ではあるなあ」
「気持ちはわかりますけど……。
殺し合いをしたくなくても、最低限の自衛手段は持っておかないと危険ですから」
「ははっ、そりゃそうだ」
「気持ちはわかりますけど……。
殺し合いをしたくなくても、最低限の自衛手段は持っておかないと危険ですから」
「ははっ、そりゃそうだ」
会話しているうちに、二人は小屋の前に到達していた。
日本号はその戸を開けようとして、動きを止める。
日本号はその戸を開けようとして、動きを止める。
「どうかしまし……」
「離れろ!」
「離れろ!」
「ぐあっ!」
「日本号さん!」
「日本号さん!」
たまらず膝をつく日本号。
その様を見て、実咲が悲痛な叫びを上げる。
その様を見て、実咲が悲痛な叫びを上げる。
(ちくしょう、俺としたことが、とんだへまを……。
こんな近づくまで、やべえやつの気配に気づかねえとは!)
こんな近づくまで、やべえやつの気配に気づかねえとは!)
顔をゆがめ、日本号は己に毒づく。
実際には赤い霧によって彼の感覚が劣化していたことが原因なのだが、本人はそれに気づいていない。
実際には赤い霧によって彼の感覚が劣化していたことが原因なのだが、本人はそれに気づいていない。
(とにかく、最低でも実咲は守らねえと……)
己の本体である槍を杖代わりに、なんとか立ち上がる日本号。
そこに、戸が崩壊した小屋の中から声がかけられる。
そこに、戸が崩壊した小屋の中から声がかけられる。
「なんや、思ったより元気そうやなあ」
そう口にしたのは、眼鏡をかけた青白い肌の男。
その側頭部からは不揃いな一対の角が生えており、彼が普通の人間でないことを示している。
彼の傍らに置かれているのは、どこぞの武器商人が使用していたものと同型の回転式機関銃(ガトリングガン)。
これこそが、実咲の地図に記されていた武器である。
その側頭部からは不揃いな一対の角が生えており、彼が普通の人間でないことを示している。
彼の傍らに置かれているのは、どこぞの武器商人が使用していたものと同型の回転式機関銃(ガトリングガン)。
これこそが、実咲の地図に記されていた武器である。
「死に際の絶望した表情が見たくて、ほどほどで止めたのかあかんかったか。
しゃあない、次は殺す気でいくわあ」
しゃあない、次は殺す気でいくわあ」
物騒な内容とは裏腹なおっとりとした口調で、男……アミィ・キリヲは言う。
その手が、ガトリングガンのハンドルにかけられた。
その手が、ガトリングガンのハンドルにかけられた。
「逃げろ、実咲ーっ!!」
声の限り、日本号が叫ぶ。
そのあまりに切羽詰まった咆哮に、実咲はほぼ反射的に駆け出していた。
それを見届けることもせず、日本号はキリヲに向かって突進する。
ただの人間よりはいくらか頑丈な刀剣男士の体だが、そこまで大きな差があるわけではない。
あと数発銃弾を受ければ、刀剣男士としての日本号は死に至る。
その前に、敵を討つ。日本号は、そう決意していた。
再び、ガトリングガンが銃弾を放ち始める。
日本号の体が、何度も射貫かれる。
それでも彼は止まらない。
遠のきそうになる意識を必死につなぎ止め、間合いに入る。
そのあまりに切羽詰まった咆哮に、実咲はほぼ反射的に駆け出していた。
それを見届けることもせず、日本号はキリヲに向かって突進する。
ただの人間よりはいくらか頑丈な刀剣男士の体だが、そこまで大きな差があるわけではない。
あと数発銃弾を受ければ、刀剣男士としての日本号は死に至る。
その前に、敵を討つ。日本号は、そう決意していた。
再び、ガトリングガンが銃弾を放ち始める。
日本号の体が、何度も射貫かれる。
それでも彼は止まらない。
遠のきそうになる意識を必死につなぎ止め、間合いに入る。
「おらあっ!」
キリヲの頭部めがけ、全力で槍が振るわれる。
しかし……。
しかし……。
「何ッ!?」
槍は、キリヲの体に触れることなく、何かにぶつかって止まった。
アミィ家の家系能力、「断絶(バリア)」。
絶大な強度を誇る、不可視の壁を生み出す魔術だ。
アミィ家の家系能力、「断絶(バリア)」。
絶大な強度を誇る、不可視の壁を生み出す魔術だ。
「危ない危ない。タフやなあ、お兄さん」
(俺は……ここまでか……。すまねえ、主、みんな……)
その思考を最後に、日本号の意識は闇に落ちていった。
◆ ◆ ◆
「最後まで僕好みの顔を見せずに死んでいきおったなあ……。
ほんまにタフなお兄さんやわ」
ほんまにタフなお兄さんやわ」
日本号の亡骸を見下ろしながら、キリヲは呟く。
「しかし、なんやろなあ。このお兄さん、悪魔とも魔獣とも違う感じが……。
強いて言うなら、使い魔に近い……?
まあ、そんなこと考えるのは後でええか。
今は逃げたお嬢ちゃんを……ガフッ!」
強いて言うなら、使い魔に近い……?
まあ、そんなこと考えるのは後でええか。
今は逃げたお嬢ちゃんを……ガフッ!」
突然、キリヲの口から血が噴き出す。
彼は元々、虚弱体質。
戦闘による精神的消耗が、体調を悪化させたようである。
彼は元々、虚弱体質。
戦闘による精神的消耗が、体調を悪化させたようである。
「あ、あかんわ、これ……。少し休まんと……。
魔力も余裕無いし、弾も残り少ないしなあ……。
すぐに追いかけるのは無理かあ」
魔力も余裕無いし、弾も残り少ないしなあ……。
すぐに追いかけるのは無理かあ」
力なく笑うと、キリヲは床に腰を下ろす。
「しかし、ここの武器は性能ええなあ。
使うのに、魔力も必要あらへんし……。
これをぎょうさん持ち帰れば……僕の野望に役立つかもなあ」
使うのに、魔力も必要あらへんし……。
これをぎょうさん持ち帰れば……僕の野望に役立つかもなあ」
キリヲの野望。それは高ランクと低ランクの悪魔の差をなくし、魔界を混沌の渦に巻き込むこと。
弱者でも強者を殺せる武器が大量にあれば、それを達成するために役に立つだろう。
弱者でも強者を殺せる武器が大量にあれば、それを達成するために役に立つだろう。
「まあそれには、まず僕が生き残らんと……。
がんばらなあかんなあ」
がんばらなあかんなあ」
地獄絵図を頭に描きながら、キリヲは恍惚の笑みを浮かべた。
【0200 山の麓】
【アミィ・キリヲ@小説 魔入りました!入間くん(3) 師団披露(魔入りました!入間くんシリーズ)@ポプラキミノベル】
●大目標
大量の武器を持ち帰る
●中目標
絶望した表情を見るために、他の参加者を襲う
●小目標
少し休む
●大目標
大量の武器を持ち帰る
●中目標
絶望した表情を見るために、他の参加者を襲う
●小目標
少し休む
【脱落】
【日本号@映画 刀剣乱舞@小学館ジュニア文庫】