ついこの前に転校してきた彼女。男子の中では一番話すし、なんなら一番仲がいいかもしれないなんてうぬぼれはあるが、それでも彼女の家のことやふだん何してるかなど、友人なら知っているようなことでもろくすっぽ知らない。
それを知るのは、これから何日も何ヶ月も先のこと。まだそこまでに、この元は至っていない。
それなのに猛烈な虚無感に襲われていることに、元自身がとまどっていた。
それを知るのは、これから何日も何ヶ月も先のこと。まだそこまでに、この元は至っていない。
それなのに猛烈な虚無感に襲われていることに、元自身がとまどっていた。
「ずっとあの調子だよ。」
キッチンに入ってきたアキラはそう言いながら、テーブルの上のカップ麺をとる。フタを外すと、少し伸びたそれを無理やり口に押し込み始めた。
アキラと小笠原牧人の2人が彼女らを保護して既に1時間が経っていた。目の前で息を引き取るのを看取り、泣きじゃくる元をなだめて、彼が落ち着くのを待つ。無駄な時間とは思わない。元々行くあてのないアキラたち、自分でもあの状況なら時間がほしいし、急いでどうなることもない。
アキラと小笠原牧人の2人が彼女らを保護して既に1時間が経っていた。目の前で息を引き取るのを看取り、泣きじゃくる元をなだめて、彼が落ち着くのを待つ。無駄な時間とは思わない。元々行くあてのないアキラたち、自分でもあの状況なら時間がほしいし、急いでどうなることもない。
「立てるようになるまで一人にさせといてやろう。」
おなじように立ちながら、牧人もカップ麺をすする。夢羽を殺した人間が近くにいるのなら、ここも狙われるかもしれない。元は動けないのなら、彼を守るためにも2人が備えなくてはならない。
無理やりに栄養を補給すると、牧人は家の2階へと戻った。カーテンの隙間から油断無く街を見る。民家の高さなどたかが知れているし死角も多いが、気休めにはなる。それに、牧人もアキラも1人になる時間が欲しかった。
無理やりに栄養を補給すると、牧人は家の2階へと戻った。カーテンの隙間から油断無く街を見る。民家の高さなどたかが知れているし死角も多いが、気休めにはなる。それに、牧人もアキラも1人になる時間が欲しかった。
(亜知、詩緒里、麻紀……)
ここまでの情報を整理すると、おそらくこの殺し合いには子供しか参加していない。それはほんの少しの安堵と一層の不安を牧人に感じさせている。
親が巻き込まれていなさそうなのはまだマシだが、妹や彼女(一応)や幼なじみが代わりに参加させられているのでは話しにならない。特に妹の亜知はまだ小学校にも入っていないのだ。なにがあっても助けなくてはいけないが、しかし動きようが無い。
名簿が無いので巻き込まれているのかわからない。地図が無いので行きそうな場所もわからない。ただただ不安だけが増していく。
親が巻き込まれていなさそうなのはまだマシだが、妹や彼女(一応)や幼なじみが代わりに参加させられているのでは話しにならない。特に妹の亜知はまだ小学校にも入っていないのだ。なにがあっても助けなくてはいけないが、しかし動きようが無い。
名簿が無いので巻き込まれているのかわからない。地図が無いので行きそうな場所もわからない。ただただ不安だけが増していく。
「水でも飲むか……」
焦燥感からかカップ麺の塩気からか、喉の渇きを覚えて、キッチンへと戻った。扉越しに元が何かつぶやく声が聞こえる。それが母親を思い起こさせて、牧人は険しい顔で冷蔵庫へと向かった。と、気づく。冷凍庫が開いている。
「おい、開けっ放しだぞ。」
「え、なにが?」
「冷凍庫だよ。」
「なんで?」
「なんでってお前じゃねえの?」
「開けてないよ、人の家の冷蔵庫開けるのは失礼じゃん。」
「いやそうだけどそうじゃなくて、ん?」
「え、なにが?」
「冷凍庫だよ。」
「なんで?」
「なんでってお前じゃねえの?」
「開けてないよ、人の家の冷蔵庫開けるのは失礼じゃん。」
「いやそうだけどそうじゃなくて、ん?」
隣の部屋で先ほどまでの牧人と同じように窓から外を伺うアキラとやり取りしている中で、ふと視界の端にある何かに目が止まる。さっきまで気づかなかった黄色い何か。まじまじと見ると、戸棚の出っ張りに置かれたぬいぐるみだった。牧人の目が驚きに開かれる。ぬいぐるみには、参加者が付けられているのと同じ首輪があった。
「おい、ちょっと来てくれ。」
「今度はなに? なにこれ、ぬいぐるみ? 持ってきたの。」
「くるわけないだろ。それよりほら、ここ。」
「ネックレスしてる。ちがうこれ首輪だ!」
「気がついたらここにあったんだ。銃みたいにあのウサギが用意したアイテムじゃないか。」
「そんなことないよ、さっきまでここになかったもんこんなの。」
「とりあえず首輪引っ張ってみるか。」
「あかんそれじゃワイが死ぬぅ!」
「「うおおおおお!?」」
「今度はなに? なにこれ、ぬいぐるみ? 持ってきたの。」
「くるわけないだろ。それよりほら、ここ。」
「ネックレスしてる。ちがうこれ首輪だ!」
「気がついたらここにあったんだ。銃みたいにあのウサギが用意したアイテムじゃないか。」
「そんなことないよ、さっきまでここになかったもんこんなの。」
「とりあえず首輪引っ張ってみるか。」
「あかんそれじゃワイが死ぬぅ!」
「「うおおおおお!?」」
手に取って2人で首輪をつつきながら話すと、突然ぬいぐるみが関西弁で喋った。
取り落とした次の瞬間、信じられない光景があった。
ぬいぐるみが宙に浮かび上がっていた。
取り落とした次の瞬間、信じられない光景があった。
ぬいぐるみが宙に浮かび上がっていた。
「ウ……ウソやろ。こ……こんなことが。こ……こんなことが許されていいのか。」
ケロちゃんことケルベロスは驚愕に震えていた。
ケロちゃんは大魔術師クロウ・リードが生み出した使い魔だ。現在は木之本桜のパートナーとして、魔法少女もののマスコットポジションにいる。
そんな彼なのでこういった異常事態にも慣れているかというとさすがに限度があった。いくらなんでも何人も誘拐して蠱毒のように殺人遊戯をさせるなど聞いたことがない。
ケロちゃんは大魔術師クロウ・リードが生み出した使い魔だ。現在は木之本桜のパートナーとして、魔法少女もののマスコットポジションにいる。
そんな彼なのでこういった異常事態にも慣れているかというとさすがに限度があった。いくらなんでも何人も誘拐して蠱毒のように殺人遊戯をさせるなど聞いたことがない。
「人間でやるかふつう。しかもこの空間、魔力みたいな力がアホほど練りこまれてる。この霧とか息してるだけで呪われそうや。これはスーパーまずいで……!」
顔をしかめながらそう言うのは、単に事態の危険性に心胆を震わせているからだけではない。ケロちゃんは太陽を司るのに対し、この空間には闇の力が満ちている。魔に属するものの上に真逆の属性のため、他の参加者よりも如実に影響を受けているのだ。
「ユエとかなら楽かもしれんけど、これはしんどいなぁ。魔力の消耗もふだんより激しい気がするし、なんか腹減るし。おるかわからんけど、急いでさくらと合流せんと。」
そして1時間経った。
「ちょっと待ってこんな広くてええん!?」
思わず関西のノリでツッコんでしまう。
ケロちゃんは戦慄していた。たしかにクロウ・リードが生み出したクロウカードにも、結界を作るものはある。しかし街一つを用意するというのは信じられないものだ。シンプルな迷宮などではなくしっかりとした建物の群れに、幻覚などを疑う。しかしそれを確かめることも今のコンデションではままならなかった。
ケロちゃんは戦慄していた。たしかにクロウ・リードが生み出したクロウカードにも、結界を作るものはある。しかし街一つを用意するというのは信じられないものだ。シンプルな迷宮などではなくしっかりとした建物の群れに、幻覚などを疑う。しかしそれを確かめることも今のコンデションではままならなかった。
「どないなっとんねん……結界で街を作り出してるんやなくて、どっかの街に結界張ってるとかか? いやそれでもこんな広いってなったら、クロウ以上かもしれへん。銃とかぼんぼこ置いてあるけど、こんなん魔法で作れるんか?」
疲れてくると独り言が多くなる。さらに腹の虫もなってきて、よろよろと飛ぶ。
「あかん、ホンマに腹減ってる。ユエみたくなっとるやがな……な、なにか食わんと飛んでるだけで死んでまう……あ、あそこ窓開いてるわ、おじゃましよ……」
中に入ってみる。とりあえず人の気配は無い。喜び勇んでキッチンに行き、さて冷凍たこ焼きでもないかと漁りかけたところで、上から足音が聞こえてきた。
「──で、思いっきり人おるやん!?ってなって、とっさにぬいぐるみのフリしたったねん。そしたら首輪突くわ引っ張ろうとするわやろ? そんなん絶対したらあかんやん100%外そうとしたらボカンってなるやつやん。」
そう言いながら、ケロちゃんは牧人たちの目の前でたこ焼きを食べていた。元など未だに現実を受け入れられずにポカンとしている。
結局家に入った後、ケロちゃんは牧人に見つかって身の上話をしていた。
結局家に入った後、ケロちゃんは牧人に見つかって身の上話をしていた。
「……元、ほっぺつねって。」
「あ、ああ。」
「痛いたいたいっ、なにっ、夢じゃない。」
「なんだ……この……なんだ?」
「とにかく、妖精的なもの、かな?」
「あ、ああ。」
「痛いたいたいっ、なにっ、夢じゃない。」
「なんだ……この……なんだ?」
「とにかく、妖精的なもの、かな?」
頑張って男子小学生3人は納得する。殺し合いに巻き込まれたのだ、不思議な存在の1つや2つ今更疑っているのはナンセンスだ。
「ふぅー、ごちそうさん。いやーおおきにな。さてさて、こっからの話や。」
一方当のケロちゃんはとっとと話を変えていた。本人としてはキリッとした顔を作った気で切り出す。
「あらためまして、ワイの名前はケルベロス。簡単に言うと使い魔みたいなもんや。ゲームとかであるやろ、人間と話せるモンスター。怪物扱いは傷つくけど、あんなんと思うてもろてかまわんよ。」
「「「ど、どうも。」」」
「「「ど、どうも。」」」
空中に浮かびながらお辞儀したケロちゃんにつられて3人もお辞儀する。
「もう一人おったな」と隣の部屋に飛んで行って夢羽の遺体に手を合わせる姿はとても人間臭いものだ。彼女の名前を聞かれて答えながら、元は自分が妙に冷静になっているなと自覚した。
「もう一人おったな」と隣の部屋に飛んで行って夢羽の遺体に手を合わせる姿はとても人間臭いものだ。彼女の名前を聞かれて答えながら、元は自分が妙に冷静になっているなと自覚した。
「ホントなら花の一つ供えてあげたいんやけど、堪忍な。ゲン、ムーが好きなものってなんや。見つけたらお供えしよか。」
「……わからないんだ。最近転校してきて……家のことだって……」
「そうか……それでも大事な人やったんやな。」
「……」
「……わからないんだ。最近転校してきて……家のことだって……」
「そうか……それでも大事な人やったんやな。」
「……」
沈黙で答える元に、ケロちゃんは顔の前まで飛んで行く。その真剣な面持ちは、今度は伝わった。
「ゲン、それにマキト、アキラ。3人に頼みがある。この異変を解決するの、手伝ってもらえんか?」
「……ムリだよ。さっきだって……」
「できるできないやない。3人がええ奴やから言うとるんや。その血まみれの服、みんなであの子助けようとしたんやろ。転校生にせよ初対面にせよ、よう知りもせんのに人助けなんて、なかなかできることやないわっ。」
「……ムリだよ。さっきだって……」
「できるできないやない。3人がええ奴やから言うとるんや。その血まみれの服、みんなであの子助けようとしたんやろ。転校生にせよ初対面にせよ、よう知りもせんのに人助けなんて、なかなかできることやないわっ。」
唐突にほめられても、元の心には哀しみの代わりに困惑が占めるだけだ。アキラたちはともかく、自分は何もできなかった。見つけた時にはもう手遅れだった。助けようとなんてできていない。
(……でも。)
でも、彼女はそんな自分に託して逝った。何もできなかった自分に、アキラでも牧人でもなく、助けようとした彼らではなく自分に託したのだ。
(イジケてたら、ガッカリさせるよな、きっと……だったら。)
元は一度強く目をつむる。
頭の中で思い描くのは夢羽の猫のような目が自分を見つめる姿だがそこに唐突にグレネードランチャーが発射される。回想に入ろうとしたところで爆風に包まれた元たちはしめやかに爆散、生命活動を停止した。
頭の中で思い描くのは夢羽の猫のような目が自分を見つめる姿だがそこに唐突にグレネードランチャーが発射される。回想に入ろうとしたところで爆風に包まれた元たちはしめやかに爆散、生命活動を停止した。
「──うかつだな、とは言わん。この力に一番戸惑っているのはわたしなのだからな……」
目の前でグレネードが撃ち込まれた家屋が炎上を始める。それをやった張本人のサウードは、自分が持っている武器と燃えていく家を見比べて困惑の表情を浮かべていた。
悪の魔法使いサウード。砂漠一の魔法の使い手として自分自身にお墨付きを与えている彼は、ゲーム開始よりしばらく現実を受け入れられずにいた。
魔法に精通しているからこそわかる。この会場に施されている深遠な術式を。そして高貴な生まれだからこそわかる。この会場に誂えられている設備の先進性を。
願望器たる魔法の杖を手に入れるため、砂漠の国々で七つの鍵の争奪戦を引き起こした彼をもってしても、どちらも受け入れがたいレベルに非現実的なものである。どちらか一方だけならまだわかるのだが、何もかも自分の想定を上回るものを見せつけられれば思わず茫然自失となってしまう。店先のショーウィンドウの巨大な一枚ガラスにさえ驚愕するほどなのだ、自分では及びもつかないものに、さすがの彼も心が折れた。
もちろん彼としてはこんな殺し合いに乗る気はない。ないのだが、自分が既に生贄同然の立場だと誰よりも理解せざるを得ない。国一つを石化させた経験があるので、自分の首に巻かれているものがどれだけ厄介かを嫌というほど痛感しているのだ。
悪の魔法使いサウード。砂漠一の魔法の使い手として自分自身にお墨付きを与えている彼は、ゲーム開始よりしばらく現実を受け入れられずにいた。
魔法に精通しているからこそわかる。この会場に施されている深遠な術式を。そして高貴な生まれだからこそわかる。この会場に誂えられている設備の先進性を。
願望器たる魔法の杖を手に入れるため、砂漠の国々で七つの鍵の争奪戦を引き起こした彼をもってしても、どちらも受け入れがたいレベルに非現実的なものである。どちらか一方だけならまだわかるのだが、何もかも自分の想定を上回るものを見せつけられれば思わず茫然自失となってしまう。店先のショーウィンドウの巨大な一枚ガラスにさえ驚愕するほどなのだ、自分では及びもつかないものに、さすがの彼も心が折れた。
もちろん彼としてはこんな殺し合いに乗る気はない。ないのだが、自分が既に生贄同然の立場だと誰よりも理解せざるを得ない。国一つを石化させた経験があるので、自分の首に巻かれているものがどれだけ厄介かを嫌というほど痛感しているのだ。
「わたしと同じほどの使い手に、わたしでも見たことのない進んだ錬金術……儀式の供物にされているのはわかるが、他に手はないな。」
自分なら完璧にこの血に濡れた遊びを取り仕切れる自信があるため、参加者となったからには反抗の手段はないと知る。
ならば道は一つ。殺し合いに乗り活躍し、元締めから良い待遇を引き出すまでだ。単に殺し合わせるよりも、子飼いにしたほうが有用だと思わせる。
もちろんそれは茨の道だ。単に主催者打倒を謳ったほうが遥かに生存確率は上がる。だからこそサウードはそこに勝機を見出した。冷静に考えればゲームに真剣に乗る意味などない。それは似たような策謀を企てるサウードならば当然理解している。
ゆえに、彼は主催者の視点で考える。自分ならば、殺し合いを加速させるような工夫を施す。それは例えば大量に配置された武器だが、そんなものよりもっと効率的な方法がある。殺し合いに参加している人間と会場の地図を参加者に教えることだ。彼が得意とする人を諭すやり方で。
全参加者の名前を教える、死んだ参加者の名前を教える、人に出会い疑心暗鬼を産むよう内容の地図のありかを教える。そんなところだ。それだけで一気にこの殺し合いは加速する。本当の事を話す必要もなく。
明らかに人間に向かって使うにはオーバーキルな武器を使ってわかった。この殺し合いでは死体の確認は一般的な戦場よりもなおのこと困難だ。参加していない人間を参加したことにして、死んでもいないの死んだことにする。それだけで復讐に駆られる人間は大勢出てくるだろう。それだけ復讐というものは人間を左右すると、思いっきり左右されているサウードは思う。
情報面で圧倒的な差があるなら、嘘をついたもの勝ちの状況になるのは必然だ。しかもそれを疑い出すと、本当に死んだ人間についても誤った判断を下す。仲間の死を伝えられて騙されていると思ったり、ゲームに乗って死んだ人間が本当に死んだのかと不安になったり、少し考えただけでも悪用の仕方が出てくる。そして嘘をつくことにメリットがあるからこそ、全く本当の事だけ話しても構わない。魔法の面から言えばルールに関しては本当の事を言って主催者と参加者でルール『制約』を共有することにもメリットはある。
ならば道は一つ。殺し合いに乗り活躍し、元締めから良い待遇を引き出すまでだ。単に殺し合わせるよりも、子飼いにしたほうが有用だと思わせる。
もちろんそれは茨の道だ。単に主催者打倒を謳ったほうが遥かに生存確率は上がる。だからこそサウードはそこに勝機を見出した。冷静に考えればゲームに真剣に乗る意味などない。それは似たような策謀を企てるサウードならば当然理解している。
ゆえに、彼は主催者の視点で考える。自分ならば、殺し合いを加速させるような工夫を施す。それは例えば大量に配置された武器だが、そんなものよりもっと効率的な方法がある。殺し合いに参加している人間と会場の地図を参加者に教えることだ。彼が得意とする人を諭すやり方で。
全参加者の名前を教える、死んだ参加者の名前を教える、人に出会い疑心暗鬼を産むよう内容の地図のありかを教える。そんなところだ。それだけで一気にこの殺し合いは加速する。本当の事を話す必要もなく。
明らかに人間に向かって使うにはオーバーキルな武器を使ってわかった。この殺し合いでは死体の確認は一般的な戦場よりもなおのこと困難だ。参加していない人間を参加したことにして、死んでもいないの死んだことにする。それだけで復讐に駆られる人間は大勢出てくるだろう。それだけ復讐というものは人間を左右すると、思いっきり左右されているサウードは思う。
情報面で圧倒的な差があるなら、嘘をついたもの勝ちの状況になるのは必然だ。しかもそれを疑い出すと、本当に死んだ人間についても誤った判断を下す。仲間の死を伝えられて騙されていると思ったり、ゲームに乗って死んだ人間が本当に死んだのかと不安になったり、少し考えただけでも悪用の仕方が出てくる。そして嘘をつくことにメリットがあるからこそ、全く本当の事だけ話しても構わない。魔法の面から言えばルールに関しては本当の事を言って主催者と参加者でルール『制約』を共有することにもメリットはある。
(つまりは、どちらの場合も考えて動くしかないな。わたしならバレようがないように嘘をつく。魔法の線もすてがたいが、手がかりが少なすぎる……)
悩んだ末にそう結論を出し、商店で拾った武器を試し撃ちしつつ他の参加者を探していたところで見つけたのがアキラたちだった。正しくはヌガンの銃声に引き寄せられて発見した夢羽の血痕を追ったのだが、出血量から致命傷だとはすぐにわかり、それでも家の中に人がいるようなので殺すこととした。出血している人間を殺したのか助けたのかはわからないが、あの痕跡を残しておいて場所を変えない危機感のなさ、理由はわからないが生かしておくメリットを感じない。主催打倒の足手まといにも無能なだけの殺人者にも用は無いのだ。
「しかし、これも、『銃』なのだろうか? 1発しかうてないようだが、まさかあんな爆発を起こすとは……わたしのわからないものがこれだけ多いとなると、この空間そのものが魔神のつくり出したものなのか……?」
その結果が先のグレランである。
サウードとしてはあくまで家の中から追い出すために驚かせようと撃ったのたが、予想外の威力に驚かざるを得ない。自分の魔法よりも強いものがそこら辺に落ちている武器から生じるとは思わなかったのだ。
せつなさを感じながらも、サウードは民家に押し入り死体撃ちしていく。これも威力がいまいちピンときていないので念入りに死体を損壊していった。またたく間に4人の子供の惨殺死体が生まれる。
息の根を止めて満足していると、煙が強くなり、撤退する。だからサウードは見逃していた。死体に折り重なるように、黄色い小さなぬいぐるみのような生き物がかすかに痙攣しているのを。
サウードとしてはあくまで家の中から追い出すために驚かせようと撃ったのたが、予想外の威力に驚かざるを得ない。自分の魔法よりも強いものがそこら辺に落ちている武器から生じるとは思わなかったのだ。
せつなさを感じながらも、サウードは民家に押し入り死体撃ちしていく。これも威力がいまいちピンときていないので念入りに死体を損壊していった。またたく間に4人の子供の惨殺死体が生まれる。
息の根を止めて満足していると、煙が強くなり、撤退する。だからサウードは見逃していた。死体に折り重なるように、黄色い小さなぬいぐるみのような生き物がかすかに痙攣しているのを。
【0124 『南部』住宅地】
【脱落】
【杉下元@IQ探偵ムー そして、彼女はやってきた。(天才推理 IQ探偵シリーズ)@カラフル文庫】
【アキラ@ふつうの学校 ―稲妻先生颯爽登場!!の巻―(ふつうの学校シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【小笠原牧人@星のかけらPART(1)(星のかけらシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【アキラ@ふつうの学校 ―稲妻先生颯爽登場!!の巻―(ふつうの学校シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【小笠原牧人@星のかけらPART(1)(星のかけらシリーズ)@講談社青い鳥文庫】