その名の通りの大太刀が、乱暴に右腕一本で振るわれる。
それをダッキングのように身を沈ませて躱す。
返す刀に振るわれるのはカウンターの右手。
強かに打ち据えたボディーブローは、しかし一瞬怯ませただけに留まり、また同じように大太刀が振るわれた。
それをダッキングのように身を沈ませて躱す。
返す刀に振るわれるのはカウンターの右手。
強かに打ち据えたボディーブローは、しかし一瞬怯ませただけに留まり、また同じように大太刀が振るわれた。
相楽左之助と大太刀の戦いは既に30分以上に達していた。
人間離れした体躯を持つ大太刀は、その身に宿る筋力以上の力を持って刀を振るう。それをこれも人間離れした筋力を持つ左之助は余裕を持って躱せるようになっている。
元来左之助は戦うに当たって相手の情報を調べ上げておく質だ。それを抜きにしても、長く戦えば自然と相手の癖を見抜くことはできる。ましてや大太刀は精緻な技巧ではなく人外の速度と威力を押し出す剣技、見切ることは容易い。
が、しかし。
人間離れした体躯を持つ大太刀は、その身に宿る筋力以上の力を持って刀を振るう。それをこれも人間離れした筋力を持つ左之助は余裕を持って躱せるようになっている。
元来左之助は戦うに当たって相手の情報を調べ上げておく質だ。それを抜きにしても、長く戦えば自然と相手の癖を見抜くことはできる。ましてや大太刀は精緻な技巧ではなく人外の速度と威力を押し出す剣技、見切ることは容易い。
が、しかし。
(チッ! 速え上に……)
左之助の拳が再び大太刀の腹に当たる。常人ならば腸をぶちまけかねないその拳は、しかし強靭な腹筋に阻まれわずかにめり込むだけだった。
(メチャクチャ硬え! 熊でも殴ってる気分だぜ。)
恐るべきは大太刀の肉体。人間では到達不可能な体格は頑強な骨格によるもので、それを分厚い肉が覆っている。通常の生物とは異なるとはいえ、打撃で有効打を与えることは極めて困難だ。
あるいは、左之助が原作からの出典ならば話は違ったであろう。常人離れした数々の猛者と戦った彼ならば、二重の極みを身に着けた彼であれば。
志々雄真実との戦いを通して本来であれば身につけていたであろう二重の極みは、しかし彼は体得していない。安慈との一戦で彼の動きからその絶技の一端を垣間見ているが、まだ十全に使えるわけではなく、最初の一発だけのまぐれでしか使えていない。
あるいは、左之助が原作からの出典ならば話は違ったであろう。常人離れした数々の猛者と戦った彼ならば、二重の極みを身に着けた彼であれば。
志々雄真実との戦いを通して本来であれば身につけていたであろう二重の極みは、しかし彼は体得していない。安慈との一戦で彼の動きからその絶技の一端を垣間見ているが、まだ十全に使えるわけではなく、最初の一発だけのまぐれでしか使えていない。
(なんとなく掴めてきてはいる。あの時の感覚を思い出せ。)
不幸中の幸いか、大太刀のタフさのおかげで練習の機会を得られている。戦いを通じて一つ一つものになっていくのがわかる。だがしかし、大太刀はただの案山子ではない。左之助と言えども即死しかねない斬撃を疲れ知らずに放ち簡単には寄せ付けない。風を切って放たれる連続斬撃の一太刀を躱しきれず、左之助の胸を皮一枚切り裂いた。
「おっと! ヤキが回ったな。こりゃそろそろ仕留めねえとな。」
さすがの左之助も息が上がっている。太刀筋を見切れているので躱すのは難しくなかったが疲れが足にもきはじめていた。本人も信じ難いことに体力勝負では分が悪いらしい。
しかしタフという言葉は左之助の為にある。大太刀が人外の体力ならば左之助も超人の体力。無自覚に遅くなっていた足が何段階も加速した。
しかしタフという言葉は左之助の為にある。大太刀が人外の体力ならば左之助も超人の体力。無自覚に遅くなっていた足が何段階も加速した。
(聞きてえ事もあったし手加減してたが、全力で行っても死ななそうだな。なら…。)
「本気で殺すぜ!」
「!?」
「本気で殺すぜ!」
「!?」
低空タックルのように大太刀を躱す。普通ならリーチの都合足を取るまではできない。だが左之助は違う。無茶な体勢から加速すると、一転身体を飛び上がらせた。
「■■■■■■!!」
(かかったな!)
(かかったな!)
声にならぬ声を発する大太刀の振り戻しに、左之助は殴られながらほくそ笑んだ。回転を乗せた裏拳に身体が吹き飛ぶ。が、空中で体勢を整えて脚で踏み止まる。そこはちょうど、大太刀の真後ろ。
「歯ぁ食いしばれよ。」
がっしりと左之助が大太刀の腰をホールドする。体格差から普通に立ったままでも腰に手が回る。太い胴は掴みきれないが、装飾なのか身体に巻きついている骨やらなんやらで掴むところはある。
そして大太刀の巨体が宙を待った。
そして大太刀の巨体が宙を待った。
「おぉおりゃああぁぁっっ!!」
「オオオオオオオオオオオ!!」
「オオオオオオオオオオオ!!」
左之助は後方へと跳んだ。身体が弓なりになり、大太刀の頭部が真後ろに地面へと突っ込む。柔術の裏投げに着想を得たそれは後世の人間ならこう言うだろう。『幕末バックドロップ』と。
雄叫びを上げながら、大太刀は首から地面に落ちる。強い衝撃で首輪が作動する。毒が効くかわからないので大太刀用に用意された爆薬が起爆する。
雄叫びを上げながら、大太刀は首から地面に落ちる。強い衝撃で首輪が作動する。毒が効くかわからないので大太刀用に用意された爆薬が起爆する。
「オオアアッ!?」
「ぐああぁっ!?」
「ぐああぁっ!?」
大太刀の首が吹き飛ぶと同時に、左之助も爆風で吹き飛ばされた。
30分一本勝負デスマッチ
勝者 相楽左之助(幕末バックドロップ)
勝者 相楽左之助(幕末バックドロップ)
「てことがあったんだよ。」
(どういうことだよ。)
(どういうことだよ。)
竜宮レナはアスファルトの上で伸びていた左之助の話を聞きながら、「また薬中が出てきた」と思っていた。
緋村剣心と近藤勲と共に鱗滝左近次を見つけて、彼女が選んだのは鱗滝と剣心に着いていくことだった。理由は近藤から離れたかったからだ。
ぶっちゃけた話、彼女は一人になりたかった。いい加減部活の仲間を探したい。しかし3人ともそういうところはちゃんとした大人っぽそうなので単独行動させてくれなさそうなのはなんとなくわかっていた。レナは鱗滝含めてみんなシャブやってると思っているのだが、話を聞くと3人とも口ではマトモそうな方針を、というか殺し合いなんてする気はないし参加者は保護したいという当たり前の話をしていたのだ。鱗滝に至っては、あのカエルのような化け物に襲われている少年を助けて、しかも手当のために病院まで探しているらしい。やっていることはものすごく真っ当だろう。
その姿が天狗の面を被って血の付いた刀を持ち歩く姿でなければ。
緋村剣心と近藤勲と共に鱗滝左近次を見つけて、彼女が選んだのは鱗滝と剣心に着いていくことだった。理由は近藤から離れたかったからだ。
ぶっちゃけた話、彼女は一人になりたかった。いい加減部活の仲間を探したい。しかし3人ともそういうところはちゃんとした大人っぽそうなので単独行動させてくれなさそうなのはなんとなくわかっていた。レナは鱗滝含めてみんなシャブやってると思っているのだが、話を聞くと3人とも口ではマトモそうな方針を、というか殺し合いなんてする気はないし参加者は保護したいという当たり前の話をしていたのだ。鱗滝に至っては、あのカエルのような化け物に襲われている少年を助けて、しかも手当のために病院まで探しているらしい。やっていることはものすごく真っ当だろう。
その姿が天狗の面を被って血の付いた刀を持ち歩く姿でなければ。
(あのカエルが化け物なのかもしれないけど、それを刀で切り殺すなんて、こいつ強さもまともじゃない。)
重ねて言うが、レナは参加者全員に覚せい剤を使用されていると思っている。でなければ赤い霧や赤い空の理由がつかないからだ。それにカブトムシを取るためにふんどし1丁で全身にハチミツを塗りたくった警察官だったり、ござる口調の自称明治の流浪人だったり、天狗の面に法被の大正剣士だったりなど、変な薬でもやってなければ頭のおかしいおじさん達でしかない。それはレナにとって無意識だが避けたい事態だ。参加者の共通点が精神を病んでいるということは、自分も「そちら側」であるためだ。
(違う、そうじゃない、コイツらはクスリやってるだけだ。この首のかゆさも、首輪からクスリが入ってきてるからだ。)
レナは首の痒さを感じながら思う。自分の頭がおかしいと自覚すること、そして周囲からそう思われることは、時にとてつもない恐怖になる。レナはその辛さを知っている。そして親しかった友人を自分から離れていってしまうことや傷つけてしまうことは、更に恐ろしいものだ。だから自分がそうだとは認めたくない。殺し合いの場でそんなことになってるなど考えたくもない。たとえ殺し合いが狂気による妄想だとしても、それを受け入れることは、殺し合いが何か超常的な存在によって現実に起こされたものであることよりも、受け入れ難いのだ。
「しかし妙だな。死体がないとは。まさか生きていれば手負いでも気絶した相手にとどめを刺しそうなものでござるが。」
「ああ、それも気になってんだが、あの爆発なら生きていられるわけねえと思うぜ。てかよ、首が吹っ飛ぶところ見た気がすんだよなぁ。落ちる直前だったけど見間違えってわけじゃねえはずなんだが。」
「おそらく、あやつも鬼だったのだろう。この際だ、話しておかねばなるまい……」
「ああ、それも気になってんだが、あの爆発なら生きていられるわけねえと思うぜ。てかよ、首が吹っ飛ぶところ見た気がすんだよなぁ。落ちる直前だったけど見間違えってわけじゃねえはずなんだが。」
「おそらく、あやつも鬼だったのだろう。この際だ、話しておかねばなるまい……」
レナは剣心達の会話を聞きながら首をかく。首輪で上手くかけずに苛立ちを募らせながら、どうこの3人を撒くかを考えていた。
参加者全員に麻薬が使われているという前提から、当然に左之助もキメてると思っている。謎の巨人と戦ったとかその巨人と鱗滝も戦ったとか、もう精神病院で聞いたような会話ばかりでついていけない。しかも人を喰う鬼がどうたらとか言い出した。幻覚や妄想をオヤシロ様に結び付けないでほしい。
参加者全員に麻薬が使われているという前提から、当然に左之助もキメてると思っている。謎の巨人と戦ったとかその巨人と鱗滝も戦ったとか、もう精神病院で聞いたような会話ばかりでついていけない。しかも人を喰う鬼がどうたらとか言い出した。幻覚や妄想をオヤシロ様に結び付けないでほしい。
(間違えた、かな?)
近藤から離れるために鱗滝に病院を見かけたかもしれないなどと言ってしまったのだが、そのことを後悔し始める。発言自体は正直に言ったものだが、混濁した記憶からのものなので自分でももちろん自信はない。なんかブザーが鳴ってる病院の近くに行ったような行ってないような気がしないでもない。そしてそのブザーの音を頼りに走ったら、道の真ん中で気絶した左之助。何がなんだかよくわからない。
「ところで左之、この辺りで病院を見かけなかったか?」
「病院? いやわかんねえな。どうした?」
「怪我人の治療をせなばならぬでござるよ。レナ殿が見かけたらしいのだが。」
「……うん? お前さんどっかで……まあいいや、探してんだろ? 俺も手当てしてえしな。じゃあ嬢ちゃん、よろしくな。」
(離れたいのに……!)
「病院? いやわかんねえな。どうした?」
「怪我人の治療をせなばならぬでござるよ。レナ殿が見かけたらしいのだが。」
「……うん? お前さんどっかで……まあいいや、探してんだろ? 俺も手当てしてえしな。じゃあ嬢ちゃん、よろしくな。」
(離れたいのに……!)
馴れ馴れしく話しかけてくる左之助に愛想笑いしながら内心でレナは更に苛立つ。
こんな連中には間違っても部活のことは話せない。どんなことをしでかすかわかったものではない。
ジワリとまた首が痒くなった気がした。
こんな連中には間違っても部活のことは話せない。どんなことをしでかすかわかったものではない。
ジワリとまた首が痒くなった気がした。
「みんな今頃どうしてるのかなぁ。向こう楽しそうだなぁ。」
同じ頃、1人近藤は日向冬樹の元へ向かっていた。
治療を待つ彼と一緒いるのは有星アキノリただ1人。常人よりは戦えるとはいえ怪我人を抱えて危険人物に襲われればひとたまりもない。というわけで近藤が護衛を買って出されていた。
これまでの捜索で土地勘が付いてきた鱗滝と病院を見かけたレナは病院探しに行くしかない。人では多い方がいいので剣心も捜索チームだ。というわけで余っている近藤が護衛に向かうこととなる。もちろんぶっちゃけ剣心と役割は逆でもいい。だが剣心は近藤に護衛を頼んだ。レナがバリバリに拒絶していたからだ。
治療を待つ彼と一緒いるのは有星アキノリただ1人。常人よりは戦えるとはいえ怪我人を抱えて危険人物に襲われればひとたまりもない。というわけで近藤が護衛を買って出されていた。
これまでの捜索で土地勘が付いてきた鱗滝と病院を見かけたレナは病院探しに行くしかない。人では多い方がいいので剣心も捜索チームだ。というわけで余っている近藤が護衛に向かうこととなる。もちろんぶっちゃけ剣心と役割は逆でもいい。だが剣心は近藤に護衛を頼んだ。レナがバリバリに拒絶していたからだ。
「ダメかよぉ、ふんどし1丁で全身にハチミツ塗ってカブトムシ採ったらダメかよぉ!」
ダメでござろうよとは剣心の心の声だ。まぁあの第一印象ならばああいう態度にもなろうとわかる。実際は近藤がヤクをやっているとまで思われているのだが。剣心も明智光秀に襲われている状況でなければ近藤にツッコミの一つも入れていた。それすらもできない状況だったし、自分に付いてくる身体さばきから幕末を生き抜いた猛者だと見抜いてスルーしたのであって、出会い方によってはなんなら逆刃刀でちょっと飛天御剣ってたかもしれない。
「にしても剣さん、コスプレのクオリティ高えなあ。本当に抜刀斎みたいだもん。やっぱ実写化するならイケメン俳優とか歌舞伎役者とかにやってもらいたいよな。」
一方の近藤も実は剣心にツッコミを入れるのをスルーしていた。最初はるろうに剣心のコスプレをした男が明智光秀のコスプレをした男と戦っていると思ったのだが、どうやら光秀コスプレおじさんのほうが重症っぽそうだったので佐藤健っぽい剣心は流していた。しかもその後に天人か宇宙生物のような謎の死体(ポケモン)に可憐な女学生だ。廃刀令無視のコスプレイヤーなどどうでも良くなってくる。
「今は急ぐしかないか。もしかしたらトシ達も巻き込まれてるかもしれないしな。」
自分の勘違いに気づくことなく近藤は冬樹の元へと急ぐ。彼が真実に気づく時は、果たして来るのか?
【0147 市街地】
【相楽左之助@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
●大目標
殺し合いをぶっ壊す。
●中目標
仲間を探す。
●小目標
病院を探す。
●大目標
殺し合いをぶっ壊す。
●中目標
仲間を探す。
●小目標
病院を探す。
【竜宮レナ@双葉社ジュニア文庫 ひぐらしのなく頃に 第一話 鬼隠し編 上(ひぐらしのなく頃にシリーズ)@双葉社ジュニア文庫】
●大目標
覚せい剤の幻覚をどうにかしたい。
●中目標
単独行動して部活の仲間を探したい。
●小目標
また変態だ……
●大目標
覚せい剤の幻覚をどうにかしたい。
●中目標
単独行動して部活の仲間を探したい。
●小目標
また変態だ……
【緋村剣心@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
●大目標
一つでも多くの命を救う。
●中目標
レナを保護する。
●小目標
病院を探す。
●大目標
一つでも多くの命を救う。
●中目標
レナを保護する。
●小目標
病院を探す。
【鱗滝左近次@鬼滅の刃~炭治郎と禰豆子、運命の始まり編~(鬼滅の刃シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いを止める。
●中目標
冬樹の治療を行う、戦力を集め、病院を探す。
●小目標
大太刀を倒したか……しかし死体がないとは、鬼だったのか?
【目標】
●大目標
殺し合いを止める。
●中目標
冬樹の治療を行う、戦力を集め、病院を探す。
●小目標
大太刀を倒したか……しかし死体がないとは、鬼だったのか?
【近藤勲@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
●大目標
殺し合いに乗った連中を取り締まる。
●中目標
冬樹の元へと向かう。
●小目標
レナさん変態を見る目でオレを見てなかったか?
●大目標
殺し合いに乗った連中を取り締まる。
●中目標
冬樹の元へと向かう。
●小目標
レナさん変態を見る目でオレを見てなかったか?
【脱落】
【大太刀@映画刀剣乱舞@小学館ジュニア文庫】
※死体は消滅しました。
※死体は消滅しました。