「チックショウ血が止まらねえ! 肩どころか鎖骨までいってやがる!」
「近藤さん! 水とお湯持ってきたよ!」
「でかした! ほら、飲め!」
「ウゥゥ……ハァ……ハァ……はい……ごぶっ!」
「よし良いぞ、少しずつだ。アキノリ! もっと高く上げるぞ!」
「わかった、結び直す!」
「近藤さん! 水とお湯持ってきたよ!」
「でかした! ほら、飲め!」
「ウゥゥ……ハァ……ハァ……はい……ごぶっ!」
「よし良いぞ、少しずつだ。アキノリ! もっと高く上げるぞ!」
「わかった、結び直す!」
近藤勲の白いバスローブは血で赤く染まっていた。
鱗滝左近次に任された日向冬樹の手当と護衛。無防備な子供たちを守らんと駆けつけた先にいたのは、必死にタオルを押し当てる有星アキノリと、ベッドに寝かされ脂汗を流す日向冬樹であった。
状況は聞いていたよりはマシだった。そう思ったのはアキノリがこれまでの間鱗滝の指示通りに止血を試みていたからだと、交代してすぐに気づく。刀を握っているものだからわかる。これは医者がいなければ命に関わる傷だと。
切れ味の鋭さは明らかに刀傷だった。おそらく完全に左肩の骨が切断され、鎖骨にまで切り口が達している。それだけ深手ということは、肩の筋肉を大きく切断されているということ。必然出血は大量になる。それを未だ意識が保てているほどに止血できたのは、鱗滝の的確な応急処置と、それを引き継いだアキノリの献身によるものだろう。が、それは苦痛を長引かせることにしかならないことを近藤は理解していた。
たしかに、この傷は致命傷ではない。適切に輸血と昇圧剤の投与を行えば、医者の腕次第では元のように体を動かせるだろう。だがそれを望めないことは他ならぬ近藤がよく理解していた。血も薬も医者も何もかもない。彼らにできることは、ひたすらに傷口抑えつつ、出血を遅らせることだけだ。
鱗滝左近次に任された日向冬樹の手当と護衛。無防備な子供たちを守らんと駆けつけた先にいたのは、必死にタオルを押し当てる有星アキノリと、ベッドに寝かされ脂汗を流す日向冬樹であった。
状況は聞いていたよりはマシだった。そう思ったのはアキノリがこれまでの間鱗滝の指示通りに止血を試みていたからだと、交代してすぐに気づく。刀を握っているものだからわかる。これは医者がいなければ命に関わる傷だと。
切れ味の鋭さは明らかに刀傷だった。おそらく完全に左肩の骨が切断され、鎖骨にまで切り口が達している。それだけ深手ということは、肩の筋肉を大きく切断されているということ。必然出血は大量になる。それを未だ意識が保てているほどに止血できたのは、鱗滝の的確な応急処置と、それを引き継いだアキノリの献身によるものだろう。が、それは苦痛を長引かせることにしかならないことを近藤は理解していた。
たしかに、この傷は致命傷ではない。適切に輸血と昇圧剤の投与を行えば、医者の腕次第では元のように体を動かせるだろう。だがそれを望めないことは他ならぬ近藤がよく理解していた。血も薬も医者も何もかもない。彼らにできることは、ひたすらに傷口抑えつつ、出血を遅らせることだけだ。
「代わるぞ! ここを抑えててくれ、俺がほどく。」
傷口が肩というのも問題だった。大して学のない近藤であっても、出血を少なくするために心臓より高い位置になるようにするということは知っている。それができない肩の傷の恐ろしさは、剣を扱う近藤なら痛感している。
そして問題のもう一つはアキノリの疲弊だ。これまで1時間拙いながらも全力で手当したのだろう。全身汗だくで手が震えている。今も冬樹の腕を持ち上げているタオルをほどけぬほどだ。
そして問題のもう一つはアキノリの疲弊だ。これまで1時間拙いながらも全力で手当したのだろう。全身汗だくで手が震えている。今も冬樹の腕を持ち上げているタオルをほどけぬほどだ。
「クソッ、こうなったらしかたねえ。アキノリ! これ口に押し込んでくれ! 舌噛まないようにな!」
「えぇ!? な、何する気──」
「こうするんだよぉぉ!!」
「えぇ!? な、何する気──」
「こうするんだよぉぉ!!」
アキノリが言われるがまま喘ぐ冬樹の口にタオルを押し込み、口を閉じれなくしたのを見ると、近藤は部屋にあるタンスへと駆けた。開け放たれたそれに下がるベルトを取り出すと駆け戻る。そして思いっきり冬樹の傷口へ回し、締め上げた。
「〜〜〜〜〜ッッッ!」
カッと冬樹の目が開く。ハァハァと開いていた口は首に筋が浮かぶほどに噛み締められる。それまでだらりと力無く横たわっていた手足のうち3つがめちゃくちゃに動かされた。そして声のない絶叫が響き、失神した。
近藤のやったのは、現代で言うところの止血帯止血法だ。プロがやるものに比べて明らかに手荒いが、それでもアキノリがこれまでやっていたような直接圧迫止血法に比べて出血を抑えられる。
ただし、本来は専門的な知識があることが前提の処置だ。しかも30分という時間制限がある。それ以上血流を止め続ければ重篤な問題を招き、1時間もやり続ければ再起不能は免れない。またこの止血法は手足に対して行うものだ。肩で止めてしまった場合、どこに血が行かなくなるかは近藤にもわからない。
それでも、やるしかないと判断せざるを得ないほどに冬樹には死相が出ていた。
近藤のやったのは、現代で言うところの止血帯止血法だ。プロがやるものに比べて明らかに手荒いが、それでもアキノリがこれまでやっていたような直接圧迫止血法に比べて出血を抑えられる。
ただし、本来は専門的な知識があることが前提の処置だ。しかも30分という時間制限がある。それ以上血流を止め続ければ重篤な問題を招き、1時間もやり続ければ再起不能は免れない。またこの止血法は手足に対して行うものだ。肩で止めてしまった場合、どこに血が行かなくなるかは近藤にもわからない。
それでも、やるしかないと判断せざるを得ないほどに冬樹には死相が出ていた。
「気絶しちゃった!」
「こうでもしないと血が足りない。鱗滝さん達が来るまで持ってくれよ。あ、タオルはもう外していいぞ。」
「う、うん……」
「こうでもしないと血が足りない。鱗滝さん達が来るまで持ってくれよ。あ、タオルはもう外していいぞ。」
「う、うん……」
凄惨な悲鳴を上げて意識を失った冬樹の口から、恐る恐るタオルをどかす。アキノリにとっても、さんざんに疲れきったところに、同年代の人間の惨状は心身に堪えた。
近藤が険しい顔をしながらも冬樹から離れ汗を拭うのを見て、膝から崩れるように椅子にへたり込んだ。やれるだけのことはやったのを察して、緊張の糸が切れた。同じように汗を拭おうとして、近藤の顔に血の帯が引かれていくのを見て、自分の手を見下ろす。裾どころか肘まで血に染まっていた。
近藤が険しい顔をしながらも冬樹から離れ汗を拭うのを見て、膝から崩れるように椅子にへたり込んだ。やれるだけのことはやったのを察して、緊張の糸が切れた。同じように汗を拭おうとして、近藤の顔に血の帯が引かれていくのを見て、自分の手を見下ろす。裾どころか肘まで血に染まっていた。
「近藤さん、血。」
「ん? うおっ、こりゃいかん。ちょっと顔洗ってくる。」
「ん? うおっ、こりゃいかん。ちょっと顔洗ってくる。」
ザバザバと音が聞こえて、喉の渇きに気づいた。そういえば痛いほどにひりついている。
「おう、あんがとさん。お前さんも少し休め。」
「……でも。」
「お前が頑張ってなきゃ、俺が来るまでコイツは持たなかったさ。さあ、行った行った、休むのも仕事のうちだ。」
「……でも。」
「お前が頑張ってなきゃ、俺が来るまでコイツは持たなかったさ。さあ、行った行った、休むのも仕事のうちだ。」
ニカッと歯を見せて、疲れを感じさせないように努めている笑顔を見て、アキノリは無言で会釈した。
洗面所に行く。血塗れの手で蛇口をひねることを一瞬ためらい、既に近藤の手形がついているのを見て構わずひねろうとして、手が滑る。握力が抜けている。やむなく両手を使い、苦労しながらもなんとか水を出せた。
流れる水は透き通るように透明だ。血の赤さとはまるで違うそれにどこかホッとする。手を入れると、人肌とは違う冷たさに思わず手を引っ込めた。
こびりついた血が流れ落ちていく。排水口へと引きずり込まれていく赤色をボーっとアキノリは眺めた。同じ液体でもこんなに違うのかと、感触を楽しむのは頭が回っていないからか、それとも冬樹のことを一時でも頭から追い出したいからか。
洗面所に行く。血塗れの手で蛇口をひねることを一瞬ためらい、既に近藤の手形がついているのを見て構わずひねろうとして、手が滑る。握力が抜けている。やむなく両手を使い、苦労しながらもなんとか水を出せた。
流れる水は透き通るように透明だ。血の赤さとはまるで違うそれにどこかホッとする。手を入れると、人肌とは違う冷たさに思わず手を引っ込めた。
こびりついた血が流れ落ちていく。排水口へと引きずり込まれていく赤色をボーっとアキノリは眺めた。同じ液体でもこんなに違うのかと、感触を楽しむのは頭が回っていないからか、それとも冬樹のことを一時でも頭から追い出したいからか。
「……ん、なんだ?」
ふと視線を上げる。視界の隅を何かが動いた気がしたのだ。虫か何かだと思ったが、そういえばここでは動物を何も見ていないと思い出す。洗面所から見える窓には、動きのない景色が広がっていた。
一度近藤の方を振り返る。険しい顔で腕組みしながら、横たわる冬樹を見つめていた。
一度近藤の方を振り返る。険しい顔で腕組みしながら、横たわる冬樹を見つめていた。
(悪いかな。)
声をかけるのがはばかられて、アキノリはそっと勝手口から出た。血の臭いがしない空間に出て、深呼吸ともため息ともつかない深い息をする。赤い霧という不気味な空間であるにもかかわらず、肺に入る空気が悪臭から開放されて、どっと疲れを感じた。今までそれどころではなく麻痺していたのだろう。
そのまま大きく伸びをしてみる。背中や腰からしてはいけないバキバキという音が鳴り、そのまま伸ばし続けるとつりそうな感覚までしてくる。そうやってストレッチをすると、腕や肩だけでなく全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
そのまま大きく伸びをしてみる。背中や腰からしてはいけないバキバキという音が鳴り、そのまま伸ばし続けるとつりそうな感覚までしてくる。そうやってストレッチをすると、腕や肩だけでなく全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
「──あら、こんなところに……ねえ、累って男の子を見なかった? 私と似たような白い姿をしているんだけど。」
「うおっ!? ビックリした……いや、たぶん知らない……」
「うおっ!? ビックリした……いや、たぶん知らない……」
自分一人しかいないと思っていた所に突然聞こえてきた声に、アキノリは素っ頓狂な声を上げながら答えた。どこから聞こえてきたんだと首を振るが見当たらない。
ザっ、と後ろに気配を感じて慌てて振り向くと、真っ白な和服の少女が立ち上がるところだった。
飛び降りたのか? 屋根から? 何でそんなところにいたの? かわいいけど──
ザっ、と後ろに気配を感じて慌てて振り向くと、真っ白な和服の少女が立ち上がるところだった。
飛び降りたのか? 屋根から? 何でそんなところにいたの? かわいいけど──
(なんか、変だ、ただの人間じゃない。)
「たぶん?」
「ああ、君みたいな格好の男子には会ってないけど──」
「ねえねえ、君たち!」
「うおっ!?」
「たぶん?」
「ああ、君みたいな格好の男子には会ってないけど──」
「ねえねえ、君たち!」
「うおっ!?」
目の前の少女に何か不穏な気配を感じつつ受け答えたところに、また後方から声がかかった。
思わず振り向くと、今度は塀越しの公道から、またも白い髪の少女が顔を覗かせている。なんでブリーチしてる美少女ばっか声かけてくるんだと思ったが、今はそれどころではない。
思わず振り向くと、今度は塀越しの公道から、またも白い髪の少女が顔を覗かせている。なんでブリーチしてる美少女ばっか声かけてくるんだと思ったが、今はそれどころではない。
(まずいな……もしかして、人間じゃない、のか?)
アキノリの頭にあるのは、最初に声をかけてきた和服の少女だ。この気配、人間とも妖怪ともつかない。いつでも妖怪ウォッチを使えるようにと気を配る彼は油断無く振り返る。よく考えれば屋根から軽々飛び降りれるなど身のこなしもとんでもない。
後ろからまたザっと音がする。今日はよく美少女に後ろに飛び降りられるが、そんなことを気にしている余裕は無い。和服の少女が危険人物であることを考えて守らねばと思い、その一挙手一投足を警戒する。
後ろからまたザっと音がする。今日はよく美少女に後ろに飛び降りられるが、そんなことを気にしている余裕は無い。和服の少女が危険人物であることを考えて守らねばと思い、その一挙手一投足を警戒する。
(──なんだ?)
突然、首筋に熱を感じた。
和服の少女が驚いたように目を見開いている。何が起こった、と考えるより先に襲ってきたのは、猛烈な痛み。
和服の少女が驚いたように目を見開いている。何が起こった、と考えるより先に襲ってきたのは、猛烈な痛み。
「〜〜〜っ、〜!? 〜〜!!」
反射的に朱雀を呼ぼうとして、声が出ない。痛みに叫ぶからではない。本当に、機能として声が出ないのだ。
再び感じるのは、熱と痛み。そして視界の隅に吹き上がっていくのは赤色。それが何かはもう知っている。
再び感じるのは、熱と痛み。そして視界の隅に吹き上がっていくのは赤色。それが何かはもう知っている。
(俺の……血……)
アキノリの眼球がぐるりと上を向き、膝から正座するように崩れた。
「あれェ? バトル・ロワイアルは"常在戦場"でしょ? 油断しちゃダメダメぇ。」
素早く距離を詰める。
気道を切りつけ発声と呼吸を不可能にする。
頸動脈を切りつけ脳へ血が回らないようにする。
瞬く間に行った三動作で人一人を殺してみせたピース・ホワイトには、さすがの蜘蛛の鬼(姉)も驚愕した。
冬樹の絶叫を聞きつけてここを訪れ、アキノリから話を聞き出してから殺そうと思ったのだが、どうやらこの殺し合いにはろくな女が参加していないらしい。銃や爆弾で武装していた怪力の少女の次は、殺しの手際の良い少女とは。
気道を切りつけ発声と呼吸を不可能にする。
頸動脈を切りつけ脳へ血が回らないようにする。
瞬く間に行った三動作で人一人を殺してみせたピース・ホワイトには、さすがの蜘蛛の鬼(姉)も驚愕した。
冬樹の絶叫を聞きつけてここを訪れ、アキノリから話を聞き出してから殺そうと思ったのだが、どうやらこの殺し合いにはろくな女が参加していないらしい。銃や爆弾で武装していた怪力の少女の次は、殺しの手際の良い少女とは。
「この時計はもらってくね。いやー、回復技使えないように気をつけてたんだけど、あれれ、違ったかな?」
「鬼狩り……ではなさそうね。何者?」
「うーん……同業者?」
「鬼狩り……ではなさそうね。何者?」
「うーん……同業者?」
要領を得ない独り言を放つ少女に誰何するも、返ってきたのはやはり意味不明な返答。どう見ても鬼ではないしただ舐めたことを言っているだけだろうと、即座に抹殺しようとする。
「そう、なら……」
「あ、ちょっと待った、手を組まない? ボクけっこう強いでしょ? それにほら、せっかく静かに殺したんだしさ。」
「そこはありがとう、でも……お断りねっ。」
「あ、ちょっと待った、手を組まない? ボクけっこう強いでしょ? それにほら、せっかく静かに殺したんだしさ。」
「そこはありがとう、でも……お断りねっ。」
相も変わらず軽い調子に付き合う気は無い。一気に距離を詰める。
「せっかちだなぁ」と言いながら少女は、アキノリを殺した刃物──脇差を投擲した。重量があり取り回しの悪い刃物を正確に顔目掛けて投げられたのは驚きに値する。が、それはあくまで人間レベルでの話。蜘蛛の鬼(姉)は首を傾けるだけで躱すと、速度を落とさず距離を詰める。彼女がより驚いたのは、少女の行動だった。
背中に背負った日本刀を抜き放つと首を狙って振るってきた。一瞬鬼殺隊かと思うのは無理もないことだ。だがしかし。
「せっかちだなぁ」と言いながら少女は、アキノリを殺した刃物──脇差を投擲した。重量があり取り回しの悪い刃物を正確に顔目掛けて投げられたのは驚きに値する。が、それはあくまで人間レベルでの話。蜘蛛の鬼(姉)は首を傾けるだけで躱すと、速度を落とさず距離を詰める。彼女がより驚いたのは、少女の行動だった。
背中に背負った日本刀を抜き放つと首を狙って振るってきた。一瞬鬼殺隊かと思うのは無理もないことだ。だがしかし。
「ぬるい。」
「げっ。」
「げっ。」
全く洗練されていない。たしかに常人よりは強いのだろう。片手で掴んだ刃の衝撃は中々のものだ。
しかし鬼殺隊と比べるべくもない。これならそこいらの鬼の相手がせいぜいだ。十二鬼月より力を賜っている彼女には通用しない。先に戦った星型の痣を持つ少女よりはなってはいるが、力自体も人間の範囲内だ。
しかし鬼殺隊と比べるべくもない。これならそこいらの鬼の相手がせいぜいだ。十二鬼月より力を賜っている彼女には通用しない。先に戦った星型の痣を持つ少女よりはなってはいるが、力自体も人間の範囲内だ。
「じゃあね。」
「心中する気?」
「心中する気?」
もう片手で括り殺そうとして、顔の前に突き出された手に動きを止めた。ピースの手にあったのは、手榴弾。それは大正を生きる彼女にも、形は違えどなんとなく理解できた。
理解して鼻で笑う。そんなものが効くかと。鬼は頸を落とされなければ死なない。そう言外に嘲り、しかしピースはその手榴弾を彼女のに首輪へと近づけた。
理解して鼻で笑う。そんなものが効くかと。鬼は頸を落とされなければ死なない。そう言外に嘲り、しかしピースはその手榴弾を彼女のに首輪へと近づけた。
「無駄なあがきね。」
「でも……首輪を壊したら、どうかな?」
「そんなこと……」
「でも……首輪を壊したら、どうかな?」
「そんなこと……」
何になる、そう言おうとして、蜘蛛の鬼(姉)の言葉が無くなった。
たしかに、鬼は頸を落とされなければ死にはしない。そしてそれは日輪刀などの限られた物による。ミモザにミラクル・オーを顔面に浴びせられても死ななかったのがそれを証明している。
では、この首輪はどうなのだろう。もしかして日輪刀と同じような、そんな何かがあるのでは、そう考える。
累の『仮装』の中でも一際生き汚い彼女は、その可能性を無視できない。
たしかに、鬼は頸を落とされなければ死にはしない。そしてそれは日輪刀などの限られた物による。ミモザにミラクル・オーを顔面に浴びせられても死ななかったのがそれを証明している。
では、この首輪はどうなのだろう。もしかして日輪刀と同じような、そんな何かがあるのでは、そう考える。
累の『仮装』の中でも一際生き汚い彼女は、その可能性を無視できない。
「ね、ボク強いでしょ? そんなボクとキミが組めばチョー強いと思わない?」
「……なんでそんなに馴れ馴れしいのよ。だいたい一人で戦えばいいでしょ。」
「えーだって一人じゃ寝てる時とかに襲われたら大変じゃん。それに今みたいにキミを囮にしてアンブッシュできるし?」
「囮役がほしいだけでしょ?」
「……なんでそんなに馴れ馴れしいのよ。だいたい一人で戦えばいいでしょ。」
「えーだって一人じゃ寝てる時とかに襲われたら大変じゃん。それに今みたいにキミを囮にしてアンブッシュできるし?」
「囮役がほしいだけでしょ?」
「まあでも」と続ける。悪い提案では無い。眠らない鬼である彼女は、どこか少しでも怪我をすればろくに動けなくなる人間に出し抜かれることなどまずない。圧倒的に有利な立場ではある。
「考えてあげるわ、まずは中の人間を殺すわよ」と言うと、「そうこなくっちゃ」と返され、さてどう使い潰してやろうかと頭を巡らせた。
「考えてあげるわ、まずは中の人間を殺すわよ」と言うと、「そうこなくっちゃ」と返され、さてどう使い潰してやろうかと頭を巡らせた。
(いや〜あっぶなかったぁ! 有星アキノリは特記戦力の一人じゃん! それをここで落とせたのは大きいよね。)
蜘蛛の鬼(姉)との共闘が成立してピース・ホワイトが考えていたのは自分の幸運だった。
ピースもまた冬樹の悲鳴を聞いて移動してきたのだが、彼女の狙いはアキノリ一人であった。
ジョーカーとして参加者の情報を事前に頭に入れてある彼女は、何人か自分の手に負えない参加者を把握している。その筆頭がアキノリたち妖怪ウォッチを持つ者だ。
物理的になんとかなる存在ならば、銃火器に困らないこの会場なら殺せる。しかしピースには見えない妖怪が相手ではさすがにどうにもならない。なにより妖怪には首輪が無い。首輪さえ壊してしまえば参加者は誰でも死ぬが、それができない妖怪相手では文字通り手も足も出ないのだ。
ピースもまた冬樹の悲鳴を聞いて移動してきたのだが、彼女の狙いはアキノリ一人であった。
ジョーカーとして参加者の情報を事前に頭に入れてある彼女は、何人か自分の手に負えない参加者を把握している。その筆頭がアキノリたち妖怪ウォッチを持つ者だ。
物理的になんとかなる存在ならば、銃火器に困らないこの会場なら殺せる。しかしピースには見えない妖怪が相手ではさすがにどうにもならない。なにより妖怪には首輪が無い。首輪さえ壊してしまえば参加者は誰でも死ぬが、それができない妖怪相手では文字通り手も足も出ないのだ。
(それに運もいいね、鬼と手を組めた。ぶっちゃけここで殺し合いになったらゴリラに押し付けるしかなかったよ。)
後は蜘蛛の鬼(姉)を近藤にぶつけるだけだ。これで厄介な対主催をまた一人消せる。返り討ちに合うようだったら土下座してでも寝返れば、甘い近藤なら殺されはしないだろう。それはそれで厄介な鬼を殺せるチャンスだ。
「じゃあ、さっそく殺る?」
アキノリの瞳孔が開いたのを確認すると、ピースは蜘蛛の鬼(姉)へと笑いかけた。
彼の虚ろな瞳はもはや何も映さない。
人を助けるために奮闘した彼は、自分に何が起きたのかすらわかる間もなく命を落とし。
その下手人が更なる惨劇を起こそうとするのを視界に入れることもできない。
彼の虚ろな瞳はもはや何も映さない。
人を助けるために奮闘した彼は、自分に何が起きたのかすらわかる間もなく命を落とし。
その下手人が更なる惨劇を起こそうとするのを視界に入れることもできない。
【0244 『北部』市街地】
【蜘蛛の鬼(姉)@鬼滅の刃 ノベライズ~きょうだいの絆と鬼殺隊編~(鬼滅の刃シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
累がいるか確認。いるにしろいないにしろ優勝を目指す。
●中目標
人を食いながら、生き続ける。
●小目標
1.悲鳴を上げた少年を食う
2.ミモザを追うorワタルを食べに行く
【目標】
●大目標
累がいるか確認。いるにしろいないにしろ優勝を目指す。
●中目標
人を食いながら、生き続ける。
●小目標
1.悲鳴を上げた少年を食う
2.ミモザを追うorワタルを食べに行く
【ピース・ホワイト@トモダチデスゲーム 人を呪わば穴二つ(トモダチデスゲームシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
ジョーカーとしてバトル・ロワイアルを優勝する。
●小目標
1.近藤を脱落させる。
2.温泉旅館にいた参加者を脱落させる。
【目標】
●大目標
ジョーカーとしてバトル・ロワイアルを優勝する。
●小目標
1.近藤を脱落させる。
2.温泉旅館にいた参加者を脱落させる。
【脱落】
【有星アキノリ@映画妖怪ウォッチシャドウサイド 鬼王の復活@小学館ジュニア文庫】