二人の少女が、話に花を咲かせていた。
一人は、小川凛。
ついこの前中学を卒業し、間もなく高校生になろうとしている少女だ。
もう一人は、エリン。
カザルム王獣保護場の学舎にて学ぶ、14歳の少女だ。
二人は殺し合いとは無縁なほどに、和やかな会話をしていた。
といっても、主に凛の方が話を振ってエリンがそれに答えるといった調子だったが。
一人は、小川凛。
ついこの前中学を卒業し、間もなく高校生になろうとしている少女だ。
もう一人は、エリン。
カザルム王獣保護場の学舎にて学ぶ、14歳の少女だ。
二人は殺し合いとは無縁なほどに、和やかな会話をしていた。
といっても、主に凛の方が話を振ってエリンがそれに答えるといった調子だったが。
「…ねえ凛さん、無理してない?」
「…え?」
「気のせいかもしれないけど、凛さん、無理して明るく振る舞ってるように見えて…」
「…え?」
「気のせいかもしれないけど、凛さん、無理して明るく振る舞ってるように見えて…」
エリンには、ユーヤンという女友達が一人いる。
凛の様に、明るい性格の女の子だ。
そんなユーヤンと似た性格の凛とこうして話していて、微妙に違和感を感じたのだ。
凛の様に、明るい性格の女の子だ。
そんなユーヤンと似た性格の凛とこうして話していて、微妙に違和感を感じたのだ。
「や、やだなあ。そんなことないってば」
そう言いつつ、凛の内心は穏やかではなかった。
エリンの言う通り、凛は無理やり明るく振る舞っていた。
当然だ。
いきなりこんな殺し合いなんて訳の分からないものに呼ばれて平静でいられるほど、凛は神経は太くない。
エリンの言う通り、凛は無理やり明るく振る舞っていた。
当然だ。
いきなりこんな殺し合いなんて訳の分からないものに呼ばれて平静でいられるほど、凛は神経は太くない。
(ほんとは、泣いちゃいそうだよ…!でも…)
目の前の少女、エリンを見る。
彼女は、妹の小川蘭と同い年の14歳だという。
そんな歳下の少女に、情けない姿なんて見せたくない。
泣きたくても、年長者として気丈に振る舞わないと。
彼女は、妹の小川蘭と同い年の14歳だという。
そんな歳下の少女に、情けない姿なんて見せたくない。
泣きたくても、年長者として気丈に振る舞わないと。
「無理しないでくださいね…?」
エリンが、気遣うように凛を見る。
そんなエリンの姿に、凛は思わず妹の姿をだぶらせてしまう。
歳下なのに落ち着いていて、自分よりずっと大人びてて。
動物のお医者さんを目指すほど、頭が良くて。
それでいて、他人を気遣う優しさを持っていて。
そんなエリンの姿に、凛は思わず妹の姿をだぶらせてしまう。
歳下なのに落ち着いていて、自分よりずっと大人びてて。
動物のお医者さんを目指すほど、頭が良くて。
それでいて、他人を気遣う優しさを持っていて。
(蘭…!)
そんな妹と似たエリンの姿が、今の凛には辛かった。
「……………」
「……………」
「……………」
凛とエリンの間に、微妙な重い空気が出来上がる。
そして…
そして…
「あんた達!近くにハンターがいるぞ!」
そんな空気を打ち破る、3人目の参加者が現れるのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「小清水!お前状況が分かってるのか!?」
「分かってるわよ、またいつもの逃走中、でしょ?」
「ちげーよ!」
「ちげーよ!」
陽人は、今の状況に危機感を抱いていた。
殺し合いと宣言されたこのゲーム…明らかに今まで月村サトシによって開催されてきた逃走中とは、異なっていた。
最後の一人になるまで殺しあう、というのもハッタリとは思えない。
しかし目の前の幼馴染の少女は、そうは思っていないようだった。
殺し合いと宣言されたこのゲーム…明らかに今まで月村サトシによって開催されてきた逃走中とは、異なっていた。
最後の一人になるまで殺しあう、というのもハッタリとは思えない。
しかし目の前の幼馴染の少女は、そうは思っていないようだった。
「確かに今までとは趣向が違うようだけど…きっといつもみたいに終わったら元いた所に帰されるわよ」
自称スポーツ美少女、陽人にとっては単なる体育好きの体力オバケとしか思えない彼女は、考えるより先に体が動くタイプで、あまり物事を深く考えないところがあった。
だから、この殺し合いというゲームに対しても、楽観的な態度であった。
しかし陽人は、彼女ほど楽観的にはなれなかった。
だから、この殺し合いというゲームに対しても、楽観的な態度であった。
しかし陽人は、彼女ほど楽観的にはなれなかった。
逃走中のゲームマスター、月村サトシは月に移住した人類の子供たちの為に、自分たち小学生をサンプルとして逃走中の舞台へ度々招いていた。
逃走中の会場はバーチャル空間であり、捕まっても元いた場所へと帰される。
今回のこのゲームには、月村サトシには全く感じなかった悪意のようなものを陽人は感じ取っていた。
だから、こうして小清水を説得しているのだが…
逃走中の会場はバーチャル空間であり、捕まっても元いた場所へと帰される。
今回のこのゲームには、月村サトシには全く感じなかった悪意のようなものを陽人は感じ取っていた。
だから、こうして小清水を説得しているのだが…
「ハンターよ!」
小清水のその言葉と共に、説得の時間は終わりを迎えた。
最初陽人は、「まだここを逃走中の会場だと思っているのか」と呆れて彼女の言葉を本気にしなかった。
しかし、小清水が指さした方向を見ると、確かにいたのだ。
黒いスーツとサングラスの男性。
通称ハンターと呼ばれる、アンドロイドが。
最初陽人は、「まだここを逃走中の会場だと思っているのか」と呆れて彼女の言葉を本気にしなかった。
しかし、小清水が指さした方向を見ると、確かにいたのだ。
黒いスーツとサングラスの男性。
通称ハンターと呼ばれる、アンドロイドが。
「逃げるぞ!」
陽人と小清水は同時に走り出す。
ハンターは二人に気づいて走り出す。
その超人的なスピードにより、二人との距離をどんどん詰めていく。
やがて、分かれ道に差し掛かった。
陽人は右に、小清水は左へと逃げる。
ハンターが狙いを定めたのは…
ハンターは二人に気づいて走り出す。
その超人的なスピードにより、二人との距離をどんどん詰めていく。
やがて、分かれ道に差し掛かった。
陽人は右に、小清水は左へと逃げる。
ハンターが狙いを定めたのは…
「ウソ、私!?」
凛の方だった。
ハンターは一気に小清水との差をつめて、彼女を捕らえる。
ハンターは一気に小清水との差をつめて、彼女を捕らえる。
「小清水!」
陽人がハンターと小清水の方を向くと、そこに映った光景は…
「……な!?」
陽人は、目の前の光景に目を見開く。
小清水の身体は、首元で爆発のような閃光を放ったかと思えば、動かなくなっていた。
それは、最初の場所で見た光景。
小清水は、首輪の毒を作動させられたのだ。
小清水の身体は、首元で爆発のような閃光を放ったかと思えば、動かなくなっていた。
それは、最初の場所で見た光景。
小清水は、首輪の毒を作動させられたのだ。
「くそっ!小清水!」
思わず陽人は彼女のもとへ向かおうとして…しかしハンターは、既に陽人に目標を定めている。
このまま近づけば、小清水の二の舞だ。
このまま近づけば、小清水の二の舞だ。
「くっそ…ちっくしょおおおおおおおお!」
悔しさを口に出しつつ、陽人は逃げるしかなかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「俺はその後、なんとかその場を離脱して…あんた達に出会ったんだ」
陽人の話を聞いて、凛とエリンは顔を青くする。
超人的なスピードで参加者を追いかけ、捕らえられた参加者は首輪の毒を作動させられて殺される。
そんな恐ろしい化け物が、この場にはいるというのか。
超人的なスピードで参加者を追いかけ、捕らえられた参加者は首輪の毒を作動させられて殺される。
そんな恐ろしい化け物が、この場にはいるというのか。
「陽人君はそのハンターっていう人に詳しいの?」
エリンの問いに、陽人は難しい顔をして小さく頷いた。
「ああ、だけど俺の知ってるハンターは、人を殺す毒を作動させるようなやばい奴じゃなかった。捕まっても、影に飲み込まれて、バーチャル空間から抜け出すだけだ」
「バーチャル空間…?」
「あー…鏡は分かるか?イメージとしては、鏡の世界に自分の分身を送り込む、みたいな感じなんだけど」
「ありがとう、なんとなく分かったわ」
「バーチャル空間…?」
「あー…鏡は分かるか?イメージとしては、鏡の世界に自分の分身を送り込む、みたいな感じなんだけど」
「ありがとう、なんとなく分かったわ」
「えっとその…そのハンターがいるってことは、この殺し合いにはその月村サトシって人が関わってるの?この殺し合いはバーチャルで、本当に死んだりしないの?」
「…まず月村サトシが関わってるかって話だけど、少なくとも積極的に関わってはいないと思う。関わってるとしても、脅迫かなんかされて、無理やりとかだと思う」
先ほども述べた通り、月村サトシは月に住む子供たちの為のサンプルとして逃走中の企画に自分たちを呼んでいる。
逃走中は平和的な娯楽ゲームであり、この殺し合いゲームとは対称的なものだ。
何度も月村サトシに会い彼の話を聞いた陽人には、彼がこのような悪趣味な催しを積極的に企画するとは思えなかった。
逃走中は平和的な娯楽ゲームであり、この殺し合いゲームとは対称的なものだ。
何度も月村サトシに会い彼の話を聞いた陽人には、彼がこのような悪趣味な催しを積極的に企画するとは思えなかった。
「それに俺がさっき会ったハンター…あいつに首輪があった」
先ほど出会ったハンターに、陽人は違和感を感じていた。
逃げているときはその違和感の正体が分からなかったが、エリンと凛に聞かせる形で状況を思い返していて、その違和感の正体に気づいた。
ハンターは、自分たちと同じ首輪をしていた。
逃走中におけるハンターは、自分たち参加者を追う狩猟者であり、運営側の人間、もといアンドロイドである。
しかし先ほど見たハンターは、首輪をしており、自分たちと同じ参加者という扱いを受けていた。
そのことも、陽人が月村サトシは黒幕でないと判断した理由であった。
逃げているときはその違和感の正体が分からなかったが、エリンと凛に聞かせる形で状況を思い返していて、その違和感の正体に気づいた。
ハンターは、自分たちと同じ首輪をしていた。
逃走中におけるハンターは、自分たち参加者を追う狩猟者であり、運営側の人間、もといアンドロイドである。
しかし先ほど見たハンターは、首輪をしており、自分たちと同じ参加者という扱いを受けていた。
そのことも、陽人が月村サトシは黒幕でないと判断した理由であった。
「そして、あいつがゲームマスターじゃなくて、他の奴らが関わってるっていうなら…殺し合いは本物の可能性が高いと思う」
殺し合いという物騒な企画。
首輪作動マシーンと化したハンター。
このゲームには、逃走中にはない悪意を感じる。
故に和泉陽人は、この殺し合いが本物であると確信していた。
首輪作動マシーンと化したハンター。
このゲームには、逃走中にはない悪意を感じる。
故に和泉陽人は、この殺し合いが本物であると確信していた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「うっ…」
「凛さん!?大丈夫!?」
「凛さん!?大丈夫!?」
陽人の話を聞いた凛は、顔を青くし、非常に具合の悪そうな様子を見せていた。
「だ、大丈夫大丈…」
それでもぎこちない笑みを浮かべようとする凛であったが、
「もう無理しないで」
エリンは、そんな凛の身体を抱きしめた。
「凛さん、全然大丈夫に見えないよ!無理しちゃダメ!」
「エリン…ちゃん」
「泣きたいなら、泣いてください…胸、貸しますから」
「うう…うわあああああああああん」
「エリン…ちゃん」
「泣きたいなら、泣いてください…胸、貸しますから」
「うう…うわあああああああああん」
そこで凛の感情は限界を迎えた。
エリンの胸に顔をうずめて、ワンワンと泣きじゃくるのであった。
エリンの胸に顔をうずめて、ワンワンと泣きじゃくるのであった。
「ねえエリンちゃん、私のこと『お姉ちゃん』って呼んでみてくれない?」
「え?」
「え?」
泣き止んだ後、凛は突然そんなことを言った。
突然の凛の申し出に、エリンはキョトンとする。
突然の凛の申し出に、エリンはキョトンとする。
「お姉ちゃん」
それでもとりあえず、言われるがままに凛のことをお姉ちゃんと呼ぶ。
「…うん、ありがとう」
エリンにお姉ちゃんと呼ばれた凛は、スッキリした顔をしていた。
まるで、憑き物が取れたかのように。
まるで、憑き物が取れたかのように。
「やっぱり、『お姉ちゃん』は蘭じゃないとしっくりこないや」
無意識のうちにエリンを妹と同一視してしまっていた凛。
しかし、エリンに『お姉ちゃん』と呼ばれたことで、エリンは妹とは違うのだということをきっぱりと認識できるようになっていた。
しかし、エリンに『お姉ちゃん』と呼ばれたことで、エリンは妹とは違うのだということをきっぱりと認識できるようになっていた。
「エリンちゃん、陽人君。私、もう逃げない。この殺し合いから脱出して、家族とちゃんと再会する!」
さっきまでの自分はエリンに妹を重ねることで、失われた日常へと逃避していた。
エリンが蘭に似ていて辛いと言いつつも、彼女に妹を見出して甘えていた。
だけど、ここには日常なんてなくて。
あるのは血生臭い殺し合いの世界。
エリンが蘭に似ていて辛いと言いつつも、彼女に妹を見出して甘えていた。
だけど、ここには日常なんてなくて。
あるのは血生臭い殺し合いの世界。
「蘭に『お姉ちゃん』って呼んでもらえるあの日常を、取り戻すよ!」
泣いちゃいそうだよ、なんて甘ったれたことは言ってられない。
恐怖も、悲しみも押し殺して、今はこう言おう
恐怖も、悲しみも押し殺して、今はこう言おう
泣いてないってば!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
その後、陽人の進言により3人はハンターから逃げるためこの場を離れることにした。
「逃走中のゲームでは、ハンターは開始直後2体いることが多かった。俺が遭遇した以外のハンターがいる可能性があることも、念頭に置いといてくれ」
陽人の言葉に、凛とエリンは頷き、3人は移動を開始した。
(エ「リン」に『凛』か…)
同行者の二人の女性の名前に、陽人は先ほど首輪を作動させられて殺された幼馴染の姿を思い起こさずにいられなかった。
小清水凛…幼稚園の頃からの付き合いだった腐れ縁だ。
小清水凛…幼稚園の頃からの付き合いだった腐れ縁だ。
(小清水、俺はお前の分まで生き残る!そしてお前の仇を討ってやる)
【0100過ぎ 都市部】
【和泉陽人@逃走中シリーズ(集英社みらい文庫)】
【目標】
●大目標
この殺し合いから脱出する
●小目標
今はハンターから逃げる
【目標】
●大目標
この殺し合いから脱出する
●小目標
今はハンターから逃げる
【小川凛@泣いちゃいそうだよシリーズ(講談社青い鳥文庫)】
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出して家族に会う
●小目標
今はハンターから逃げる
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出して家族に会う
●小目標
今はハンターから逃げる
【エリン@獣の奏者(講談社青い鳥文庫)】
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出する
●小目標
今はハンターから逃げる
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出する
●小目標
今はハンターから逃げる
【0100 陽人達から少し離れた場所】
【ハンター@逃走中シリーズ(集英社みらい文庫)】
【目標】
●大目標
視界に入った参加者を捕らえる
※捕らえた参加者の首輪の毒を作動させるよう改造されている(触れただけやすぐに逃げられた場合はノーカウント)
【目標】
●大目標
視界に入った参加者を捕らえる
※捕らえた参加者の首輪の毒を作動させるよう改造されている(触れただけやすぐに逃げられた場合はノーカウント)
【脱落】
【小清水凛@逃走中シリーズ(集英社みらい文庫)】
【残り参加者 261/300】