「起きろ。」
「っ……!」
「っ……!」
乙和瓢湖は不機嫌な口調でアミィ・キリヲの背中を軽く刺した。
紫苑メグに喰らった目潰しをようやく治して、やり場のない怒りのぶつけ先をどうするかとなれば、近くにいた彼に向かうのは当然である。
目潰しの残り香でむせかえって勝手に気絶したキリヲの背中を踏みつけて、気つけの一刺し。小さな悲鳴と共に目覚めた彼を、乙和は強く踏みつけた。
紫苑メグに喰らった目潰しをようやく治して、やり場のない怒りのぶつけ先をどうするかとなれば、近くにいた彼に向かうのは当然である。
目潰しの残り香でむせかえって勝手に気絶したキリヲの背中を踏みつけて、気つけの一刺し。小さな悲鳴と共に目覚めた彼を、乙和は強く踏みつけた。
「殺されたくなければ知っていることを話せ。」
嘘である。話を聞いたら殺す気だ。だがある意味本当だ。話せるうちは死なない程度にいたぶる気だからだ。
最初にジョゼを狙った時といい、次にメグを狙ったと時いい、これまでの乙和の戦績はすこぶる悪い。途中で邪魔が入ったとはいえ車椅子の人間を殺し損ねているのに、明らかな子供にまで返り討ちにされる始末。元闇乃武として、そして緋村抜刀斎に復讐を誓う者として考えられないていたらくだ。
なのでキリヲは殺す、必ず殺す、そう思いながらも、嗜虐心とこれまで何も情報が手に入っていないこともあって拷問することにしたのだが。
最初にジョゼを狙った時といい、次にメグを狙ったと時いい、これまでの乙和の戦績はすこぶる悪い。途中で邪魔が入ったとはいえ車椅子の人間を殺し損ねているのに、明らかな子供にまで返り討ちにされる始末。元闇乃武として、そして緋村抜刀斎に復讐を誓う者として考えられないていたらくだ。
なのでキリヲは殺す、必ず殺す、そう思いながらも、嗜虐心とこれまで何も情報が手に入っていないこともあって拷問することにしたのだが。
(なんだ……コイツの目は。)
踏む力を強めながらも、乙和は開かれ目があったキリヲの瞳に、嫌なものを感じた。
もちろん、有利なのは乙和である。キリヲが轢かれたカエルのようにうつ伏せで地面に寝そべり、乙和はその背中を踏みつけ刃先を向けている。どう考えても詰みだ。これなら抜刀斎でも殺しきる自信がある。絶対的に有利な状況。なのに。
もちろん、有利なのは乙和である。キリヲが轢かれたカエルのようにうつ伏せで地面に寝そべり、乙和はその背中を踏みつけ刃先を向けている。どう考えても詰みだ。これなら抜刀斎でも殺しきる自信がある。絶対的に有利な状況。なのに。
(なぜこの目はそんなに嬉しそうに見返してくる!)
心理的に乙和はキリヲの下にいる。それをこれまでの戦いから感覚が狂ったとみて刀を刺そうとして。
まずは指の一つでも落とすかと動いた瞬間、乙和は顎を殴られた。
まずは指の一つでも落とすかと動いた瞬間、乙和は顎を殴られた。
「なっ!」
痛みは大したことない、ダメージも少ない、だがそれ以上に衝撃が大きい。
キリヲを刺そうとしたまさにそこにタイミングを合わせるように、姿の見えないなにかにカウンターパンチを喰らわされた、そうとしか思えない。あるいは、自分の梅花袖箭のような暗器か。そう思いひとまずバックステップで距離をとると。
キリヲを刺そうとしたまさにそこにタイミングを合わせるように、姿の見えないなにかにカウンターパンチを喰らわされた、そうとしか思えない。あるいは、自分の梅花袖箭のような暗器か。そう思いひとまずバックステップで距離をとると。
「があっ!?」
今度は背中に体当たりを受けた。まるで投げられて床に叩きつけられたような、吹き飛ばされ壁に打ちつけられた時のような衝撃が腹へと抜けていく。それどころか壁を背にしたようにもたれかかれさえする。
理解不能の攻撃に翻弄される。梅花袖箭を放てばキリヲの前で何かに弾かれ、移動しようとすると何かに激突する。透明な人間でもこの場にいて襲われているような感覚を覚え、乙和はハッとなった。
もしや、最初から罠だったのでは? キリヲが囮となり、他の人間がキリヲにちかづいた人間を襲うという、そういう作戦だったのでは?
そもそも、キリヲと出会った時に本当に2人きりだったか? あの時は感覚が狂い普段であれば気づくような存在にも気づけなかっただろう。目を洗っている時に襲われなかったので自分とキリヲしかいないと思ったが、もしそうでは無かったとしたら?
乙和の行動は早かった。三十六計逃げるに如かず。相手の術中にはまったのなら仕留められる前に逃げるしかない。
次の動きを読ませない身のこなしで逃走に移る。これまでの経験で、見えない攻撃は直線的な動きをしなければかわせることはわかってきている。相手が慣れて対応できるようになるまでが勝負だと、乙和は足を早め、1分後には完全にキリヲの視界から消えていた。
理解不能の攻撃に翻弄される。梅花袖箭を放てばキリヲの前で何かに弾かれ、移動しようとすると何かに激突する。透明な人間でもこの場にいて襲われているような感覚を覚え、乙和はハッとなった。
もしや、最初から罠だったのでは? キリヲが囮となり、他の人間がキリヲにちかづいた人間を襲うという、そういう作戦だったのでは?
そもそも、キリヲと出会った時に本当に2人きりだったか? あの時は感覚が狂い普段であれば気づくような存在にも気づけなかっただろう。目を洗っている時に襲われなかったので自分とキリヲしかいないと思ったが、もしそうでは無かったとしたら?
乙和の行動は早かった。三十六計逃げるに如かず。相手の術中にはまったのなら仕留められる前に逃げるしかない。
次の動きを読ませない身のこなしで逃走に移る。これまでの経験で、見えない攻撃は直線的な動きをしなければかわせることはわかってきている。相手が慣れて対応できるようになるまでが勝負だと、乙和は足を早め、1分後には完全にキリヲの視界から消えていた。
「あらら、逃げ足早いなあ。ま、こっちもキツかったからバランスはとれてるんやけどね。」
さて、そのキリヲはというと、フラフラと立ち上がるとおぼつかない足取りで山小屋へと向かう。扉をあけてなんとか転がり込むと、息を潜めて気配を探る。1分、2分と時間を数え、10分を超えたあたりでようやく緊張を解いた。
実のところキリヲにとってもギリギリの戦いであった。彼の『拒絶』の魔術による見えないバリアの設置技は、それを知る由もない乙和を翻弄できはしたが、気絶明けで連発したせいでスタミナが尽きかけている。先の10分の間にまた戦闘になっていれば、今度はわからなかっただろう。特に危なかったのは梅花袖箭、突然刀を持たない手を突き出してきたので反射的に防いだが、当たる直前で間に合ったのは幸運の面が大きい。
その上最後の方は見切られて動かれていたようにも見える。次戦えば負けるだろうなと予感があった。
実のところキリヲにとってもギリギリの戦いであった。彼の『拒絶』の魔術による見えないバリアの設置技は、それを知る由もない乙和を翻弄できはしたが、気絶明けで連発したせいでスタミナが尽きかけている。先の10分の間にまた戦闘になっていれば、今度はわからなかっただろう。特に危なかったのは梅花袖箭、突然刀を持たない手を突き出してきたので反射的に防いだが、当たる直前で間に合ったのは幸運の面が大きい。
その上最後の方は見切られて動かれていたようにも見える。次戦えば負けるだろうなと予感があった。
「ふう……やっぱり何事も大変やね。さて、息も整ったし逃げよかな。」
ため息一つついて立ち上がる。もとより不利な戦いには慣れた人生だ、頭を切り替えるでもなく、次の策を考え出す。
まず大前提としてこの山小屋から離れなくてはならない。日本号殺しを氷室に見られただろうし、先の乙和のこともある。どちらに戻ってこられても今のキリヲでは厳しい。
まず大前提としてこの山小屋から離れなくてはならない。日本号殺しを氷室に見られただろうし、先の乙和のこともある。どちらに戻ってこられても今のキリヲでは厳しい。
「あの子もあの人も向こうの道進んだよな……てことは、こっちに行きますか。」
三十六計逃げるに如かず、山小屋の前の道は2方向ある。氷室と乙和は同じ方向へと逃げた。上手く行けば2人で殺し合ってくれるかもしれない。そうでなくても、わざわざ今彼らに近付くメリットは無い。必然、どちらに向かうかは彼らと逆方向だ。
……問題は、彼に山道を歩くような体力など無かったということだが。
人間より体力のある悪魔であるにもかかわらず、生来の虚弱と気絶による不調と戦闘による疲労がシャレにならない。下り坂だというのに吐血しそうなほどの有様である。
途中で山間にあった駐車場で動かせそうな車を見つけた時は感激のあまり涙を流した。併設の建物を調べる前に何気なくなんだかよくわからない物体を調べたところ、キッチンカーだったそれの運転に成功したというわけだ。
……問題は、彼に山道を歩くような体力など無かったということだが。
人間より体力のある悪魔であるにもかかわらず、生来の虚弱と気絶による不調と戦闘による疲労がシャレにならない。下り坂だというのに吐血しそうなほどの有様である。
途中で山間にあった駐車場で動かせそうな車を見つけた時は感激のあまり涙を流した。併設の建物を調べる前に何気なくなんだかよくわからない物体を調べたところ、キッチンカーだったそれの運転に成功したというわけだ。
「はーっ、文明の利器さまさまや。こんな便利な屋台見たことないわ。うわ、しかも結構早い、アハハ、これはありがたいわ。」
意味深に刺さっていたキーを捻り、適当に色々操作してるうちにアクセルを踏んで動いたときはそれは驚いたが、こうして動かしてしまえばこんなにも楽なものはない。空調も効いてるしいいことづくめだ。ちょっと後ろのキッチン部分を仕舞うことができずにそのまま走る形になってしまっているし、ブレーキのかけ方もわからないし、坂道でどんどんスピードが出るしバァン!!!!!
「やべぇよやべぇよどうしよ……勝手に走り出したから……」
「おいゴラ降りろォ! 免許持ってんのか!」
「おいゴラ降りろォ! 免許持ってんのか!」
下山を急ぐアミィ・キリヲ。不慣れからか、不幸にも黒塗りの高級車に衝突してしまう。
「ほんまゴメン、ほな、また……」
「アッー!?」
「アッー!?」
仕方ないので降りてきた男を挽くことにした。どうせ殺し合いの場なのだ、なんか怖い感じの人だし殺してしまおう。
現れたサングラスに革ジャンの男を撥ねると、キリヲはそそくさとその場から車を走らせ逃げる。殺せたかはわからないが、これも三十六計逃げるに如かずだ。
現れたサングラスに革ジャンの男を撥ねると、キリヲはそそくさとその場から車を走らせ逃げる。殺せたかはわからないが、これも三十六計逃げるに如かずだ。
「逃げるなぁっ! 逃げるな卑怯者お!!」
一方はねられた男、松野カラ松はキリヲから遅れること一分ほど、車に乗り飲むと追跡を開始した。
カラ松がこれまでしてきたことなど何もない。マジで何もない。というかついさっき起きたぐらいだ。夢だと思って二度寝したのだが、トイレに立った時に明らかに知らない家でビビり散らかし、そしてひとしきりなんやかんややったあとで家で見つけたトヨタ・センチュリーを乗り回して兄弟たちを探しに行ったところだ。
そんなおりに突然後ろからライトもろくにつけずに現れたキッチンカーに信号待ちで追突されるわ、ようやく参加者と出会えたと思ったらひき逃げされるはと散々である。もちろん追跡する。なんせこっちには銃もあるのだ、あっちは撃って来なかったしこれはもうカラ松が鬼有利である。
カラ松がこれまでしてきたことなど何もない。マジで何もない。というかついさっき起きたぐらいだ。夢だと思って二度寝したのだが、トイレに立った時に明らかに知らない家でビビり散らかし、そしてひとしきりなんやかんややったあとで家で見つけたトヨタ・センチュリーを乗り回して兄弟たちを探しに行ったところだ。
そんなおりに突然後ろからライトもろくにつけずに現れたキッチンカーに信号待ちで追突されるわ、ようやく参加者と出会えたと思ったらひき逃げされるはと散々である。もちろん追跡する。なんせこっちには銃もあるのだ、あっちは撃って来なかったしこれはもうカラ松が鬼有利である。
「おっと、赤信号か……」
だがいっこうに追いつける様子は無かった。変なところで良識があるのか、律儀に信号を守っていく。一方のキリヲはそんなのお構い無しで進んでいく。
このまま見失うか、そう思った矢先にキリヲが高架へ登っていくのが見えてカラ松は緑信号になった途端にアクセルを踏んだ。
このまま見失うか、そう思った矢先にキリヲが高架へ登っていくのが見えてカラ松は緑信号になった途端にアクセルを踏んだ。
「たぶん高速だな! 11000回転まで回した悪魔のZがキッチンカーなんかに負けるかよ!」
センチュリーだしそんなにエンジンが回るはずもないのだがとにかく速度を上げて追跡する。2台しか車がいない高速では速度は出し放題だ。
「アカンあっちのほうが速いわ。これもっと踏めば速くなるかな?」
「ばっ、お前80キロ超えてんぞ!」
「ばっ、お前80キロ超えてんぞ!」
2人の車が爆走するのを止める者はいない。
【0350 『北部』 山の近く】
【乙和瓢湖@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
●大目標
殺しを楽しむ。
●中目標
赤鼻の男(バギー)や角の生えた男(キリヲ)を殺せる手段を考える。
●小目標
装備を整える。
●大目標
殺しを楽しむ。
●中目標
赤鼻の男(バギー)や角の生えた男(キリヲ)を殺せる手段を考える。
●小目標
装備を整える。
【アミィ・キリヲ@小説 魔入りました!入間くん(3) 師団披露(魔入りました!入間くんシリーズ)@ポプラキミノベル】
●大目標
大量の武器を持ち帰る。
●中目標
絶望した表情を見るために、他の参加者を襲う。
●小目標
とりあえず逃げよかな。
●大目標
大量の武器を持ち帰る。
●中目標
絶望した表情を見るために、他の参加者を襲う。
●小目標
とりあえず逃げよかな。
【松野カラ松@小説おそ松さん 6つ子とエジプトとセミ@小学館ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
死にたくない。帰りたい。
●中目標
どうせ巻き込まれてる兄弟を助ける。
●小目標
逃げんじゃねぇよ!
【目標】
●大目標
死にたくない。帰りたい。
●中目標
どうせ巻き込まれてる兄弟を助ける。
●小目標
逃げんじゃねぇよ!