花輪和彦は、その水族館の設計に感嘆していた。
水槽の中をドーム状の通路が貫通している。そうすることで、まるで海中にいるかのように魚が泳いでいるところを見ることができる。もし水面に浮かんでいる魚が生きていたのなら、さぞきれいに泳いでいただろう。
水槽の中をドーム状の通路が貫通している。そうすることで、まるで海中にいるかのように魚が泳いでいるところを見ることができる。もし水面に浮かんでいる魚が生きていたのなら、さぞきれいに泳いでいただろう。
「ここもあっちも、魚たちが皆死んでしまっている……生きているのは、ボクだけか……」
「たぁ!」
「おっと、ごめんよベイビー。君もいたね。」
「たぁ!」
「おっと、ごめんよベイビー。君もいたね。」
花輪は自分の腕の中で抱きかかえられながら手を突き上げた赤ん坊へと謝る。野原ひまわり、という名前はわからないものの、彼女が自分と同じ参加者であることはわかる。水槽におぼろげに映る自分と同じように、その首には首輪が巻かれていた。
花輪が目覚めてこの水族館を調べること数分、ベンチの上でおすわりしていたひまわりを保護してから十数分、二人で水族館を歩いて回る。花輪から見ても一目で先進的だとわかるそこに、人の気配は無い。かなりの敷地面積があることが案内図からわかることに加えて、床に転がるものが声を出すことをはばかられさせる。ライフル。ハワイで父親に撃ち方を習ったそれが、ときおりポツンポツンと置かれている。一つ持ってみたが、重さは本物だった。これで殺し合えということだろう。
花輪が目覚めてこの水族館を調べること数分、ベンチの上でおすわりしていたひまわりを保護してから十数分、二人で水族館を歩いて回る。花輪から見ても一目で先進的だとわかるそこに、人の気配は無い。かなりの敷地面積があることが案内図からわかることに加えて、床に転がるものが声を出すことをはばかられさせる。ライフル。ハワイで父親に撃ち方を習ったそれが、ときおりポツンポツンと置かれている。一つ持ってみたが、重さは本物だった。これで殺し合えということだろう。
「これだけの建物に武器、いったいあのウサギはどんな力を持っているんだろう……胃が痛くなってきたね……」
覚えた腹痛に胃腸の弱い同級生を思い出す。もしかしたら彼やそれ以外の同級生も巻き込まれているのだろうか。それとも自分の家族が。嫌な想像がどんどん増していく。
そんな時だ。
そんな時だ。
『……もしもし、もしもし、聞こえますか! もしもし! どなたかこの建物にいらっしゃいませんか!』
「男の人の声?」
「男の人の声?」
よほど良い音響設備なのだろう、スピーカー越しなのにクリアな音声で男性の声が聞こえてきた。
放送はその後も続く。どうやら一階の警備室にいるらしい。
放送はその後も続く。どうやら一階の警備室にいるらしい。
「……行こうか。」
「たあ?」
「たあ?」
花輪の判断は早かった。
床の銃には目もくれず、放送で伝えられた場所を目指す。
現状で唯一の手がかり、自分には使えなさそうな武器、保護した赤ん坊、いくつもの要素を並べて考えれば、ここは急いで向かうべきだ。もちろん男性が危険な人である可能性はあるが、これだけ銃が落ちているなら危険性はさほど関係ない。赤ん坊を抱えて一人で生き残れるなどありえないのだから。
床の銃には目もくれず、放送で伝えられた場所を目指す。
現状で唯一の手がかり、自分には使えなさそうな武器、保護した赤ん坊、いくつもの要素を並べて考えれば、ここは急いで向かうべきだ。もちろん男性が危険な人である可能性はあるが、これだけ銃が落ちているなら危険性はさほど関係ない。赤ん坊を抱えて一人で生き残れるなどありえないのだから。
「……こんな赤ちゃんまで……ああ、すまない、私は、木村孝一郎だ。教師をやっている。」
「花輪和彦です。あなたがさっきの?」
「ああ……その赤ちゃん以外に誰かと会ったかい?」
「いいえ。他にはあなただけです。」
「そうか。もう一つ聞きたい。君はあの放送をどこで聞いたんだい?」
「新館の方です。」
「なるほど、ここからは真反対だ。なら……これ以上は集まりそうにないか。さあ、どうぞ。」
「花輪和彦です。あなたがさっきの?」
「ああ……その赤ちゃん以外に誰かと会ったかい?」
「いいえ。他にはあなただけです。」
「そうか。もう一つ聞きたい。君はあの放送をどこで聞いたんだい?」
「新館の方です。」
「なるほど、ここからは真反対だ。なら……これ以上は集まりそうにないか。さあ、どうぞ。」
そして辿り着いた警備室で木村と名乗った男性はそう言うと、拳銃をポケットに入れて扉を開き招き入れた。
「いやあしかしすばらしい! 率先して呼びかけてこんなにも子ども達を保護するとは! 木村先生は教師の鑑です!」
「ど、どうも……それでは松岡先生の自己紹介はこのあたりにして、次は花輪くん、頼むよ。」
「ど、どうも……それでは松岡先生の自己紹介はこのあたりにして、次は花輪くん、頼むよ。」
警備室では集まった七人の人間による自己紹介が進んでいた。
呼びかけた男性、木村先生は中学教師。温和な感じの中年男性だ。
その中年男性を誉めそやしているのが松岡先生。三十前の暑苦しい小学校教師である。
その二人から距離をとった位置にいるのが、川上真緒と細川詩緒里。
どちらも目鼻立ちの整った気の強そうな顔と艷やかな黒髪をしている。制服の真緒が中学生で私服の詩緒里が小学生だと、言葉少なに自己紹介した。
そして花輪とひまわりの他にもう一人。
呼びかけた男性、木村先生は中学教師。温和な感じの中年男性だ。
その中年男性を誉めそやしているのが松岡先生。三十前の暑苦しい小学校教師である。
その二人から距離をとった位置にいるのが、川上真緒と細川詩緒里。
どちらも目鼻立ちの整った気の強そうな顔と艷やかな黒髪をしている。制服の真緒が中学生で私服の詩緒里が小学生だと、言葉少なに自己紹介した。
そして花輪とひまわりの他にもう一人。
「花輪くんは~わたしたちのクラスのリーダーで~」
口を開きかけた花輪を無視して話し出した少女。彼の同級生であるみぎわさんことみぎわ花子(苗字不詳)である。
花輪は彼女がいたことに幾らかの安堵と多大な不安を抱いた。
こんな場所でも見知った顔がいることは嬉しい。だが、そうであるがゆえに自分と同じこんな境遇になってしまっていることが悲しいし、他の同級生も巻き込まれているのではと考える。
そしてなにより、みぎわだから問題なのだ。
花輪は彼女がいたことに幾らかの安堵と多大な不安を抱いた。
こんな場所でも見知った顔がいることは嬉しい。だが、そうであるがゆえに自分と同じこんな境遇になってしまっていることが悲しいし、他の同級生も巻き込まれているのではと考える。
そしてなにより、みぎわだから問題なのだ。
「たぁい! たぁたぅたあーう!」
「うるさわいわね。赤ちゃんなのに花輪くんにベタベタしないでよ!」
「まあまあ……えー、それでは今後の方針ですが……」
「うるさわいわね。赤ちゃんなのに花輪くんにベタベタしないでよ!」
「まあまあ……えー、それでは今後の方針ですが……」
松岡先生の腕の中で抗議の声を上げるひまわりと、それに噛みつくみぎわ。どういうわけかこの二人そりが合わないようだ。もっとも、みぎわは花輪に近づく女全てにこうなのだが、人との距離を保つ真緒や詩緒里に対してひまわりは花輪にグイグイ来るのもあって先からこの調子である。もう慣れっことはいえこれは厳しい。
なお、ひまわりが花輪に懐くのは顔が良いというだけでなく前日に六本木で飲んだ酒が残っている(にもかかわらず子ども好きと言って無理やり花輪から引き取った)松岡先生から離れたいというのもあるのだが、さすがにそこまでは花輪も気づかなかった。
なお、ひまわりが花輪に懐くのは顔が良いというだけでなく前日に六本木で飲んだ酒が残っている(にもかかわらず子ども好きと言って無理やり花輪から引き取った)松岡先生から離れたいというのもあるのだが、さすがにそこまでは花輪も気づかなかった。
「……なので、まずはこの水族館を調べておくべきだと思うんです。」
「なるほど! では、どう班分けします?」
「そうですね……私と、松岡先生、それにこの赤ちゃんで見てきます。皆さん四人はここにいるように。まださっきの放送を聞いてここに来る人がいるかもしれないので。扉を締めてなるべく音を立てないように。三十分ほどで戻ります。」
「わかりました。」
「なるほど! では、どう班分けします?」
「そうですね……私と、松岡先生、それにこの赤ちゃんで見てきます。皆さん四人はここにいるように。まださっきの放送を聞いてここに来る人がいるかもしれないので。扉を締めてなるべく音を立てないように。三十分ほどで戻ります。」
「わかりました。」
とりあえず赤ん坊と離れることになって花輪はホッとした。それにこの部屋は厚い壁に頑丈な扉がある。立てこもる分には安全だろう。あとは、女子たちと信頼関係を築けるかと、どうみぎわをなだめるか、だ。
(まずはみぎわさんからだね。)
「でも本当によかった。もし花輪くんに会えてなかったらわたし――」
「ベイビー、相談があるんだけどいいかな?」
「でも本当によかった。もし花輪くんに会えてなかったらわたし――」
「ベイビー、相談があるんだけどいいかな?」
みぎわの話を強引に変えて手を握る。ふだんならこういうやり方は好まないが、大人たちが帰ってくるまでにこちらの問題は解決しておきたい。そう思い強く握ったからか、みぎわの顔は一気に赤くなった。
「な、な、なんでも聞くわ!」
「ありがとう。実は……ボクはとても不安なんだ。君以外にも、ボクの家族やクラスメイトが巻き込まれているんじゃないかって。ゴメンね、みぎわさん。君のほうが不安なのに。」
「花輪くん……!」
「ありがとう。実は……ボクはとても不安なんだ。君以外にも、ボクの家族やクラスメイトが巻き込まれているんじゃないかって。ゴメンね、みぎわさん。君のほうが不安なのに。」
「花輪くん……!」
嘘偽りなく、花輪はみぎわに内心を打ち明ける。みぎわが悪い人間でないことはよく知っている。こう言えばみぎわは感涙して。
「わたしも……! わたしもよ花輪くん! 不安で不安で、どうしたらいいか!」
そして花輪はみぎわの頭を撫でた。
「だから、みんなでガンバろう。みんなこんな怖いことになってるから、冷静にはなれないだろうけど、でも、ボクは君とみんなを信じているよ、ベイビー。」
「は、は、は……花輪くうぅぅぅぅん!!」
「は、は、は……花輪くうぅぅぅぅん!!」
みぎわが花輪の胸へと飛び込む。鼻水が付かないように顔ではなく額を胸につけるように抱き抱えた。これで一人。オシャレに気を使うみぎわは落ち着けば必ずトイレに行くだろう。服を汚さなければ戻ってきた時にひと悶着しなくて済む。
花輪はしばらくみぎわを抱いたあと、トイレへと見送った。部屋から出てしまうことになるが、さすがにトイレに行くなとまでは言っていない。怒られたら泥は自分で被ろう。
花輪はしばらくみぎわを抱いたあと、トイレへと見送った。部屋から出てしまうことになるが、さすがにトイレに行くなとまでは言っていない。怒られたら泥は自分で被ろう。
(さて、次は。)
花輪が次に向かうのは、詩緒里の下だ。
真緒より先にしたことに、大した理由は無い。今のところ二人とも最低限の名前と学年しか言っていないため情報が何もない。なら同じ小学生の方から声をかけよう、という判断だ。
部屋で見つけたメモ用紙にサラサラと筆を滑らせると、それを片手に呼びかける。
真緒より先にしたことに、大した理由は無い。今のところ二人とも最低限の名前と学年しか言っていないため情報が何もない。なら同じ小学生の方から声をかけよう、という判断だ。
部屋で見つけたメモ用紙にサラサラと筆を滑らせると、それを片手に呼びかける。
「隣に座ってもいいですか? 細川さん?」
監視カメラの映像をモニターする席で、リボルバーを弄ぶ詩緒里の後ろに立つ。同じ高学年でも同級生のまる子の姉より背が高い、スラリとした姿だ。無言の彼女の後ろで、花輪は一つの拳銃を手に取り弄ぶ。そのまま金属音が響くこと数十秒して、詩緒里は顔だけ振り向いた。
「いつまでそうしてる気?」
「もうやめます。」
「もうやめます。」
と同時に、花輪は詩緒里の横の席へとゆっくり座る。わずかに距離をとっただけで席を立たないのを見て、花輪は話し始めた。
「細川さんと川上さんに渡したいものがあるんです。」
「なにこれ?」
「ボクがここで出会った人の名前です。もしボクを知る人に見せれば、信用してもらえると思います。」
「なにこれ?」
「ボクがここで出会った人の名前です。もしボクを知る人に見せれば、信用してもらえると思います。」
花輪のメモは、自分が出会った六人について書かれたものだった。丁寧に自分の署名と誰に渡したかも書いてある。
「……読めるの?」
「……ボクの知り合いなら。」
「……ボクの知り合いなら。」
丁寧ではあるが上手いとは言っていない。字が汚いのがバレるのでできればやりたくなかったが、背に腹は替えられない。まずは詩緒里の信用を得るためには、有益な贈り物が必要だろう。
「……もらっておく。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
無視させなかった、隣に座った、提案を飲ませた。スリーアウトチェンジだ。「先生たちが戻ってきたら、また」と言って席を立つ。みぎわが戻ってくるまでの時間との戦い。後は最後の一人、真緒だ。
「ふーん、イケメンじゃん。」
「ありがとうございます、どうぞ。」
「どうも。」
「ありがとうございます、どうぞ。」
「どうも。」
真緒は部屋の奥で待ち構えていた。詩緒里と似た雰囲気だが、中学生だけあってプレッシャーが違う。一年違うだけでこんなにも違うのか、それとも詩緒里の壁を感じさせるものと違う押しつぶすような気配がそう思わせるのか。
こちらは小細工しても無理だと思い素直にメモを渡す。どうやら順番を間違えたからしい。だが逆だったら、詩緒里にはメモは渡せなかっただろうと考え直して、挨拶して離れる。みぎわが戻ってくるまでに女子から離れておかないと今までの苦労が水の泡だ。
こちらは小細工しても無理だと思い素直にメモを渡す。どうやら順番を間違えたからしい。だが逆だったら、詩緒里にはメモは渡せなかっただろうと考え直して、挨拶して離れる。みぎわが戻ってくるまでに女子から離れておかないと今までの苦労が水の泡だ。
「花輪くん! おまたせ!」
(あ、あぶなかった……!)
(あ、あぶなかった……!)
花輪がみぎわと別れたあたりに戻った途端に、ドアが開いた。内心かなり冷や汗ものである。
「あ」と詩緒里の声が上がる。みぎわは詩緒里を睨む。花輪はモニターを見る。松岡先生が戻ってきていた。時計を見る。まだ三十分には程遠い。嫌な予感がする。そして。
「あ」と詩緒里の声が上がる。みぎわは詩緒里を睨む。花輪はモニターを見る。松岡先生が戻ってきていた。時計を見る。まだ三十分には程遠い。嫌な予感がする。そして。
「……トイレに行ったみたいだね。」
「ちょっと、あっち女子トイレじゃん……」
「ちょっと、あっち女子トイレじゃん……」
口元を抑えながらトイレに駆け込んで行った。昨日の酒が戻ってきたのだろう。だがそれでもいい成人がトイレを間違えるのはいかがなものなのか。
顔に縦線がかかった花輪と詩緒里とみぎわの前で、数分後今度は木村先生が腕に赤ん坊を抱えて戻ってきた。モニター越しでもわかるほど足がおぼつかない。
顔に縦線がかかった花輪と詩緒里とみぎわの前で、数分後今度は木村先生が腕に赤ん坊を抱えて戻ってきた。モニター越しでもわかるほど足がおぼつかない。
「お、木村先生戻ってきちゃったか。大丈夫かな、あの赤ちゃんの持ち方。」
「松岡先生大丈夫ですか?」
「え、な、なにが!?」
「慌ててトイレに行ってましたけど。」
「え、あ、うん、アイタタ! 腹痛で、うん! それより、モノレールとレストランを見つけたんだ! 食料を補給しよう!」
「松岡先生大丈夫ですか?」
「え、な、なにが!?」
「慌ててトイレに行ってましたけど。」
「え、あ、うん、アイタタ! 腹痛で、うん! それより、モノレールとレストランを見つけたんだ! 食料を補給しよう!」
たぶんお前が押し付けたんだろ、とか、何だその下手なウソ、とか、さっき吐いたっぽいのに食う気か、とか、モノレールがあることはここからの窓からでも見えるから知っとるわ、とかツッコみたくなったが、それをこらえてみんなで「ハハァ……」と愛想笑いをする。
少し話してわかったが、松岡先生はどうやら花輪や詩緒里や真緒が知る先生と比べてかなりいい加減なところがある、というのが共通認識になりつつあったら。横に木村先生という真っ当な先生がいるせいで、まるで学年主任に授業参観されてる教育実習生のようだ。
少し話してわかったが、松岡先生はどうやら花輪や詩緒里や真緒が知る先生と比べてかなりいい加減なところがある、というのが共通認識になりつつあったら。横に木村先生という真っ当な先生がいるせいで、まるで学年主任に授業参観されてる教育実習生のようだ。
「花輪くん、早く木村先生と合流した方がいいと思うんだけど。」
「そうだねみぎわさん! よし、行こう!」
「そうだねみぎわさん! よし、行こう!」
お前が不安だからだ、とキートン山田の辛辣なツッコミが聞こえてきそうな空気が流れながら、五人は警備室を後にした。すると部屋から出て、五十メートル程の距離だろうか、木村先生はヨタヨタと歩いているのが見えた。
おかしい。花輪は直感で思った。さっきのカメラに映っていた位置から、ほとんど動いていない。どころか、少し後退っている。なぜか?
木村先生は、ポケットから拳銃を出した。そしてその腕の中の赤ん坊――ひまわりへと発泡した。夏休みのスイカ割りのように、赤い水と肉片が散らばる。自分の腕も貫通したのか、抱えていたひまわりの死体を力なく落とす。その一連の光景は、とてもゆっくりとしたものだった。
おかしい。花輪は直感で思った。さっきのカメラに映っていた位置から、ほとんど動いていない。どころか、少し後退っている。なぜか?
木村先生は、ポケットから拳銃を出した。そしてその腕の中の赤ん坊――ひまわりへと発泡した。夏休みのスイカ割りのように、赤い水と肉片が散らばる。自分の腕も貫通したのか、抱えていたひまわりの死体を力なく落とす。その一連の光景は、とてもゆっくりとしたものだった。
「列車に逃げ込めえええええええ!」
その声にはっと皆、我に帰った。
声のした方は、警備室を通り過ぎた先にある駅舎。百メートルは離れているそこに、ちょうどモノレールが止まろうとしていた。そして松岡先生は、そのホームにいた。
声のした方は、警備室を通り過ぎた先にある駅舎。百メートルは離れているそこに、ちょうどモノレールが止まろうとしていた。そして松岡先生は、そのホームにいた。
「アイツいつの間に!」
「逃げたのか!? 一人で脱出を――『パァン』――グアッ!?」
「花輪くん!?」
「大丈夫だよ……」
「逃げたのか!? 一人で脱出を――『パァン』――グアッ!?」
「花輪くん!?」
「大丈夫だよ……」
銃声が現実に引き戻す。肩の痛みがリアルであると示す。
(わからない、なんだ? 木村先生が、赤ん坊を殺して、松岡先生が逃げて、撃たれて……)
「走りなさい! アンタも!」
「走りなさい! アンタも!」
撃たれなかった方の手を真緒が掴んで駆け出す。既にモノレールの扉は閉まりかけていた。
「ボクは生徒を守る!」
松岡先生が叫び、モノレールの中から手を突っ張って扉を開けさせる。
「あー! ダメだー! 力が足りない!」
しかし力負けしてまた閉まりかけていく。
後ろからまた発砲音。
駆け抜けた改札が砕ける。
破片が足を掠めた熱を感じながら。
後ろからまた発砲音。
駆け抜けた改札が砕ける。
破片が足を掠めた熱を感じながら。
「嘘でしょ……」「信じらんない!」「お、置いてかないでええええ!」
「苦渋の決断だあああああああああ!!!!」
「苦渋の決断だあああああああああ!!!!」
そして花輪たちの目の前でモノレールの扉が閉まった。
「みんな、向かいのホームに!」
素早く辺りを見渡した花輪はそう叫んだ。見れば、今出ていったのとは逆方向のモノレールがホームに向かってきている。モノレールならたぶん各停だろうから、あれに乗り込められれば……
「みんな! もう少しだよ! ガンバろう!」
(松岡先生……ひとつだけ貴方に言いたいことがあるんです。)
(松岡先生……ひとつだけ貴方に言いたいことがあるんです。)
柄にもなく大声を上げながら花輪は思った。
(あなたはクソだ。)
【0130前 水族館】
【花輪和彦@こども小説 ちびまる子ちゃん1(ちびまる子ちゃんシリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
死にたくない
●小目標
みんなでモノレールに逃げ込む
【目標】
●大目標
死にたくない
●小目標
みんなでモノレールに逃げ込む
【松岡先生@黒魔女さんが通る!!
チョコ、デビューするの巻(黒魔女さんが通る!!シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
死にたくない
●小目標
助けてくれそうな人を見つけてすぐに戻るからな!
チョコ、デビューするの巻(黒魔女さんが通る!!シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
死にたくない
●小目標
助けてくれそうな人を見つけてすぐに戻るからな!
【川上真緒@泣いちゃいそうだよ(泣いちゃいそうだよシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
死にたくない
●小目標
モノレールに逃げ込む
【目標】
●大目標
死にたくない
●小目標
モノレールに逃げ込む
【細川詩緒里@星のかけらPART(1)(星のかけらシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
殺されたくない
●小目標
モノレールに逃げ込む
【目標】
●大目標
殺されたくない
●小目標
モノレールに逃げ込む
【脱落】
【野原ひまわり@双葉社ジュニア文庫 映画ノベライズ クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん(クレヨンしんちゃんシリーズ)@双葉社ジュニア文庫】
【残り参加者 260/300】
「チッ、この体、動かしにくいな。」
ヨタヨタと歩く木村孝一郎の背後で、片桐安十郎ことアンジェロは悪態をつきながら壁偽を預けて子どもたちへと銃を向けさせていた。
彼のスタンド《アクア・ネックレス》は人間を操ることができる。モノレールに気づかず徒歩で水族館まで歩いてしまったことの腹立ちまぎれにオッサンに取り付いて赤ん坊を殺したが、一度死んだからかオッサンになにかあるからか、普段より操る精度が落ちていた。といってもだんだんとコツはつかめている。もうしばらくすれば完全に制御できるだろう。
彼のスタンド《アクア・ネックレス》は人間を操ることができる。モノレールに気づかず徒歩で水族館まで歩いてしまったことの腹立ちまぎれにオッサンに取り付いて赤ん坊を殺したが、一度死んだからかオッサンになにかあるからか、普段より操る精度が落ちていた。といってもだんだんとコツはつかめている。もうしばらくすれば完全に制御できるだろう。
「泣いてんじゃねえよ、オラ行けや。」
自我を奪いただただ涙を流す木村先生をアンジェロは急かす。お楽しみはこれからだ。
【0130前 水族館】
【木村孝一郎@死神デッドライン(1) さまよう魂を救え!(死神デッドラインシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
???
【目標】
●大目標
???
【片桐安十郎@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
殺す
【目標】
●大目標
殺す