森の中を、一頭の狼がゆっくりと歩いていた。
虎やヒグマが参加しているどころか、鬼やら悪魔やら妖怪やらも参加しているのがこのバトルロワイアル。
今さら狼程度が確認されたところで、驚くようなことではない。
だがこの狼は、ありふれた名もない狼などではない。
かの高名な動物学者・シートンによって後世に伝えられた、伝説的な狼。
「狼王」ロボ。それこそが彼である。
虎やヒグマが参加しているどころか、鬼やら悪魔やら妖怪やらも参加しているのがこのバトルロワイアル。
今さら狼程度が確認されたところで、驚くようなことではない。
だがこの狼は、ありふれた名もない狼などではない。
かの高名な動物学者・シートンによって後世に伝えられた、伝説的な狼。
「狼王」ロボ。それこそが彼である。
ロボの心は、この上なく荒れ狂っていた。
最愛の妻がこざかしい人間の手に落ち、自分もまったく気づかぬうちにとらわれの身となっていた。
その上 人間に飼い慣らされた犬畜生のように首輪を付けられ、見知らぬ地に放された。
誇り高き王にとって、あまりに屈辱的な仕打ちだ。
だが今のロボにとって、屈辱すらもっとも大きな感情ではない。
一刻も早く縄張りに戻り、妻を見つけなければならないのだ。
たとえ、彼女が亡骸となっていたとしても。
最愛の妻がこざかしい人間の手に落ち、自分もまったく気づかぬうちにとらわれの身となっていた。
その上 人間に飼い慣らされた犬畜生のように首輪を付けられ、見知らぬ地に放された。
誇り高き王にとって、あまりに屈辱的な仕打ちだ。
だが今のロボにとって、屈辱すらもっとも大きな感情ではない。
一刻も早く縄張りに戻り、妻を見つけなければならないのだ。
たとえ、彼女が亡骸となっていたとしても。
しかし、ロボには帰る方法がわからない。
先ほど妙な気配を保つ獣が発していた鳴き声は、ロボにはまったく理解できていなかった。
しかしその表情や周囲の反応から、あの獣が闘争を求めていることはなんとなく理解できた。
「帰りたくば殺せ」。獣はそう言っていたのかもしれない。
仮にそうだとすれば、ロボにとっていい話とはいえない。
牛や羊なら、簡単に殺せる。同じ狼でも、ロボと1対1で戦って勝てる相手はそういないだろう。
だが、人間はまずい。
体一つなら狼よりはるかに弱いが、奴らが使う「銃」はロボでさえも簡単に殺せるだけの威力を持っている。
だからこそロボは、決して人間に近づくことはしなかった。
ところがあの場には、今までロボが見たことがないほど大勢の人間がいた。
その全てを殺し尽すなど、いかにロボの頭脳と力でも現実的ではない。
おまけに、この地には銃がそこら中に落ちている。
何個か川まで運んで沈めてやったが、きりがない。
先ほど妙な気配を保つ獣が発していた鳴き声は、ロボにはまったく理解できていなかった。
しかしその表情や周囲の反応から、あの獣が闘争を求めていることはなんとなく理解できた。
「帰りたくば殺せ」。獣はそう言っていたのかもしれない。
仮にそうだとすれば、ロボにとっていい話とはいえない。
牛や羊なら、簡単に殺せる。同じ狼でも、ロボと1対1で戦って勝てる相手はそういないだろう。
だが、人間はまずい。
体一つなら狼よりはるかに弱いが、奴らが使う「銃」はロボでさえも簡単に殺せるだけの威力を持っている。
だからこそロボは、決して人間に近づくことはしなかった。
ところがあの場には、今までロボが見たことがないほど大勢の人間がいた。
その全てを殺し尽すなど、いかにロボの頭脳と力でも現実的ではない。
おまけに、この地には銃がそこら中に落ちている。
何個か川まで運んで沈めてやったが、きりがない。
状況は最悪に近い。
だがこのままではいずれ人間に撃ち殺されるか、寿命を迎えて野垂れ死ぬかだ。
いかに分が悪かろうとも、人間を殺すことで縄張りに帰るための道が開ける可能性にかけるしかない。
ゆえにロボは、殺意をみなぎらせる。おのれの命よりも大切なもののために。
だがこのままではいずれ人間に撃ち殺されるか、寿命を迎えて野垂れ死ぬかだ。
いかに分が悪かろうとも、人間を殺すことで縄張りに帰るための道が開ける可能性にかけるしかない。
ゆえにロボは、殺意をみなぎらせる。おのれの命よりも大切なもののために。
◆ ◆ ◆
「狼ィ!? 殺し合いっちゅうだけであれやのに、猛獣までおるんかいな!」
予想外の遭遇に動揺を見せる四道。ロボに、その隙を見逃す理由はない。
迷わず大地を蹴り、四道に突進。
その爪で、四道の肩を切り裂く。
迷わず大地を蹴り、四道に突進。
その爪で、四道の肩を切り裂く。
「があっ!」
四道が、苦悶の声を上げる。
獣が相手であれば、このまま追撃をしかけ一気に仕留めるところ。
だが、相手は人間。ロボはすかさず距離を取り、木の後ろに身を隠す。
獣が相手であれば、このまま追撃をしかけ一気に仕留めるところ。
だが、相手は人間。ロボはすかさず距離を取り、木の後ろに身を隠す。
「やってくれたなあ!」
怒鳴り声をあげながら、四道は拳銃を発砲する。
だがすでに身を隠したロボには、弾丸は届かない。
だがすでに身を隠したロボには、弾丸は届かない。
やはり銃を持っていたか、とロボは思う。
あれに一回でも当たってしまえば、一巻の終わり。
身を隠しながら戦うという選択肢は正解だった。
だが相手は、銃の扱いに慣れていないようだ。
身を隠さなくても当たっていなかったほど、狙いがずれていたのがその証拠。
あるいは、ケガが原因か。
どちらにしろ、銃弾に当たる可能性は低そうだ。
だが、「低い」と「ゼロ」は違う。
ロボにとって銃が脅威であるという事実には、何ら変わりがない。
大胆に、それでいて慎重に。
ロボは四道に一撃を加えては、すぐに隠れるというヒットアンドアウェイを繰り返す。
あれに一回でも当たってしまえば、一巻の終わり。
身を隠しながら戦うという選択肢は正解だった。
だが相手は、銃の扱いに慣れていないようだ。
身を隠さなくても当たっていなかったほど、狙いがずれていたのがその証拠。
あるいは、ケガが原因か。
どちらにしろ、銃弾に当たる可能性は低そうだ。
だが、「低い」と「ゼロ」は違う。
ロボにとって銃が脅威であるという事実には、何ら変わりがない。
大胆に、それでいて慎重に。
ロボは四道に一撃を加えては、すぐに隠れるというヒットアンドアウェイを繰り返す。
「ふ、ふざけんなや……。わしはこんなところで死ぬわけには……」
満身創痍になりながらも、四道はまだ諦めてはいなかった。
ひどい出血と痛みで、もはや銃を構えることすら満足にできない。
しかしだからといっておのれの死を受け入れられるほど、彼は潔い人間ではなかった。
ひどい出血と痛みで、もはや銃を構えることすら満足にできない。
しかしだからといっておのれの死を受け入れられるほど、彼は潔い人間ではなかった。
「なんとか……なんとか逆転する方法を……」
途切れそうになる意識を必死でつなぎ止めながら、四道は森の中を移動する。
考えなしの逃走ではない。
銃がそこら中に置かれているこの地なら、一発逆転が可能な武器を見つけられるかもしれないと考えてのことだ。
そして彼の目は、本当に強力な武器が置かれているのを見つけ出す。
RPG-7。武器としての区分でいえば、ロケットランチャー。
これなら、多少狙いがはずれても相手を吹き飛ばすことができる。
考えなしの逃走ではない。
銃がそこら中に置かれているこの地なら、一発逆転が可能な武器を見つけられるかもしれないと考えてのことだ。
そして彼の目は、本当に強力な武器が置かれているのを見つけ出す。
RPG-7。武器としての区分でいえば、ロケットランチャー。
これなら、多少狙いがはずれても相手を吹き飛ばすことができる。
「お返しや! 人間嘗めたらあかんで!」
残された力を振り絞り、四道はRPG-7を構える。
そして引き金を引いた、その刹那。
ロボの蹴り飛ばした石が、四道の手を直撃した。
その衝撃と痛みで、四道はRPG-7から手を放してしまう。
結果として、照準は下を向く。
そして引き金を引いた、その刹那。
ロボの蹴り飛ばした石が、四道の手を直撃した。
その衝撃と痛みで、四道はRPG-7から手を放してしまう。
結果として、照準は下を向く。
「そんな……!」
四道の最期の言葉は、爆音に飲み込まれた。
◆ ◆ ◆
ギリギリの勝利だった、とロボは振り返る。
彼が人間であれば、顔に冷や汗を浮かべていたであろう。
まさか、あんなにすさまじい威力の銃が存在するとは思わなかった。
上手く石が相手の手に当たり、たまたま自滅する格好になった。
結果としては、運に大きく助けられたことになる。
ほんの少し運命の歯車がずれていれば、黒焦げになっていたのはロボの方だろう。
この地で生き残るのは、想像していたよりもさらに困難なのかもしれない。
それでも、ロボは止まるわけにはいかない。
全ては、愛するもののために。
彼が人間であれば、顔に冷や汗を浮かべていたであろう。
まさか、あんなにすさまじい威力の銃が存在するとは思わなかった。
上手く石が相手の手に当たり、たまたま自滅する格好になった。
結果としては、運に大きく助けられたことになる。
ほんの少し運命の歯車がずれていれば、黒焦げになっていたのはロボの方だろう。
この地で生き残るのは、想像していたよりもさらに困難なのかもしれない。
それでも、ロボは止まるわけにはいかない。
全ては、愛するもののために。
【0100 森】
【ロボ@シートン動物記 狼王ロボほか@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
生き残り、縄張りに帰る
【目標】
●大目標
生き残り、縄張りに帰る
【脱落】
【四道健太@ミステリー列車を追え! 北斗星 リバイバル運行で誘拐事件!?(ミステリー列車を追え!シリーズ)@角川つばさ文庫】
【四道健太@ミステリー列車を追え! 北斗星 リバイバル運行で誘拐事件!?(ミステリー列車を追え!シリーズ)@角川つばさ文庫】
【残り参加者 250/300】