北条沙都子は電信柱の陰で震えていた。
その手に握られた拳銃は、濃い硝煙をあげていた。
その手に握られた拳銃は、濃い硝煙をあげていた。
気がつけば知らない場所にいて。大勢の子供たちと共に変なウサギに殺し合えと言われて。そして刀を振り回す何人もの侍が現れた。
これだけなら変な夢としか思えない。
だが沙都子が公園のテーブルで拾った拳銃が、さっきの光景が単なる夢ではないと思わせた。
どこかから聞こえてきた銃声にあてられて、それを拾った沙都子。
エアガンかと思って撃鉄を起こし、引き金を引くと、バン!と音を立てて爆発が起こり、狙いをつけた公園のゾウの遊具に命中した。哀れにも脳天を撃ち抜かれて煙まであげるゾウの前で、思わずへたり込む。
これだけなら変な夢としか思えない。
だが沙都子が公園のテーブルで拾った拳銃が、さっきの光景が単なる夢ではないと思わせた。
どこかから聞こえてきた銃声にあてられて、それを拾った沙都子。
エアガンかと思って撃鉄を起こし、引き金を引くと、バン!と音を立てて爆発が起こり、狙いをつけた公園のゾウの遊具に命中した。哀れにも脳天を撃ち抜かれて煙まであげるゾウの前で、思わずへたり込む。
沙都子はこわかった。
泣きたかった。助けを求めたかった。
だがそれを、残った理性でこらえる。殺し合いだと実感したら、大きな声を出すのはまずいことに考えが至った。
行方不明となった兄のためにも、自分は毅然としたレディでなければと。涙を流しているヒマなんてないと。震える足に力を込めて立ち上がる。
泣きたかった。助けを求めたかった。
だがそれを、残った理性でこらえる。殺し合いだと実感したら、大きな声を出すのはまずいことに考えが至った。
行方不明となった兄のためにも、自分は毅然としたレディでなければと。涙を流しているヒマなんてないと。震える足に力を込めて立ち上がる。
だが彼女は一つ失念していた。
自分がさっき撃った銃の音を誰かが聞く可能性を。
自分がさっき撃った銃の音を誰かが聞く可能性を。
さて、ここで沙都子が現在いるロケーションについて説明しよう。
このロワでは参加者365人のうち、四ヶ所ほどに約70名ずつを、それ以外の会場全域に約70名を初期配置している。
沙都子の親友である梨花や狼王ロボがいるのが、森林と古い住宅のある『北部』。
部活仲間のレナ・魅音・圭一、マーダーでは虹村形兆や弱井トト子などがいるのが、オフィス街と新興住宅地のある『南部』。
メタモンやエリン・竈門炭治郎などがいるのが、港に近く、公園や海上の豪華客船のある『東部』。
ジンが信長やおそ松さんたちを殺し、ケロロ軍曹が謎のピラミッドなどを見つけたのが、雑多に様々な建造物が乱立する『西部』である。
このロワでは参加者365人のうち、四ヶ所ほどに約70名ずつを、それ以外の会場全域に約70名を初期配置している。
沙都子の親友である梨花や狼王ロボがいるのが、森林と古い住宅のある『北部』。
部活仲間のレナ・魅音・圭一、マーダーでは虹村形兆や弱井トト子などがいるのが、オフィス街と新興住宅地のある『南部』。
メタモンやエリン・竈門炭治郎などがいるのが、港に近く、公園や海上の豪華客船のある『東部』。
ジンが信長やおそ松さんたちを殺し、ケロロ軍曹が謎のピラミッドなどを見つけたのが、雑多に様々な建造物が乱立する『西部』である。
沙都子がいるのは『南部』。
位置的には、圭一が最も近い知り合いだ。
そして、圭一と近いということは銃を乱射したトト子とも近いということである。なにせ、さきほど彼女が聞いたのは、トト子が乱射した銃声の一つだ。
つまり、彼女もまた銃声の連鎖に加わってしまったということであり、その結果は直ぐに銃声で現れた。
近場で聞こえた新たな銃声。それにおびえて大通りから入った道を恐る恐る歩いていたところで、少女に出くわす。手には当然、銃だ。
慌てて近くの電信柱に隠れる。同じように隠れた少女と、次の行動も同じだった。
位置的には、圭一が最も近い知り合いだ。
そして、圭一と近いということは銃を乱射したトト子とも近いということである。なにせ、さきほど彼女が聞いたのは、トト子が乱射した銃声の一つだ。
つまり、彼女もまた銃声の連鎖に加わってしまったということであり、その結果は直ぐに銃声で現れた。
近場で聞こえた新たな銃声。それにおびえて大通りから入った道を恐る恐る歩いていたところで、少女に出くわす。手には当然、銃だ。
慌てて近くの電信柱に隠れる。同じように隠れた少女と、次の行動も同じだった。
「「いやあああああぁっ!!」」
2人の少女の悲鳴がハモる。そして発砲。互いに目をつむり、両手の指で引き金を引きまくる。戦いは10秒もせずに終わり、立っていたのは。
「……あ、あの、信じてもらえるか、その、撃ったあとじゃ、信じてもらえないと思いますけれど、殺し合う気はありませんわ……」
「わ、わたくしもですわ……」
「わ、わたくしもですわ……」
両者だった。
ゆっくりと開いた目の前には、同じように震える手で、弾の切れた銃の引き金を引きつづける少女を、互いに認めた。
3mほどの距離で撃ち合った弾丸はどちらにもかすりもせずに、遥か彼方の誰かに当たったり当たらなかったりした。
ゆっくりと開いた目の前には、同じように震える手で、弾の切れた銃の引き金を引きつづける少女を、互いに認めた。
3mほどの距離で撃ち合った弾丸はどちらにもかすりもせずに、遥か彼方の誰かに当たったり当たらなかったりした。
「お願いします……さっきのは忘れてください……」
「い、いいのですよ。お互い様ですし。」
「ふだんはあんなに取り乱したりしないんですよ。なのになんでこんな……」
「い、いいのですよ。お互い様ですし。」
「ふだんはあんなに取り乱したりしないんですよ。なのになんでこんな……」
ハアアアアアとクソでかいため息をつく、全身ピンクのフリフリの少女を前に、沙都子は「ため息をしたいのはわたくしでしてよ」と言いながら、同じようにため息をした。
少女の名前は、秋野真月(劇場版)。便宜的に劇場版とついているが、もちろん秋野真月が本名であり登録名称だ。
2人はあの銃撃戦のあと、近くのコンビニに入り込むと、とりあえずバックヤードに身を落ち着けた。
そして気づいたが、真月はどうやらお嬢様だ。沙都子とは違って素でお嬢様口調だし、来ている服も趣味は悪いが高級感がある。なにより立ち振舞に気品がある。今現在の惨状が無ければ嫉妬していただろう。
少女の名前は、秋野真月(劇場版)。便宜的に劇場版とついているが、もちろん秋野真月が本名であり登録名称だ。
2人はあの銃撃戦のあと、近くのコンビニに入り込むと、とりあえずバックヤードに身を落ち着けた。
そして気づいたが、真月はどうやらお嬢様だ。沙都子とは違って素でお嬢様口調だし、来ている服も趣味は悪いが高級感がある。なにより立ち振舞に気品がある。今現在の惨状が無ければ嫉妬していただろう。
「とりあえず、わたくしたちに銃は使えそうにありませんわね……え〜……あっ、そうだ。のどかわいた、のどかわきませんこと?」
このままでは話も聞けないので、強引に気分を返させようと唐突なことを言う。
「お気づかい」うんぬんとダウナーな声で言う真月をほっといて飲み物を調達すると、「おまたせしましてよ」と強引にペットボトルを頬にあてる。
「ピャアッ!?」と悲鳴をあげた真月を放っといて、沙都子はフタを開けた。
そして炭酸飲料をカラカラの喉へと流し込んだところで、その声は聞こえてきた。
「お気づかい」うんぬんとダウナーな声で言う真月をほっといて飲み物を調達すると、「おまたせしましてよ」と強引にペットボトルを頬にあてる。
「ピャアッ!?」と悲鳴をあげた真月を放っといて、沙都子はフタを開けた。
そして炭酸飲料をカラカラの喉へと流し込んだところで、その声は聞こえてきた。
『俺は台Q小学校4年1組木原仁! こんな殺し合いなんかにのらねえぜ! 見てろツノウサギ! 俺がお前ぶっ倒してこの殺し合いから脱出してやる!』
「ブボッホ!?」
「ブボッホ!?」
名前を名乗ったあたりで沙都子は吹き出すと、肺と鼻へと入った炭酸に盛大にむせこんだ。ほとんど何言ってるかわからなかったが、体育の時に使う拡声器か何かで叫んでいる。
「なんてバカなことを。あれじゃ殺し合いに乗った人に狙われるでしょうに!」
「いえ、理にかなっているわ。」
「は、いつの間に!?」
「いえ、理にかなっているわ。」
「は、いつの間に!?」
横を見ると、真月がキリッとした顔で腕を組み立っていた。実は沙都子のさっきのちょっとしたイタズラで、余裕の無い自分がみじめになり振り切ったのだが、それを沙都子は知らない。
「この殺し合い。一見個人戦に見えて、実は団体戦。銃があれば子供でも大人を殺せるなら、ランチェスターの法則により人数の多さは強さと同じ意味を持つ。」
(とつぜん賢くなってどうしたんですの?)
「そしてこの銃の量。襲いに行こうにも、当然放送している人間も銃を持っていると考えるべき。一発でも当たれば命にかかわる以上、あの呼びかけに答えられるのは、元からの知り合いかよほどの蛮勇を持つかね。」
「な、なんて的確で冷静な判断力ですの……
(とつぜん賢くなってどうしたんですの?)
「そしてこの銃の量。襲いに行こうにも、当然放送している人間も銃を持っていると考えるべき。一発でも当たれば命にかかわる以上、あの呼びかけに答えられるのは、元からの知り合いかよほどの蛮勇を持つかね。」
「な、なんて的確で冷静な判断力ですの……
思わず驚き役のようなことを言う沙都子。が、もっと驚くことはすぐその後起きた。
『ちょっと待ちなさい! 私は第一小学校5年1組一路舞! ただいまから『みんなで殺し合いから脱出しよう委員会』を結成します! 委員長は私、一路舞が務めます。みなさん、一緒に殺し合いから脱出しましょう!』
『はあ!? なんだよそれっ! 後から出てきてリーダーになるんじゃねえ! みんな! 俺と一緒に脱出しようぜ!』
『あなたは4年生でしょう! 上級生がリーダーになるのは当然でしょ!』
『やだ! なんか先生に告げ口しそうな女子だし!』
『女性差別だわ! こんなポリティカルコネクトに反する人間に、指導者の資格はありません!』
『年上だから従えってのは差別じゃないのかー! 俺1回無人島行ったことあるからプロだぞ!』
『はあ!? なんだよそれっ! 後から出てきてリーダーになるんじゃねえ! みんな! 俺と一緒に脱出しようぜ!』
『あなたは4年生でしょう! 上級生がリーダーになるのは当然でしょ!』
『やだ! なんか先生に告げ口しそうな女子だし!』
『女性差別だわ! こんなポリティカルコネクトに反する人間に、指導者の資格はありません!』
『年上だから従えってのは差別じゃないのかー! 俺1回無人島行ったことあるからプロだぞ!』
「え、なにこれは」とドン引きする沙都子の耳に、学校の放送のような女子の声と、メガホンのような男子の声が響く。
横の真月を見る。さっきの姿勢のまま硬直していた。
横の真月を見る。さっきの姿勢のまま硬直していた。
「……人数は強さですが、寡兵が連携によって打ち破ることもある。統率の取れない大軍が敗北するのは古今東西の戦史の通り……」
「『烏合の衆』、ですわね。」
「『烏合の衆』、ですわね。」
今度は沙都子もわかる話が出てきた。あんな感じの人間が100人いようが200いようが、頼れるとは微塵も思わない。
「……真月さん、ここから離れませんこと。あのバカな方たちに巻き込まれたらろくなことになりませんわ。絶対に。」
言うが早いか、沙都子は買い物カゴに使えそうな商品を入れていく。ヤバい人とは関わったら負けだ。
『みんな聞いてくれ! さっき近くで銃声が聞こえた! 近くに殺し合いに乗ったやつがいる! このままバラバラじゃ、一人ずつやられちまうぜ!』
「……その銃声って私たちのよね……」
「……真月さん?」
「……真月さん?」
『だまされてはいけません! その銃声が彼が起こしたものという疑いがあるわ! 甘い言葉で人を集めて殺す気かもしれない!』
『なっ!? ふざっけんな! 俺じゃねぇ! 俺が持ってるのはグレネードランチャーだ! そうだ、お前が撃ったのか! お前こそ人を集めて殺そうとしてるんじゃねえだろうな!』
『なっ!? ふざっけんな! 俺じゃねぇ! 俺が持ってるのはグレネードランチャーだ! そうだ、お前が撃ったのか! お前こそ人を集めて殺そうとしてるんじゃねえだろうな!』
「私たちのせいで、あんなに険悪に……」
「真月さん? 真月さーん??」
「真月さん? 真月さーん??」
『私は今まで、一度も銃には触っていません! 武器を持ってるなんて銃刀法違反だし、落とし物を略取するなんて遺失物法違反だわ! 皆さん、彼は犯罪者です!』
『落ちてるもんは何でも使うのがサバイバルだろ! てか警察とかいねえたぶん! 大人に頼らずに自分でなんとかしねえと!』
『あなたを銃刀法違反及び遺失物法違反で訴えます。理由はもちろんお分かりですね? あなたが放置されている物を略取し、武器を所持したからです。 覚悟の準備をしておいて下さい! 近いうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用で来てもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい! あなたは犯罪者です! 刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい! いいですね!!』
『なんで無人島に裁判所があるんだよ! 殺し合いはどうなってんだ殺し合いは! お前も学校の機械を平気で使ってんじゃねえか! わかってんのか!? 脱出するには、どんなものでも使わねえといけないだろうがよ! 犯人扱いかよ!? くそったれ!』
『落ちてるもんは何でも使うのがサバイバルだろ! てか警察とかいねえたぶん! 大人に頼らずに自分でなんとかしねえと!』
『あなたを銃刀法違反及び遺失物法違反で訴えます。理由はもちろんお分かりですね? あなたが放置されている物を略取し、武器を所持したからです。 覚悟の準備をしておいて下さい! 近いうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用で来てもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい! あなたは犯罪者です! 刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい! いいですね!!』
『なんで無人島に裁判所があるんだよ! 殺し合いはどうなってんだ殺し合いは! お前も学校の機械を平気で使ってんじゃねえか! わかってんのか!? 脱出するには、どんなものでも使わねえといけないだろうがよ! 犯人扱いかよ!? くそったれ!』
「私、あの二人を止めます。」
「ウッソでしょ真月さん!?」
「女の子の方は武器を持ってないし、このままだとあの二人で、さっきの私たちのように撃ち合うことになるかもしれません。」
「いや、ならないと……は、言い切れませんけど、そうなったとしても自業自得でしてよ。」
「そういう訳にも行きません。あの二人の声を聞いた参加者はどう思います? 脱出しようと言っている二人が口汚く罵り合っているのを見て。そのキッカケが私たちにあるのに、無視することなんてできません。」
「ウッソでしょ真月さん!?」
「女の子の方は武器を持ってないし、このままだとあの二人で、さっきの私たちのように撃ち合うことになるかもしれません。」
「いや、ならないと……は、言い切れませんけど、そうなったとしても自業自得でしてよ。」
「そういう訳にも行きません。あの二人の声を聞いた参加者はどう思います? 脱出しようと言っている二人が口汚く罵り合っているのを見て。そのキッカケが私たちにあるのに、無視することなんてできません。」
沙都子は思った。どこまでお嬢様なんだと。
そんなこと関係無いと逃げてしまえばいいのに。自分とは違うと、改めて思い知らされる。本当に真月はお嬢様なのだと。
そんなこと関係無いと逃げてしまえばいいのに。自分とは違うと、改めて思い知らされる。本当に真月はお嬢様なのだと。
(……あなたとは、住む世界が違いましてよ……)
沙都子は静かに買い物カゴを持ったまま後ずさる。このまま真月とあんな場所に行くなんてゴメンだ。バックレよう。チラッと真月の横顔を見て、逃げるタイミングを伺う。グッバイ真月、心の中でそう言い背を向けて走り出そうして、沙都子は真月の顔を二度見した。
(ものっっっっっすごい嫌そうな顔をしてますわ……)
「木原仁、台Q小学校の4年生だ。」
「一路舞、第一小学校の5年生です。5年生です。」
「秋野真月、6年生です。家は秋好旅館という宿泊業を営んでおりまして私も経営を学んでいます。浅学菲才の身ではありますが、皆様よろしくお願いします。」
「「か、勝てない……」」
「あ、北条沙都子ですわ。」
「一路舞、第一小学校の5年生です。5年生です。」
「秋野真月、6年生です。家は秋好旅館という宿泊業を営んでおりまして私も経営を学んでいます。浅学菲才の身ではありますが、皆様よろしくお願いします。」
「「か、勝てない……」」
「あ、北条沙都子ですわ。」
5分後、自己紹介で論争を黙らせると真月は対主催グループのリーダーとなった。
【0100 『南部』小学校】
【北条沙都子@双葉社ジュニア文庫 ひぐらしのなく頃に 第三話 祟殺し編 下(ひぐらしのなく頃にシリーズ)@双葉社ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出する
●中目標
部活メンバーと合流する
●小目標
しかたないので真月についてく
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出する
●中目標
部活メンバーと合流する
●小目標
しかたないので真月についてく
【秋野真月@若おかみは小学生! 映画ノベライズ(若おかみは小学生!シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
脱出する
●小目標
四人で話す
【目標】
●大目標
脱出する
●小目標
四人で話す
【木原仁@そんなに仲良くない小学生4人は無人島から脱出できるのか!?@小学館ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
脱出する
【目標】
●大目標
脱出する