ああ……何ということだ……いってしまった。
右手も左手も右足も左足も全部。
千切れてしまった。私の体が持っていかれてしまった。
地面に這う自分の姿が、とても惨めでしょうがない。
傷口から見える緑のカビが気持ち悪い。
口にくっつく泥や砂が苦い。
くやしい。
チョコラータに復讐したい。
荒木に復讐したい。
ここにいる奴ら全員を同じ目に合わせてやりたい。
今の私はもう人間では無くなってしまった。
命が尽きるのも時間の問題だ。
でもこのままおっ死んじまうようなカスにならない。
ギャンブラーにとって大事な両腕を失ったという、この恨みをはらしてやるッ!
必ず、必ず……はらしてやるッ! どいつもこいつも道連れだ!
復讐してやるぞ! 『復讐祭り』だ!
私の体にくっついているこのカビは繁殖能力だけは優れている。
周りにある植物もどんどん食い尽くしている。
つまり、フフフ……ハハハ
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
ウフフフフッフッフフッフフフッフフフッフフフフ
エヘヘヘヘヘヘッヘヘヘヘヘヘッヘヘヘヘヘヘヘッヘヘヘヘヘヘ
なァァァァるほどォォォォォォォォォオッォォォォォォォォォ~~~
俺は芋虫さんでしたァァァァァいつの間にかァァァッァァァアァァァァァ~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!

◇ ◇ ◇

「さてプッチ。俺とお前、お互いの情報はあらかた交換しあった。そろそろ本題に入ろうじゃないか」

月明かりもほとんど入らぬ暗い部屋で、私とエシディシがテーブルを挟んで座っている。
灯りをつけてもよかったのだが、敵からの襲撃の的になりやすいと考えたので止めた。
うっすらと見える彼の姿からは、独特のオーラが感じ取れる。

「ああ……問題は大きく2つ。1つは、我々自身のこと」
「その通りだ。俺たちは時代を越えてこの場に集結している。
 俺たちの世代、プッチたちの世代、少なくとも2つの違う時代の人間が存在している」

エシディシは手元からリストを取り出し、机の上に置く。
このリストは、『ジョースター家とそのルーツ』が載っている。彼の支給品の1つ。
私が渋る彼を説得してバッグから取り出させたのだ。
このリストにはジョージ・ジョースターⅠ世から空条徐倫までの一族が分かり易く解説されている。
年代別、血縁関係は勿論。わが親友DIOがジョースター家の誰を殺したのかまではっきり載っているのだ。

「最初はお前を疑っていたが……俺がこのリストを出す前に、お前が『DIO』という男のことを話してくれてよかった。
 おかげでお前が未来の人間であることに信憑性が出てきたからな」

エシディシの言葉に私は相槌を打つ。
だが疑いを解消したのは私も一緒だった。
柱の男という存在を信じたわけではないが、少なくとも彼は過去の世界からきた人間に違いない。
空条徐倫の先祖、ジョセフ・ジョースターを知っていたのだから。

「リストを鵜呑みにすれば……この世界には1800年代後半から2000年代前半の人間が集結していると考えていいだろう」
「我々に与えられた名簿には、ジョースターの名前が複数、飛び飛びで記載されている。
 ジョースターの名前を“区切り”とすれば、区切りの間に載っている名前は、区切りの間の時代の人間なのだろう。
 例えばジョナサン・ジョースターとリサリサ(エリザベス・ジョースター)とジョセフ・ジョースター。
 この間に名前が載っているやつらは君の時代の人間。空条徐倫以降の名前に載っている者は私の時代の人間。
 これは間違いない。ほとんどが私の顔見知りだからな。」

「気になるのはこの“ジョルノ・ジョバァーナ”という男だが……DIOはジョースターの血統なのか?」
「いや。DIOはジョナサンの頭以外の肉体を奪い、吸血鬼として私と生活していた。
 つまり生まれる子供はジョナサンの血を引いている、と考えても間違いではない」

成るほど……と、エシディシが頷く。
ここまでは私も概ね彼と同じ考えだ。
このリストを見る限り、ジョースターの血統は8人。
ジョージ、ジョナサン、リサリサ(エリザベス)、ジョセフ、空条承太郎、ヒガシカタ・ジョースケ、ジョルノ、空条徐倫。
このジョルノという少年はDIOの子供なのか……迷うところだ。
そしてDIO。何故か本名のディオ・ブランドーとして載っており、ジョナサンの近くに名前がある。
これは……ひょっとするとひょっとするかもしれない。
彼ら2人は、本人に会ってみないことには何とも言えないな。

「時を越えたなどとは、俄かには信じがたいな」
「エシディシ、僕たち2人が疑っていること、それが何よりの証拠じゃないか? それに、DIOは“時を止めることが”出来る」
「それが2つ目の問題だな。荒木も同等の能力者だとして――果たしてどんな能力者なのか? 」
「奴が時を操れる能力を持っているとしたら、可能性はいくつかある。
 ①時代を越えて移動ができる。②時代を越えて人を集めることができる。思いつくだけでもキリがないな」
「だが付け入る隙は無いわけではない。なぜならスタンド能力は、“1人1能力”だ」

私とエシディシはニヤリと口の両端を曲げ、クックックと笑いあう。
荒木の素性はまだまだ読めない所が多いが、所詮は薄っぺらい藁の家。
我々2人の深淵なる野望に付け入る余地などない。

「……さて、月明かりが少し目立ってきたな。窓に差し込む光の量が増えてきた」

エシディシが椅子から立ち上がり、それとなく窓から距離をとった。
こうして改めて見てみると、かなり大きな体だ。
焔の流法を操るという能力を惜しげもなく見せてくれる堂々さはDIOのカリスマに通ずるものがある。
だから私も、ホワイトスネイクの能力を彼に公開した。
それがお互いが協力して生きていく上で、大事なものとわかっていたからだ。

「……な、なんだッ!? おいプッチ、これもスタンド能力なのか?」

しかし羨望の眼差しを向けている私をよそに、エシディシは焦っていた。
月明かりは別に苦手ではないのだが、エシディシが焦るということは、それなりのことなのだろう。
私は彼の代わりに窓から顔を出した。

◇  ◇  ◇

「カビだ……」

プッチが唖然とした顔で下界を見ている。
カビというのはあれか? 藍藻の類の黴のことか?石や草木にはえるあの?
そんなものが一体何だというのだ。

「待てエシディシ! むやみに顔を出すんじゃないッ!」

俺はプッチの静止の声も無視して窓から身を乗り出す。
別にカビなどどうってことはない。
スタンド攻撃であろうとなかろうと、俺には関係のない話……だ!?

「エシディシィィィィ!!」
「……NNNNMUOHHHHHHHHHH!!」

突如俺の体からはえるカビの大群。
視界を塞がれた俺はたまらず窓から飛び降りた。
プッチがカビを恐れているので、奴にカビがかからぬように、と考えたつもりだった。
しかしカビの勢いは止まらない。俺の体を緑で埋め尽くしてゆく。
完全に視界を失った俺はしこたま頭を地面をぶつけた。

「ぐおッ! 」
「エシディシ意識はあるか!私の話を聞いてくれ!」

プッチに大丈夫のサインを送りながら、俺はプッチの話に耳を傾ける。
ただの人間ならここでお陀仏だろうが……俺は柱の男の男だ。この程度では死なん。

「前に本で読んだことがある……カビという生き物は自分の生息範囲を広げるために動物や昆虫に寄生すると!
 そして動物がカビの繁殖に適した場所に移動すると、奴らは爆発的に育ち、栄養分として殺すんだ!
 ただのカビがこの家の周りの植物にこれだけ繁殖するはずがない! おそらくはスタンド攻撃!
 君の体に突然カビが繁殖しだしたのがその証拠! いつの間にか家の周りまで射程距離が伸びていた!
 このカビは……対象者の位置がより下になると繁殖が始まるんだ!だから急いで『あれ』を使ってくれ!」

……よぅくわかった。
実に頭がいいじゃないかプッチ。手元に本でもあるのかってツッコミたいくらいだがな。
だがおかげでわかった。このままだと俺たちはこの家から脱出できなくなる。
『あれ』を使えばいいんだな?さっきお前が言ってた『あれ』を使えば。

「怪焔王の流法!! 」
「受け取れエシディシ! 」

俺の全身から発せられる熱でカビたちを燃やし尽くす。
カビは熱には強いが、所詮は藻。燃やしてしまえばよい。
俺はそのままプッチが投げた『鍵』を受け取り、一直線に走り出した。

「その扉を開けて、中にある差込口に鍵を刺せ! そうすれば動くはずだ! 」

プッチの指示どおりに従い、俺はそれを動かす。
こんなものが未来の時代にあるとは、2000年前にはこんな物はなかったのにな。
イタリアに行った時に見た物と形が少々似ているような気もするが。
とりあえず、乗るとしよう。操縦方法をプッチに仰がなくては……んん!?

「ヘリコプターの操縦方法は本で読んだことがあるッ! そのまま私の言うとおりに操縦して側まで来てくれ! 」
「ちょっと待ってくれプッチ! こいつは一体何だッ!」

◇  ◇  ◇


フヘヘ……痛ェ……痛ェよ~~~~~~。
ねぇみんなぁ~~ゲームしない? ポーカー、ブラックジャック、バックギャモン、バカラ……どれも楽しいよォォォォ?
僕に両手は千切れちゃったからぁ~~~もう何も出来ないんだけどねェェェェェ~~~。


「なぁプッチ、こいつは一体何なんだ? カビのスタンド能力者なのか?」
「おそらく犠牲者だ。両手両足が家の周りに配置されてた。カビに食い殺されたせいだろう」

ウヒヒヒヒそうでェェェェす。
僕ちんの両手と両足はァァァァチョコラータ君のスタンドが近くの家に目掛けて投げちゃったんですゥゥゥ。
多分家に誰かいると考えたんだろうねぇぇ~~僕ちんちゃんと確認しに見に行ってよかったァァァ。
でもねェェェ不思議なのォォォたまたま家の側のヘリコプターに近づいたらねェェェ……。

「ところでエシディシ、何もこいつを一緒に連れてくる必要はなかったんじゃないか?」
「カビは正直こりごりだが、こいつは使える。考えてもみろよ。
 このカビまみれの爆弾を空から街中に投げ込んでやったら……どうなると思う?」
「パニックになるだろうな」
「それよ。俺たちは上空にいるからカビの脅威はない。こうやって俺が手で持って窓の外からカビ爆弾を出している間はな」

お空に飛んじゃってるのォォォィヒヒヒコココココカカカカカキキキキキキキポヒェ~~。
綺麗な眺めでしゅねぇぇえぇぇ。

「私の服に着いていたカビは、君が燃やしてくれたおかげで殺菌された。だが油断するな。この手のスタンドは厄介だぞ」
「ああわかっているさ。手についたカビを即座に燃やせる俺だからこその手段だから……ん!?」

ワァァァァ何ですかァァァ綺麗なお星様ですねェェェ地面に衝突しちゃったのかなぁぁぁ?
あ~んな大きいお星様ァァ~一体何なんだろォォ宇宙かなァァァうつーじんのしゅーらいかなァァァァ?

「あんな所で隕石衝突か……荒木のやつ、何を企んでるんだ?」
「……エシディシ、あの流れ星が墜落したあたりに投下しよう」
「MM?まぁ悪くはないが何か心当たりはあるのか?
 だとすれば進行ルートに気をつけろよ。この機械の鳥の騒音は夜でも目立つからな」
「ああ、君は知らなかったんだったな。いいかい? スタンドにはね、隕石も使いこなす能力もあるんだ。
 もしやと思ったが、荒木は私のコレクションにも手を出しているらしい」
「確かホワイトスネイクというスタンドを抜き取る能力だったな。隕石を落とすスタンドを前に抜き取っていたのか?」
「まぁアレは手に余っていたしさほど問題じゃない。僕があの場を目指す理由は、自分の時代の人間心理を考慮したからだ」

アハハ……イヒヒ……ウフフ……エヘヘ……わかったぞぉ~ダービーわかっちゃったぁ~~。
これは夢なんだよォ~~~何もかもォォォだってェェェこのボクがァァァ賭けで負けるわけないもォォォォん……。
そうだァァァこれは夢なんだァァァバンザァーイッ!!







「野次馬根性という言葉を知ってるかい? 」





【?-?(C-10の森林奥の家のアヴドゥルの隠れ家からどこかへ)-上空/1日目 黎明】
【純白の大蛇と炎の策士とカビ爆弾 in スカイ・ハイ】

【エンリコ・プッチ】
[時間軸]:JC6(69)巻、ヤドクガエルに“破裂する命令”をした直後
[状態]:健康 腕の辺りの服がちょっと燃えてる
[装備]:ヘリコプターで運転中 ※燃料には限りがあるが、C-10からD-2、D-3あたりまで飛ぶ量は充分にある。
[道具]:支給品一式、ヘリコの鍵(ヘリコプターはコミックス60巻でチョコラータが乗ってたもの)
    不明支給品0~2(確認はしてます)
[思考・状況]
基本行動方針:ディオ&ジョルノのもとへ、天国へ
1.ゲームへの参加方針という意味で無理に出歩くつもりはない。
  が、面白そうなのでカビ爆弾(ダービー)を鉄塔付近(D-2、D-3あたり)に落としてみよう。
2.こいつ(エシディシ)は良い奴のようだ。しばらく一緒にいてみよう。もっと情報交換をしたい。
3.ディオとジョルノに会いたいが、時代が違いそうで不安。
4.ジョースター一族はチャンスがあれば抹殺(無理はしない)。


【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:健康、ちょっとハイな気分。ヘリコプターの窓から手を出してる(ダービーを持ってる)
[装備]:ヘリコプターに搭乗中
[道具]:支給品一式、『ジョースター家とそのルーツ』リスト(JOJO3部~6部コミックスの最初に載ってるあれ)
    不明支給品0~2(確認はしてます)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る(乗る乗らないは現段階では不明)
1.太陽に弱いという意味で無理に出歩く必要はない。
  が、カビはウザイので移動しよう。燃やせばどうにかなるんだけど。
2.こいつ(プッチ)はなかなか面白い。しばらく一緒にいてみよう。もっと情報交換をしたい
3.鉄塔付近(D-2、D-3あたり)にカビ爆弾(ダービー)を落としてやろう。


備考
※二人ともお互い「気が合う、面白い」といった理由で手を組んでいるので利用する等の発想は現段階ではありません。
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※ダービーさえ鉄塔付近で捨てさえすればそれでいいと考えてます。
 日光から逃れれるのなら付近に建物、及びアヴドゥルの隠れ家に戻ってもいいと考えてます。
※C-10、特に隠れ家の周りはダービーの手足と周りの植物を基に繁殖したカビが広がってます(大体はエシディシに焼かれました)。
※時間帯が深夜なのは、2人とも情報交換をしただけでまだそんなに時間が経ってないからです。
 どの程度情報交換したのかは、わかりません。空のどの地点で隕石を目撃したのかはわかりません。
※ヘリコプターの進行ルートのゴールは決まってますが、途中のルートは次の書き手さんにお任せします。


【ダニエル・J・ダービー】
[時間軸]:本編初登場前
[状態]:満身創痍。手足が無い。カビ侵食中。ヘリコプターの窓の外に出たエシディシの手にぶら下がってる。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:これは夢なんだッ!バンザーイッ!
1、イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
2、痛みでまともな思考ができない

※ダービーの傷は半日放置されたら死ぬ程度のものです
※自分以外の参加者はみんな死ねばいいのに、と考えてます。
※どうせ死ぬんだから誰かが死ぬためならなんだっていいと考えています。
※他の参加者がヘリコプターの通ったルートの真下を歩いてもカビに感染するとは限りません。
 これはグリーン・ディのカビと地面の距離が充分離れている、つまりカビの媒介物であるダービーが空にいるからです。
 逆に言うとダービーが地面に落とされた地点の周辺に誰かが近づいたらそいつは(ry


投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

19:笠地蔵 エシディシ 70:過去への遺産、暗黒の遺産 ①
14:ゆるぎないものひとつ ダニエル・J・ダービー 70:過去への遺産、暗黒の遺産 ①
19:笠地蔵 エンリコ・プッチ 70:過去への遺産、暗黒の遺産 ①

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最終更新:2010年03月09日 15:59