――今流れているのは交響曲第5番ハ短調作品67、日本では一般に『運命』と呼ばれる曲。
ダダダダーン、って言えば大体の人が分かるあれだよ。

『運命』というのは、ベートーヴェンの弟子アントン・シントラーの「冒頭の4つの音は何を示すのか」
という質問に対して、「運命はこのように扉をたたく」とベートーヴェンが答えたことに由来するとされる通称さ。
……まあ、信憑性は低いみたいだけどね。

おっと、話が逸れた。
この殺し合いが始まってから実に12時間、半日が過ぎた。
太陽も高くまで登って非常に過ごしやすくなったことだと思う。
……中にはそんなことないって人たちもいるだろうけど。
その清々しい気持ちを忘れないようにして、日の出から正午までに死んだ参加者の名前を聞くといい。
偽って、裏切って、騙して、奪って手に入れた自らの生を噛みしめようじゃあないか。



第一回放送から第二回放送までの六時間で脱落した参加者は……






以上17名。

……少し減ったけど、まあいいさ。前回頑張りすぎたってだけの話だよね? きっと。
でも、ま、この調子でいけば日付が変わる頃には殺し合いも佳境に入ってるかな?
引き続き、君たちの活躍に期待しているよ。



おっと。
また禁止エリアの発表をし忘れるところだったよ、危ない危ない。
必死こいて生き残ろうとしてるときに首輪がズガン! 再起不能! ってんじゃ興が冷めちゃうよね。
ただ、前にも言った気がするけど、爆発までに一応猶予はあるんだ。頼りに出来るほど長くはないけど。
じゃ、一度だけしか言わないからよ~く聞いてね。

 13時に I-7
 15時に D-6
 17時に E-2

はい、もう言わない。
聞き逃した人はせいぜい気をつけるんだね。


必死こいて殺し合っても意味がない、って反抗心持ってる人もいるかもしれないけど……そんな君たちに朗報だ。
優勝した人には望むものを何でも与えてあげるよ。何でも、ね。
もっとも、僕が与えられる限りのものだけに限るよ。ただ、僕自身に『何が』『どこまで』出来るかは大体察しが付くでしょ?


ただ……みんなが呑気して殺し合いが滞るようなら……僕ももうちょっと考えるかもしれない。
禁止エリアを増やすとか、ね。


そうだ、もし誰かに会いたくて会いたくてたまらないって人のためにちょっとしたアドバイス。
地図の中にいくつか駅があるけど、実は地下鉄が通ってるんだ。どこかの誰かさんが一台壊しかけたけど、どの車両も依然問題なく運行している。
しかもお得な事にこの地下鉄、禁止エリアに侵入しても首輪が爆発しない。
ただ勘違いしないでよ? 禁止エリアの影響を受けないのはあくまで『電車の中にいる時』のみだ。
ぶらり途中下車の旅、と洒落込むのも悪くないかもね。

それじゃあまた六時間後、日が沈みかけるころまた会おう。
君たちの健闘を祈っている。


  ★


そりゃあ、F・Fじゃあなくダービーの名前を呼ぶに決まってる。
自分たちが目にしたものをまず信じるよ、誰だって。
それで混乱した方が面白いしね。

……穴を塞ぎに行かないのかって?

まあ、穴があいてて別段問題があるわけじゃあないし。
割とどうとでもなるもんさ、そういうのは。

いや……『なるようにしかならない』、と言った方が妥当かな?

無敵のスタンド使いと謳われ、殺し合いの打破を目論んだ空条承太郎は、身内の死に動揺して命を落としたし。
僕らの居場所を調べ始めたブチャラティ達は、間もなくして重傷を負ったし。
プロモーションしなかったポーンも、こっちから干渉はしたけど、結局は他の人たちのお陰でようやく動き出した。

ある程度は放っておいても割と『なるようになる』力が働く。
人によってはその力を『運命』とか言いたがるけどね。
とにかく、そういうのに怯えてビクビクするのは性に合わないんだ。もっとドーンと構えていようじゃあないか。

……『日記』に関しては反省してるよ。変な希望を彼らに与えてしまった。


……分かってる。時期が来たらちゃんと動いてやるよ。


持てるカード全てで――与えられた『運命』でもって勝負する、その行為に価値があるんだ。

プロモーションなんて後から都合よく与えられるものはないさ。

そもそもプロモーションは、チェスの正式なルールじゃあないんだから。




投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

144:偉大なる死 その⑤ 荒木飛呂彦 151:涙の乗車券

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年11月15日 19:52