「なるほど、砂で本物そっくりの人形を作り出せるのか…」


 ううん、と唸りながら、フーゴは砂を使う犬の能力を見定めていた。
 すでに自分の力は、射程距離を含めて話している。だが、生憎犬の方は言葉が喋れないので、見せてもらうしかない。
「射程距離は広そうだな。だが、あの突然現れる男にどうやって対処していたんだ…?」
「ワン」
 そう一声鳴くと、犬はパラパラと砂を舞い上がらせた。
「なるほど…。奴は移動する時に空間を飲み込むのか。だから、こうやって砂をまいておけば、移動していく方向が分かる。
 そういうわけだな?」
「ワン」
「そうか…」
 フーゴが一人で喋る姿はかなり間抜けな図だが、一つ一つ確認しなければ一緒に戦うこともできない。
 一通り犬のスタンドの力が分かった所で、フーゴは思考を巡らせる。
(このスタンドは、かなり使える。ぼくのパープル・ヘイズとも相性がよさそうだ。
 砂であれば、ウイルスに感染することもない。
 うまく使えれば、戦略の幅が大きく広がるぞ…)


 フーゴがそう考えた時。


「ワオンッ!」

 犬が鋭く吠え、イギ、と特徴的な唸り声を上げる。
 この賢い犬が、無暗に吠えるわけがない。だとしたら、理由は一つ。
 誰かが、そばに来たのだ。
 フーゴは素早く犬が吠えかかっている方を向き、自身のスタンドを出現させた。
「誰だ!!」
 その声に反応したのか、暗い裏路地の向こうから、一つの影が姿を現す。

『おいおい、フーゴ。お前、いつの間に犬と会話できるようになったんだ―――?』

「…ムーロロ?」
人にしては小さく、そして薄っぺらいそれは、一枚のトランプだった。




──────────── ──── ── ─ 




 ち、とムーロロは心の中で舌打ちをした。
 思った以上に犬の鼻がよく、偵察するだけのつもりが、フーゴに見つかってしまったのだ。
 おそらく、彼のことだ。きっと次にこう聞くのだろう。『今まで何をしていたんだ』、と。
「今まで、何をしていたんだ」
 予想通りの問いに、ムーロロは嘆息する。
『こっちも色々あったんだよ…』
 言葉を濁しつつ、ムーロロは考える。
この話題をうまく利用できないか。この、頭でっかちのフーゴをうまく騙せないか―――。

「どうした、何か言ったらどうだ」
 近くに敵のいる状態で気の立っているフーゴは、苛立ちを隠しもせずムーロロを問い詰める。
 そんな彼に向かって、ムーロロは言う。

『お前―――オレ達の側につかないか?』

「…何?」
 フーゴは眉をひそめた。敵意をむき出し、スタンドをいつでも出せるよう、身構える。
『待て待て、焦るな。何も、オレはジョルノ様を裏切ろうってわけじゃあないんだ。
 ジョルノ様はもういない。だったら、オレ達がやるのはたった一つだ。
 力を合わせて、主催者を倒す。
 そうだろう?』
「ああ、そうだ。そのつもりでずっと戦ってきた。だが、」
『名簿に名前があるから、ジョルノ様が生きている?やめろよ、そんな無意味な希望は捨てちまえ。
 いいか、ジョルノ様は、いないんだ。オレだってずっと探してたさ。だが、どこにもいない。この〈オール・アロング・ウォッチタワー〉をもってしても、ジョルノ様の居場所を突き止めることはできなかった。その意味は、分かるな?』
「そんな…いや、しかし…」
 もちろん、この話は嘘だ。ムーロロはジョルノが生きていると知っているし、彼の居場所も知っている。
 そして、彼がDIOと敵対していることも。
 フーゴの様子を窺うと、わずかな希望を打ち砕かれ、彼は項垂れているようだった。
 いい調子だ、とムーロロは思った。
 ぐるる、と唸り声をあげて犬が反応を示しているが、そんなことはどうでもいい。たかが犬だ。フーゴとて、本当に犬と会話ができるわけがない。
『オレは、あるお方について行くと決めた。この人なら大丈夫だと思った…。オレの命を懸けられると思った…。
 ただ、問題がある」
「…何だ」
『このお方には、敵がいる。
 お前とずっと一緒にいた、ジョナサン・ジョースターだ』
「…なんだって?」
『いいか、落ち着いてよく聞けよ…。
 さっきの二人、マッシモ・ヴォルペヴァニラ・アイスはオレ達の仲間だ。お前とヴォルペが、因縁の相手だってのは分かってる。同じように、ジョナサンとDIO様も、どうしても互いに許せない相手なんだ。
 分かるだろう?ヴォルペのほうは、DIO様に忠誠を誓っているからどうにかなる。
 だが、ジョナサンはだめだ』
 フーゴは黙ったまま、ムーロロの話を聞いている。
『いいか、何もお前に、ジョナサンを殺せと言っているわけじゃあない。
 お前はこのまま、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会に近づかず、ヴァニラ・アイスと合流するだけでいい。
 大丈夫だ、ヴォルペはお前に手を出さない。まあ、顔を合わせるのは嫌がるだろうから、会うこともないだろうがな…』
 次々と新しい情報を出し、ムーロロはフーゴの思考を奪っていく。
 頭の中をムーロロの言葉で満たし、他のことを考えられなくしていく。

「………」

 沈黙が落ちる。
 フーゴは何を考えているか分からない瞳でじっ、とトランプのカードを見つめた。
 ムーロロの言葉は毒のようにフーゴの全身を巡り、じわじわと彼の思考を覆っていく。
 そして、毒が全身を回りきった時。
ははっ、とフーゴは吹き出すように息を吐き、軽薄な笑みを浮かべた。
「そうか、よく分かったよ、ムーロロ。確かに、会って間もないジョナサンに命を懸けられるほど、ぼくはいい人間じゃあない。そこまでお人好しじゃあない。ぼくは、彼がどんな音楽が好みかも知らないんだからな。
 ――――なあ、ムーロロ。






 これが答えだッ!!」






『ブッシャアアアアアアアアアアアア!!』






 パープル・ヘイズ。
 フーゴの分身と言うべきスタンドが、トランプに迫る。
 油断していた薄っぺらな体は、簡単に捕まってしまった。
 ぐしゃ、とパープル・ヘイズがトランプを潰す。だが、破ったり、ウイルスに感染させたりはしない。
 そのまま、フーゴは言葉を続ける。
「なあ、ムーロロ。貴様、ジョジョに会ったことがないだろう…?」
 ゆっくりと、パープル・ヘイズの両手がトランプを真っ二つに引き裂いていく。
「マッシモ・ヴォルペは、殺さなくてはならない。ジョジョはそう言った。お前が、その言葉を守らないはずがない。
 それに、会っていたら、そんなことをお前が言えるはずないんだ。自分にだけ都合のいいような、恥知らずなことを…」

『……』
 誤算だった。
 一体何を読み違えていたのか、ムーロロには分からない。
 はっきりしているのは、フーゴと自分との間の亀裂は、もう二度と修復できないということだけだ。
 二人の立場ははっきり分かれた。裏切り者と、そうでない者に。
 体を引き裂かれながら、なおもトランプは話を続ける。



『フーゴ。一つ、良い事を教えてやろう。

 ジョルノ・ジョバァーナは生きている。

 だが、彼は我々の敵だ。あの二人を倒さなければ、いずるェ―――』




 ばり、とトランプが真っ二つに引き裂かれる。

 そこで、ムーロロとフーゴをつなぐ回線は断ち切られた。




──────────── ──── ── ─ 




 亀の中にある、居心地のよい部屋で、一人の男が目を閉じている。
 カンノーロ・ムーロロ
 彼は、フーゴを仲間に引き入れようと思ってあんなことを言ったのではない。無防備のまま彼をマッシモ・ヴォルペやヴァニラ・アイスに引き合わせようとしただけだ。だから、彼らが戦うことは変わらない。むしろ厄介なパープル・ヘイズをマッシモ達の元に引きつけられたのだから、足止めは成功したと言っても良いだろう。だが。

 なぜか、妙に「負けた」という気分になってしまった。

 フーゴは、自分と同類だと思っていた。
 他人のことなどどうでもよく、自分の身を守るためなら仲間でも裏切る。
 そういう男だと思っていた。実際、一度は仲間を裏切っている。
 だが、今の彼は違う。
 自分より下だと思い、見下していた相手が、自分よりはるか高みにいる。そんな感覚に、ムーロロは陥っていた。
 ジョルノ・ジョバァーナ。
 おそらく、フーゴが変わったきっかけは彼だろう。そして、フーゴの言葉通りなら、ジョルノに会った自分もまた、変わったのだろう。それこそ、誰かのために命を懸けるような男に。
 それを、羨ましいとは思わない。むしろ、自分から命を捨てる馬鹿な道だと笑ってしまう。




 だが、胸にぽっかりと空いた穴だけは、何をどうやっても、埋まりそうになかった。





【亀の中 /  一日目 午後】

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、
    川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(5~15)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOに従い、自分が有利になるよう動く。
1.琢馬を監視しつつ、DIOと手下たちのネットワークを管理する。
2.スタンドを用いた情報収集を続ける。
[参考]
※現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
会場内の探索とDIOの手下たちへの連絡員はハートとダイヤのみで行っています。
それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。

※ムーロロに課されたDIOの命令は、蓮見琢馬の監視と、DIOと手下たちの連絡員を行うことです。
同時にスクアーロとお互いを見張り合っています。




   ◆ ◆ ◆




「はああ―――…」

 フーゴは、ゆっくりと息を吐いた。
 彼は、久しぶりに“キレて”いた。
 どうしても許せなかったのだ。半年前の自分と同じようなことを言う、ムーロロが。
 自分に都合の良いことだけを並べ立て、どの道が正しいのか頭でっかちに考え、そこに理念も信条も存在しない。
 そんな彼の言葉が、許せなかった。
 自分のことだけを考えていれば、きっと向こうにつくのが正しい道なのだろう。
 だが、ジョルノは言ったではないか。あの時、やっと半歩を踏み出した時に。
『星のようにわずかな光明でも、それを頼りに苦難を歩んでいかなければならない』と。
 ならば、歩み続けなければならない。光を目指し、自分の信じた道を。
 そう。
 ムーロロは、重要なことも最後に残していった。

 ジョルノ・ジョバァーナは、生きている。

 ――――やっと。やっと、光を見出せた。
 彼が生きているだけで、それは何ものにも代えられない光明となる。
 だとしたら、自分がやるべきことはただ一つ。
 彼の敵を撃破すること。
 そして、自分の因縁に決着をつけることだ。

 決意を込めて顔をあげたフーゴの目に、こちらを睨みつけるようにして見ている犬の姿が映る。
 まずい。
 反射的にフーゴは思った。
 この犬にとって、フーゴの因縁やジョルノの敵のことなど、どうでもいいのだ。
 だが今、フーゴがムーロロと決別したせいで、この犬も巻き込まれてしまった。ヴァニラ・アイスという敵一人を倒すだけでよかったはずが、さらに大きな戦いに身を投じることになってしまったのだ。
 怒り狂って当然である。

 ゆらり、と犬の前で砂が立ち上った。
 攻撃されるのか、と身構えるフーゴの前で、砂が文字の形を取る。
 そこには、汚い字でこう書かれていた。

 “イギー

「…それが、お前の名前なのか?」
「ワン」
 一声吠え、イギーはにやりと笑う。「てめえ、なかなかやるじゃあねーか」とでも言うように。
 何だろう。名前を教えるぐらいには認められた、ということなのだろうか。犬に。
 はあ、とフーゴは深く息を吐いた。取りあえず、この犬から攻撃されることはないだろう。
 フーゴは辺りを注意深く見回した。
「まずは、ここから移動しよう。おそらく、ムーロロがぼく達の居場所を―――」


 ガオンッ!!


「!!」

 聞き覚えのある、嫌な音がした。振り向くと、路地の壁が消失していた。
 イギーが砂を巻き上げる。
 砂によって、飲み込まれていく空間の軌道が浮かび上がる。それはまっすぐ路地を進み、フーゴ達の所へ迫ってくる。
「まずいッ!!」
 イギーとフーゴは反対側へ走り出したが、丸く浮かび上がった球は、壁と地面を削りながらどんどん近付いてくる。
 このままでは追いつかれる。
 しかし次の瞬間、フーゴの体は浮かび上がっていた。
「何ッ!?」
 驚きでとっさにスタンドを出そうとしたが、その正体を見てすぐに力を抜く。
 イギーの砂が、フーゴの体をつかんでいた。浮かんだフーゴのすぐ下を、ヴァニラ・アイスが通過する。

 一人と一匹は、そのまま屋根の上に着地した。そのまま息を潜めて、下の様子をこっそり窺う。
 ヴァニラ・アイスは、イギーとフーゴの姿を探して暗黒空間から出てきた。
 しかし、二人の姿が見えず、血も飛び散っていない様子を確認すると、すぐに移動をし始めた。
 攻撃をするか否か迷ったが、イギーが悔しそうに見送っていたので、フーゴも諦めた。おそらくイギーは、同じように不意打ちをして反撃でもされたのだろう。
 あの強力なスタンド使いに、策もなく挑むのは危険だ。

 ヴァニラ・アイスの姿が消えて、フーゴはほっと息を吐いた。
(あの男…ヴァニラ・アイスと言ったか。あいつの能力は強力過ぎる。
マッシモと同時に相手にできるものじゃあないぞ…。
ぼくのパープル・ヘイズも、攻撃を仕掛ける間合いまで入っていたらやられてしまう。かといって、この犬の攻撃には決定打が欠ける…)

 しばらく考えた後、フーゴはイギーに視線を向けた。



「なぁ、イギー…」





   ◆ ◆ ◆





 ぱらぱらぱら、と砂が降り注いでいる。
 それは、一人でさ迷う男の上にも、同じように。


 そう虚ろな瞳で呟く男の名は、マッシモ・ヴォルペ。
 フーゴを見失ってから、彼はずっと一人で仇を探し続けていた。

(壁を削り取ったスタンド使いと、砂を操るスタンド使い…。
 壁を削ったのは、DIOの話で聞いた「この世界の空間から姿をまったく消す」スタンドを持つ、ヴァニラ・アイスだろう。
 フーゴは、ヴァニラ・アイスと敵対していた、砂を操るスタンド使いと一緒にいるのか…?)

 砂が降っているのはあまりに広範囲で、その砂を目印にフーゴ達を見つけ出すことはできない。
 だが、奴らがこのエリアにいることだけは確実だ。
 ヴォルペは注意深く、視覚と聴覚を強化して居場所を探る。
 そして。

 カツ、と。
 音がした。
 頭上から。

 ぐるん、と物凄い勢いでヴォルペは音のした方を見上げ、強化した肉体で一気に屋根まで跳びあがる。どぉん、という衝撃と共に着地し、彼はそこにフーゴとイギーの姿を見つけた。
「見つけたぞ、フーゴ…」
「くそッ」
 彼らは見つかったことに驚きを隠せないようだったが、すぐにスタンドを出した。
 そして、ヴォルペが彼らに向かって一歩を踏み出した時――――

 ガボンッと、ヴォルペのいた足場が崩れた。

 ヴォルペは、自身のスタンドを踏みつけて、再び屋根の上に戻ってきた。あまりに強く蹴りだしたため、スタンドの腕がめき、と嫌な音を立てる。もちろんそれはヴォルペにも反映されるのだが、彼の〈マニック・デプレッション〉の能力によって、その傷はすぐに治ってしまう。
 穴から抜け出したヴォルペを、フーゴとイギーが待ち受ける。おそらく、先ほどの驚愕は演技だったのだろう。最初から、こうする予定だったのだ。
 ヴォルペは、フーゴだけに視線と殺意を向ける。
 両者が激突する、まさにその瞬間――――

「ワンッ!!」

 犬が叫んだ。見れば、降り続く砂が妙な所で途切れている。球を描くように。そして、それはだんだんこちらに近づいてくる。
 ヴォルペは、その現象を知っていた。


 ガオンッ!!


 「それ」は屋根を消失させた後、動きを止めた。そして、現れたスタンドの口の中から、ヴァニラ・アイスが顔をのぞかせる。おそらく、ヴォルペ達が戦う音に引き寄せられたのだろう。
 ヴァニラ・アイスを見るや否や、イギーとフーゴは屋根から飛び降りた。そして、そのまま逃走を開始する。まるで、最初から彼が現れたら逃走すると決めていたかのように。

「………」

 マッシモは、そんな二人を追いかけもせず、じっと観察した後、再び自分が落ちた穴に目を移した。
 その中には、砂に埋もれるようにしてカプセルのようなものが転がっていた。
 彼らは、ヴァニラ・アイスの開けた穴を砂でコーティングし、パープル・ヘイズのカプセルを中に仕込んでおいたのだった。
 それを見つめていたヴォルペは、ゆらり、と体重を移動させると、強く屋根を蹴り地面に降り立った。

 そして、二人を追いかけようと暗黒空間に潜り始めたヴァニラ・アイスに。
 二度も自分の邪魔をした、彼に向って。


「おい、ヴァニラ・アイス…」


 声を、かけた。





   ◆ ◆ ◆




「はぁー、はぁー…」

 壁に手をつき、フーゴは大きく呼吸を繰り返す。
 足のダメージは強く残っており、走るたびに痛む。
 だが、立ち止っているわけにはいかない。こうしている間にも、マッシモ・ヴォルペとヴァニラ・アイスはフーゴとイギーを探しているのだ。加えて、フーゴの息は上がっているのに対し、追いかけるヴォルペの呼吸に乱れはない。彼はダメージも全てそのスタンドで強制的に治してしまうので、両者の機動力は開くばかりだ。
 次に追いつかれたら、その時が最後となるだろう。
「ワン!」
 イギーが吠え、フーゴが手をついている壁に向かって低く唸る。
 なんだ、と思う間もなく。

 ドゴオッ!!

 その壁が、吹っ飛ぶように破壊される。
「う、うおおおおおッ!!」
 壊された壁の破片が、散弾銃のようにフーゴの体に迫る。
 慌ててスタンドで防ぐが、全ては打ち落とせない。どすどすどす、と重い衝撃が体を貫く。
 フーゴの体は吹っ飛ばされ、通りの真ん中に転がった。
 なんとか顔を上げたフーゴの視線の先に、マッシモ・ヴォルペがいた。
「う、うう…」
 フーゴは立ち上がれず、手で体を支えながらずるずると後ずさる。そして、イギーの方をちらっと見た。
 イギーはマッシモ・ヴォルペに向かって戦闘態勢を取る。しかし、すぐにぎょっとして目を見開いた。
 ヴォルペの後方に、ヴァニラ・アイスのスタンド、〈クリーム〉がその姿を現していた。ヴァニラ・アイスはそのスタンドの口の中に入り込み、フーゴ達の方を見ていた。
 イギーは血を流すフーゴとヴァニラ・アイスを交互に見て、結局フーゴを見捨ててさっさと走り出してしまった。
 ヴァニラ・アイスは、その逃げた犬の方を追いかける。砂によって自身の移動先を知らせる、厄介な犬の方を。

 残ったフーゴは、ガタガタ震えながら、ゆっくりと近づいてくるマッシモ・ヴォルペを見た。

「ち、ちがうんだ…。全て、ジョルノに命令されたことなんだ…ッ!」
 それは、いかにも哀れな姿だった。策も何もなく、ただただ生にしがみつく、みっともない男の叫びだった。
 ヴォルペはその声を無視し、距離を詰めていく。そして、フーゴのスタンドの射程範囲ぎりぎりの所で、足を止めた。
「や、やめてくれ…こないでくれ…」
 そうやって、ひたすら命乞いをする相手に。
 ヴォルペは、怒りも憐みの感情も浮かべなかった。ただ、湖面にひろがる波紋のように、静かに口を開く。

「…考えなかったのか。

 お前たちが手を組んだように、俺達も手を組んだと」

 ぴくり、とフーゴの表情に変化が現れる。
「次の作戦は何だ?あの犬はおとりだろう?砂でできた人形か何かだ。
 そうやって分断させた所を二人で叩く。なるほど、良い考えだ。
 俺も、同じことを考えた…」
 びりり、と肌が焼けつきそうな殺気が辺りに充満する。
「マッシモ…!!」
 フーゴはもう、哀れっぽい顔をしていない。ダメージが残っているのか片膝をついたままで、それでもヴォルペを強く睨みつけ、スタンドを出す。
 その拳のカプセルが、一つ減っていた。
 フーゴのことだ、おそらくまた何かの罠に使ったのだろう。だが、そのスタンドの射程範囲内にヴォルペは入らない。
 焦るように、フーゴは拳を握る。

 そんな彼のそばに、ヴァニラ・アイスのスタンド、〈クリーム〉が迫っていた。

 砂塵は降り注ぎ続けているが、フーゴは目の前の相手に集中していて気付かない。
 イギーも、イギーのスタンドも、姿を現さない。今さら出てきたところで、砂を集める時間も余裕もない。

 その様子を見て、ヴォルペは笑った。狂気の混じった、甲高い笑い声だった。
「お前を殺せないのは残念だが!!代わりにジョルノもナランチャもトリッシュも俺が殺してやる!!お前がやったのと同じように、お前の大事なものを全て壊してやる!!」

 フーゴの瞳に、漆黒の炎が燃え上がる。

「マッシモォォォォォォォォォッ!!」





「―――ああ、その顔が見たかったんだ」










  ガ  オ  ンッ!!





──────────── ──── ── ─ 







 一陣の風が吹いたのち。

 何もない空間から、一人の男が姿を現す。
 ヴァニラ・アイス。DIOの腹心の部下だ。

 早くDIOの元へと戻らなければならないのに、消さなければならない敵が増え、彼は声をかけてきたマッシモ・ヴォルペと手を組んだ。

 彼は犬を追いかけた振りをし、すぐに引き返して、マッシモ・ヴォルペと対峙していたフーゴを背後から襲ったのだ。
 簡単な作業だった。そこに、卑怯だの、汚い手だのといった感情は、一切ない。

 そして暗黒空間から出て、始末したフーゴを目で確認した時。
 彼は、驚愕で目を見開いた。


 消えていたのは、マッシモ・ヴォルペの下半身の方だった。


「バカな…!!」
 その動揺から回復する前に、ビチャ、と何かが彼の頬に跳んだ。
 その液体は赤く、粘ついていた。
 なんだ、と思う間もなく、その液体が跳ねた場所を中心に肌が崩れていく。水泡ができ、それがすぐに裂け、激痛がヴァニラ・アイスを襲う。
 それは紛れもなく、パープル・ヘイズのウイルスに感染したのと同じ症状だった。
(バカな!!奴のスタンドは射程距離外のはずッ!!)
 視線を巡らせた先には、砂でできたボールがあった。それは割れていて、中は空洞で、その中から赤いものがこぼれ出ていた。

(まさか――感染した誰かの肉体の一部を、密閉した砂の中に詰めて――)

 彼がまともに思考できたのはそこまでだった。
 激痛と、体が崩れさるという恐怖に、彼はスタンドを発動させ、無暗やたらにそこら中を駆け巡り始めた。
 ウイルスに侵されたせいで、崩れていく体とともにその球体もどんどん小さくなっていく。だが、そんなことに構っている余裕はなかった。
 そこにあるのは、忠誠心などではなく、ただDIOの役に立てないまま死ぬという、恐怖だけであった。

 ヴァニラ・アイスはミスを犯した。
 もし彼がいつものように、容赦なく無慈悲に、暗黒空間に全てを飲み込んでいれば、こんなことにはならなかっただろう。
 だが、彼は考えてしまった。
 DIO様に褒められたい、と。
 だから初めは、タルカスとイギーを『取るに足りない』と、見逃した。
 だからマッシモ・ヴォルペと手を組み、『手っ取り早く』敵を葬る道を選んだ。
 それこそが、破滅への道だと知らず。


『DIO様アアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 暗黒空間の中で、誰一人聞くことのない世界の中で、叫び声をあげながら。
 ヴァニラ・アイスは、自身が今までそうやってきた相手と同じように、何も残さず消えていった。





──────────── ──── ── ─ 






 ………時は、少しだけ遡る。



「マッシモォォォォォォォォォッ!!」



「―――ああ、その顔が見たかったんだ」



(今だッ!)

 フーゴとマッシモ・ヴォルペの様子を窺っていたイギーは、タイミングを見計らって、彼らの場所を地面ごと一気に移動させた。
ちょうど、フーゴがいた場所にマッシモ・ヴォルペが来るように。
 そう。
 フーゴとマッシモ・ヴォルペが立っていた場所には、すでにイギーの用意した砂が敷き詰められていたのだ。
 マッシモ・ヴォルペの下半身が消えるのを確認したイギーは、隠れていた砂の中から飛び出し、ヴァニラ・アイスに向け砂のボールを投げる。それは途中で破裂し、中身だけがヴァニラ・アイスにかかった。そして―――。

(へッ!どーだ、喰らいやがれッ!!)

 フーゴのスタンドから飛び出したカプセルは、そのままであれば射程外に出ると消えてしまう。
 カプセルを割ってウイルスを出しても、日に当たれば消えてしまうし、そのうち共食いを始めるだろう。
 なら、どうするか。
 答えは簡単だ。
 タルカスの死体を使えばいい。
 ヴァニラ・アイスがどうでもいいと、取るに足りないと、そう思って放っておいた男を使えばいい。
 ウイルスに侵された死体の一部を砂のボールに詰め、外に漏れないようにして敵にぶつける。
 原理は簡単だ。だが、絶大な効果があった。
「フン」
 考えたのは全てフーゴだ。だが、動いたのはほとんどイギーだった。
 タルカスを運んだのも、地面を動かしたのも。
「………」
 タルカスは。
 使った死体が、別の誰かのものだったら―――例えば、スミレのものだったら―――きっと怒り狂ったに違いない。
 だが。それが、自分の体だったなら。
『おお、よくやったッ!イヌ公よッ!!』
 きっとそう言って、笑っただろう。そして、あの大きな手で、イギーの体を撫でただろう。

(ま、たとえ文句を言われよーと、オレには関係ねェからな。聞きゃしねーぜ、おっさん)

 そう思って、イギーがヴァニラ・アイスに視線を戻した時。
 彼の姿は、すでにどこにもなかった。死体もなかった。
 ヴァニラ・アイスは、最後の力を振り絞って、スタンドを発動させていた。
(な、なんだとォ!?)
 慌てて、止ませていた砂を舞い上がらせる。
 全てを飲み込む球体は不規則に動き回りながら、フーゴのいる方に近づいていた。

「ワンッ!」

 警告を発し、イギーはフーゴの姿を視界に収める。


 そこでイギーは、再び驚愕に包まれた。






   ◆ ◆ ◆





(上手くいった、か―――?)

 身を起こしたフーゴの視界に入ったのは、仰向けに倒れているマッシモ・ヴォルペの姿だった。
 手はだらりと垂れ下がり、目は閉じている。その下半身はヴァニラ・アイスの攻撃によって消え去り、この世のどこにも存在していなかった。
 死んでいる、そう思って、フーゴが油断した時だった。

 ヴォルペの目が、ばかっと開いた。

「なッ!?パープル・ヘイ…ッ!!」
 マッシモ・ヴォルペは腕だけで自身の体を支え、フーゴに飛びかかった。そして、現れたパープル・ヘイズの拳に、自分から当たりにいった。
「し、しま、」
 気付いたときには、もう遅い。
 ウイルスに感染したマッシモ・ヴォルペが、そのままがしぃっ、とフーゴの腕をつかんだ。
 下半身を失くした人間とは思えないほどの力で、ぎりぎりぎりぎり、とフーゴの腕にしがみつく。
「う、うおお…ッ」
 フーゴの右腕がウイルスに感染し、破壊されていく。
 とっさのことで威力を調節できなかったため、ウイルスが全身を回るまでには時間がある。だが、共食いを始めるには弱すぎる。
 相討ちする気か、と思いヴォルペを見たフーゴは、ぎょっとした。

 感染し、破壊された皮膚が治癒し、また破壊され―――そんなことを繰り返している。

(ま、まさか―――感染することを予想し、すでに手を打っていたというのか!?)
 フーゴとヴォルペの目が合う。ヴォルペの瞳は真っ暗で、光というものがなかった。そこには未来も希望もなかった。
 マッシモ・ヴォルペの体は、いつかはウイルスに負け、崩壊するだろう。
 だが、それまでフーゴの体は持たない。フーゴが死んだあと、ヴォルペはウイルスをまき散らしながらジョルノやナランチャを探し回るに違いない。
 そのために無関係の人間が死のうが、ウイルスがエリア中に広がろうが、ヴォルペに取ってはどうでもいいのだ。

 フーゴを絶望の中で殺す。

 そのためだけに、マッシモ・ヴォルペは動いている。

(ヴォルペを攻撃しても感染したウイルスはどうにもならない。
 スタンド攻撃も、悪戯に感染を広げるだけだ。
 どうする、どうする――――!!)

「ワンッ!!」
 イギーの鋭い声が脳内に響いた。
 覚束ない足取りで声のした方を向くと、ずいぶんと小さくなったヴァニラ・アイスのスタンドが、フーゴ達の所へ近寄ってきていた。ぐるぐると、無秩序に暴れまわるそれに向かって――――





 フーゴは、大きく一歩を踏み出した。






──────────── ──── ── ─ 






 まず見えたのは、暗闇だった。



 目を開けているのか、閉じているのか。
 それすらも分からない。

 マッシモ・ヴォルペは、暗闇の中に一人で立っていた。

 フーゴはどうなっただろう。
 殺せただろうか。分からない。
 分からない。何も分からない。
 何も――――

「マッシモ…」

 少女の声が聞こえた。
「あ…」
 懐かしい声だった。
「ああ…」
 もう二度と聞くことは叶わないと思っていた声だった。
「アンジェリカ…」
 暗闇の先に、アンジェリカがいた。コカキがいた。ビットリオがいた。
 彼らは笑っていた。笑って、ヴォルペが来るのを待っていた。
 今の今まで、忘れていた。アンジェリカの名を。顔を。声を。コカキを。ビットリオを。
 そうだ、彼らがいれば何もいらなかった。
 彼らが、何より大事だった。
 なぜ、そんな大切なことを忘れていたのだろう?




「待ってたわ。マッシモ。ほら、笑って?せっかく、みんなが揃ったんだから―――」
「…ああ、そうだな…」




 ウイルスに侵されながら。そのおぞましい苦痛に曝されながら。
 マッシモ・ヴォルペは、笑って彼らの元へ旅立っていった。




──────────── ──── ── ─ 





 空が、見えていた。

 どこまでも抜けるような、青い空だ。
 落ちてきてしまいそうなくらい、近い。
 その空に手を伸ばそうとして、気付いた。

 右腕がない。

「ぐッ、あああああ…ッ!!」
 途端に激痛に襲われ、フーゴは身を捩りながら呻いた。
 ぎりぎりと歯を食いしばり、地面に爪を立てる。
 傷口に手をやると、そこはなぜかざらざらとした感触がした。
 見れば、傷口を砂が覆っていた。それが血を止め、フーゴの命をかろうじてこの世にとどめていた。
 顔を横に向けると、ドロドロに溶けた塊が転がっていた。

 マッシモ・ヴォルペは、今度こそ死んでいた。わずかに残っていた顔の半分はウイルスによってぐずぐずに溶け、原型も残らないほどの肉塊になっていた。

「……終わった…」
 フーゴは呟き、目を閉じた。
 そこには、歓喜も喝采もなかった。
 怒りも悲しみもなかった。
 ただ、やり遂げたという安堵だけがあった。
 フーゴは下を向いて、そこでようやく自分の体全てを視界に収める。

 ヴァニラ・アイスの『クリーム』は、ウイルスとマッシモ・ヴォルペを削り取るついでに、フーゴの右腕と脇腹と、左足の肉も抉っていた。

(ああ―――、これは、死ぬな…)

 それはどう考えても、覆せないことだった。
 こんな場所でこんな大怪我を負って、生きていられるわけがない。すでに傷口は熱を持ち、意識も飛びそうなほどの痛みが断続的に続いている。
 だが、それでもフーゴの心に焦りも悲哀もなかった。

 ようやく。
 ブチャラティやアバッキオに、追いつけた気がする。
 一歩を、踏み出せた気がするのだ。

(そう、よくやった…。ぼくは、やったんだ…。
 強敵を二人とも葬った。
 もう一度同じことをしろと言われても、絶対にできない。
 もう、いいだろう?休んだって、いいだろう…?)

 しかし、そう思っているのに、なぜか体の方は言うことを聞いてくれない。
 勝手に手が前に出て、どこかに行こうとしている。
 どこに行こうとしているのか。それは、考えるまでもなくフーゴの中にあった。

(ブチャラティが、二度も命を懸けて守ったトリッシュ。彼女を、守らなくてはならない。
 勇気と覚悟がなくて、死なせてしまったナランチャ。今度は、決して死なせはしない。
 自分に光を与えてくれた、ジョルノ。彼と共に、歩んでいきたい。
 ミスタは、運のいい男だ。きっとどこかで生き延びているだろう。

 ぼくは―――彼らに、会いたい)

 立ち止まりたくはなかった。
 ここで立ち止まっている間に、また大事なものがなくなってしまうのが怖かった。
「う、うう…」
 手を伸ばせば、その先に彼らがいるような気がした。
 けれどもそれは幻影で、左手が掴めたのは砂だけで。
 フーゴは立ち上がろうと、腕に力を入れてもがく。




 だが、とうとうそれにも限界が来て、フーゴの体は大きく傾いた。





──────────── ──── ── ─ 





 こいつはもうだめだ、とイギーは思った。
 右腕は肩から先がなく、左足も大きく抉れている。イギーが砂で傷口を固めているものの、戦うことはおろか、立ち上がることすらできはしない。
 フーゴ自身も、それを分かっているはずだ。
 だが、なぜかフーゴは歩みを止めない。
 この場で静かに傷を癒そうだとか、仲間が通りかかるのを待とうだとか、そんなことは欠片も考えていないようだ。
 動かないはずの足を動かし、残った腕で立ち上がろうとしている。

「ナ……、ト…ッシュ、ジョ…ルノ…」

 うわごとのように呟かれた名の中の一人を、イギーは知っていた。
 ジョルノ・ジョバァーナ。
 つい先ほどまで行動を共にしていた相手だ。サン・ジョルジョ・マジョーレ教会で別れたきり、会っていない。
 今、生きているのかも分からない。

 がくり、とフーゴの体が大きく傾ぐ。

 イギーは、さっとフーゴの体を支えた。砂をフーゴの元に集め、ゆっくりと持ち上げる。まともに動けない彼に代わり、イギーの操る砂がフーゴの足となる。

「…おまえ…?」

 フン、とイギーは鼻を鳴らした。
 フーゴがもう役に立たないのは明らかだった。敵を倒した今、イギーがフーゴと一緒にいる理由はもうない。
 だが。
 フーゴを見捨てて行く理由もまた、なかった。


(別に、テメーのためとかじゃあねェからな。ただ、一応共闘した相手だ。ちょっとくらい、手伝ってやるぜ…)









 二匹の獣が荒野をゆく。
 その先に道は見えず、どこに辿り着くのかも分からない。
 だが、歩みを止めることなく彼らは進む。
 その先にある、わずかな光を目指して。






【マッシモ・ヴォルペ  死亡】
【ヴァニラ・アイス  死亡】

【残り 37人】




【D-3 街中 /  一日目 午後】

【どう猛な野獣タッグ】

【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.とりあえず、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会に向かう。
2.花京院に違和感。
3.煙突(ジョルノ)が気に喰わない
4.穴だらけ(フーゴ)と行動

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:右腕消失。脇腹・左足負傷。(砂で止血中)
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.仲間に会いたい。
2.ムーロロは許せない。
3.ひとまず犬(イギー)とともに行動
4.教会に戻りジョナサンと合流する
5.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは予想外だ。

【備考】
※サン・ジョルジョ・マジョーレ教会から南東方向にイギーVSヴァニラ、フーゴVSヴォルペの戦闘跡があります。


投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

前話 登場キャラクター 次話
169:トリニティ・ブラッド -カルマ- イギー :君の知らない物語
169:トリニティ・ブラッド -カルマ- パンナコッタ・フーゴ :君の知らない物語
169:トリニティ・ブラッド -カルマ- カンノーロ・ムーロロ :無粋
169:トリニティ・ブラッド -カルマ- マッシモ・ヴォルペ GAME OVER
169:トリニティ・ブラッド -カルマ- ヴァニラ・アイス GAME OVER

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年12月04日 00:24