ディオニュソス組・OP

そしてワシはワシで泥SSを投下じゃ…
ホドフリードさんは格闘戦強くて辛い物好きで
こじれた思想を持ってる感じのよくいるごく一般的な型月っぽい神父なんじゃよ多分。

ディオニュソス組プロローグ

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」
「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

薄暗い部屋の中、神父の格好をした男が何事か呪文を唱えている。聖書の一節にはない言葉だ。

「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)」
「繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する」

それは特別な詠唱だ。現代において、ありえてはならぬ魔術の秘儀。

「告げる」
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」
「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

歴史や神話に名を残す英霊を、奴隷として呼び出す召喚儀式などと――なんと罪深きことだろう。

「誓いを此処に」
「我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

ここまでの詠唱に不備はない。このまま最後の一文を唱えるだけで、英霊は呼び出される。
――よい。確かに良い。このまま、何の憂いもなく手順通り、英霊を召喚する。それは良いことだ。
だから、もう一文付け加えることにした。それはよくないことだった。

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者」

七つのクラスのうち、バーサーカーのみは詠唱に一文加える事により、確実に召喚することが出来る。
いま、男が唱えたのがその詠唱だ。
――それは、その男が抱いたほんのいたずらごころ、好奇心であった。
もしこの出来事を記したものが居れば、そう書き綴るだろう。
しかし、男は純粋なる聖職者であった。主より与えられし試練にこそ喜びを感じる聖職者であり、苦難の道を自ら歩む者である。
――故に、その行動に偶発的要因は一つもない、単なる必然。
その結果もまた必然だったのか――

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」
最後の一文が唱えられた。
一瞬の閃光。
後、威圧感。空間が淀む。空気は毒のよう。感覚が酔う。
全ての原因は、目の前に現れた美女であることは疑う余地はない。

――美女?
確かに透き通るような長い髪を持ち、絵画のような美しい白い肌は魅力的で、扇情的ながらもどこか高貴さを失わぬ服装をしている
だがな、魅せつけるように勃起する股間を見ろ。
女に一物があるものか。彼は男だ。それにだんだん分かってきたが、これはアルコールの臭いだ。
酒に由来のある英雄か。
確かに、酒で暴れたという逸話を持つ英霊はバーサーカーというクラスには多いことだろう。
その中でもかなり高位の英霊に違いない。
綺麗な男は口を開く。

「汝が私のマスターかえ?」
「……ええ、そうですよ。僕はホドフリード・ファン・デル・メール
ただの神父にして、バーサーカー、貴方のマスターです」
「ほう!やはりか!なにせこの私を熱心にじっとりといやらしく見つめておったからのう!
たったそれだけのことから真実を言い当てるとはなんという頭脳の冴え…また私の格が上がってしまう…」
「……事前に聞いていた話とはどうやら違うようですね
いえね、バーサーカーと言うものは、狂ってるから会話が不可能なものと聴いてたんですが」
「くふふ…そんな奴らとは格が違う。なにせ私の真名は――――
おっと貴様の楽しみを奪うところだったな。奪うのは好きだが。そりゃもう略奪愛なんて最高だが。
なんにせよ貴様は何ら触媒を用いずに、私という格の違う存在に出会えたこの幸運を喜ぶが良い!
私に魅入られる権利を与えられた。人がこれ以上、喜ぶべきことは無いぞ!」
なるほど。これがバーサーカーか。
主よ、感謝します。このような試練こそ望んでいました。
「ええ、僕は今、嬉しさに震えておりますよ」
「そうかそうか可愛いやつめ!めでたき出会いにまずは祝杯をあげなくてはの。
そうよ酒だ!私の酒を飲め!契りをかわせ!」
そういってバーサーカーは、どこから取り出したのか、並々と中身の注がれた盃を取り出す。
それに潜まれた膨大な魔力を隠そうともしない。
いや、それもこの男にとってはごくわずかなものにすぎないのか。
恐らく、一口でも付ければ主従関係は逆転することだろう。
「この酒は美味いぞ、極上ぞ、あらゆる悩み苦しみは天に昇るぞ、はよう飲め」
これはどういうことか?
そんなことはわかりきったこと。彼は試している。
マスターにふさわしいかを?いやそれは違う。
これは余興だ。彼を楽しませられるかどうかの余興に過ぎぬ。
だったら、こうするか。
私は彼から受け取った盃を、思いっきり力を込めて投げ捨てた。
「なんともったいない! 何故にこのようなことをした?」
「確かに貴方のお酒は良いものでしょう。僕も飲みたくなりました。ですがね、
それを味わうために、このような粗末な器では格がふさわしくないでしょう。
そうですねぇ…神の子が生み出したりし聖杯ならば貴方の酒と釣り合うでしょうが…」
「くふふ…くははは!なるほどなるほどそうかそうか。たしかにそうよな。
あのような器では私のマスターにふさわしい格が足らぬか!
これは是が否でもマスターに聖杯を取らせてやらねばならぬ理由ができたわ」
バーサーカーの顔に、喜びの笑みが浮かぶ。
初めて心からの笑ったように見える。
どうやら試練は乗り越えられたようだ。次も乗り越えてみせよう。
「このバーサーカー、盟約によりマスターに勝利の美酒を飲ませるため戦おうぞ!」

主よ、私の歩む道に苦難を授けんことを……

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最終更新:2016年09月28日 01:47