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空言の海

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こなたと付き合い始めてから数ヶ月。元々仲の良い間柄であったし、
日常では以前と大して変わらずに過ごす事が出来た。
恋人らしくキスもしたりして、こなたは幸せそうだった。私も同じだった。

───少し前までは。
ある日、こなたの家で勉強していた時。その内集中力が切れたのか、
「かがみ」
「ん?」
「・・・キスしよ」
恥ずかしいのかか細い声が可愛らしい。
そうじろうさんとゆーちゃんが居なくて二人きりであることは聞いていた。
拒む理由は無いので、向き合って顔を近づける。慣れてるように見えるかも知れないが、
平静を装っているだけで心中はとっても恥ずかしい。何せ、まだ数ヶ月しか経っていないのだから。
互いの顔が近づき、唇が触れ合う。気持ちよさに思わずとろけそうになる。
一旦唇を離し、見つめ合った。こなたは頬を紅潮させながらも、はにかむような笑顔を見せた。
頬が熱かった。きっと私も真っ赤になっているように見えているんだろう。
こなたの可愛さと恥ずかしさに耐えられなくなって、また唇を奪った。
今度は深いキス、そして背中に手を回して抱き締める。離れてしまわないように。
何故だか今は離してしまうのが怖かった。多分、自分でも分からない不安があるのだろう。
何か意図を悟ったのか、こなたも私の背中に手を回してきた。
手の感触を感じながら、不安を埋めるように抱き締め返した。
しばらく熱いキスを続けた後、私は舌を絡ませ始めた。一瞬驚いたようだったけども、
こなたも同じようにしてきた。水音が部屋に響く。やがて苦しくなってきたのか、
どちらからともなく離れる。
「───ぷはっ」
はぁはぁ・・・と二人とも息が上がっている。こなたが口を開いた。
「かがみ・・・今日は・・・どうしたの・・・?」
少し心配そうな顔をされる。私はそれには答えずに、再びのキスと共にこなたは押し倒した。
「え・・・?」
と驚きと怯えの表情で私を見る。唇を離してその体勢のまま、
「私、もう押さえられそうに無い。我慢出来ない。キスだけじゃ満足出来ない。
好きだから、この先がしたいの・・・・・ダメ、かな・・・?」
思っていたこと全てを吐き出した。数瞬、こなたは迷っていたようだが、
悲しみを含んだ声で言った。
「ごめん─────」
瞳には涙が浮かんでいた。
「そう─────分かった」
一抹の寂しさを感じたが、あくまで平静を装う。
「ごめんね、私こそ無理強いするようなことしちゃって」
離れて、こなたのほうは向かずに言った。
「・・・・・」
こなたは何も答えなかった。部屋の空気が重い。
何より拒絶されたことがショックで、勉強にも集中出来ないし話をすることも出来なかった。
結局、ぎくしゃくした空気のままその日はお開きになった。


─────眠れない。意識が覚醒していたので数日前のことを思い出していた。
つかさもみゆきも寝ているし、散々怪談話やらで騒いでいたこなたもぐっすりだ。
眠れないのはずっと引っ掛かっているからだ。数日前のことが。
ずっと今日一日こなたとはあまり話していない。話しても一言二言くらい。
悩んで気を遣いながら一日過ごしてきて疲れてるはずなのに眠れないのはそのせいだ。
絶え間なく潮騒の音が聴こえていた。起き上がって窓際に座り聴き入る。
まるで私の心のようだ、と思った。常に揺れ動いている波。
風にでも当たってこようか、と思い皆を起こさないように外に出る。時計は午前二時を回っていた。
外に出て、海岸の方へ向かう。堤防の上に肘をついて、夜の海を眺める。
波は絶え間なく打ち寄せていた。きっと、いつでも揺れ動いているのだろう。
そして、思考は数日前へ移る。
───無理強いはしたくない。
それは間違いなく偽らざる本心だった。あの時、抑えきれずに
こなたを押し倒してしまった自分が情けないし、悔しかった。
嫌がっているんだったら、別にこのままの関係でもいいじゃないか。
───嘘だ、と自分で思った。確実にこなたにキス以上を求めている自分がここにいる。
私の心が揺れ動く海なら、今はまるで空言の海。そうして物思いに沈んでいると、
じゃりっ、と後ろで砂を踏む音が聴こえた。振り向くとそこには───

───今一番会いたくて会いたくない、話したくて話したくない───こなたが居た。
気づかれずに近づくつもりだったのか、「あちゃー」 という表情でこちらを見ている。
「あんた、こんな時間にこんなとこで何してんの?」
思わず口をついて出た言葉がこれだ。
「それはこっちの台詞じゃないかなー、んで、隣いいかな?」
と言いながら歩いてくる。とりあえず、
「・・・うん」
とだけ返事をしておく。隣に来たこなたが、
「なんか目が覚めちゃってさ、見たらかがみが居なかったから心配になって探しに来たんだよ」
      • こいつ、ちょっと嬉しい事を。そして続けざまに、
「んで、何をしてたのかなーと」
「・・・ちょっと考え事してただけよ」


嘘では無い───はず。

───例え悲しみと空言の海を 抱えたまま逃げ道を探しても───

「・・・もしかして、この前の事?」
「・・・っ!」
図星を突かれて動揺した。いつになく鋭いな。
「・・・ごめん、あの時は嫌がってるのに強引に───」
「違うよ」
こなたが遮った。
「・・・え?」
だったら何で・・・と考えた。
「嫌じゃなかった、でも───怖かったんだ」

───雨は降り続き 溢れそうに満ちて 足取りはもう緩んでしまう───

「私のことが?」
とつい反射的に言ってしまった。
「そーじゃなくってね」
と苦笑し、真面目な顔で、
「初めて、っていうのとそれでぎくしゃくしちゃうのが怖かったんだよ」
普段考えなしのように見えてしっかり考えているこなたの優しさ。そのせいもあるけど、
拒絶されていたわけではない、と分かって胸の引っ掛かりが取れたお陰で涙ぐんでしまった。
「こなた・・・」
涙ぐんでしまっているのを隠せずに言った。

───干涸びた涙の軌跡 零れ落ちてしまうの───

そこに、一陣の風が吹いた。さすがに肌寒いのかこなたは、
「・・・寄ってもいいかな?」
と遠慮がちに聞いてきた。
嫌じゃないし、むしろ嬉しかった。
「うん」
と答えると、腕が触れる位にまで寄ってきた。なんだか多少不便な気がしたので、
「ねえ、ここに座らない?」
と持ちかけると、
「いいよ」
と言ってひょいと堤防に登り、座った。私も同じようにして、隣に座る。


すぐにこなたが寄ってきた。そして腕が触れ合う。

───私を揺り動かさないで───

触れ合っている部分の感触が心地良い。そして今更になって恥ずかしさで顔が火照ってくる。
そうこうしているうちに、今度は寄りかかってきた。
「・・・これから頑張って慣れるから、ね」
優しいな、と思った。ただの私の勝手な我儘だっていうのに。
それならいっそ、思いっきり甘えてしまおうか。

───重たい躰を持て余し───

人に頼られるようにしよう、と思っていたけど、案外頼っていたのは私のほうなのかもしれない。
思えば、私の弱い部分では自然にかなり依存していたような気もする。
少しこなたのほうに体を傾けた。鼓動までが聞こえるかも知れない距離。
そのまま海を眺めていたが、しばらくしてこなたが立ち上がって言った。
「そろそろ帰ろっか、時間も時間だしさ」

───どこまでも行ける───

「そうだね」
と頷いて私も立ち上がる。二人、どちらからともなく手を繋いで旅館へと歩いて行った。
もうすぐ旅館に着く頃、私はこなたから手を離して、
「こなた」
返事をする前にキスと共に強く抱き締めた。
抑えていた感情が爆発してしまったのかも知れない。
(もう絶対離したりしないから───)

───自由を羨む 波立つ戒───














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  • かがみ×こなた、良いですね!
    -- チャムチロ (2012-08-28 17:33:29)

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