kairakunoza @ ウィキ

KOUYOU

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
「あ~……疲れた」
六時間目が終わりチャイムが鳴って、学校の終業を告げる。学校も終わったことだし、さて帰るか。
日下部と峰岸に適当に挨拶をして教室を出た。
「あ、そういえば、今日こなたが寄り道して帰ろうって言ってたわね……」
昼休みにそんなことを言ってたのを思い出した。
また漫画の新刊でも買いに行くのかな。帰っても暇だから、付き合ってやるとするか。
つかさとみゆきは……まあついてこないか。大抵、こなたの寄り道に付き添うのは私だけだしね。じゃあ、二人はもう帰ったのかな?
などと考えてるうちに、こなたの教室までやって来た。
教室の扉をガラガラと開いて、時間的に帰る準備が終わってるであろう、こなたの姿を探す。
「あ、いた」
すぐに部屋の窓側の席にいるこなたを見つける。……が、様子がなにかおかしい。
どうやら、自分の机の中をゴソゴソと調べているみたいだ。

「おす、こなた。なにか困ってるみたいだけど……どうかしたの?」
こなたは入ってきた私に気づいて振りかえった。
「あ、かがみ……それがね、困ったことになっちゃって……」
「どうかしたの?なんか机の中調べてたようだけど」
「ん~……どうやら、定期なくしちゃったみたいでさ……」
「え?マジ?それはヤバいわね……」
こなたの顔は少し青ざめていた。まあ、定期みたいな大事なものがないとわかると、誰でもそうなるわよね。
「つかさとみゆきは?一緒に探したりしなかったの?」
「つかさとみゆきさんが帰った後で気がついたから、一人で探してたんだよ。……あー、どーしよ、どこいったのかなぁ……もし見つからなくて、今からまた定期買いなおすってことになったら痛すぎる……」
頭を抱えて嘆くこなた。なるほどね。状況は理解した。よし、ここは手伝ってあげるか。

「わかったわ。私も手伝ってあげる」
「え、ホント!?ありがと~かがみん!いや~助かるな~!」
そう言って目を輝かせ、さらに私の手をガシッと握りしめて、こなたは喜びを表した。
いや、喜んでくれるのは嬉しいんだけど、そこまで純粋に喜ばれると、ここでこなたを助けてあげれば、彼女の中での自分の株が上がるんじゃないかな~、なんていう自分のヨコシマな考えが恥ずかしくなってくる……
まあともかく、私とこなたによる定期券探しが始まった。

「じゃ、まあ始めましょ。もともと、定期は何処にいれてあったのよ?」
「出しやすいようにスカートのポケットの中。動いてる最中にポロッと落としたかなぁ……一応そう思って、教室はくまなく探してみたんだけど……」
「道端に落としたとか」
「それはないなぁ。学校に着いた時には確かにあったから」
「じゃあ移動教室とか?そこで落としたかもしれないわよ?」
「もしかしたらそうかもねぇ……移動教室か……今日あったのは音楽と体育だったかな……」
「まずはそこから調べましょ」
教室を出て、渡り廊下を通って階段を上がり、音楽室にたどり着く。
「失礼しまーす……」
いつもこの時間帯は吹奏楽部が音楽室を使っているので、恐る恐る挨拶して入る。が、
「……誰も居ないねぇ」
中に入っても、人っ子一人見当たらない。今日は休みなんだろうか。それにしても無用心ね、鍵くらいかけておきなさいよ。
まあ今回は、その方が鍵を貰いに職員室に行く手間も、部員に気を使いながら探す必要もないからよかったんだけど。
「私の机は……あったあった」
こなたはその席に近づいて、机の中や周辺を探し始める。
「どう?見つかった?」
「んー……ないね」
一応、周りの席や、戸棚、もしかしたら誰かが音楽の先生に渡したかもしれないと思って(勝手に)隣りの準備室の方も入って調べてみたけど、どこにも見つからなかった。
「こんだけ探してもないってことは、音楽室にはないってことかなぁ」
「どうやらそのようね……他を当たりましょう」

階段を降りて、中庭を通る。廊下の窓から外を見ると、日は段々と落ち初めていた。
五分もしないうちに、体育館一階の女子更衣室に着く。
更衣室の中に入ると、今度は部活の為に着替えたりする人が何人かいた。そうした人達を掻き分けて、こなたが授業の時に使ったロッカーの前に立つ。
「ここがそうなの?」
「うん。ちょっと調べてみるね」
こなたはロッカーの扉を開けて、中を覗き見る。
「あった?」
「う~ん……ないなぁ……」
「場所を間違えた、とか」
「……そうかもね」
念のため、周辺のロッカーも調べてみる。が、やっぱり出てこない。
更衣室に居た人達や、二階にある教官室にいた先生に聞いても、そのような落し物はないと言われた。
「う~ん、ここにもないかぁ……本当にどこにいったんだろ」
「もう心当たりがある所はないの?」
「移動教室は音楽と体育だけで、あと今日行ったとこと言えば、トイレぐらいだしなぁ……」
校舎に戻り、こなたの教室に一番近いトイレに入って中を調べる。が、もちろん見つかるわけもなく徒労に終わった。

 その後、職員室や事務室に行って、定期券の落し物がないか聞いて回ったけど、良い返事を得ることはなかった。

「はぁ……」とため息をつくこなた。
結局、私達は途方にくれたまま教室に帰ってきた。
私達以外に誰も居ない教室に、夕焼けの光が差しこむ。
「見つからなかったわね……」
何の手かがりも見つけられなかったことで、私もつられてため息が出た。
「そうだね。 ……あんまりこういうこと考えたくはないけど、盗まれた、とか」
「ありえなくはないわね」
物騒な世の中だ。落とした定期を拾ったままガメてしまったりする奴もいるかもしれない。
「まあ、仮に盗まれてたとしたらこの場で定期を見つけることは出来ないし、盗まれてなくとも、今実際、どこをさがしても見つからないし……ってことで、しょうがない。今日は諦めて切符買って帰るよ。新しい定期はまたお父さんと相談するしてから決める」
「でも定期って高いじゃない?もう少し探してみてもいいんじゃ?」
無くした本人よりも探すのに必死な私だった。と言っても、こなたの懐具合を心配するよりも、私が定期を見つけて、彼女にいいところを見せたい……という気持ちの方が強いんだけど。
「とは言え、もう教室は調べ尽くしたしなぁ……」
「かばんは?ちゃんと調べたの?」
「え~、かばん?それはないと思うけどなぁ……一番最初に、中の物を全部取り出して探したけどなかったし」
こなたはそう言いながら、もう一度ちゃんと確認する為に、外ポケットも含めて中身を全て取り出した。
「やっぱりないや。ほら」
自分で確認した後、私にもそのかばんの中を見せる。確かに空っぽだった。……が。
「あれ……ここは?」
「え?何?」
私はかばんの中のある所を指差す。それは、かばんの内ポケットだった。
「あ……!」
私が指差したのを見て、こなたは急に何かを思い出したかのように声をあげ、そしてそのポケットに手を入れた。

「あー……かがみん、あったよ……」
かばんから出たこなたの手には、確かに茶色い合皮で出来た、定期入れが握られていた。
「え?どういうこと?」
「いや~ね、体育の時にこのかばん持っていって、着替えるとき、スカートの中に定期を入れっぱなしだと戻ってからまた着替え直す時に、落としてしまいそうだな~って思ってこっちの内ポケットに入れたんだったや。すっかり忘れてたよ……」
と、こなたは、少しバツが悪そうに笑いながら説明した。
「何?結局、単なるあんたのド忘れによる確認ミスってこと?」
「どうやらそうみたいだね」
「なんじゃそりゃー!」
「ご、ごめんね、かがみん……」

==============================

「いや~、今日は本当にごめんね、かがみん」
「まあいいってことよ」
なにはともあれ、無事に定期を発見した私達は電車に乗って糟日部駅に帰ってきた。
寄り道は、探し物をしてる間にかなり時間を食ってしまったので、今日は中止になった。
駅を出て、夕暮れの帰り道を自転車で駆けて行く。もう三十分もすれば、完全に日は落ちるだろう。
「でも、私のうっかりでかがみの手まで煩わせることになっちゃったワケだし……」
「気にしなくていいわよ。誰だってそういうこともあるでしょ」
「そっか……ありがと、かがみん」
確かに馬鹿馬鹿しい落し物騒ぎだったけど、こなたに感謝されたってことで、私の当初の目的は達成できたわけだし、目的うんぬん関係無くしても素直に嬉しい。
その後も順調に帰り道を進んで行き、とある交差点に近づいてきた。
この、人通りもほとんど無い小さな交差点を私は右に、こなたは左に進む。
つまり、今日はあそこでこなたとはお別れってことだ。

 そう思うと、ちょっと寂しくなってくる。寄り道、したかったな。そうしたらもっとこなたと一緒に居ることが出来たかもしれない。
でも、ま、探し物してる間は二人っきりで居れたわけだし、その探し物の件では少しはいい印象与えられたと思うから、今日はそれで満足しておこう。
「かがみ、待って」
そろそろさよなら言わなくっちゃな、と思っていたら、突然こなたはブレーキをかけて自転車を止めた。
私もそれに反応して、少し遅れてからブレーキをかけた。
止まった所はこなたより少し飛び出た所だったから、地面を足で蹴って後ろに戻る。
「急にどうしたの?」
当然の質問をする。
「うん、今日手伝ってくれたかがみに、お礼しなくちゃなって思って」
「お礼……?別にそんなのいいわよ」
お礼が欲しくて手伝ったわけじゃない。それに、お礼ならさっきのこなたの感謝の言葉だけでもう十分なのに。
「いんや、ちゃんとお礼しないと私の気が済まないからさ……だから、受け取ってくれない?」
「……まあ、そこまでいうなら」
「ありがと。じゃ、目をつぶって」
いまいち何がしたいのか良くわからないまま、こなたの言われる通りに私は目をつぶる。
「……つむったわよ」
「じゃ、そのままでいてね」
一体何をするつもりなんだろう。少しドキドキする。
すると、突然、私の口にふわりとした感触が伝わった。

「………………!」
その感触に驚いて目を開けると、私のくちびるに、こなたのくちびるが優しく重なっていた。
「え、え?ど、どういうこと?」
急なことに、私の頭はパニックになる。
「何って……キスしたんだよ。解らなかった?」
「そ、それは解ったけど……何もこんな道端でキスすることはないでしょ……!」
「ふーん、女同士なのにキスされること自体は別にいいんだ」
「い、いや……そ、それは……」
どうやら墓穴を掘ってしまったことに気づき、いっそうあたふたとしてしまう。
「いや……だからさ、今は誰も見てなかったからよかったけど、もし人が居たら勘違いしちゃう人とかいるかもしれないじゃない?」
「え?どう勘違いされるの?説明してよ~、かがみん」
「う、うう~……!」
こなたの容赦無い質問攻めが、私の心に揺さぶりをかける。
どうやって上手いこと誤魔化そうか、と考えていたその時。
突風が吹いて、周りに立っている街路樹の葉がバサバサと揺れた。
そして、さっきの風によって飛ばされた、一枚の葉が、私の目の前にひらひらと落ちてくる。
こなたはその葉を軽くひょいとつまみ上げ、表の方に目をやった。秋の夕日に美しく照らされる、立派に紅葉したケヤキの葉だった。
それを見て、こなたはニヤニヤと笑って言った。

「あ……今のかがみの顔、このケヤキの葉より、もっと真っ赤だよ」



おしまい












コメントフォーム

名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー