木枯らしの吹く並木道を、こなたとかがみが歩いている。
「紅葉の季節だねぇ、かがみ」
「ん? 珍しいわね。あんたがそんなことしみじみ言うなんて」
「私だって、時には移りゆく季節に心をホニャラララなこともあるさ」
「何だよホニャラララって。思いつかないなら、かっこつけた台詞出そうとするな」
「オレにだって……わからないことぐらい……ある」
「また何かのアニメネタか?」
そんなどうでもいい会話を交わしながら、二人は歩いていく。
「ちょっとコンビニ寄っていい? チェックしたい雑誌があって」
「いいけど……」
どことなく反応が鈍いかがみ。こなたはそれには気付かず、角のコンビニに向かっていった。
(我慢するのよ、私……後悔先に立たずなんだから……)
コンビニに入るだけなのに何やら深刻な表情をしながら、かがみもこなたについていく。
自動ドアをくぐると、かがみの視線は嫌でもレジ近くの“それ”に吸い寄せられた。意識してその視線をそらし、かがみはすぐに雑誌の並べられたコーナーに足を向ける。
だが、
「あ、おでんだ。最近は季節関係なく売ってるとこもあるけど、やっぱりこの時期が一番美味しいよね~」
こなたは吸い寄せられるように“それ”へ寄っていった。
「ちょっとこなた! 雑誌を見るんでしょ?」
「そうだけど……かがみ、何焦ってんの?」
「あ、焦ってなんかいないわよ」
「そう?」
かがみの様子に小首を傾げながら、こなたは雑誌コーナーへ移動する。
「紅葉の季節だねぇ、かがみ」
「ん? 珍しいわね。あんたがそんなことしみじみ言うなんて」
「私だって、時には移りゆく季節に心をホニャラララなこともあるさ」
「何だよホニャラララって。思いつかないなら、かっこつけた台詞出そうとするな」
「オレにだって……わからないことぐらい……ある」
「また何かのアニメネタか?」
そんなどうでもいい会話を交わしながら、二人は歩いていく。
「ちょっとコンビニ寄っていい? チェックしたい雑誌があって」
「いいけど……」
どことなく反応が鈍いかがみ。こなたはそれには気付かず、角のコンビニに向かっていった。
(我慢するのよ、私……後悔先に立たずなんだから……)
コンビニに入るだけなのに何やら深刻な表情をしながら、かがみもこなたについていく。
自動ドアをくぐると、かがみの視線は嫌でもレジ近くの“それ”に吸い寄せられた。意識してその視線をそらし、かがみはすぐに雑誌の並べられたコーナーに足を向ける。
だが、
「あ、おでんだ。最近は季節関係なく売ってるとこもあるけど、やっぱりこの時期が一番美味しいよね~」
こなたは吸い寄せられるように“それ”へ寄っていった。
「ちょっとこなた! 雑誌を見るんでしょ?」
「そうだけど……かがみ、何焦ってんの?」
「あ、焦ってなんかいないわよ」
「そう?」
かがみの様子に小首を傾げながら、こなたは雑誌コーナーへ移動する。
目当ての所だけ立ち読みを済ませたこなたは、隣で別の雑誌を読んでいたかがみに声をかける。
「お待たせ。行こっか」
「あいよ」
「ところでかがみ、おでん買わないの?」
「……買わないわよ」
「何で?」
「何でって……」
本気で不思議そうな顔をしているこなたに、かがみは言葉を詰まらせる。
「焼き芋屋さんを見たら焼き芋を買い、クレープ屋さんを見たらクレープを買うあのかがみが何故!?」
「人を食欲魔人みたいに言うな! 別に今はお腹空いてないってだけで――」
ぐううう~……と、漫画みたいなタイミングでかがみのお腹が鳴った。
「ダイエット中?」
「そうよ……」
ただでさえ美味しい物の多い秋。油断すればたちまち体重が上昇線を描くかがみは、間食の類は一切断とうと、つい先日誓ったばかりなのだ。
「分かったならもう聞かないでよね」
赤くなった顔を俯かせて、かがみはコンビニから立ち去ろうとした。
「ちょっと待って。買っていくものあるから」
「もう、早くしなさいよ」
「うん。すみませーん、大根二つとはんぺんくださーい」
「うおおーいっ!?」
(この流れで自分はおでんを買うとか鬼か貴様は!?)
「あ。あとたまごもください」
さらにコンボを重ねるこなた。背後から突き刺さるかがみの怒りオーラは全く効果なく、代わりに店員さんがびびりまくっていた。
「お待たせ。行こっか」
「あいよ」
「ところでかがみ、おでん買わないの?」
「……買わないわよ」
「何で?」
「何でって……」
本気で不思議そうな顔をしているこなたに、かがみは言葉を詰まらせる。
「焼き芋屋さんを見たら焼き芋を買い、クレープ屋さんを見たらクレープを買うあのかがみが何故!?」
「人を食欲魔人みたいに言うな! 別に今はお腹空いてないってだけで――」
ぐううう~……と、漫画みたいなタイミングでかがみのお腹が鳴った。
「ダイエット中?」
「そうよ……」
ただでさえ美味しい物の多い秋。油断すればたちまち体重が上昇線を描くかがみは、間食の類は一切断とうと、つい先日誓ったばかりなのだ。
「分かったならもう聞かないでよね」
赤くなった顔を俯かせて、かがみはコンビニから立ち去ろうとした。
「ちょっと待って。買っていくものあるから」
「もう、早くしなさいよ」
「うん。すみませーん、大根二つとはんぺんくださーい」
「うおおーいっ!?」
(この流れで自分はおでんを買うとか鬼か貴様は!?)
「あ。あとたまごもください」
さらにコンボを重ねるこなた。背後から突き刺さるかがみの怒りオーラは全く効果なく、代わりに店員さんがびびりまくっていた。
「おーいかがみー。待ってよー」
早足でスタコラ歩いていくかがみを、おでん片手にこなたが追いかける。
「どうして怒ってるのさ?」
「胸に手を当てて聞いてみれば?」
「どれどれ」
迷いなくかがみの胸元に手を伸ばすこなた。しかしかがみは素早くその手をはたき落とす。
「自分の胸をだ! セクハラで訴えるぞ!」
「ちっ……触るほど無いのを知ってるくせに」
「そういう意味じゃないっつの……全く」
かがみはため息一つついてから、普通の早さで歩き出す。
「悪かったよ。おでん買っただけでそこまで怒るとは思わなくて……」
「おでんそのものじゃなくて、あんたの意地の悪さに怒ってるの」
厳しい口調で言い捨てる。途端にこなたは肩を落とした。
(ちょっと言い過ぎたかな……?)
不安になったかがみがフォローしようかどうか迷っていると、こなたは買ったばかりの熱々おでんから大根を一口分、割り箸で取って、
「じゃあこれお詫びに。はい、あーん」
「あーん……じゃねえだろ! ダイエット中だっての!!」
「あ、そっか」
わざとらしいこなたの言動に、かがみの脳裏にあったフォロー云々は地平線の彼方へ消え去った。
「でも大根一口ぐらい、いいんじゃないの?」
「その一口が落とし穴なのよ」
少しだけならいいかと思って夜食や間食に手を出し、今まで何度も涙を飲んできた。同じ過ちを繰り返すわけにはいかない……そんなかがみの決意も知らず、こなたは大根を頬張っている。
「歩きながら食べるのはやめなさいよ」
「だって冷めちゃうし」
ハフハフと湯気を吹きながら答えるこなた。
「かがみはさ、おでんの種で、何が好き?」
その上おでんの話題を振るか。さすがに怒る気も失せて、かがみはため息をついた。
「ちなみに私は大根が好きだよ。底の方で味がよ~く染み込んだのとかたまんないよね」
ぐううう~……と、またかがみのお腹が鳴った。
「食べる?」
「……いらない」
「無理しないでいいのに。お腹空いてるんでしょ? この大根美味しいよ」
「いらないってば……何でそんなにしつこく勧めるのよ?」
「だっておでんって、一人より大勢で食べた方が美味しいじゃん。コンビニおでんだって一緒だよ」
「……それは分かる気がするけど……」
「というわけで私はかがみとおでんを食べたいのだよ。さあ」
一途なぐらい真っ直ぐな目でかがみを見据え、おでんを差し出すこなた。食べないことにはテコでも動きそうになかった。
「…………はぁ」
観念して、かがみは差し出された大根を口に入れた。熱々の大根に染みたツユの旨味が口中に広がる。
「美味しい?」
「うん……」
美味しいと思うと同時に、自分の意志の弱さに凹んでいる微妙な表情でかがみが頷く。こなたは嬉しそうに微笑んだ。
「ところでさっきの話の続きだけど、かがみはおでん種、何が好き?」
「そうね……がんもとか」
「ほほう、がんもちゃん。プリンセスナインを思い出すねぇ」
「知らんがな」
かがみと話をしながら、今度はたまごを頬張っているこなた。
「よく食べるわね。あんたこそ太るわよ?」
「大丈夫。私は食べてもあんまり太らない体質だから」
「そういうの聞くと腹立つわね……」
「そう思うならかがみが幸せ太りにしてよ」
「なっ……言葉の意味分かってんのか?」
「あ、そうだ。今度さ、みんなでおでんパーティーしようよ。つかさやみゆきさんも誘って」
「また唐突な話ね」
「さっきも言ったけど、おでんは一人より大勢で食べた方が美味しいんだよ。おやつじゃなくてちゃんとご飯としてなら、かがみも問題なしっしょ?」
「……それもそうね」
おやつだろうがご飯だろうが、食べ過ぎたら同じことだが。もちろんそんな事実は分かっていても指摘しないこなただった。
早足でスタコラ歩いていくかがみを、おでん片手にこなたが追いかける。
「どうして怒ってるのさ?」
「胸に手を当てて聞いてみれば?」
「どれどれ」
迷いなくかがみの胸元に手を伸ばすこなた。しかしかがみは素早くその手をはたき落とす。
「自分の胸をだ! セクハラで訴えるぞ!」
「ちっ……触るほど無いのを知ってるくせに」
「そういう意味じゃないっつの……全く」
かがみはため息一つついてから、普通の早さで歩き出す。
「悪かったよ。おでん買っただけでそこまで怒るとは思わなくて……」
「おでんそのものじゃなくて、あんたの意地の悪さに怒ってるの」
厳しい口調で言い捨てる。途端にこなたは肩を落とした。
(ちょっと言い過ぎたかな……?)
不安になったかがみがフォローしようかどうか迷っていると、こなたは買ったばかりの熱々おでんから大根を一口分、割り箸で取って、
「じゃあこれお詫びに。はい、あーん」
「あーん……じゃねえだろ! ダイエット中だっての!!」
「あ、そっか」
わざとらしいこなたの言動に、かがみの脳裏にあったフォロー云々は地平線の彼方へ消え去った。
「でも大根一口ぐらい、いいんじゃないの?」
「その一口が落とし穴なのよ」
少しだけならいいかと思って夜食や間食に手を出し、今まで何度も涙を飲んできた。同じ過ちを繰り返すわけにはいかない……そんなかがみの決意も知らず、こなたは大根を頬張っている。
「歩きながら食べるのはやめなさいよ」
「だって冷めちゃうし」
ハフハフと湯気を吹きながら答えるこなた。
「かがみはさ、おでんの種で、何が好き?」
その上おでんの話題を振るか。さすがに怒る気も失せて、かがみはため息をついた。
「ちなみに私は大根が好きだよ。底の方で味がよ~く染み込んだのとかたまんないよね」
ぐううう~……と、またかがみのお腹が鳴った。
「食べる?」
「……いらない」
「無理しないでいいのに。お腹空いてるんでしょ? この大根美味しいよ」
「いらないってば……何でそんなにしつこく勧めるのよ?」
「だっておでんって、一人より大勢で食べた方が美味しいじゃん。コンビニおでんだって一緒だよ」
「……それは分かる気がするけど……」
「というわけで私はかがみとおでんを食べたいのだよ。さあ」
一途なぐらい真っ直ぐな目でかがみを見据え、おでんを差し出すこなた。食べないことにはテコでも動きそうになかった。
「…………はぁ」
観念して、かがみは差し出された大根を口に入れた。熱々の大根に染みたツユの旨味が口中に広がる。
「美味しい?」
「うん……」
美味しいと思うと同時に、自分の意志の弱さに凹んでいる微妙な表情でかがみが頷く。こなたは嬉しそうに微笑んだ。
「ところでさっきの話の続きだけど、かがみはおでん種、何が好き?」
「そうね……がんもとか」
「ほほう、がんもちゃん。プリンセスナインを思い出すねぇ」
「知らんがな」
かがみと話をしながら、今度はたまごを頬張っているこなた。
「よく食べるわね。あんたこそ太るわよ?」
「大丈夫。私は食べてもあんまり太らない体質だから」
「そういうの聞くと腹立つわね……」
「そう思うならかがみが幸せ太りにしてよ」
「なっ……言葉の意味分かってんのか?」
「あ、そうだ。今度さ、みんなでおでんパーティーしようよ。つかさやみゆきさんも誘って」
「また唐突な話ね」
「さっきも言ったけど、おでんは一人より大勢で食べた方が美味しいんだよ。おやつじゃなくてちゃんとご飯としてなら、かがみも問題なしっしょ?」
「……それもそうね」
おやつだろうがご飯だろうが、食べ過ぎたら同じことだが。もちろんそんな事実は分かっていても指摘しないこなただった。
おわり
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- 大根なら低カロリーで食物繊維も豊富だから大丈夫さ!……きっと。 -- 名無しさん (2010-10-13 01:59:10)
- うむ、ここはひとつ「おかわり」が欲しいところだな。 -- 名無しさん (2010-10-12 22:41:17)
- 最後の「おわり」が「おかわり」に見えた俺は食欲魔人か?! -- 名無しさん (2009-09-16 20:14:40)