星に願いを 第6話に戻る
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7. (つかさ視点)
私、どうしちゃったんだろう。
お昼の時にみんなに酷い態度とっちゃった。あんな事を言うつもりなんて
全然なかったのに。
夕方のホームルームが終わると、ゆきちゃん、こなちゃん、お姉ちゃん
と顔を合わせることが恥ずかしくて、早々に教室を飛び出した。
お昼の時にみんなに酷い態度とっちゃった。あんな事を言うつもりなんて
全然なかったのに。
夕方のホームルームが終わると、ゆきちゃん、こなちゃん、お姉ちゃん
と顔を合わせることが恥ずかしくて、早々に教室を飛び出した。
昨日、こなちゃんに強引に迫って、無理やり押し倒したあげくに、
自分が惨めになって、泣いちゃったことを引きずった挙句に、
みんなに当り散らすなんて……
「どうして、こうなっちゃうのかな」
私は俯きながら呟いてみるけど答えはでない。足取りがとっても重い。
こなちゃんはお姉ちゃんが好きだし、お姉ちゃんはこなちゃんが好き。
両想いの二人を応援できない、ゆがんだ心が嫌になってしまう。
自分が惨めになって、泣いちゃったことを引きずった挙句に、
みんなに当り散らすなんて……
「どうして、こうなっちゃうのかな」
私は俯きながら呟いてみるけど答えはでない。足取りがとっても重い。
こなちゃんはお姉ちゃんが好きだし、お姉ちゃんはこなちゃんが好き。
両想いの二人を応援できない、ゆがんだ心が嫌になってしまう。
ぐちゃぐちゃになった頭の中を整理できないまま、私は全てから
逃げるように玄関を出たところで、よく知っている下級生に声を
かけられた。
「つかさ先輩? 」
少し舌足らずな声に振り向くと、こなちゃんの従姉妹、小早川ゆたか
ちゃんが立っていた。
「先輩。どうしたんですか? 」
ゆたかちゃんは、私に近づきながら言葉を続ける。
「どうして…… 泣いているんです? 」
「私が、泣いてる? 」
人差し指を頬に当てると、確かに濡れていた。
逃げるように玄関を出たところで、よく知っている下級生に声を
かけられた。
「つかさ先輩? 」
少し舌足らずな声に振り向くと、こなちゃんの従姉妹、小早川ゆたか
ちゃんが立っていた。
「先輩。どうしたんですか? 」
ゆたかちゃんは、私に近づきながら言葉を続ける。
「どうして…… 泣いているんです? 」
「私が、泣いてる? 」
人差し指を頬に当てると、確かに濡れていた。
「何があったんですか? 」
「なんでもないよ…… ゆたかちゃん」
「でも」
ゆたかちゃんは、心配そうに見上げてから、スカートから出した白い
ハンカチを渡してくれる。
「あっ、ありがと」
私は、瞼から頬に零れた涙の跡をぬぐった。下級生から心配されるなんて
恥ずかしかったけど、ゆたかちゃんの好意はありがたかった。
「あのっ」
ゆたかちゃんはしばらく迷っていたけど、意を決したように口を開いた。
「ご迷惑でなければ、ご事情を教えていただけませんか。でも、出すぎた
ことだったらごめんなさいっ」
「なんでもないよ…… ゆたかちゃん」
「でも」
ゆたかちゃんは、心配そうに見上げてから、スカートから出した白い
ハンカチを渡してくれる。
「あっ、ありがと」
私は、瞼から頬に零れた涙の跡をぬぐった。下級生から心配されるなんて
恥ずかしかったけど、ゆたかちゃんの好意はありがたかった。
「あのっ」
ゆたかちゃんはしばらく迷っていたけど、意を決したように口を開いた。
「ご迷惑でなければ、ご事情を教えていただけませんか。でも、出すぎた
ことだったらごめんなさいっ」
私は、ゆたかちゃんの顔を、まじまじと見てしまった。
みんなで一緒にチアをやった文化祭以外では、こなちゃんの家で宿題をしたり、
遊んだりしている時くらいしか、ゆたかちゃんとは顔を合わせていないから、
さほど親しいというわけではないけれど。
どちらかというと、引っ込み思案な子かなと思っていたから、ちょっと
いや、かなり意外だった。
みんなで一緒にチアをやった文化祭以外では、こなちゃんの家で宿題をしたり、
遊んだりしている時くらいしか、ゆたかちゃんとは顔を合わせていないから、
さほど親しいというわけではないけれど。
どちらかというと、引っ込み思案な子かなと思っていたから、ちょっと
いや、かなり意外だった。
でも、誰かに話を聞いてもらうとしたら…… 『入れ替わり』という
事情を知っている、ゆたかちゃんしかいない。
事情を知っている、ゆたかちゃんしかいない。
私とゆたかちゃんは再び校庭に戻り、学校の食堂まで歩いていく。
暮色が増すこの時間は、流石に人気は少なくて、食堂でも数人の生徒が
かなり離れた場所で談笑しているだけだ。
私は、自販機からホットココアを取り出して、ゆたかちゃんに渡す。
「ありがとうございます」
ゆたかちゃんが微笑んだ。
背中に白い羽根をくっつけたら、本当の天使みたいで、ささくれ立った
心がちょっとだけ癒される。
私は、カフェオーレのボタンを押してから、椅子に座った。
暮色が増すこの時間は、流石に人気は少なくて、食堂でも数人の生徒が
かなり離れた場所で談笑しているだけだ。
私は、自販機からホットココアを取り出して、ゆたかちゃんに渡す。
「ありがとうございます」
ゆたかちゃんが微笑んだ。
背中に白い羽根をくっつけたら、本当の天使みたいで、ささくれ立った
心がちょっとだけ癒される。
私は、カフェオーレのボタンを押してから、椅子に座った。
「ゆたかちゃんと二人きりになるって初めてかな? 」
「たぶん。そうだと思います」
ふーふーいいながら、ゆたかちゃんは紙コップに口をつけて、
「熱っ」と小さく叫んで舌を引っ込める。
「たぶん。そうだと思います」
ふーふーいいながら、ゆたかちゃんは紙コップに口をつけて、
「熱っ」と小さく叫んで舌を引っ込める。
私がずっと、ゆたかちゃんの顔を眺めていることに気がついて、
彼女は頬を少し赤らめた。
ホットココアを飲んでいるゆたかちゃんに癒されるけど、せっかく
時間を作ってくれたのだから、話をしないといけないな。
彼女は頬を少し赤らめた。
ホットココアを飲んでいるゆたかちゃんに癒されるけど、せっかく
時間を作ってくれたのだから、話をしないといけないな。
「ゆたかちゃんって、誰かを好きになったことあるかな? 」
「えっと。それは親友とかいう意味ではないですよね」
「うん」
ゆたかちゃんは、ココアの入った紙コップを机の上に置いた。
「私ね。ずっと前から、好きな人がいたの。傍にいるだけで
幸せになれる人が」
一息ついてから言葉を続ける。
「でもね。その人は、別のひとが好きだった。その別のひとは、
私のもっとも距離が近いひとだったの。例え話、わかりにくい? 」
「えっと。それは親友とかいう意味ではないですよね」
「うん」
ゆたかちゃんは、ココアの入った紙コップを机の上に置いた。
「私ね。ずっと前から、好きな人がいたの。傍にいるだけで
幸せになれる人が」
一息ついてから言葉を続ける。
「でもね。その人は、別のひとが好きだった。その別のひとは、
私のもっとも距離が近いひとだったの。例え話、わかりにくい? 」
ゆたかちゃんは何も言わず、続きを待っている。
「私は好きなひとに、ちゃんと『好き』と言えればよかったんだ。
でもね。彼女の気持ちを無視したことをしちゃったの」
「私は好きなひとに、ちゃんと『好き』と言えればよかったんだ。
でもね。彼女の気持ちを無視したことをしちゃったの」
「つかさ、せんぱい…… 」
「それでもね。そのひとは何も文句をいわなかったの。私の好きに
していいってことまで言ってくれた。でもね。自分自身がすごく
情けなくなってしまって…… 居たたまれなくなって
泣いちゃったんだ」
「それでもね。そのひとは何も文句をいわなかったの。私の好きに
していいってことまで言ってくれた。でもね。自分自身がすごく
情けなくなってしまって…… 居たたまれなくなって
泣いちゃったんだ」
私は、一気に話してから、紙コップを置いた。
「つかさ先輩、ごめんなさい。誰の話なのかが分かっちゃいました」
「そっか。普通分かるよね。まわりくどい言い方はやめるよ」
「ごめんなさい」
「ううん。気にしなくていいの。私の好きなひとは、こなちゃんで、
一番近い人はお姉ちゃん。昨日から、ずっと引きずって悩んで、まともに
こなちゃんとも、お姉ちゃんとも話ができないんだ」
「そっか。普通分かるよね。まわりくどい言い方はやめるよ」
「ごめんなさい」
「ううん。気にしなくていいの。私の好きなひとは、こなちゃんで、
一番近い人はお姉ちゃん。昨日から、ずっと引きずって悩んで、まともに
こなちゃんとも、お姉ちゃんとも話ができないんだ」
ゆたかちゃんに打ち明けてみると、ずいぶん気持ちが落ち着いてくる。
「差し出がましいかもしれませんが」
ゆたかちゃんは、ゆっくりと切り出す。
「こなたお姉ちゃんも、かがみ先輩も、つかさ先輩を嫌いになんか
なったりしないと思います」
「差し出がましいかもしれませんが」
ゆたかちゃんは、ゆっくりと切り出す。
「こなたお姉ちゃんも、かがみ先輩も、つかさ先輩を嫌いになんか
なったりしないと思います」
「そうかな」
「つかさ先輩は、自分の気持ちを抑えすぎて、疲れてしまっているのでは
ないでしょうか」
ゆたかちゃんは、何故か自嘲めいた口調で話した。
「ゆたかちゃん…… 」
「もっとわがままになってもいいと思いますよ」
華奢なはずの、ゆたかちゃんの言葉は、私の迷いを吹き飛ばす
力強さがあった。
「あっ、生意気なこといってしまってごめんなさい」
「ううん。ありがとう」
私は、恐縮するゆたかちゃんに礼を言った。
「つかさ先輩は、自分の気持ちを抑えすぎて、疲れてしまっているのでは
ないでしょうか」
ゆたかちゃんは、何故か自嘲めいた口調で話した。
「ゆたかちゃん…… 」
「もっとわがままになってもいいと思いますよ」
華奢なはずの、ゆたかちゃんの言葉は、私の迷いを吹き飛ばす
力強さがあった。
「あっ、生意気なこといってしまってごめんなさい」
「ううん。ありがとう」
私は、恐縮するゆたかちゃんに礼を言った。
ゆたかちゃんは、臆病な私の背中を押してくれたんだと思う。
でもね。可愛らしい天使の後ろに、尖った黒い尻尾があることには
気がつかなかったんだ。
でもね。可愛らしい天使の後ろに、尖った黒い尻尾があることには
気がつかなかったんだ。
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- ヤバいくらい面白いです! -- チャムチロ (2012-08-23 12:46:54)
- 楽しく読ませていただいてます。
其々の胸に秘めた想いが絡み合うのは読んでてドキドキします。
今後の展開も楽しみにしています。 -- 名無しさん (2007-11-27 15:44:35)