罪悪感より先に、間の抜けた感想のほうが頭に先に浮かんだ。
私の体を覆う皮。
誰かの体を覆う皮。
それって、こんなに脆いんだなって。
だってほら見て。
少しの力で刺したのに、こんなにもあっさりと貫けたよ?
大丈夫だよ、ゆたか。
そんな顔しないで。
すぐに、出すから。
私の突き刺した包丁から……腸(わた)を、全部。
私の体を覆う皮。
誰かの体を覆う皮。
それって、こんなに脆いんだなって。
だってほら見て。
少しの力で刺したのに、こんなにもあっさりと貫けたよ?
大丈夫だよ、ゆたか。
そんな顔しないで。
すぐに、出すから。
私の突き刺した包丁から……腸(わた)を、全部。
- 鈍色プライオリティー
「……ごめん、みなみちゃん」
二人っきりの教室で、ゆたかの声が耳を劈く。
それが胸の奥まで届いて、私の内部で暴れる。
分かってた。
知ってた。
覚悟はしてた。
なのに……なのに。
「そ……う」
自分でも情けないくらいに震えた声が漏れた。
あれ、変だな。
自分でも想像以上に……ショックだった。
分かってたのに。
知ってたのに。
覚悟してたのに。
「みなみちゃんの気持ちは、受け止められない……本当に、ごめん」
「……謝らなくて、いい」
だってこれは、私の勝手だから。
勝手に好きになって。
勝手に……想いを伝えただけだから。
断られるのなんて、分かってた。
だって私もゆたかも……女の子なんだから。
「私、ね」
そう、女の子……だから。
「他に……好きな人が、居るんだ」
ドロリ
絞ったような、濃密な汁が溢れる。
真っ黒のその汁が、私の体の中に流れ込む。
それはきっと……嫉妬という、醜い感情。
「……そ、う」
気を抜けばきっと、泣いていた。
でも泣けない。
だって泣けば……彼女を困らせるだけだから。
だから我慢しないといけない。
だから。
「私、こなたお姉ちゃんのこと……好きなんだ」
ダカ、ラ……。
二人っきりの教室で、ゆたかの声が耳を劈く。
それが胸の奥まで届いて、私の内部で暴れる。
分かってた。
知ってた。
覚悟はしてた。
なのに……なのに。
「そ……う」
自分でも情けないくらいに震えた声が漏れた。
あれ、変だな。
自分でも想像以上に……ショックだった。
分かってたのに。
知ってたのに。
覚悟してたのに。
「みなみちゃんの気持ちは、受け止められない……本当に、ごめん」
「……謝らなくて、いい」
だってこれは、私の勝手だから。
勝手に好きになって。
勝手に……想いを伝えただけだから。
断られるのなんて、分かってた。
だって私もゆたかも……女の子なんだから。
「私、ね」
そう、女の子……だから。
「他に……好きな人が、居るんだ」
ドロリ
絞ったような、濃密な汁が溢れる。
真っ黒のその汁が、私の体の中に流れ込む。
それはきっと……嫉妬という、醜い感情。
「……そ、う」
気を抜けばきっと、泣いていた。
でも泣けない。
だって泣けば……彼女を困らせるだけだから。
だから我慢しないといけない。
だから。
「私、こなたお姉ちゃんのこと……好きなんだ」
ダカ、ラ……。
物事には何にでも、優先順位がある。
例えば、明日提出の宿題と来週提出の宿題。
どちらを先にやるかなんてのは、明白。
人の中にだって、それがある。
私の優先順位がゆたかであるように。
ゆたかの優先順位が泉先輩であるように。
その順位はもう……覆ることは、ない。
例えば、明日提出の宿題と来週提出の宿題。
どちらを先にやるかなんてのは、明白。
人の中にだって、それがある。
私の優先順位がゆたかであるように。
ゆたかの優先順位が泉先輩であるように。
その順位はもう……覆ることは、ない。
告白の後も、ゆたかは私に普通に接してくれた。
それが嬉しくもあり……寂しかった。
だって、ゆたかの口から出てくるのが……泉先輩の事ばかりだと思い知らされたから。
泉先輩への想いを私に告げたゆたかは、相談と言っては彼女の名前を出す。
こなたお姉ちゃん。
こなたおねえちゃん。
コナタオネエチャン……。
ねぇ、ゆたか。
私の名前も……呼んで。
……。
うん、分かってる。
大丈夫だよ。
もう、大丈夫だから。
ごめん、変な事……考えたみたい。
だけどこれだけは、許して。
迷惑かけないから。
もう貴方には伝えないから。
我慢するから。
泉先輩の、次でもいいからっ。
その次でも、その次でもいいからっ!
だから、お願い。
好きで……いさせて。
それが嬉しくもあり……寂しかった。
だって、ゆたかの口から出てくるのが……泉先輩の事ばかりだと思い知らされたから。
泉先輩への想いを私に告げたゆたかは、相談と言っては彼女の名前を出す。
こなたお姉ちゃん。
こなたおねえちゃん。
コナタオネエチャン……。
ねぇ、ゆたか。
私の名前も……呼んで。
……。
うん、分かってる。
大丈夫だよ。
もう、大丈夫だから。
ごめん、変な事……考えたみたい。
だけどこれだけは、許して。
迷惑かけないから。
もう貴方には伝えないから。
我慢するから。
泉先輩の、次でもいいからっ。
その次でも、その次でもいいからっ!
だから、お願い。
好きで……いさせて。
「私……お姉ちゃんに、伝えてみようと思う」
私の部屋に、ゆたかの声が響く。
その聞き慣れたはずの声が、ズシリと胸に突き刺さる。
いつかはそんな日が来るのは分かっていた。
それが今日だっただけ。
重ねていった想いは、いつか伝えるものだから。
……私が、そうだったように。
なのに、分かってたはずの体が……抵抗した。
「み、みなみ……ちゃん?」
彼女の手を掴む。
強く……ただ強く。
「痛い、よ……みなみちゃん」
ゆたかは私の想いも知ってる。
だから、この行為の意味も……知ってる。
「!」
手を引いた。
唇を奪った。
舌をそのまま、彼女の口の中に押し込む。
……だけど、激痛。
鉄の味が口内に広がり、ゆたかの手に突き飛ばされる。
「あ……」
噛まれた舌から漏れる血の味と、ゆたかの顔。
私は多分その二つを……一生忘れない。
「ご、め……ん」
「……」
馬鹿をやった自覚はある。
でもそれよりも、今の行為に惚けてる自分が居た。
それが惨めで……悔しかった。
「今日は……もう、帰るね」
そのまま、ゆたかが立ち上がる。
ゆたかは泣いていなかった。
怒っても、いなかった。
多分……呆れてたんだ。
そうだよね?
だって、私の優先順位なんて……そんなものだから。
可笑しいね。
変だよね。
馬鹿……だよね。
私の部屋に、ゆたかの声が響く。
その聞き慣れたはずの声が、ズシリと胸に突き刺さる。
いつかはそんな日が来るのは分かっていた。
それが今日だっただけ。
重ねていった想いは、いつか伝えるものだから。
……私が、そうだったように。
なのに、分かってたはずの体が……抵抗した。
「み、みなみ……ちゃん?」
彼女の手を掴む。
強く……ただ強く。
「痛い、よ……みなみちゃん」
ゆたかは私の想いも知ってる。
だから、この行為の意味も……知ってる。
「!」
手を引いた。
唇を奪った。
舌をそのまま、彼女の口の中に押し込む。
……だけど、激痛。
鉄の味が口内に広がり、ゆたかの手に突き飛ばされる。
「あ……」
噛まれた舌から漏れる血の味と、ゆたかの顔。
私は多分その二つを……一生忘れない。
「ご、め……ん」
「……」
馬鹿をやった自覚はある。
でもそれよりも、今の行為に惚けてる自分が居た。
それが惨めで……悔しかった。
「今日は……もう、帰るね」
そのまま、ゆたかが立ち上がる。
ゆたかは泣いていなかった。
怒っても、いなかった。
多分……呆れてたんだ。
そうだよね?
だって、私の優先順位なんて……そんなものだから。
可笑しいね。
変だよね。
馬鹿……だよね。
その夜だった。
雨の降る……深夜。
私の携帯に着信があった。
……ゆたかから。
雨の降る……深夜。
私の携帯に着信があった。
……ゆたかから。
「ごめんね、こんな遅くに……」
「……ううん、いい」
雨風に濡れたゆたかの髪が艶っぽくて素敵だった。
それを眺めるのが、幸福だった。
そんな幸福も……すぐに歪むのに。
「私からもごめんねっ、みなみちゃん」
「……いえ」
声が、震える。
どうして視界が歪むの?
聞いたはず、ゆたかに。
言われたはず、ゆたかに。
「お姉ちゃんと一緒に」って。
私の前には今、二人が居る。
ゆたかと……泉、先輩。
その二人の手がしっかりと……繋がっていた。
ドロリ
「上がって……今日、誰も居ないから」
それを、ゆたかも知っている。
だから私に電話が来た。
……助けて、って。
「お風呂、どうぞ」
「あ……うん、ゆーちゃんじゃあ一緒入ろっか」
泉先輩は、軽い気持ちで言ったんだと思う。
ゆたかは特に体が弱いから、すぐ体を温めないとって。
うん、そう。
そうだって分かってるのに、また心の中で……ドロリ。
「ううん。お姉ちゃん、お先にどうぞ……私はちょっと」
「あ……うん」
私を一度見てから、泉先輩が気まずそうに部屋を出て行く。
「改めて謝るね……ごめん」
「何が……あったの?」
まだ私は何も聞いていない。
深夜に鳴った携帯から漏れたのは、助けを求める声。
それに応ずるまま、この二人をこの家に招きいれた。
「お姉ちゃんにね、伝えたんだ……好きだって」
……それは、伝わってきた。
二人の間の確かな絆は、さっきの繋いだ手で十分……見せつけられたから。
ドロリ
「お姉ちゃんも……受け入れてくれた。キス……してくれた」
心臓が暴れる。
キスなら、私もしたのに。
だけどきっと、あんな野蛮のじゃない。
きっと舌を絡めて、長く……息が続かないくらい長いキスだったんだ。
そうだよね。
大好きな……泉先輩と、だもんね。
「でも、突然だった。突然……ゆいお姉ちゃんが、来て……ぅっ」
ゆたかの頬から涙が落ちる。
そこから先は、聞かないでも分かる。
きっと問いただされて……反対されて、引き裂かれそうになって。
そのまま二人で、抜け出したんだ。
……私の家、に。
「ごめん……なさい、ごめんなさいごめんなさい……」
ゆたかが謝罪の言葉を繰り返す。
彼女はだって、知ってる。
私の気持ちも……この行為が、私にどれだけ辛い事かも。
だって、ゆたかは。
私の知ってるゆたかは……優しい子だもん。
「だから」
「!」
彼女の体が、私の胸元に押し付けられた。
突然の行為に、体が固まる。
濡れた髪が妖艶で……心が暴れるのが分かる。
「だから……昼間の続き、してもいいよ」
「えっ……」
フワリと、彼女の体から衣服が落ちた。
上着だけじゃない。
可愛らしい下着から、スカートから……全てを投げ捨てていく。
「ゆた、か……」
私の目の前には、全てがある。
私の求める……全てが。
「私に出来るの……これくらい、だから」
伸ばした手が、ゆたかの頬に触れる。それに反応して、ゆたかの体がビクンと反応する。
雨に濡れた髪が手に纏わり付いて、私の体を淫靡に刺激する。
手繰り寄せた体は、唇で繋がる。
長い、キスをする。
舌を絡め、息が続かなくなるぐらい……長く。
その唇が繋がったまま、彼女をベッドに押し倒す。
抵抗は、なかった。
……。
声が、聞こえるまでは。
「ひっ……く」
泣き声が、繋がった唇から漏れた。
それが耳を劈き……欲情のままに動いていた体が、止まる。
「ごめ、ん。違う、違うから……」
その涙を必死に止めようとするゆたか。
でも、止まるわけない。
だって彼女は今、身をささげるんだ。
こんな好きでもない……優先順位の低い、私なんかに。
どうして?
ねぇ、どうして私じゃないの?
私の一番は貴方なのに。
私の全部は……貴方、なのに。
どうすれば私は……貴方の一番に、なれるの?
「お姉ちゃん……お姉ちゃん、ぅうう」
お姉ちゃん。
こなたお姉ちゃん。
コナタオネエチャン。
ドロリ
「……ごめん」
ゆたかの上から離れる。
そうだ。
分かった。
思い知らされた。
こんな事……意味は、ない。
こんな事しても、彼女の一番には……なれない。
「みなみ……ちゃん?」
涙で歪んだ顔が、私を見る。
「いい、から」
声が震える。
私の頬からも……涙が溢れていたから。
「……でも」
「いいから!」
声で、ゆたかを制する。
「私は隣りの部屋で、寝るから……」
ドロリと鈍い感情が溢れる音はもう、聞こえなかった。
きっと私の中でその感情は……満たされてしまったんだ。
「……ううん、いい」
雨風に濡れたゆたかの髪が艶っぽくて素敵だった。
それを眺めるのが、幸福だった。
そんな幸福も……すぐに歪むのに。
「私からもごめんねっ、みなみちゃん」
「……いえ」
声が、震える。
どうして視界が歪むの?
聞いたはず、ゆたかに。
言われたはず、ゆたかに。
「お姉ちゃんと一緒に」って。
私の前には今、二人が居る。
ゆたかと……泉、先輩。
その二人の手がしっかりと……繋がっていた。
ドロリ
「上がって……今日、誰も居ないから」
それを、ゆたかも知っている。
だから私に電話が来た。
……助けて、って。
「お風呂、どうぞ」
「あ……うん、ゆーちゃんじゃあ一緒入ろっか」
泉先輩は、軽い気持ちで言ったんだと思う。
ゆたかは特に体が弱いから、すぐ体を温めないとって。
うん、そう。
そうだって分かってるのに、また心の中で……ドロリ。
「ううん。お姉ちゃん、お先にどうぞ……私はちょっと」
「あ……うん」
私を一度見てから、泉先輩が気まずそうに部屋を出て行く。
「改めて謝るね……ごめん」
「何が……あったの?」
まだ私は何も聞いていない。
深夜に鳴った携帯から漏れたのは、助けを求める声。
それに応ずるまま、この二人をこの家に招きいれた。
「お姉ちゃんにね、伝えたんだ……好きだって」
……それは、伝わってきた。
二人の間の確かな絆は、さっきの繋いだ手で十分……見せつけられたから。
ドロリ
「お姉ちゃんも……受け入れてくれた。キス……してくれた」
心臓が暴れる。
キスなら、私もしたのに。
だけどきっと、あんな野蛮のじゃない。
きっと舌を絡めて、長く……息が続かないくらい長いキスだったんだ。
そうだよね。
大好きな……泉先輩と、だもんね。
「でも、突然だった。突然……ゆいお姉ちゃんが、来て……ぅっ」
ゆたかの頬から涙が落ちる。
そこから先は、聞かないでも分かる。
きっと問いただされて……反対されて、引き裂かれそうになって。
そのまま二人で、抜け出したんだ。
……私の家、に。
「ごめん……なさい、ごめんなさいごめんなさい……」
ゆたかが謝罪の言葉を繰り返す。
彼女はだって、知ってる。
私の気持ちも……この行為が、私にどれだけ辛い事かも。
だって、ゆたかは。
私の知ってるゆたかは……優しい子だもん。
「だから」
「!」
彼女の体が、私の胸元に押し付けられた。
突然の行為に、体が固まる。
濡れた髪が妖艶で……心が暴れるのが分かる。
「だから……昼間の続き、してもいいよ」
「えっ……」
フワリと、彼女の体から衣服が落ちた。
上着だけじゃない。
可愛らしい下着から、スカートから……全てを投げ捨てていく。
「ゆた、か……」
私の目の前には、全てがある。
私の求める……全てが。
「私に出来るの……これくらい、だから」
伸ばした手が、ゆたかの頬に触れる。それに反応して、ゆたかの体がビクンと反応する。
雨に濡れた髪が手に纏わり付いて、私の体を淫靡に刺激する。
手繰り寄せた体は、唇で繋がる。
長い、キスをする。
舌を絡め、息が続かなくなるぐらい……長く。
その唇が繋がったまま、彼女をベッドに押し倒す。
抵抗は、なかった。
……。
声が、聞こえるまでは。
「ひっ……く」
泣き声が、繋がった唇から漏れた。
それが耳を劈き……欲情のままに動いていた体が、止まる。
「ごめ、ん。違う、違うから……」
その涙を必死に止めようとするゆたか。
でも、止まるわけない。
だって彼女は今、身をささげるんだ。
こんな好きでもない……優先順位の低い、私なんかに。
どうして?
ねぇ、どうして私じゃないの?
私の一番は貴方なのに。
私の全部は……貴方、なのに。
どうすれば私は……貴方の一番に、なれるの?
「お姉ちゃん……お姉ちゃん、ぅうう」
お姉ちゃん。
こなたお姉ちゃん。
コナタオネエチャン。
ドロリ
「……ごめん」
ゆたかの上から離れる。
そうだ。
分かった。
思い知らされた。
こんな事……意味は、ない。
こんな事しても、彼女の一番には……なれない。
「みなみ……ちゃん?」
涙で歪んだ顔が、私を見る。
「いい、から」
声が震える。
私の頬からも……涙が溢れていたから。
「……でも」
「いいから!」
声で、ゆたかを制する。
「私は隣りの部屋で、寝るから……」
ドロリと鈍い感情が溢れる音はもう、聞こえなかった。
きっと私の中でその感情は……満たされてしまったんだ。
バタン、と扉の閉まる音がする。
きっと泉先輩がお風呂から上がったんだ。
ゆたかの一番は……泉先輩。
私じゃない。
私じゃ……ない。
ああ、そうだ。
一番は、私なんかじゃない。
イチバンハワタシナンカジャナイ。
ギシギシと、嫌に聞きなれたスプリングの音がする。
私の部屋の……私のベッド。
壁一枚挟めばそれくらい、聞こえる。
居間二人はきっと、体を重ねてるんだ。
私の部屋で。
私のものに囲まれて。
ギシギシ
耳を裂く音が私を苛める。
体に満ちた鈍い色の感情が私の中で暴れていく。
私の中に、静かに……ゆっくりと。
ねぇ、ゆたか。
どうして私は貴方の一番じゃないの?
ドウシテワタシハイチバンジャナイノ?
ドウシテ……
ギシギシ
アア、五月蝿イナ
ギシギシ
ウルサイ
オネエチャンオネエチャン
五月蝿い五月蝿イ
ギシギシ
オネエチャン
ギシギシ
オネエチャンオネエチャン
ウルサイうるさいウルサイうるさいウルサイッッッ
どうして?
どうシテ私の家のはずなのに……居場所がないの?
どウして?
どうして私ハ、一番じャナいの?
一番が……いい。
彼女の一番ガイい。
彼女の一番に、どうすればなれるの?
……。
アア、ソウダ。
簡単ナ方法ガ、アッタ。
ソウシヨウ。アハハ、ナンデ思イツカナカッタンダアハハハハハッハハハハハハハハ
ナロウ
彼女ノ、一番ニ
きっと泉先輩がお風呂から上がったんだ。
ゆたかの一番は……泉先輩。
私じゃない。
私じゃ……ない。
ああ、そうだ。
一番は、私なんかじゃない。
イチバンハワタシナンカジャナイ。
ギシギシと、嫌に聞きなれたスプリングの音がする。
私の部屋の……私のベッド。
壁一枚挟めばそれくらい、聞こえる。
居間二人はきっと、体を重ねてるんだ。
私の部屋で。
私のものに囲まれて。
ギシギシ
耳を裂く音が私を苛める。
体に満ちた鈍い色の感情が私の中で暴れていく。
私の中に、静かに……ゆっくりと。
ねぇ、ゆたか。
どうして私は貴方の一番じゃないの?
ドウシテワタシハイチバンジャナイノ?
ドウシテ……
ギシギシ
アア、五月蝿イナ
ギシギシ
ウルサイ
オネエチャンオネエチャン
五月蝿い五月蝿イ
ギシギシ
オネエチャン
ギシギシ
オネエチャンオネエチャン
ウルサイうるさいウルサイうるさいウルサイッッッ
どうして?
どうシテ私の家のはずなのに……居場所がないの?
どウして?
どうして私ハ、一番じャナいの?
一番が……いい。
彼女の一番ガイい。
彼女の一番に、どうすればなれるの?
……。
アア、ソウダ。
簡単ナ方法ガ、アッタ。
ソウシヨウ。アハハ、ナンデ思イツカナカッタンダアハハハハハッハハハハハハハハ
ナロウ
彼女ノ、一番ニ
ゆっくりと扉を開ける。
もう、部屋の中は暗い――ソウダヨネ、明カリナンテ邪魔ダヨネ?
暗闇の中から聞こえてくる、ベッドを軋ませる音。
そして、ゆたかの喘ぎ声。泉先輩の喘ぎ声。
――アハハッ、ユタカノ声、可愛イね。
先輩のハ邪魔ダナ……まァ、いイヤ。
パチン、と音を立てて部屋の蛍光灯に灯をともす。
それと一緒に壁を引っかいた所為で爪が剥げた……まぁいいや。
その光に反応して、スプリングの音が止んだ。
二人の姿を、人口の光が照らす。
みっともなく絡まった体。
――大丈夫ダヨユタカ、モウソンナノ気ニシナイカラ。
「み、みなみちゃ……ッ」
ゆたかが声を失う。
泉先輩も同じだ。
私の手にあるものを見れば、誰でもそうかもしれない。
それは、どこの家にだってあるもの。
でもこんな所にはあるはずがない。
そんな……鋭利に光った包丁だなんて。
大丈夫ダヨ、怖がらなくていいかラ
すぐ終わる……カラ
「ひっ……」
私が一歩近づくと、二人の体が私から一歩離れる。
一歩近づけば、また一歩。
アレ? ドウシタノ?
ドウシテ逃げるノ?
ほラ、大丈夫ダヨ、怖くナいから痛くないからすぐだからはははははははハハハハハハハハハ
「や、やめなよっ。みなみちゃん!」
私の前に、泉先輩が立ち上がる。
ゆたかをまるで庇うように、私とゆたかの間に。
アハハハハハ、そんな格好で凄んでも、滑稽デスネ
体が震えてマスヨ?
勇敢デスネ、かっこいいデスネ
デモ……
「邪魔」
「……っ!」
ちょっと蹴りが強かったカナ? 壁にぶつかって悶えてる。
アハハ、先輩の体ッテ軽いんデスネ。打ち所が悪クテ死なないカナ。
でも今ので少し、気が晴れタカモ……。
「お姉ちゃん!」
……。
オネエチャン。
オネエチャンオネエチャン。
あははははははははははははははははははは
そうだよね。
ユタカノイチバンハコノヒトダッタンダヨネ
大丈夫ダヨ?
モウ、私のコトしか考えラレなくしてあげるカラ
「ぁ……」
ゆたかが間の抜けた声を上げる。
私が包丁を高く振り上げたからかな?
あれ、どうしたの? あはは、お漏らししてる可愛いネ
イイヨどうせそんなの分かんなくなるからドウセ
だって、ほら
行くよ? ゆたか
私だけを……見てネ
もう、部屋の中は暗い――ソウダヨネ、明カリナンテ邪魔ダヨネ?
暗闇の中から聞こえてくる、ベッドを軋ませる音。
そして、ゆたかの喘ぎ声。泉先輩の喘ぎ声。
――アハハッ、ユタカノ声、可愛イね。
先輩のハ邪魔ダナ……まァ、いイヤ。
パチン、と音を立てて部屋の蛍光灯に灯をともす。
それと一緒に壁を引っかいた所為で爪が剥げた……まぁいいや。
その光に反応して、スプリングの音が止んだ。
二人の姿を、人口の光が照らす。
みっともなく絡まった体。
――大丈夫ダヨユタカ、モウソンナノ気ニシナイカラ。
「み、みなみちゃ……ッ」
ゆたかが声を失う。
泉先輩も同じだ。
私の手にあるものを見れば、誰でもそうかもしれない。
それは、どこの家にだってあるもの。
でもこんな所にはあるはずがない。
そんな……鋭利に光った包丁だなんて。
大丈夫ダヨ、怖がらなくていいかラ
すぐ終わる……カラ
「ひっ……」
私が一歩近づくと、二人の体が私から一歩離れる。
一歩近づけば、また一歩。
アレ? ドウシタノ?
ドウシテ逃げるノ?
ほラ、大丈夫ダヨ、怖くナいから痛くないからすぐだからはははははははハハハハハハハハハ
「や、やめなよっ。みなみちゃん!」
私の前に、泉先輩が立ち上がる。
ゆたかをまるで庇うように、私とゆたかの間に。
アハハハハハ、そんな格好で凄んでも、滑稽デスネ
体が震えてマスヨ?
勇敢デスネ、かっこいいデスネ
デモ……
「邪魔」
「……っ!」
ちょっと蹴りが強かったカナ? 壁にぶつかって悶えてる。
アハハ、先輩の体ッテ軽いんデスネ。打ち所が悪クテ死なないカナ。
でも今ので少し、気が晴れタカモ……。
「お姉ちゃん!」
……。
オネエチャン。
オネエチャンオネエチャン。
あははははははははははははははははははは
そうだよね。
ユタカノイチバンハコノヒトダッタンダヨネ
大丈夫ダヨ?
モウ、私のコトしか考えラレなくしてあげるカラ
「ぁ……」
ゆたかが間の抜けた声を上げる。
私が包丁を高く振り上げたからかな?
あれ、どうしたの? あはは、お漏らししてる可愛いネ
イイヨどうせそんなの分かんなくなるからドウセ
だって、ほら
行くよ? ゆたか
私だけを……見てネ
「え……あっ」
ゆたかが、眼を見開く。
罪悪感より先に、間の抜けた感想のほうが頭に先に浮かんだ。
私の体を覆う皮。
誰かの体を覆う皮。
それって、こんなに脆いんだなって。
だってほら見て。
少しの力で刺したのに、こんなにもあっさりと貫けたよ?
大丈夫だよ、ゆたか。
そんな顔しないで。
すぐに、出すから。
私の突き刺した包丁から……腸(わた)を、全部。
「み、みなみ……ちゃん?」
ゆたかが、私を見てる。
私だけを。
ほらね? 簡単だったでしょ?
「みなみちゃん……みなみちゃん!」
『ゆたか』が『私』に駆け寄ってくる。
駄目ダヨゆたか、触ったら血が付いちゃうよ?
折角綺麗な肌に綺麗な髪なんだから、綺麗ニシナキャ
「ほ、ら……ゆた、か」
ゆたかに手を伸ばす。
手に乗った『それ』を、見せなきゃ。
でも、上手くいかない。
ああ、今頃になって『上って』きた。
『私』の腹に突き刺さった包丁から伝わる……鈍痛が。
もちろんそれは私が突き刺した、私の手にあった包丁。
そこからドロリと、溢れた血が海を作る。
アハは良カッたネ、これでお漏ラしシタノモばれないネ
ベチャっと汚い音と一緒に、手に乗っていた私の腸が落ちる。
じゃあ、しょうがないなぁ。
また……出さなきゃ。
「みなみちゃん! や、やめてっ!」
「五月蝿い」
腕に絡まって邪魔だなぁ、『これ』
ちょっと押したら泉先輩の横に倒れた……あはは、なんだゆたかだ。
邪魔ダヨ、ゆたか。
私はイマ忙しイから……後ニシテネ?
突き刺すのは簡単ダッタけど、中から出すのは難しいンダよこれ
「ゆたか、ほら……見える?」
「ひぅっ……」
ゆたかの顔に向かって私の腹から取り出した『それ』を投げつける。
ベチャ、と汚い音を立てて私の腸が、ゆたかにへばりつく。
そのままベタリと血の線を頬に残す。
赤い血はまるで化粧……アハハ、よく似合うネ、ユタカ
ああ、泉先輩ニモジャア上げるね。
ベチャ ベチャ グチャ
ほらまだあるよ?
包丁って便利ダよね、細切れニモ出来るんだから
ほら、まだ。
まだ。
沢山沢山、投げつけてあげるね。
分かる?
この一つ一つがね、『私』なんだよ?
あはっ、
あはははははははははは……れ?
ガクン、と膝をつく。
ああ、もう駄目なのか。
人間ってもろいなぁ。
腹から漏れた血とかでもう、どれが何だか分かんないや。
見て、私の部屋ガ、マッカダヨ?
でもイイヨネ?
これで忘れられないヨネ?
ほら、ゆたか。
これでワタシノコト、忘れられないヨネ?
どんな時も、ワタシの事だけ考えられるようにしてあげたよ?
これで、ゆたかの中での優先順位は……ワタシが一番だよね?
あははっ。
あは、
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ
……。
声が、聞こえる。
誰の声だろう。
遠い声。
微かな声。
ああ、覚えてるよ?
分かるよ?
この胸が温かくなる声。
ゆたかだ。
私の、一番。
私の大切な、ゆたかの声。
私の名前を必死に呼んでるのが、聞こえる。
ほらゆたか。
もう、ワタシのこと……忘れられないでしょ?
ずっとずっと、一生……。
それがどんなに鈍(にび)色な気持ちでも、いいんだ。
だって、私の一番はゆたか。そして……。
ゆたかが、眼を見開く。
罪悪感より先に、間の抜けた感想のほうが頭に先に浮かんだ。
私の体を覆う皮。
誰かの体を覆う皮。
それって、こんなに脆いんだなって。
だってほら見て。
少しの力で刺したのに、こんなにもあっさりと貫けたよ?
大丈夫だよ、ゆたか。
そんな顔しないで。
すぐに、出すから。
私の突き刺した包丁から……腸(わた)を、全部。
「み、みなみ……ちゃん?」
ゆたかが、私を見てる。
私だけを。
ほらね? 簡単だったでしょ?
「みなみちゃん……みなみちゃん!」
『ゆたか』が『私』に駆け寄ってくる。
駄目ダヨゆたか、触ったら血が付いちゃうよ?
折角綺麗な肌に綺麗な髪なんだから、綺麗ニシナキャ
「ほ、ら……ゆた、か」
ゆたかに手を伸ばす。
手に乗った『それ』を、見せなきゃ。
でも、上手くいかない。
ああ、今頃になって『上って』きた。
『私』の腹に突き刺さった包丁から伝わる……鈍痛が。
もちろんそれは私が突き刺した、私の手にあった包丁。
そこからドロリと、溢れた血が海を作る。
アハは良カッたネ、これでお漏ラしシタノモばれないネ
ベチャっと汚い音と一緒に、手に乗っていた私の腸が落ちる。
じゃあ、しょうがないなぁ。
また……出さなきゃ。
「みなみちゃん! や、やめてっ!」
「五月蝿い」
腕に絡まって邪魔だなぁ、『これ』
ちょっと押したら泉先輩の横に倒れた……あはは、なんだゆたかだ。
邪魔ダヨ、ゆたか。
私はイマ忙しイから……後ニシテネ?
突き刺すのは簡単ダッタけど、中から出すのは難しいンダよこれ
「ゆたか、ほら……見える?」
「ひぅっ……」
ゆたかの顔に向かって私の腹から取り出した『それ』を投げつける。
ベチャ、と汚い音を立てて私の腸が、ゆたかにへばりつく。
そのままベタリと血の線を頬に残す。
赤い血はまるで化粧……アハハ、よく似合うネ、ユタカ
ああ、泉先輩ニモジャア上げるね。
ベチャ ベチャ グチャ
ほらまだあるよ?
包丁って便利ダよね、細切れニモ出来るんだから
ほら、まだ。
まだ。
沢山沢山、投げつけてあげるね。
分かる?
この一つ一つがね、『私』なんだよ?
あはっ、
あはははははははははは……れ?
ガクン、と膝をつく。
ああ、もう駄目なのか。
人間ってもろいなぁ。
腹から漏れた血とかでもう、どれが何だか分かんないや。
見て、私の部屋ガ、マッカダヨ?
でもイイヨネ?
これで忘れられないヨネ?
ほら、ゆたか。
これでワタシノコト、忘れられないヨネ?
どんな時も、ワタシの事だけ考えられるようにしてあげたよ?
これで、ゆたかの中での優先順位は……ワタシが一番だよね?
あははっ。
あは、
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ
……。
声が、聞こえる。
誰の声だろう。
遠い声。
微かな声。
ああ、覚えてるよ?
分かるよ?
この胸が温かくなる声。
ゆたかだ。
私の、一番。
私の大切な、ゆたかの声。
私の名前を必死に呼んでるのが、聞こえる。
ほらゆたか。
もう、ワタシのこと……忘れられないでしょ?
ずっとずっと、一生……。
それがどんなに鈍(にび)色な気持ちでも、いいんだ。
だって、私の一番はゆたか。そして……。
ユタカノイチバンハ ワタシナンダカラ
(了)
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- 新しいね! -- 名無しさん (2013-04-26 01:26:04)
- すごく・・・どろどろです・・・(展開的な意味で) -- 名無しさん (2010-07-02 15:32:54)
- 俺はいろんな物を吐けたZOI★ -- 名無しさん (2010-06-08 23:39:32)
-
ヤバいなぁ。死んだのはみなみちゃんだけ?ゆたかと泉先輩は無傷? -- 名無し (2010-04-05 15:00:09) - でもかわいい -- 名無しさん (2010-01-04 22:07:43)
- ヤンデレみなみんをお持ち帰りしたいです(〇3〇) -- 名無しさん (2010-01-01 10:12:59)
- 並みのヤンデレCDよりコワイ -- 湾岸の新人 (2009-06-22 23:39:26)
- 何故みなみちゃん家を選んだww無神経すぐるwww -- 名無しさん (2009-04-01 07:06:44)
- 鬱いわ…www
そこで自分を刺すというアイディアがよくでてくるなと感嘆。 -- 名無しさん (2008-12-13 00:47:31) - グロは平気なほうなのにむせそうになった
これくらいダークなグロを書けるようになりたいw
ヤンデレみなみ萌 -- 名無しさん (2008-11-14 16:36:01) - ゆたかとこなたが無神経なのが救いだなw -- 名無しさん (2008-09-25 18:31:17)
- 悲しみの向こうへとかBGMにしたら鬱度アップ -- 名無しさん (2008-05-17 00:10:26)
- ひぐらしかと思った……
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい -- 名無しさん (2008-05-16 20:35:01) - やばい、怖い -- 名無し (2008-01-29 04:28:02)
- これはやばい
狂った描写を書くのが何でそんなに上手いんですかw -- 名無しさん (2008-01-24 23:47:50) - クーデレがヤンデレになっちゃいましたか。 -- 名無しさん (2008-01-03 16:59:33)
- 同じくトラウマにorz
大丈夫。俺もだから -- 名無しさん (2008-01-02 00:18:13) - トラウマ作品をありがとう。たまにはダークなみなゆたも良いですねぇ、と思う俺の思考は腐っているのだろうか。 -- 名無しさん (2008-01-01 13:15:49)