kairakunoza @ ウィキ

カケラ 1

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

■ご注意■
この作品はPART20迄続く大作で読み終わるまでに大変時間がかかります。
ですが、拡げた伏線回収も物語の完結もないまますでに5年以上放置されています。
多くの時間をかけて読んだ末、未完の作品であることを予め納得できる方のみご承知おきの上でお読み下さい。






( 1 )

1.

目が覚めた。
どうやら私は帰りの列車で寝てしまったらしい。
現に、私は今、寝ている。

───寝ている?

「……………ん? ここは…………?」
体を起こそうとした。


『ガン!!』


「いった~~~~~!!」
両手で頭を抱え、痛みに耐える。
私は頭上にある『何か』に頭をぶつけてしまった。豪快に。


こ、ここは一体何処だ?

今度は頭をぶつけない程度にゆっくりと身を起こし、小型蛍光灯で照らされた薄暗い『空間』を見渡す。
「……カプセルホテル?」

私はカプセルホテルというものに泊まったことはないけれど、どういうものかはテレビや漫画で見たことならある。
私が知っている(というか漫画で見たことのある)カプセルホテルは文字通りのカプセルで、
その1つ1つにはベッドがあるだけ。それが上下二段なっていて、ずらっと並んでいる………イメージだ。
そうかそうか、これがカプセルホテルというモノか。

………ん? でも待てよ?

じゃあ何で私がカプセルホテルの中に居るのだろう?
私は確か、『友人達』と一緒にアキバに行って、買い物して、遊んで、その後……、

「あ。そうだ。帰りの電車で寝ちゃったんだ」

電車?

そう言えばこの『ホテル』、
さっきから縦に揺れたり横に揺れたり、時折ベッドごと傾いたりする。
そして、普通の『ホテル』ではまず聞かない、場違いな音が響いている。

その音とは、「ごぉぉぉぉぉぉ」というモータらしき音………。
そして、「カタン、カタン」というジョイント音…………。
どう考えても『電車』ではないか!!

でも、何で?

私の頭の中は、「?」マークでいっぱいになっていた。
元々中身が無いので、その量は半端ではない。それはまぁいいや。
とにかく、私は今何処で何をしているのか、
そして、数時間前まで一緒だった筈の友人達は何処へ行ったのかを確認しなければならない。

流石にこのような非常事態では「面倒くさいな~」とは思わない。思えない。
私は直ちに行動を開始した。

「うんしょっと」
カーテンから顔を出す。

電車とカプセルホテルを足して2で割った様な『それ』は、一つの『部屋』の中にあった。
その『部屋』は中央に通路があり、その両脇がカーテンに覆われている。
おそらくこの中は全てベッドなのだろう。私もその一区画で横になっている。
通路はとても暗い。どうやらわざと照明の明るさを落としているようだ。

私は『それ』の状況を把握するため、
ちゃんと服を着ていることを確認してから梯子を使って通路に降りた。


「これで全部っと」

私が何故か乗っているのは、寝台列車だった。12両編成で、端から端まで歩くのに苦労した。
この前観た鉄道旅行モノのアニメにも出てきた様な気がする。
私が乗っているやつは、寝台列車でも特に珍しい「寝台電車」というものらしい。
特徴が非常に良く似ている。

車内はどれもベッドのある寝台車で、2号車だけが「グリーン車」と呼ばれる座席車だった。
座席は………正直、地元の特急列車(スペーシアだっけ?)の方が立派だ。
天井がやたらと高く、何だか落ち着かない。内装も白一色で寒々しい。
デザインセンスからして『昭和』の臭いがプンプン漂う。
こんなところを特別車両とするとは、鉄道会社は一体何考えてるんだ?

私が車内をきょろきょろ観察している間、2号車の乗客に変な目で見られた。
私は怪しい者ではありません。


各車両の端っこには、幅の狭い折りたたみ式の扉が1両につき1箇所あり、客室とは壁と扉で仕切られている。
もう片方の端っこには粗末な洗面台が3つ、反対側にはトイレが2つもあった。
洗面台は自動水洗ではなく、自分でレバーを操作するというもの。
レバーを操作している間しか水が出ないので、手を洗うには効率が悪い様な……。
状況把握のついでにトイレに行きたくなったので行ったけど、
トイレは和式で下に穴が開いているやつで、しかも電車がぐらんぐらん揺れるので色々と大変だった。



甲高いモータ音を響かせ、長い長い寝台列車は何処かへ向かって走り続ける。
扉の窓からは雪が見えた。どう考えても北国です。ありがじゅしたー。

体が冷えてきた。客室に戻り、私が寝ていた4号車「6中」区画のベッドへと戻る。
車内の状況はこれで分かった。
後は、
1. 持ち物の確認
2. 時間
3. 『友人』達の状況
それと、
4. 列車の行き先
を確認しよう。

てか、1.は真っ先ににやるべきだったヨ……。


何だか探偵モノのゲームの主人公のようだが、いつもの様にドキがムネムネすることは無い。
何となくだけど、この時から嫌~な予感がした。

さて、持ち物をチェックしてみる。
私が背負っていたナップザックはちゃんと狭いベッドの隅に置かれてあった。
中身も無事だったけど、戦利品の入った紙袋は残念ながら見付からなかった。
服装はそのままで、ポケットに入れていた携帯電話と鍵も無事だった。
財布は…………『一応』は無事だった。
『一応』というのは、中のお札が昔のやつにすり替わっていたということ。
3枚だけ生き残っていた千円札は、絵柄が野口英世でも夏目漱石でもなかった。
こんな千円札って、あったっけ?
因みにポイントカードと定期券は無事だった。

2番目。時間を確認する。
私の腕時計と携帯電話は午後8時…言い方を変えると20時を指している。
アキバの帰り、私が『友人』達と一緒に日比谷線に乗ったのが、大体17時半頃。
私が車内で寝てしまったのは………、
松原団地駅を過ぎた後で、『友人』達と別れる前だったから、18時以降だと思う。
で、現在の時間が本当に20時なのかはとても怪しい。
車内は暗いし、みんな寝ているし。

あ、そうだ。
私は携帯電話を取り出し、「117」を押して時間を確認してみる。
NTTが惚けなければ、正しい時間を教えてくれる筈だ。30円取られるけど。
ところが、携帯電話はウンともスンとも言わない。
よく見たら電波状況の表示が「圏外」だった。
寝台列車はウチの地元よりもド田舎を走っているようだ。

他に策は無いか?
思い出した。私の携帯電話は確か、テレビ機能とラジオ機能が付いているんだった。
テレビはダメだった。どうやらワンセグ放送に未対応の地域を走っているようだ。
ラジオはどうだろう? 1局だけだけど、何とか繋がった。

でも、聴かなきゃ良かった。

歌謡曲が流れた後、ラジオパーソナリティは確かに言った。
『昭和5X年、「今年の」ヒット曲「プレイバック」でした』
何時から2007年は昭和5X年になったんだ?
私の頭が確かならば、2007年は平成19年であり、昭和5X年を西暦に換算すると「197X年」になる。
どう考えても30年の誤差がある。
「おかしい」

そう言えば、財布から見覚えの無い『モノ』が出てきたんだった。
その『モノ』とは、

「ゆうづる2号 上野→青森」
「B寝台 6B 中段」
「S5X.12.18 国鉄」

と書かれた切符だった。
切符の日付はラジオで言っていた時間と一致する。

分からなくなってきた。

私は再びベッドから降りて、静かに、かつ早足で2号車の車掌室へ行った。
「お嬢ちゃん、こんな時間にどうしたんだい?」
態度のデカそうな車掌氏に思い切って今日の年月日と時間を訊いてみる。
「あの、今日は何年何月何日で、今、何時ですか?」
車掌氏は一瞬怪訝な顔を浮かべたが、すぐにカレンダと懐中時計を私に見せて答えてくれた。
「今日は昭和5X年の12月……えーっと、日付が変わったから19日。
 時間は2時13分だよ」
「それ、本当ですか?」
「本当だよ。お嬢ちゃんに嘘言ってどうするんだい?」

私の日常はいつの間にか失われてしまった。
これは悪い夢だ。そうであって欲しい。
『友人』も何処にいるか分からないし、もしかしたら私だけ30年前に飛ばされたのかも知れない。

夢というものは覚めると終わるもの。
私は再び床に就き、そして、眠った。

もう、訳が分からなくなってしまった。












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