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誰が為のダイエット

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だれでも歓迎! 編集
「おはよ~」
「こなちゃん、おはよう」
 今日から新学期。
 いつものように、学校へ向かうバス停でかがみとつかさの姉妹と合流。
 かがみの挨拶に元気が無いのは、また正月の間に体重でも増えたのかな。
「かがつか、おはよー」
 いつもなら、すぐにかがみの突っ込みが入るはずなんだけど、下を向いたままだ。
「どったの、かがみ。また正月ぶt」
「こなたっ、みなまで言うなっ」
 まさに、滝の様という形容がぴったりなほど涙を流しながら、私の肩を掴んで激しく揺するかがみ。
「毎年同じことを繰り返してるね~」
 もうここまでくると、風物詩と言って良いのかもしれない。
 知り合ってから、三回目の三学期の初日。
 三回とも、かがみは太ったと言って泣いている。
 まあ、正月に限らずにいつもの事なんだけどね。
「で、つかさはどうなの?かがみと変わらない生活だったと思うんだけど」
「うん、わたしは変わってないよ」
 今まで私の肩を揺すっていたかがみが、今度はつかさの肩を掴み揺すりだした。
「なんでつかさは太らないの。同じ食事だったし、ほとんど一緒にいたじゃない。ずるいよ~」
「ずるいっ、て言わ、れてもー。お姉ちゃ、ん、お餅食、べるとき、いっつも私よ、り一個多く食べ、てたじゃない」
 いい加減に肩を揺するの止めてあげなよ、かがみ。
 つかさ、目が回っちゃってるよ。
 かといって、今ちょっかい出すとまた私に戻ってきちゃうからなあ。
 っと、ようやくバスが来たよ。助かったー。
「かがみ、つかさ、バスが来たよー」
 私は一足先にバスに乗り込むと、一番後ろの席を確保して二人に手招きする。
「ねえ、かがみ。どうしてそこまで体重を気にしてるの?」
 確かに、乙女にとっては大事なことなんだろうけど、かがみは気にしすぎだよ。
「だって、体重差が大きいと……」
 頬を朱に染めながら、なにやら恥ずかしそうに俯いてしまった。
 最後のほうは、声が小さくなって聞き取れなかった。
「お、かがみ。想い人でも出来たのかな~」
「ちっ、違うわよっ」
 狭いバスの中では十分に大きすぎる声。多分運転手さんまで聞こえただろうね。
「かがみ、ここバスの中だよ。そんなに大きな声はどうかと思うんですが」
 周りを見ると乗客の何人かが、何事かとこっちを見ている。
 かがみもそれに気が付いたみたいで、また俯いてしまった。
「ところでつかさ。お餅食べるときにうにょ~んってやった?」
「うん。今年のお餅は良く伸びたよ。うにょ~~~んって感じで」
 ジェスチャーをしながら楽しそうに話すつかさ。
 うん、これは萌えるね。
「こなちゃんはやったの。お餅うにょ~ん」
 くっ、不覚。
 同じようなジェスチャーなのに、また萌えてしまった。
 でも、その横で俯いたままのかがみ。まだ「体重が…」って繰り返してるよ。


 学校に着いても、かがみはどんよりとした雲でも纏っている様な感じだよ。
「かがみ、お昼待ってるからねー」
 返事が無い。ただの屍のようだ。
 こっちの声も聞こえてないみたいだねー。
 かがみと別れて教室に入ると、笑顔のみゆきさんが挨拶してきた。
「皆さん、おはようございます」
「みゆきさん、おはよー。相変わらず早いね」
「あ、ゆきちゃん。おはよう」
 みゆきさんに挨拶してる間に、かがみは周りを寄せ付けない雰囲気で廊下を歩いていった。
 なんか、ホラー映画のゾンビみたいだよ。
「あの、かがみさんはどうなさったんでしょうか。すごく落ち込んでいるようですけど」
「あ~、毎年恒例の体重増えたー、だよ。きっと昼休みにはいつもの調子に戻ってるよ」
「だと良いんだけど。朝、お姉ちゃんにお弁当渡そうとしたら、いらないって。一応私が持ってきたんだけど」
 なんですとっ。今までなら、お菓子の量を減らすくらいしかして無いのに、お弁当を抜くつもりですか。
 これは、今までより重症ですな。
 ってことは、やっぱり男がらみか。それなら、このこなたさんが人肌…… もとい、一肌脱いであげましょう。
 正月に会った時にはそんな感じ全然無かったから、何かあったとすればその後か。
「ねえ、つかさ。正月からこっち、かがみが変になったのっていつくらい?」
「えっ。変になったのって言われても。今日の朝、体重計に乗った後じゃないかな」
 むう、つかさが気付かなかったってことは、かなり巧妙に隠してるね。
「じゃあさ、冬休み中にかがみが一人で出かけた事ってあるかな」
 矢継ぎ早につかさに質問を浴びせる。情報は少しでも多いほうが良い。
「あの、泉さん。どうされたんですか」
「いや、今までのかがみと違うからさ。原因を突き止めて、解決するために協力できないかな、と思ったんだよ」
 みゆきさんは、そうでしょうか、といった感じで小首をかしげる。
「こなちゃん。お姉ちゃんが一人で出かけたのは、こなちゃんのとこへ行ったときだけだと思う」
 ってことはかがみの想い人は私か……
 なんて、阿保なこと考えてたら予鈴が鳴った。
「しかたない。続きはまた後で考えよう」
 二人はどうしたものかと顔を見合わせた後、私のほうを見て頷いてくれた。
 ただ、二人が顔を見合わせたとき、二人とも一瞬あきれたような顔をした気がする。

「みんなおはようさんっ。正月は楽しんだかっ」
 本鈴と同時に教室の扉が勢いよく開かれ、黒井先生が現れた。
 これも新学期の風物詩だよねー。


 一限目が終わり、わずかな休憩時間。
 みゆきさんとつかさを呼んで、朝の続きを始める。
「ねえ、私は男がらみだと思うんだけど、みゆきさんはどう思う?」
 乙女が体重を気にして食事を制限するのは、男がらみ以外では考えられないんだよね。
「そうですね。例えば、お気に入りの洋服を着てみたら、ちょっと苦しいときなんかも結構ショックですよね」
 そんなもんですか?
 小学生の頃の服が今でも着れるからその感覚は分かんない。
 と言うわけで却下。
「つかさは?」
「うーん。男の人がどうのってことは無いと思う。家では普通だったし、お姉ちゃんそういうの隠すの苦手だから」
 確かに、かがみは隠し事が苦手だ。
 その大半は、すぐ近くにいるつかさと言う爆弾が暴発してるんだけどね。
「じゃあ、他に思い当たることある?」
 つかさはうんうん唸って考えてるみたいだけど、何も出てこないなこれは。
 つかさが知らないってことは、かがみめ、よほど巧妙に隠してるな。
 それでこそ私の嫁…… もとい、好敵手。

 結局、何も分からないまま午前中が終わったため、昼休みに直接聞いてみることになった。
 つまらん。それでは影ながら応援すると言う、私の野望が果たせないではないかっ。


 すみません。嘘です。
 かがみをからかうネタが欲しいだけです。ツンデレが見たいんです。
 からかったときのかがみは、すっごくかわいいんだよ。萌えるんだよっ。


「お姉ちゃん、来ないね」
「そうですね。もう来てもいいと思うんですけど」
 昼休み、いつもなら来てるはずの時間になっても、かがみが来ない。
「私、ちょっと呼びに行ってくるね」
 言うが早いか、私は立ち上がり教室を出て行く。
「よろしくお願いします」
「じゃあ、待ってるね」

 かがみのクラスの教室を覗いてみるけど、ツインテールが見当たらない。
「おっす、ちびっ子ー。どうしたー」
「あら、泉ちゃん。柊ちゃんなら出て行ったわよ」
「こっちに来て無いんだよね。どこ行ったか知らない?」
 おかしい。昼休みにかがみが、何も言わずにどっかに行くなんて。
 やっぱり、これは男関係で間違いない。
「おーい誰か、柊がどこ行ったかしらねーかー」
 みさきちがクラスメイトに声を掛けると、中庭のほうで見たという目撃情報がもたらされた。
 む、屋上ではなく中庭か。
 この時期、屋上で告白というベタな展開と思わせといて、人通りも結構多い、それゆえに目立たない中庭とは。

 私は急いで教室に戻ると、みゆきさんとつかさに声を掛けて、中庭へと走った。
 中庭に着くと、すぐにかがみのツインテールを見つけた。
 隅のほうで誰かと話してる顔は、朝の落ち込んでる顔の印象が残ってるせいか、とても楽しそうに見えた。
 なんか悔しい。あの笑顔は私が取り戻すはずだったのにっ。
 あれ?私はかがみのツンデレを楽しみにしてたんじゃなかったっけ。
 まあいいや、同じようなもんだし。
 すぐに二人も追いついてきて、かがみに見つからない様に物陰から覗いている。
「あれは、かがみさんと同じクラスの方ですね。確か、副委員長をなさってる方です」
 なるほど。普段から一緒に行動する機会が多い二人。
 いつしか、お互いを気にするようになる。
 しかし、一緒に行動することが多いがゆえに、告白に踏み切れない二人。

 ……もう考えるの飽きちゃった。
 なんか胸がもやもやするし、ぜんぜん楽しくないや。
 これ以上見てても、気分が悪くなるだけだよ。
「私、先に戻ってるね」
 かがみに彼氏ができたって、私たちの関係が終わるわけじゃないよ。
 でも、かがみが変わっちゃって、今まで通りじゃなくなっちゃうかな。
 それは嫌だな。

 教室に向かう廊下を歩いていると、後からみゆきさんとつかさが追いついてきた。
「泉さん。どうされたんですか」
「こなちゃん。顔色が良くないよ」
「ん、大丈夫だよ。それよりさ、お昼食べようよ」
 大丈夫だよ、私が変わらなければ。
 きっと、今まで通りにやっていけるよね。


 私たちがお昼を食べ始めようとしたとき、かがみが教室に入ってきた。
「おーっす、来たわよー。つかさ、やっぱりお弁当食べるわ」
 そういうと、かがみはいつもの場所を陣取って席に着く。
「はい、お姉ちゃん」
「ごめん、待たせちゃったみたいね。こなた、どうしたの?浮かない顔して」
 原因はかがみなんだけど……
 でも、言うわけにはいかないよ。
 かがみに彼氏ができたのが、なんかよく分かんないけど嫌だなんて。
「ん、なんでもないよ。ちょっと体調が悪いみたいだけど」
「そ、気をつけなさいよ。インフルエンザも流行ってるみたいだし」
 かがみはいつもと変わらなかった。普通におしゃべりして、普通に食べて。
 でも、私は食欲もおしゃべりに加わる元気もなかった。

 食事が終わっておしゃべりも一息ついたとき、かがみが「お願いがあるんだけど」とつかさに話を切り出した。。
「今度時間あるときで良いんだけど、二年生の娘にお菓子作り教えてあげてくれないかな」
「え、いいけど。なんで?」
「それがさ、委員長会議とかで何回か会った事ある子なんだけど、彼氏ができたらしいのよ。
 で、バレンタインまでに簡単なものでいいから、自分で作れるようになりたいんだって」
「それって、かがみのことじゃないの?」
 思わず言葉が飛び出した。
 かがみはきっと、真っ赤になりながら大きな声で否定するだろう。
 もしかしたら、テレながら肯定するんだろうか。
「えっ、違うわよ。突然何よ?」
「いや、だって……」
 あれ?なんで、いたって平静なの。
「なに、こなたらしくないわね。言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよ」
 私が黙っていると、みゆきさんとつかさが朝からさっきまでのことを話し出した。
 二人は私をちらちら見ながら話してた。気まずくて、その場から逃げだしたかった。
 そして、中庭でのことを話し終わる。
「あー、あれ。うちのクラスの副委員長で、その二年の娘のお兄さん。みゆきは知ってるわよね」
 さほど気にした様子も無く話を続けるかがみに、嘘をついてる雰囲気はまるで無い。
「はい。仲の良い兄妹ですよね」
「でさ、つかさと峰岸の料理の腕って結構有名なのよ。他の学年でも噂になってるんだから。
 それで、妹さんに頼まれて私に相談してきたわけよ」
「でも、なんでかがみに頼むの?峰岸さんは同じクラスじゃん」
「友達から頼んでもらったほうが、受けてもらいやすいからでしょ。
 それに、峰岸のそばにはいつも日下部がいるじゃない。近寄り辛いんだって。
 あと、そいつには彼女いるわよ。こっちのクラスの娘なんだけど、知らないの?」
 私はみゆきさんとつかさを見ると、二人ともあわてて首を振る。
 なんか不自然な感じがするのは気のせいかな。
 ま、みんなそういう話には疎いよね。私を含めて……


「で、こなたは私に彼氏ができたと勘違いして、不貞腐れてたということで良いのかな?」
 いつものお返しとばかりに、ちょっとにやけた顔で私を見つめてくる。
 確かに、さっきの話を聞いて胸のもやもやが消えたよ。
 私の中のかがみの存在って、こんなに大きかったんだ。
「そだよー、いつも言ってるじゃん。かがみは私の嫁ってさ。私が面倒見てあげるよ」
 できるだけ普段と変わらないように、いかにも冗談ですっ、て感じで返す。
 でも、そうなると振り出しに戻ったわけで、疑問が残ったまま。
「えっと、じゃあ、朝言ってた『体重差が』って何のこと?それに、お昼を抜いてまでダイエットしようとしてたのは?」
 さっきまでとは違い、少し赤くなりながら小さな声で話し出すかがみ。
「あっ、あれは、正月にあんたの家に行ったときのことよ」
 確かに三が日の巫女の仕事が終わってから、かがみは一人でうちに来たよ。
 ゲームしたり、本を読んだり。そうそう、宿題写させてもらったりしたけど、別に何も無かったはずだよ。
「え、なんかあったっけ?」
「本読んでるときに、ベッドに座ってたあんたの隣に座ったでしょ」
 えっと、最初はゲームしてたんだけど、ちょっと休憩ってことになって、私がベッドに座って本を読み出したんだ。
 かがみも適当に座って本を読んでて。
 しばらくして、読み終わったからって次の巻を探しだして。
 そう、ベッドの枕元に置いてあるよって言ったら、本をとって私の横に座ったんだ。
「ん~」
「ちょっ、本当に覚えてないの。
 隣に座ったら、あんたが私のほうに倒れてきて『かがみ、重たくなった?』って言ったじゃない。
 そんなに体重差があるのが気になって、恥ずかしくて、すごく太ってたらどうしようって考えてたのよ」
 思い出したよ。かがみが隣に座ったら、なんとなく寄りかかりたくなっちゃって。
 何も言わないと恥ずかしいから、いつもみたいにからかっちゃったんだ。
「あ~、あったね~。でも、つかさ情報によると体重計に乗って落ち込んだのは今日だよね」
「怖くて計ってなかったのよっ。でも、学校が始まるから覚悟を決めて計ってみたら二キロも増えてたのよ~」
 朝と同じように、滝の様な涙を流しながらこっちを見るかがみ。
「でもさ、私との体重差っていっても、身長が十五センチ以上違うんだよ?」
「いや、ほらさ、なんかあった時に体重差があるとさ大変じゃないかな~とか――」
 なんかあった時ってなんですか?
 意味の分からないことをぼそぼそと言って、ちらちらと私を見てるのはなぜ?


 何か引っかかる。一つずつ考えることにしよう。
 かがみは体重が増えたのを気にしている。
 そしてその原因は、私の家での出来事だ。
 その時かがみが気にしたのは、私との体重差。
 それを少しでも、減らすためにいつもより厳しいダイエットをしようとした。
 それを実行できなかったことについては、今は関係ないだろう。
 重要なのは、私とかがみの身長差が十五センチ以上あるのに体重を比較したこと。
 そして、今のかがみの態度。
 そう、そこから導かれるのは――

 かがみの想い人は私か……

 あれ?

「こなた、さっき私はあんたの嫁。面倒見てくれるって言ったわよね」
 かがみが顔を真っ赤にして、私の目を見つめてる。
「いや、あれは、その、なんといい――」
 再びの問いかけに言葉をさえぎられる。
「言ったわよね」
 今度は瞳を潤ませながら、さっきより近づいてる。
 いや、私はリアルで同姓趣味無いはずなんだけど、かがみの迫力と可愛さに負けて頷いちゃったよ。

「じゃあ、今から私はこなたの嫁っ」
 かがみに思いっきり抱きしめられた。
 その時、みゆきさんとつかさの姿が目に入った。
 みゆきさんは「おめでとう。かがみさん」と書かれた小さな旗と、クラッカーを持って鳴らす準備をしている。
 つかさは三段重ねのケーキに「お姉ちゃん&こなちゃん おめでとう」とデコレーションを施していた。
 いったいどこから持ってきたんだろう。
 そういえばさっきから姿が見えなかったけど……
 もしかして、二人ともかがみの気持ちを知ってた?


 あれ~~…… あるぇ~~~~~~~?














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  • これはとても良いかがみ!
    お手本のようです! -- チャムチロ (2012-09-14 12:06:16)
  • オチに吹いたwww -- 名無しさん (2008-03-01 21:06:05)
  • なんという天然こなたww 読んでてほのぼのしたw
    作者さんGJ -- 名無しさん (2008-01-16 20:54:55)

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