家に帰ると自分の部屋に人一人入りそうなほど大きな箱が置かれていたら、どうするだろう?
柊かがみの場合、とりあえず数秒間その箱を睨み付けた後、軽く蹴ってみた。
「あいたっ」
カラフルなリボンと包装紙で飾られたどでかい箱の中から、聞き慣れた声が聞こえた。
「開けるわよ」
「ああちょっと待って! せっかく綺麗に包んであるんだから開ける時は優しく――」
「うるさい」
不機嫌そうに言いながら、かがみは一応丁寧に包装を解き、箱の蓋を開けた。
「オイーッス!」
中から出てきたのは、自分の体を服の上からリボン巻きにしたこなただった。
今は亡き人がお馴染みにしていた挨拶をするこなたを、かがみは冷えた目で見ている。
「声が小さい。もう一度オイ――」
黙って箱の蓋を閉じるかがみ。そのまま踵を返して部屋から去ろうとする。
「ちょっとちょっとかがみ! リアクションに愛が感じられないよ」
仕方なく中から自分で蓋を開けたこなたは、予想外に冷たいかがみの反応に口を尖らせた。
「何が愛だ。そもそも何の真似よそれは?」
「今日バレンタインでしょ」
「うん。それで?」
「普通にチョコをあげてもインパクトが足りないから、ここは一つお約束の『私をプレゼント♡』をやってみようと――」
かがみは黙ってこなたの頭に手を当てると、箱の中に押し込め、再び蓋を閉め、リボンを紐代わりにして縛ろうとする。
「明日ゴミの日だから」
「待って待ってーっ!」
本気で箱を縛ろうとするかがみに抵抗して、中のこなたが暴れに暴れる。やむなくかがみは蓋を開けてやった。
「ふう、焦った。今日のかがみは何か厳しいなぁ」
「あんたが度を超えて馬鹿なことするからよ」
「悪かったよ。裸にリボン巻きにしておけば良かったんだね。でもさすがに裸だと寒いから仕方なく――」
「誰がそんなこと言っとるかーっ!?」
「おー、それそれ。やっぱりかがみは熱く激しく突っ込んでくれなきゃ」
とうとう怒鳴り突っ込みを入れたかがみに、こなたは満足げに頷いた。
「ったく……今日は用事があるから早く帰るとか言ってたけど、わざわざこの一発ネタの準備してたわけ?」
「うん。ちゃんとかがみのお母さんの許可は貰ってあるよ」
「許可しないでよ、お母さん……」
かがみは思わず額を押さえる。
「まあまあ細かいことは気にせずに。さあかがみ、遠慮なく私を召し上がれ」
「どう食えっつうんだよ。カニバリズムの趣味無いし」
「ノリが悪いなぁ。それじゃあ……」
こなたは自分が入っている箱の中に置いていた、小さな箱を取り出した。こちらもカラフルなラッピングをしてある
柊かがみの場合、とりあえず数秒間その箱を睨み付けた後、軽く蹴ってみた。
「あいたっ」
カラフルなリボンと包装紙で飾られたどでかい箱の中から、聞き慣れた声が聞こえた。
「開けるわよ」
「ああちょっと待って! せっかく綺麗に包んであるんだから開ける時は優しく――」
「うるさい」
不機嫌そうに言いながら、かがみは一応丁寧に包装を解き、箱の蓋を開けた。
「オイーッス!」
中から出てきたのは、自分の体を服の上からリボン巻きにしたこなただった。
今は亡き人がお馴染みにしていた挨拶をするこなたを、かがみは冷えた目で見ている。
「声が小さい。もう一度オイ――」
黙って箱の蓋を閉じるかがみ。そのまま踵を返して部屋から去ろうとする。
「ちょっとちょっとかがみ! リアクションに愛が感じられないよ」
仕方なく中から自分で蓋を開けたこなたは、予想外に冷たいかがみの反応に口を尖らせた。
「何が愛だ。そもそも何の真似よそれは?」
「今日バレンタインでしょ」
「うん。それで?」
「普通にチョコをあげてもインパクトが足りないから、ここは一つお約束の『私をプレゼント♡』をやってみようと――」
かがみは黙ってこなたの頭に手を当てると、箱の中に押し込め、再び蓋を閉め、リボンを紐代わりにして縛ろうとする。
「明日ゴミの日だから」
「待って待ってーっ!」
本気で箱を縛ろうとするかがみに抵抗して、中のこなたが暴れに暴れる。やむなくかがみは蓋を開けてやった。
「ふう、焦った。今日のかがみは何か厳しいなぁ」
「あんたが度を超えて馬鹿なことするからよ」
「悪かったよ。裸にリボン巻きにしておけば良かったんだね。でもさすがに裸だと寒いから仕方なく――」
「誰がそんなこと言っとるかーっ!?」
「おー、それそれ。やっぱりかがみは熱く激しく突っ込んでくれなきゃ」
とうとう怒鳴り突っ込みを入れたかがみに、こなたは満足げに頷いた。
「ったく……今日は用事があるから早く帰るとか言ってたけど、わざわざこの一発ネタの準備してたわけ?」
「うん。ちゃんとかがみのお母さんの許可は貰ってあるよ」
「許可しないでよ、お母さん……」
かがみは思わず額を押さえる。
「まあまあ細かいことは気にせずに。さあかがみ、遠慮なく私を召し上がれ」
「どう食えっつうんだよ。カニバリズムの趣味無いし」
「ノリが悪いなぁ。それじゃあ……」
こなたは自分が入っている箱の中に置いていた、小さな箱を取り出した。こちらもカラフルなラッピングをしてある
「はいこれ。ハッピーバレンタイン」
にっこり笑って、その箱を差し出すこなた。何だかんだで普通にチョコを用意していたわけだ。
「……まあ、一応受け取っとくわ」
「うん。ところでかがみからは?」
「っ……わ、私は……」
「無いの?」
「……」
否定も肯定もせず、かがみはだんまりだ。
「ふむ……ま、いっか。ホワイトデーに期待しよう」
「ぁ……その――」
「あ。こなちゃん来てたんだー」
かがみが何か言おうとした時、つかさが部屋に入ってきた。箱入りこなたに関してはほぼノーリアクションで。
「やほーつかさ。はいこれハッピーバレンタイン」
「ありがとう。それじゃあこれ、私からもメリーバレンタイン」
和気藹々とチョコを交換する。かがみはそんな二人を複雑な表情で見ていた。
「こなちゃん来てくれて良かったね、お姉ちゃん」
「ん、まあ……」
にこやかなつかさの言葉に、かがみの返答は鈍い。
「んー? 何で私が来たら良かったの?」
「だって学校でチョコ渡せなかったから。お姉ちゃんすごくガッカリしてたよ」
「ちょっ、つかさ――」
こなたの疑問に、つかさは屈託無く答える。かがみは慌てて止めようとしたが、つかさはさらさらと言葉を継いでいく。
「お姉ちゃん、昨日一生懸命チョコ作ってね、放課後渡そうとしてたのに、こなちゃんが早く帰っちゃったんだよー」
「ほほーう……」
目を光らせて頷くこなた。かがみは顔を真っ赤にして俯いている。
「道理で不機嫌だったわけだ。よしよし、私が帰っちゃって寂しかったんだねー」
「別に寂しくなんかなかったわよ! ちょっと、その、せっかく作ったチョコがもったいないって思ってただけで……別に、そんな……」
だんだんと言葉に力がなくなっていく。
こなたは箱から這い出て、ちゃんとかがみの前に立った。
「悪かったよかがみ。ごめんね」
「そ、そんな、改めて謝らなくたっていいわよ……別に大したことじゃないし」
かがみはこなたから目をそらしつつ、鞄を開けて中から小さな包みを取り出した。
「一応、これ。このままにしてももったいないから」
ほんのり顔を赤らめ、ぶっきらぼうな口調と態度で差し出す。こなたは恭しくそれを受け取り、にんまり微笑んで言った。
「かがみってさ……やっぱ可愛いよねー」
「う……うるさーいっ!」
にっこり笑って、その箱を差し出すこなた。何だかんだで普通にチョコを用意していたわけだ。
「……まあ、一応受け取っとくわ」
「うん。ところでかがみからは?」
「っ……わ、私は……」
「無いの?」
「……」
否定も肯定もせず、かがみはだんまりだ。
「ふむ……ま、いっか。ホワイトデーに期待しよう」
「ぁ……その――」
「あ。こなちゃん来てたんだー」
かがみが何か言おうとした時、つかさが部屋に入ってきた。箱入りこなたに関してはほぼノーリアクションで。
「やほーつかさ。はいこれハッピーバレンタイン」
「ありがとう。それじゃあこれ、私からもメリーバレンタイン」
和気藹々とチョコを交換する。かがみはそんな二人を複雑な表情で見ていた。
「こなちゃん来てくれて良かったね、お姉ちゃん」
「ん、まあ……」
にこやかなつかさの言葉に、かがみの返答は鈍い。
「んー? 何で私が来たら良かったの?」
「だって学校でチョコ渡せなかったから。お姉ちゃんすごくガッカリしてたよ」
「ちょっ、つかさ――」
こなたの疑問に、つかさは屈託無く答える。かがみは慌てて止めようとしたが、つかさはさらさらと言葉を継いでいく。
「お姉ちゃん、昨日一生懸命チョコ作ってね、放課後渡そうとしてたのに、こなちゃんが早く帰っちゃったんだよー」
「ほほーう……」
目を光らせて頷くこなた。かがみは顔を真っ赤にして俯いている。
「道理で不機嫌だったわけだ。よしよし、私が帰っちゃって寂しかったんだねー」
「別に寂しくなんかなかったわよ! ちょっと、その、せっかく作ったチョコがもったいないって思ってただけで……別に、そんな……」
だんだんと言葉に力がなくなっていく。
こなたは箱から這い出て、ちゃんとかがみの前に立った。
「悪かったよかがみ。ごめんね」
「そ、そんな、改めて謝らなくたっていいわよ……別に大したことじゃないし」
かがみはこなたから目をそらしつつ、鞄を開けて中から小さな包みを取り出した。
「一応、これ。このままにしてももったいないから」
ほんのり顔を赤らめ、ぶっきらぼうな口調と態度で差し出す。こなたは恭しくそれを受け取り、にんまり微笑んで言った。
「かがみってさ……やっぱ可愛いよねー」
「う……うるさーいっ!」
おわり