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Last Summer   ~みさおの場合~

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 高校最後の夏のある日、私はある大きな決心をした。
   ―柊に告白をしようと。


「あの・・、あやの。ちょっと相談したいことがあるんだけど・・・いいかな?」
「うん。どうしたの?」
「あのさ、今度の日曜日のことでさ・・・」
「あ、最後の大会だよね。何時からだっけ?」
「そのことなんだけど・・・」

 口ごもる私を不思議そうに見ていたあやのは、しばらくすると言いたいことを察したみたいで、小さくうなずくと私の手を引っ張ってだれもいない空き教室に連れて行った。

「もしかして・・・柊ちゃんのこと?」
「いっ!? いや、その、なんつーか・・・」
「ふふふ。やっと気持ちが固まったみたいね?」
「・・・う、うん」
「みさちゃん、長く悩んでたもんね~」

 私と違って勉強ができて女の子らしい柊は私にとっての憧れで、中学の頃からずっと好きだった。
 あやのも女の子らしくてかわいいし、勉強もできんだけど、どっちかっつーとお姉さんって感じかな・・・。

 いつもだったら思ったことをそのまま言っちゃうんだけど、こればっかりはどうしても言えなかった。それに、柊のことが好きなんだって気がついた時、そんな自分はどっか変なんじゃないかとも思っていた。
 『みさお』なんて男みたいな名前だったから、本当は自分が男だって思ってんじゃないかとか、男になりたいんじゃないかとかいろいろ考えたけれど、別に男になりたいわけじゃなかったし、あやのに『みさちゃん』って女の子っぽい名前で呼ばれるとすごく嬉しかったから、私は自分が女として柊のことが好きなんだって思った。
 まぁ・・・どっちにしろ人に相談できるような話じゃなかったんだけどな・・・。

 あやのにだって、こんなこと相談したらヒかれるんじゃないかって思っていたから、結局だれにも話せなかったけれど、あやのが兄貴と付き合い始めて、恋愛の話をするようになったとき、勇気を出してあやのに相談してみた。

 あやのは私の話を聞いて、
『うーん・・・。みさちゃんが柊ちゃんを好きなら、それで良いんじゃないかな。同性っていうのは確かに少ないかもしれないけれど、人が人を好きになることに変わりはないんだし、と私は思うけど』
 って言ってくれた。正直あんまりよくわからなかったけど、なんか・・・自分はおかしくないんだってわかって、すごくホッとした覚えがある。

 それ以来、あやのに柊のことを話すようになったけど、あやのは無理に告白させようとか、変にアドバイスをすることもなくて、ただ私の話をうなずいて聞いてくれたのが一番嬉しかった。

 高校に入ってからもあやのと柊はずっと同じクラスだった。柊は私たちのことをちゃんとは覚えていなかったみたいだったけど、それでも同じクラスでいられたことが、すげー嬉しかった。
 でも、柊は隣のクラスに行くことが多かったし、休みの日もちびっ子と遊んでいるみたいだったから、柊はきっとちびっ子のことが好きなんだろうなって思っていた・・・。

 でも、それでも柊のことを諦めることはできなくて、学校にいる時はいつも話しかけるようにしてたし、携帯で長電話したり、それに、あやのも一緒だったけど、3人で遊びに行ったりすることもあった。
 柊と二人じゃ何話していいかわかんないからって、あやのには無理言って来てもらってたんだけどな・・・。

 3人でお昼を食べたり、一緒に勉強したりすることもできるようにはなったけど、それでも相変わらず柊はちびっ子の方にも顔を出していて、このまんまじゃ、いつかはちびっ子に柊をとられちゃうんじゃないかって不安も感じていた。
 さっさと告白しちゃえば良かったのかとも思うんだけど、どうしても柊に気持ちを伝えることは怖かった・・・。

 そんな自分が嫌で、今度の大会が柊に告白する最後のチャンスだって自分に言い聞かせて、「優勝したら告白する!」ってなんとか決心した。
 今まで決勝までいくことはあっても、表彰台にはどうしても上がれなかったから、結構ハードルは高いとは思う・・・だけど!!
 それぐらいの気持ちじゃないと、ヘタレな私が柊に告白することは無理なんじゃないかっ!!  ・・・と自分を弁護してんだか奮い立たせてんだかわかんない理屈をつけて・・・。
 一応、練習でも手ごたえを感じているし、ま、なんとかなるかなとは思ってんだけど。


「―ということなんだけど・・・どう、かな?」
「うん。みさちゃんがそう決心したなら私も良いと思うよ」
「そ、それでな・・・本題なんだけど・・・」
「え?」
「あ、あの、今までずっとあやのに頼りきってたから、今度は私1人でがんばりたいんだ・・・。
 こんなこと言うなんて自分勝手だと思うんだけど・・・」
「・・・・・」

 あやのは珍しく考え込んでいた。
 それはそうだと思う。今まで柊のことで相談にのってもらったり、慰めてもらったりしていたし、それに、大会だっていつも応援しに来てくれていたのに今回だけは来ないでくれって言うのは、あまりにも自分勝手だって思うし、それであやのに嫌われても仕方ないのかなっても思う・・・。  嫌だけど・・・。
 でも、最後はあやのに甘えないで自分1人でがんばりたかった。だから、あやのにはちゃんとそのことを伝えたかったし、それでもあやのが嫌だって言うなら、別な方法にしようって思っていた。

 重苦しい沈黙に耐え切れなくなって私が床を見つめていると、頭の上からあやのの優しい声が聞こえた。

「みさちゃん」
「ん?」
「みさちゃんは、やっぱり優しいね」
「へ?」
「あのね・・・。私がお兄さんと付き合うようになってから、放課後一緒に帰ることも少なくしてくれたし、休みの日に遊ぶ約束しようとしても『自主トレするから』って気を遣ってくれてたよね」
「あ、い、いや・・・。ホント、練習したかっただけだよ・・・」
「ふふ。  いいよ。隠さなくても。私、いつもみさちゃんには感謝してたんだよ?」
「あやの・・・」
「だからね、私のことは気にしなくていいから、がんばって柊ちゃんを誘って」
「あ・・・、あ、あやの~!!」

 それを聞いたら自然と涙が出て、思わずあやのに抱きついた。あやのはやっぱり優しいんだって。私が考えていたより、ずっとずっと優しいんだって。
 5年間ずっと見に来てくれていたんだし、本当はあやのだって見に来たかったと思う。でも、それを我慢して、私のことを優先してくれたのが嬉しかった・・・。

「よしよし。みさちゃんだって5年間がんばってきたんじゃない。だから自分が幸せになることを優先していいんだよ」
「う・・ひっく・・うん・・・。・・ひっ・・あ・・ありが・・と・・。あ・やの・・」

 そう言ってあやのは、いつもよりも優しく私の頭を撫でてくれた。頭を撫でられながら、きっとあやのがこんなにも優しかったから、私も柊のことを想い続けることが出来たんだなって思ったら、また涙が溢れてきた。


 しばらくして私が落ち着くと、あやのと一緒に柊を誘うための相談をした。あやのは兄貴とデートっていう設定だったら自然なんじゃないかってことで話がまとまって、柊にはそれで声をかけた。
 変に疑われることもなかったし、結局予定もあいていたみたいですんなりOKがもらえた。あまりにもうまくいったから思わず大声で叫んじゃったけど・・・バレてねぇよな。

 競技場は家から遠いから、朝早く起きなくちゃならなかったんだけど、前日は不安と緊張でいつまでも眠れなかった。

 ほんとに来てくれんのかな・・・。でも、いまさら連絡するのは気がひけるし・・・。調子に乗って弁当頼むとか言っちゃったし・・・。
 うわー!心配だー! 頼むよぉ。きてくれよぉ、ひいらぎぃ・・・。

 それでもなんとか明け方に寝付くことができて、睡眠時間は少なかったけれど、朝起きた時、いつもより頭がすっきりしているような気がした。

 競技場に着いてアップをしていると、グランドの端の方に柊が立っているのが見えた。柊は白いノースリーブのシャツに大き目の青いネクタイをしめてスカートをはいていた。普段の制服とは違っていつもよりも女の子っぽくて、なんだかまぶしかった。
 なんかそれを見ただけですげー嬉しくなって、大きな声で名前を呼びながら柊のところまで走った。

「おーい!ひーらぎー!  来てくれたんだな」
「ま、まあね。約束したし」
「ありがと。あれ?それなんだ?」
「え?あ、その、べ、弁当よ。お昼食べるにも、近くにお店ないじゃない。
 そ、それに・・・、最後の大会なんだし、せっかくだから・・・」

 ホントに弁当作ってきてくれたんだ!これじゃ負けらんねぇよな。
 ぃよしっ!!ここはばっちり優勝して、その後は・・・

『柊! 前から好きだったんだ!私と付き合ってくれ!』
『私も好きだよ・・・。日下部・・・』
『うぉー!! ひーらぎー!!』ガバッ
『ちょっ、ちょっと、みんないるのに・・・ダ、ダメだってば・・。ぁ、あん・・・』

 くふふ。なんてなー。弁当と一緒に柊もたっぷりいただいて・・・

「く、日下部? どうしたの?」
「へ? あ、いやいやいや!! ありがと! これで負けねぇぞー!!」
「か、勘違いしないでよ! わ、私の分のついでにあんたのも作っただけなんだからね!」

 これがちびっ子が言っていたツンデレってやつなんだな。うーん、ちびっ子の気持ちがわかる・・・気がする。

「ん? いいっていいって。作ってきてくれたってことが嬉しいんだぜ」
「う・・・。そ、そう?」

 その時、出場選手を呼ぶアナウンスが流れた。ホントは照れてる柊がもっと見てたかったけど、それじゃあ本末転倒だよな。後ろ髪を引かれる思いで、なんとか気持ちを切り替えた。

「おっ?予選が始まるみたいだな。んじゃ、ちょっと行ってくるよ」
「あ、うん。 がんばってきなさいよ」
「おう!まかせとけ!」

 柊の声を聞いて、身体の芯が熱くなった。今日は負ける気がしないぜ。

 スタート位置に行くと、周りは今まで負けたことがないやつらばかりだったから少し安心したけれど、でもやっぱり最初は緊張する。 どうしてもスタートが遅れるから、そこだけは気をつけねーと。

 位置についてスタートの合図を待つ。
 よし、スタートはバッチリだ。それに今日はなんだか身体が軽くて、面白いように前を走るやつらを抜かせる。
 やっぱりひいらぎが来てくれると違うのかな・・・。あ、でもあやのが来てたから負けてたってわけじゃないぜ。

 最初の予選を1位で通過して陸上部のやつらと話していると、柊がやってくるのが見えた。少し顔が赤いように見えたけど、今日は結構暑いからか?

「おつかれ。あんた結構やるのねー」
「そりゃあ、ずっと部活やってたんだぜ。簡単には負けないよ」
「その代わり勉強は全然だけどね」
「うっ・・・。それを言うなって」
「ふふふ。冗談よ。 でも、その、日下部のこと・・・ちょっと見直したわ」
「にゃはは。まぁな。それに柊が見にきて・・・」

 うわ!口が滑った!

「え?な、何て言ったの?」
「な、なんでもねぇよ。 っと、次の予選か」
「へ?まだ走るの?」
「んー。そうだよ。あと2回走って、残ってたら決勝だ」
「ふーん。すぐに決まるわけじゃないんだ?」
「まあな。そいじゃあ、行ってくるよ」
「うん。がんばってね」

 ふぅ・・・。呼び出しかかって助かった~。お楽しみは最後までとっておかないとな。

 んで、特にやばいこともなく、順調に予選をクリアーして、ついに決勝まできた。さすがに緊張するなぁ・・・。
 しかも周りはいつも上位に入ってくるやつらばっかりだし・・・。でも柊をおいしくいただくためにも負けらんねーぞ!

 でも、少し気合が入りすぎたのかスタートで少し出遅れた。
 いつもだったらそのまま前には行けないんだけど、今日は違っていた。自分でも驚くくらい足が前に出たし、前を走っているやつらが次々に視界から消えていって、最後に先頭を走るやつの背中も段々近づいてきた
 ・・・けど、どうしてもその距離は縮まらなかった。

 ゴールまであと少し・・・。く・・やっぱり届かないか・・・

「がんばれー!!日下部ー!!」

 その時柊の声が聞こえたような気がした。

 ダメだ!!勝って柊に気持ちを伝えるんだ!!

 ゴール寸前、思い切りトラックを蹴って前に出た。
 前のめりになってゴールして、すぐに振り向いたら、さっきのやつが両手を挙げて喜んでいるのが見えた。自分は負けたんだってわかったら、その瞬間頭が真っ白になって、顔をあげる気力もなかった。
 どれくらいそうしていたのかわかんないけど、気がついたら陸上部のやつが首にタオルをかけてくれていた。『惜しかったな』とか言っていたみたいだけど、 それよりも柊のことが気になって見てみると、なんだか困ったような顔でこっちを見ていた。

「あーあ。負けちまったよ」

 柊は相変わらず困ったような顔で私を見ていた。そんな柊の顔を見ていたら泣きそうになったけど、柊に心配かけたくなかったから、笑顔を作って近づいて、できるだけ明るい声で話しかけた。

「残念・・・だったわね・・・」
「ああ・・・。   ま、しゃーないよ。
 今までは表彰台に上がれなかったんだから、これだけでも充分だよ」
「日下部・・・」
「そんな顔すんなって。柊が応援してくれたからがんばれたんだ」
「う、うん・・・」
「・・・。 試合終わったらなんかトイレ行きたくなっちゃった」
「おまっ、この場面でそんなこと言うか普通?」
「しゃーねーじゃん。ずっと緊張しっぱなしだったんだぜ?ま、ちょっと行ってくるよ」
「ったく・・・」

 それ以上柊と話していたら泣いちゃいそうだったから、適当にごまかしてトイレに行った。水道の水はぬるかったけど、走った後で汗をかいていたから顔を洗ったら結構気持ちよかった。

 がんばったけど、だめだったな・・・。
 あんな顔させたくなかったのに・・・。笑顔で一緒に笑いたかったのに・・・。

 そう考えたら途端に涙が溢れてきた。

「うう・・・ひっ・・な・・何でだよ・・・あと少しだったのに・・・・・。
 あやのにまでお願いして・・やっと柊のこと誘えたのに・・・。
 こんなときくらい・・・うぅぅ・・勝たせてくれよ・・・」

 その時、いきなり後ろから声をかけられた。最初はよくわからなかったけど、それが柊だってわかったらすげー焦って、でも必死に誤魔化そうとして口からは次々と言葉が出た。

「日下部・・・・」
「ん?   あっ!柊? わわわ! あ、あの、ちょ、ちょーっと顔洗ってたんだ。
 さっきの試合で汗かいちゃったからさー」

 ―こんなんじゃ柊に告白なんてできないよ・・・。

「日下部・・・」
「いやー、やっぱ優勝すんのは厳しいな。上には上がいるもんだ」

    ―優勝できなかったんだから・・・。

「日下部・・」
「ま、これで、あとは受験だけ―」

    ―ちびっ子にだってかなわない・・・。

「日下部!!」

 柊は突然大きな声で叫んで睨んだ。

「な、なんだよ・・・」

 何か悪いことしたのか?それとも何か怒らせるようなことを言ったのか?
 頭の中でいろんな言葉がグルグル回っていたけど全然わからなくて、何も言えずに私はうつむいた。

 どれくらいそうしていたのかはわからないけど、しばらくして柊が近づいてくるのがわかった。そしたら頭に腕を回されて、いきなり柊に抱きしめられた。

「ひ、柊?」

 な、何で?意味わかんねーよ!!さっきまで怒ってたんじゃねーの?
 驚いて何も言えないでいると、上から柊の優しい声が聞こえた。

「日下部・・・・。あんた、すごくがんばったんだよね・・・。かっこよかったよ」

 そう言われて頭を撫でられた途端、今まで我慢しようとしていた気持ちの代わりに温かい気持ちが胸に湧いてきて、抑えようと思っていた涙がどんどん溢れてきた。

「・・・う、うん・・。わ・・たし・・が・・がんばったんだ・・・。
    柊・・・の・・ために・・・すご・・く・・が・・がんばっ・・・た・・。
    ・・・・う・・うわああああああああああ!!ひーらぎぃー!!!」

 あやのにだってこんなに大声で泣いたことはなかったんじゃないかってくらい、大きな声で泣いた。
 柊は泣いている私の頭をずっと撫でてくれていて、あやのとは違ったけれど、でもあやのに撫でられるよりずっと嬉しかった。
 頭を撫でられながら、柊からは良い香りがした。それを嗅いでいたらすごく落ち着いて、その時、ずっと柊にして欲しかったことを今されているんだってことに気がついた。

 一通り泣いて落ち着いた私は、柊に連れられて木陰のベンチに座った。

「日下部、少し落ち着いた?」
「あ、う、うん。   泣いたりして悪かったな」
「いいのよ。中学校から陸上一本で来たんだもんね」
「それもあるけどな・・・」

 『ほんとは柊に告白したかったからなんだ』とは、ちょっと言えねーかなー・・・。なんて考えていると、柊が突然話しかけてきた。

「ね、ねえ・・・。どうして・・・私のために・・がんばってくれたの?」

 驚いて柊の顔を見ると、真っ赤な顔で視線を逸らした。

 あ!さっき泣きながら言っちゃったんだ!うわっ、どうしよ・・・。むむむ。このまま誤魔化すのが良いのか、それとも告白するチャンスなのか・・・。
 うーん・・・。でも、ここまできたら言うしかねーよな!!

「あ、あのな、柊・・・。じ、実は、前から」

 柊はなんだか驚いたような顔で口をパクパクさせて、顔はどんどん赤くなってきていたけど、それでもかまわず言葉を続けた。

「柊のことが・・・す」

 ぐ~~~~~~~~~~~~~~~

「き・・・。 へ?」

 な、なんだ?今の音?

「う、うわあああああぁぁぁぁっ!!!!!! い、今のなしっ!!なしだから!!」
「は?腹、減ったの?」
「ちょっ!!そそそ、そんなことないって!!何でもないんだったら!!」
「い、いや、今のは腹の音だろ?」
「も、もー!!何でこんな時に鳴るのよー!!!」
「あははははははは」
「ちょっと!! わ、笑うな! ね、ねぇ?さっきの続きは?」

 焦ってる柊が妙におかしくて、思い切り笑ったらなんだか気持ちがすっきりしちゃった。
 それにそういうこと言う雰囲気じゃなくなっちゃったな。ま、いっか。腹も減ったし。

「もう良いじゃんよ~。いい加減、腹減ったよ~」
「さっきまでのシリアスな雰囲気はどこ行ったのよ!!」
「え~?そうだっけ~?」
「あんたねー、久しぶりに真面目になったと思ったのにもうこれか・・・」
「まぁまぁ。それも柊の腹の音で終止符が打たれたと」
「くっ・・。ホントのことだから何も言えない・・・」
「なぁ、話は終わりにして一緒にご飯食べようぜ」
「うぅぅ・・・。わ、わかったわよ! でも、後でちゃんと続き聞かせなさいよ!」
「よーし!じゃあ、早速弁当食べようぜ。楽しみだな~。柊の弁当~」
「って、人の話を聞けー!!!!!」

 なんだか有耶無耶になって終わっちゃったけど、でも、あれだけでも変にすっきりしちゃったな。
 柊の気持ちはわかんなかったけど、何かまんざらでもなかったみたいだし、今はお腹が空いたからいいや。後で考えよ。
 それにこれから部活もないから、もっと柊といられる時間も増えるんだし、そのうちチャンスはあるよ。

 柊はちゃんとミートボールを作ってきてくれて、形がいびつだったから柊が作ったこともすぐにわかった。 でもとってもおいしくて、残さず食べた。
 まぁ、1つ落っことしちゃったけど・・・。みゅぅ・・・

「ごちそうさまー。  はー。食ったら眠くなってきたなー。・・・ちょっと膝貸して?」
「え?おいおい、ちょっと待―」

 ちょっとやりすぎかなっても思ったけど、別に嫌がらなかったからそのまま頭を乗せちゃった。柊も怒らなかったから大丈夫だよな?

「うーん。ひーらぎの膝って気持ちいいなー」
「ったく。今日だけだからね」
「んー。 嫌だよ。またしてくれよ」
「峰岸にしてもらえばいいじゃない?」

 その時、魔が差したというか、なんか柊のことをからかいたくなった。

「あやのはしてくれないよ。それにわたしはひーらぎにしてもらいたいんだ」
「へ?ちょ、そ、それってどういう意味なの?」

 くふふ。焦ってる焦ってる。

「ふふ。ひ・み・つ。 それに学校じゃこんなことしてくんねぇじゃん?」
「あ、当たり前じゃない!」

 せっかくだしちびっ子のことも聞いてみちゃおうかなー。

「そうだよなー。ちびっ子もいるもんなー」
「え?こ、こなたは関係ないでしょ。人前でそんなことできないってことよ」
「そう言って、ちびっ子にはしてるんじゃないのか?」
「そ、そんなことしたことないわよ!!」
「ふーん・・・。じゃあ、何で今してくれるんだ?」
「え?  そ、それは・・・」

 柊はあたふたして困ったような顔をしていた。んん?どうなんだい?

「そ、その・・ご・ご・・ご褒美よ!ご褒美!!  日下部ががんばったご褒美!」

 ご褒美!ああ、なんて魅力的な言葉なんだ!
 思わず頭をあげて柊の顔を覗き込む。

「じゃあ、また何かでがんばったらしてくれるのか?」
「そ、そうねぇ・・・。考えてみてもいいわよ・・」
「よし!!じゃあ、今度は勉強でがんばる!!」
「受験生なんだから勉強がんばるのは当たり前だろ!!」
「えー。いいじゃんいいじゃん。そういうこというなよー」
「はぁ。 ったく。なんであんたはいっつもそうなのかねぇ」
「じゃあさ、今度あやのも誘って3人で勉強しようぜ。ひーらぎとあやのに教えてもらえれば勉強もはかどるし、がんばれそうじゃん?」
「ま、まぁ、そうよね。わ、私は、べ、別にいいけど・・・」

 あやのがお菓子を作って、それで勉強がんばって、その後柊から「ご褒美!」もらって。いやー、これぞ一石二鳥!!やっぱわたしって天才?

「ようし、決まりだな。じゃあ、そんときがんばったらまた膝枕してくれよな」
「バ、バカ言ってんじゃないわよ! 峰岸がいたらできるわけないでしょ!!」
「んー?  じゃあ、あやのがいなかったらいいのか?」
「そ、そういう意味じゃ・・・・」
「ふふふ。ま、いっか。勉強がんばればご褒美くれるってことで」
「だから、一人で納得するな!!」
「いいじゃんかよー。だってひーらぎにご褒美もらいたいもんなー」
「ま、待ちなさいよ。誰も絶対あげるって言ってないじゃない!」
「へへー。そうはいかないぜ。約束したからよー。ひーらぎは約束したら守ってくれるもんなー。優しいもんなー」

 柊の目の前でからの弁当箱をブラブラさせてみた。な?柊は優しいんだよなー?

「くっ・・・!」

 やったー!久しぶりに柊をやりこめたぞ!!いやー、なかなか気分がいいもんだね。

 ・・・はっ!!つい頭あげちゃった。もっと柊の膝を堪能してたかったのに・・・。ここからもう1回膝枕頼むのはちょっと難しいかな・・・。でも次いつしてもらえるかわかんねーし・・・。うーん・・・。
 言おうか言うまいか悩んでいると、柊が不機嫌そうな声で聞いてきた。

「何よ?」
「えっと、その、怒った?」
「え?   ・・・べ、別に怒ってないわよ」
「そっか・・・」
「な、何よ。何か言いたいことでもあるわけ?」
「う、うーんと・・・。   もう少しだけ、膝枕してくれねぇ?」
「え?」
「いや、頭上げちゃったからさ・・・」

 勇気をだして言ったら、柊は一瞬棒を飲み込んだみたいな顔になったけど、次の瞬間には思い切り笑っていた。

「ぷっ・・・あはははははは!!」
「なっ?なんで笑うんだよ!」
「あはははは・・・いやー、なんというか、日下部っぽいというかね」
「なんだよそれ! むー・・・」

 なんで涙ぐんでんだ?そんなに変なこと言ったかな?

「もう。今日は特別だからね」
「え?い、いいのか?」
「いいわよ」
「ほんとに?」
「しつこいなぁ。いいって言ってんでしょ!」

 柊はそういうと、私の頭を掴んでいきなり太ももに押し付けた。
 う、うおっ!!やわらけー。
 で、でも、こっから柊に顔を向けるのはちょっと恥ずかしいな・・・。どんな顔すればいいんだ・・・。
 おずおずと柊の方を見てみると、そこには赤い顔ですごく嬉しそうに笑う柊の顔があっって、そんな今日のお日様みたいな柊の笑顔を見たら、私もすごく嬉しくなって自然と笑顔になった。
 そのまま一緒に笑いあっていたら、やっぱり私は柊のことが大好きなんだなって思った。

 表彰式の時も柊は待っていてくれて、表彰台から応援席に向かって手を振ると、少し照れたように小さく振り返してくれた。
 帰りの電車ではいつもと同じように話していたけど、なんか、どっか違う感じがしてた。
 どこが違うのかって聞かれると難しいんだけど・・・。うーん・・・もっと仲良しになった?みたいな。

 家に着くと、あやのの靴があって、兄貴に会いにきてたんだなって思った。ホントにデートしてたのか。やるなぁ、あやの。

「ただいまー。来てたんだ?」
「あ、おかえり。どうだった?」
「いやー、決勝まで行ったんだけどな。結局2位だったよ」
「そっかー。惜しかったね・・・。それと・・・もう一つの方はどうなったの?」
「え?  あ、あの・・・」
「ん?」
「あ、いや、告白はできなかったけど・・・」
「けど?」

 別に恋人になったとかそういうことはなかったんだけど、なんだか自然と笑みがこぼれちゃう。あやのも何かわかったみたいで、私と同じ笑顔を返してくれた。
 何か色々ありすぎてどこから話せばいいのかわかんないけど、今日は夕飯食ってくだろうし話が長くなっても大丈夫だよな?聞いてくれよ。あやの。

「それがさー。今日柊が・・・」

                                  了

















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  • 最高の気分だ。本当にありがとう -- 名無しさん (2010-02-13 04:24:53)
  • みさかが最高やあああ -- 名無しさん (2009-08-04 04:57:54)
  • めっちゃ泣ける・・・
    けどみさおは負けん! -- mkl (2009-04-25 23:27:54)
  • スゲェェェ! -- 名無しさん (2009-04-01 08:22:02)
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