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私のファンタジー

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現実主義だとか夢がないとか、そんなことは前からちょくちょく言われてはいたけど、
そんな私にもちょっとくらいはファンタジーっていうか、そういったモノへの少女的な憧れはある。
なんだかんだ言ったって朝のニュースの占いは横目でチェックするし、本当は流れ星に
お願いしたいことだっていくつもあった。だからもし、あのとき横につかさもこなたもいなければ、
私はわくわくした気持ちで両手をあわせて、ちょっとしたことをお願いしたに違いないのだ。
友達の前だと恥ずかしくて隠しちゃうけど、だって素敵じゃない?
織姫と彦星の物語だとか、友達が教室の隅でこっそりやってる恋占いとか……
私はね、本当はそういうのがすごく好き。

毎年のことだけど蚊との格闘と27度設定の冷房が欠かせない蒸し暑い夏も、そろそろ余韻を
楽しむ時期にさしかかっていた。最近になってようやく、長らくタンスに眠っていた長袖を出す
ことができて、もう少しでもみじが赤味を帯びる季節になったのを心持ち嬉しく思っていた
ある日曜の話だ。
そのころはもうセミも鳴かなくなっていたし、長い休みの間には朝ごはんのあとに食べていた
アイスクリームを冷蔵庫から出すこともなかった。
髪をセットすると私はシャツの上にジャケットを羽織って、足取り軽く待ち合わせの場所に
出かけていった。ひさびさにこなたと二人で遊ぶ約束をしたのだ。
あいつのことだから、どうせまたアニメショップとゲーム屋を延々巡るのに付き合わされるんだろう
とは思ったけど、それでも二人で会えるのが楽しみなのは着々とあいつに染められてるから
なのは分かりきってることで、それがちょっとだけ悔しくもあり、嬉しくもあった。
各駅停車の私鉄を乗りついで待ち合わせの公園に着くと、あいつはまだ来ていなかった。
「なーんだ」
実はこの時点で私もちょっと遅刻だったのだが、呼び出した側が相手よりも遅れるっていうのは
感心しない。携帯で連絡したが、やっぱりというか音信不通だった。
本当に携帯を持ってる意味があるのかちょっと疑問だ。
「……」
あのバカ。待たされるほうの気持ちも知らないで。
ベンチで足をぶらぶらせて、私はめっきり涼しくなった初秋の空気の中で目を閉じた。


「ん」
ベンチの横で白い花が一本、横たわっているのを見つけた。
花壇にはない花みたいだし、どこかから飛ばされてきたのだろうか。
「……」
そっと手にとって、指先でくるくると回してみた。ほんの少しだけ気が晴れた気がした。
……せっかくだから、少し時間をつぶそうか。
「あの子は、私が……」
白い花びらに指を這わせて、私はその一枚をそっとちぎった。
「好き」
指を開くと、涼しい風に乗って花びらは蒼い空に舞い上がった。
「嫌い」
もう一枚。
「好き」
もう一枚。
「嫌い。好き。嫌い。好き……」
ゆっくり、ゆっくり、時間をかけて一枚ずつ。
もうとっくに、それこそ子供でもやらなくなった、漫画の中だけの御伽噺。
みんなには内緒にしてる、本当は好きな花占い。
私は、あの子が好き。でも、あの子は?
「好き。嫌い。好き」
小さい、たくさんの花びらを一枚、また一枚。
あの子は、私をどう思っているのかしら。

『わたしと、おなじきもちでいてくれてるのかしら』

「……なんてね」
自分の考えに苦笑しながら、少しずつ花びらを空に飛ばしていく。
ねえこなた。私、あなたのこと、大好きよ。あなたのことだから、どうせ気付いてないだろうけど。
だから、ねえ、こなた。ちょっと、ほんのちょっと、期待するくらいは、いいわよね?
「好き、嫌い、好き、嫌い……」
「好き!」
「え?」
背後から伸びた子供みたいな指に、最後の花びらが握られた。
待ち人は、恥ずかしいタイミングでやってきた。
「えっへへー、かがみんが花占いとはねえ」
「なななな……」
小学生みたいなちっこい女の子は、いたずら猫みたいな笑顔で私の目を見詰めていた。
小さく跳ねると、私に背中から抱きついてきた。
「ねえねえ、誰誰?誰が好きなの?」
「だ、誰が教えるか!」
「えー、ねえ、誰なのー?私が知ってる人ー?」
「いいから、離れなさいよ!」
「あ」
「あ……」
こなたの手が開いて、『好き』で終わった最後の花びらが遠く知らないところへ飛んでいった。
いつまでも、いつまでも空を見詰めている私に、こなたはばつが悪そうに頬を掻いた。
「ごめん。せっかくの記念だったのにね」
「……まあ、別にいいけどさ。そんな顔しないの。ただの占いじゃない」
私は小さく笑って、こなたのおでこを軽く小突いた。
「そのかわりって言ったらなんだけどね。誰が好きかって、聞かないこと」
「ん。わかった。ごめんね」
「もういいから。それじゃ、行こうか。今日も楽しみましょ」
「う、うん!」
そっとこなたの手をとって、私はベンチから立った。
二人で歩き始めた秋のはじまりの公園。もうしばらくしたら、きれいなもみじで一杯になる。
そうしたら、また二人で来ようね。そのとき、もしかしたら。今よりもう少しだけ関係が進んでいたら、
あなたに教えられるかもしれない。私が好きな人……『それはあなたよ』ってね。

おわり




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  • 乙女すなぁ~ -- 名無しさん (2011-04-13 05:42:53)

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