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保健室ではお静かに

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「うー…あたま、いたい…」
「ん、熱は…38度2分ね。勉強、頑張りすぎたのかな?」
「勉強ってわけじゃ、ないんですけど…ちょっと」
「受験シーズンとはいえ、自分の体も大切にね? お薬、持って来るわね」
「はい、お願いします」

 期末テストも終わり、夏休みまで秒読み段階に入った、とある1日。
 こなたは、陵桜学園の保健室で、ベッドを借りて休んでいた。室内にいるのは、彼女と保険教諭の天原 ふゆきだけ。
 時計の針は3時15分をすぎた辺り。ちょうど6時限目の授業を行っている最中である。
 赤らんだ顔で天井を見つめるこなた。そこへ、グラスをお盆に乗せてふゆきが戻ってきた。

「はい、熱さまし。熱が下がれば楽になるから、ぐーっと飲んで」
「はーい。  …っ、……、んっ…。  …ふー、飲みました」
「よくできました。もし明日になってもまだ体がおかしかったら、きちんと病院に行ってね」
「私は大丈夫だと思うんですけど…」
「ダメですよ、最初が肝心ですからね。まずは、ここでしっかり休んで元気を取り戻す事」
「…はーい」

 グラスをお盆に戻し、痛む頭をいたわりながらベッドに横になる。薬が効きだすまで、あと30分から1時間というところだろう。
 少し顔を傾け、側にある窓から運動場を眺める。  ―この時間、準備や片付けに時間のかかる体育はやらないので、校庭には誰もいない。
 植え込みに咲いている名前も知らない花を見ながら、こなたは昨日の、いや今朝までの行動を悔やんでいた。


☆☆


  ――AM 01:15頃

「ちょ、装備変更し忘れたあっ! どうりでこんなにダメージ受けるハズだよ…ってまた来たあぁぁ…」
「こなた、もう遅いからそろそろ寝なさい。明日起きられなくても知らないぞ」
「ここを超えたらセーブポイントがあるらしいから、そこまで行ったら今日はやめるよ。のおおお、頼むから無事に出させてぇ…」

  ――AM 04:20頃

「や、やっと終われた…次が気になって、結局…。おやす、み…」

  ――登校時刻

「こなたー、遅刻するぞー。朝ごはん食べてる時間も無くなるぞー」
「 (うう、さ、寒い…クーラーつけっ放しだった…) は、はーい」


☆☆


 一晩中クーラーの冷風にさらされたせいで食欲も無く、朝食はもちろん昼食まで抜き、友人たちを驚かせたこなた。
 午前中と昼休みは何とか気合で乗り切ったものの、教室内に溜まっていく熱が体力を少しずつ奪い、5時限目の途中でとうとうダウンした。
 つかさとみゆきに付き添われてそのまま保健室へ連れて行かれ、今に至る。

「あそこでちゃんとセーブして終わってれば…ぶつぶつ」
「どうしたの? 何か悩み事?」
「あ、いえ、何でもないです先生」
「そう? 困った事や聞きたい事があったらいつでも言ってね。  ―先生はずっとここにいるから、少し眠ったほうがいいよ。疲れてるみたい」
「…やっぱり睡眠時間が少なかったのかなあ」
「夜更かしはおハダの天敵ですよ。体のリズムも狂わせてしまうから、ほどほどにね。 …カーテン、閉めておくね。おやすみなさい」
「おやすみなさい」

 ベッドの周りを白いカーテンが覆う。こなたは息をつき、ゆっくりと目を閉じた。
 保健室独特の、薬と包帯と消毒液のにおい。蛍光灯に照らされてほんのりと光る室内。聞こえるのは、時計が秒針を刻む音だけ。

   ―後でみゆきさんにノート見せてもらおっと。  今日は、少し控えめにしとこっかな…

 痛みの残る頭でそんな事ばかり考えているうちに、体調不良と今頃襲ってきた睡魔にあっという間に引きずり込まれてしまった。



【おーす、調子はどう…って寝てるのね。  …おーい、起きろー(つんつん)】
(ん…電話が鳴ってる…)
【授業、終わったわよ。おいってばー(ゆさゆさ)】
(う、んん…頭の中で電話が…鳴ってる…)
【 <こらーねるなー ねるとしぬぞー> (ぱしぱし)】
(頭が、割れそう…誰か、早く電話に…)
【せっかく来てあげたのに、つまんないの。  ―こうしてやる、えいっ】
「ん、ぐ…ふがっ!?」

 葉巻をくわえた、どこぞの宇宙の人みたいな夢 (?) を見ていたこなたは、いきなり息苦しくなって目を覚ました。
 どうやら、あのまま寝入ってしまったらしい。 …あまり下がっていない熱のせいか、寝汗で制服はぐっしょりとぬれていた。
 仲良くしようとする瞼を無理やり開く。カーテンが取り払われており、正面にある戸棚と鼻に置かれた手がよく見える。   ん、手?

「やっと起きたわね。調子、どう?」
「…かがみんや、こんな時間にこんな場所で、どうして嬉しそうに人の鼻をつまもうとしてるのかな?」
「つまもうとしてるんじゃなくて、つまんでたのよ。なかなか起きないんだもん。もうとっくに授業終わったわよ」

 言われて時計を見る。確かに、6時限目は少し前に終わっていた。

「ここの入り口で先生と会ったから、理由を話して入れてもらったのよ。今は教員会議に出てるわ」
「そっか、結構寝ちゃってたんだ。悪いねかがみ、こんなとこまで来させちゃって。つかさとみゆきさんは?」
「つかさがノートとりきらない内に授業終わって黒板消されちゃったらしくて、みゆきと一緒に勉強中」
「つかさらしいね。どれ、私も写してこようかなっと」
「あんたはまず写す前に内容を理解してから…って、あんた汗だくじゃない」
「え? ―ありゃりゃ」

 ぼんやりする頭でベッドから降りるも、かがみに言われて自分の姿を見下ろすこなた。確かに、汗だくだった。
 元々生地の薄い夏服に染み込んだ結構な量の汗が、こなたの素肌をわずかながら透けさせていた。背中も同様だった。
 仕方がないとはいえ、この格好で人前を歩かせる訳にはいかない。

「まったく…かくならかくで、もうちょっとましな汗をかきなさい…って言っても遅いか」
「別に私はいいんだけどなー。どうせ誰も気にしてないって」
「私がよくないっつの。でも、そろそろ帰らないと…。  ―よし。こなた、ちょっと上脱いで」
「あの、かがみ…今なんて?」
「応急処置として、服とあんたの体の汗を拭き取るのよ。制服がこれ以上汗を吸わなければいいんだし」
「だから別に、私は少しくらい…」
「だから、あんたは良くても周りが色々と困るのよ。つべこべ言わずに脱ぎなさいっ」
「ぎゃー、かがみんのエッチー!!」

 [保健室で騒がないように] と最初に発言し、それを定着させた人はどんな人物だったろうか。昔の教師か、休んでいた生徒か。
 また、その本人が今ここにいたとしたら、一体どんな言葉を残しただろうか。
 あまり広くない室内を2人して走り回った挙句、1人は無理やり服を脱がされて何やら喚き、もう1人は呆れ顔でタオルを片手にしている。
 制服の方は、脱がした後に軽く乾拭きし、ハンガーにかけて干している。

「か、かがみんに脱がされた…嫌がる私を押さえつけて…もう、おヨメに行けないっ!」
「あほ! 人聞きの悪い事言うな! それに、窓のカーテンもドアの鍵も閉めたから恥ずかしい事ないじゃない」
「そんなんじゃないんだよ、かがみにこんなトコでこんな事されたから恥ずかしいんだよー」
「いや、それはそれで違うような気が…まあいいわ、ほら両手上げて」
「変なトコ触んないでよ、エッチなコトしないでよ」
「あんた、私を何だと思ってる…そんな目で見るな」

 なんだかんだ言いながら、かがみはこなたの体の汗を拭き取る作業に入った。
 両手を上げさせ、腋の下にタオルを差し込む。さっきの運動でふき出た分も合わせて、ゆっくりと滴る汗をぬぐっていく。

「ったくもう、余計な手間をかけさせるんだから…」
「かがみ、だめ、そこくすぐっ、うひゃひゃ」
「ちょっと、動かないでよ。それにしても、あんたの体って白いわね。体質なのかしら?」
「少しくらい病弱に見えると萌えない? か弱そうな感じが、こうグッときたり」
「全然分からん。いいから黙って手上げてな」

 腰周りを大ざっぱに拭き取り、背中をごしごしとこすって首元を軽く一周。前はこなたに拭かせて、最後に両手。
 走り回ったせいで更に汗をかいていたのと、体に触れるたびに騒ぐせいで、思ったより時間がかかった。
 …そろそろいいかな、と思う位に拭き取れた頃、こなたがかがみに話しかけた。

「ねぇ、かがみ」
「何? まだ残ってるとこある?」
「私が拭いてあげるから、かがみも脱いでよ」
「別に汗かいてないし」
「私は無理やり脱がされたのにかがみだけ脱がないのはずるいです」
「あんたが汗びっしょりかくから悪いんでしょ」

 かがみは適当にあしらいながら、干しておいた制服をこなたに渡す。まだ少し湿っていたが、たぶん大丈夫だろう。
 こなたは受け取ると、納得いかないという顔で袖を通した。

「びやーんとする」
「文句言わない。さ、教室に戻るわよ」
「じゃあ、せめてかがみのお腹をプニプニさせて。脱がなくていいから」
「ゴメンそれは言わないで。最近またお菓子食べすぎで……ちょっと待て、プニプニって何だ」
「ムネとどっちが弾力あるかなーと思って」
「…あんたが女でよかったと、私は思うぞ。いや、セクハラ発言してるんだから同じか」

 ベッドを整頓してふゆきに退室する旨を書置きし、保健室を後にする。
 かがみがこなたの様子を見に行ってから、約30分くらい経っていた。まだ日は落ちる気配が無い。

「そういえばあんた、もう体調はいいの? 気にせずに保健室出ちゃったけど」
「なんか動き回って汗たくさんかいたらよくなったみたい。寝る前に薬も飲んだし」
「よかったじゃない。まあ、あれだけ騒げばね。これに懲りたら、徹夜でゲームなんてやめなさいよ」
「まあ、しばらくは気をつけるよ。元気じゃないと楽しめないしね」
「その心がけもいつまで続くのかしらね。   つかさとみゆき、まだいるかな? もしかしたら、先に帰っちゃったかもね」
「私はまだいると思うなー。ノートとるものの理解できずにみゆきさんに何度も質問するつかさのイメージがこう、もわもわと」
「それはまんま普段のあんただ。つかさだって同じ授業聞いていたはずだから、押さえるトコだけ押さえて、もう帰ってると思うな」

「じゃあさ、賭けない? つかさとみゆきさんが、まだ教室にいるかどうか」
「そんな話にもっていく理由が分からん」
「いいじゃん、やろうよー。  駅前のアイスショップのアイスでどう?」
「…うーん、アイスくらいならいいか。 (少しくらいなら、食べても大丈夫よね…) 言っとくけど、2段重ねだからね」

 年頃の女子高校生らしい会話をしながら、2人は放課後の廊下を歩いていく。
 大方の生徒は下校したのか、2人の話し声と足音以外は聞こえてこない。昼間の熱はまだ抜けきっておらず、少しばかり蒸し暑い。
 そんな廊下を並んで歩きながら、不意にこなたが言った。

「今日はありがとね」
「何?  ああ、別にいいのよ。様子見に行ったついでだし」
「かがみって、案外世話好きだよね」
「案外って何よ。まあ、友達が苦しんでる時には、何かしてあげたいじゃない」
「表向きは普通にしてても心の中では 『大丈夫かな、大丈夫かな』 って心配してくれるかがみ萌え」
「…もう1回熱出させてやろうか」
「冗談だよ、冗談。でも、さっきのありがとうは、本当だよ」
「(まったく、素直じゃないのはあんたの方よ) はいはい、そういう事にしといてあげる」


 ――賭けの結果がどうだったのかは、皆さんのご想像に――




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  • こなたも可愛いけど、世話焼き
    女房なかがみ激GJ -- チャムチロ (2012-08-29 07:44:05)
  • ロリ高生の汗の匂いと保健室の匂いが混ざって…
    実は かがみんもクラクラ来てるのかも? -- 名無しさん (2011-04-13 12:29:50)
  • リアルだ・・・ -- 名無しさん (2008-07-10 22:32:47)
  • 多分いないんじゃないかな・・・? -- 名無し (2008-02-22 09:07:18)

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