ボクは保健室のベッドで一人で寝ていた。まあ、ベッドは二人で寝るものじゃないけど。
ボクは……名乗るほどの者でもないからやめておこう。誤解の無いように言っておくけど
決してサボりなんかじゃなくて、純粋に体調が悪いからここにいる。
一眠りすると体調もいくらか回復したようで、けだるさに身を任せてそのまま横になって
いると、ドアが開く音が聞こえた。
『失礼します……先生は、いないみたいだね』
ベッドはカーテンで仕切られていて、外からボクは見えないし、ボクも外は見えない。
『とりあえず横になろう、ゆたか』
抑えた感じの、静かな女の子の声。声だけを聞くと冷たい印象を受ける。
その娘は(たぶんボクの隣の)ベッドに、連れてきた人を導いた。無理なようなら
手伝おうかと思ったけど、ちゃんとその相手をベッドに乗せられたようだ。
『ゆたか、大丈夫?』
大丈夫じゃないからここに連れてきたんじゃないか。
最初はこの娘の声から冷たい印象を受けたけど、今は心配でたまらない心情が窺えた。
少しだけ声が震えてる。
『うん……いつものことだから』
『ゆたか』は可愛らしくて弱々しい声で答えた。どうやら女の子だったらしい。
『そう……少しこうしていよう』
少しの沈黙。彼女たちはどうしているんだろう。ボクからはその姿どころかシルエットも
見えない。
『みなみちゃん……私のせいで、いつもごめんね』
『ゆたか』が言う。連れてきた娘は『みなみ』というらしい。『ゆたか』は保健室の常連の
ようだった。
『謝ることないよ……ゆたかのためだから』
『でも、いつもみなみちゃんばっかり……みなみちゃんだって授業とかあるのに』
『その……私は……』
そこで言葉が途切れた。一体何があったんだろう。
『私は、他の人にゆたかを任せたくない……私が、やりたいんだ』
さっきまでと同一人物とは思えないくらい、その声には熱がこもっていた。
言われた当人ではないボクがドキッとしたくらいだ。『ゆたか』の反応はどうだろう。
『……あの……それなら……』
『ゆたか』も言葉を途切れさせた。この後なんて言うのか、期待が高まる。
『みなみちゃん……ここにいて……お願い』
――これは効いた。声だけでやばい。
こんな保護欲をそそる声で言われたら断れるはずがない。すくなくともボクは。
黙ったままだから『みなみ』の反応はわからないけど、動いた様子がないからずっと
ここにいるんだと思う。
『ゆたか……私はずっと、ゆたかのそばにいたい』
な、なにこのプロポーズみたいな台詞!?
『うん……ずっとそばにいて』
しかもOK!?
二人とも女の子じゃないの? 名前からして『ゆたか』は男の子かと思ったけど、この
声で男はありえない。もしかしたら『みなみ』は苗字で、実は男の子なのかもしれない。
こんな声の男の子だって探せばいるはず。
『女の子同士だからって、ずっと我慢してきた。でも、もう抑えられない』
ボクの仮説はあっさり否定された。
『いいよ……みなみちゃんなら』
しばらくの沈黙の後に、何かの音がした。
『これ、初めてのキスだよ』
『私も……』
それは、キスの音だった。
ボクは……名乗るほどの者でもないからやめておこう。誤解の無いように言っておくけど
決してサボりなんかじゃなくて、純粋に体調が悪いからここにいる。
一眠りすると体調もいくらか回復したようで、けだるさに身を任せてそのまま横になって
いると、ドアが開く音が聞こえた。
『失礼します……先生は、いないみたいだね』
ベッドはカーテンで仕切られていて、外からボクは見えないし、ボクも外は見えない。
『とりあえず横になろう、ゆたか』
抑えた感じの、静かな女の子の声。声だけを聞くと冷たい印象を受ける。
その娘は(たぶんボクの隣の)ベッドに、連れてきた人を導いた。無理なようなら
手伝おうかと思ったけど、ちゃんとその相手をベッドに乗せられたようだ。
『ゆたか、大丈夫?』
大丈夫じゃないからここに連れてきたんじゃないか。
最初はこの娘の声から冷たい印象を受けたけど、今は心配でたまらない心情が窺えた。
少しだけ声が震えてる。
『うん……いつものことだから』
『ゆたか』は可愛らしくて弱々しい声で答えた。どうやら女の子だったらしい。
『そう……少しこうしていよう』
少しの沈黙。彼女たちはどうしているんだろう。ボクからはその姿どころかシルエットも
見えない。
『みなみちゃん……私のせいで、いつもごめんね』
『ゆたか』が言う。連れてきた娘は『みなみ』というらしい。『ゆたか』は保健室の常連の
ようだった。
『謝ることないよ……ゆたかのためだから』
『でも、いつもみなみちゃんばっかり……みなみちゃんだって授業とかあるのに』
『その……私は……』
そこで言葉が途切れた。一体何があったんだろう。
『私は、他の人にゆたかを任せたくない……私が、やりたいんだ』
さっきまでと同一人物とは思えないくらい、その声には熱がこもっていた。
言われた当人ではないボクがドキッとしたくらいだ。『ゆたか』の反応はどうだろう。
『……あの……それなら……』
『ゆたか』も言葉を途切れさせた。この後なんて言うのか、期待が高まる。
『みなみちゃん……ここにいて……お願い』
――これは効いた。声だけでやばい。
こんな保護欲をそそる声で言われたら断れるはずがない。すくなくともボクは。
黙ったままだから『みなみ』の反応はわからないけど、動いた様子がないからずっと
ここにいるんだと思う。
『ゆたか……私はずっと、ゆたかのそばにいたい』
な、なにこのプロポーズみたいな台詞!?
『うん……ずっとそばにいて』
しかもOK!?
二人とも女の子じゃないの? 名前からして『ゆたか』は男の子かと思ったけど、この
声で男はありえない。もしかしたら『みなみ』は苗字で、実は男の子なのかもしれない。
こんな声の男の子だって探せばいるはず。
『女の子同士だからって、ずっと我慢してきた。でも、もう抑えられない』
ボクの仮説はあっさり否定された。
『いいよ……みなみちゃんなら』
しばらくの沈黙の後に、何かの音がした。
『これ、初めてのキスだよ』
『私も……』
それは、キスの音だった。
二人はすぐにキスを再開した。
『みなみちゃん……はあっ……』
『ゆたか……んんっ』
ずっと続けている。五分だったか十分だったか、とにかく長い時間、続いてる。
そうこうしているうちに、衣擦れの音が――
――って、衣擦れ!?
ボクがここにいるんだよ! ――などと言うわけにもいかない。ボクが出ていくにしても、
ドアを開けるときに音がしちゃうはず。今この二人の邪魔をするわけにはいかない。結局、
ボクが存在を悟られないようにここにいるしかない。
始めるなら周りに誰かいないかを確認するべきだ。この二人がそれを怠っただけであって
ボクは悪くない。うん。
『ゆたか……』
『うん……』
確認するような『みなみ』の声と、答える『ゆたか』の声。
それからキスの音。というより口で吸ったりするような音。
『あっ……みなみちゃ……ふあっ』
『ゆたか』の声は、明らかに今までとは声色が違ってた。
ボクは全神経を耳に集中している。
『みなみちゃん、そんなところ、ああっ!』
そんなところがどんなところかはわからない。ただ、それからぴちゃっ、ぴちゃっという
水っぽい音のリズムが出来上がって、『ゆたか』の声が大きくなった。
『あっ、いやっ、あっ』
『ゆたか、濡れてる……』
『だって、みなみちゃんが……ふああっ!』
それからまた、衣擦れの音。それと、衣擦れっぽい音。
『ゆたか……重くない?』
『大丈夫だよ』
前言撤回。ベッドは二人で乗ることもある。
『私が動くから……』
主導権をとっているのは『みなみ』のほうらしい。
『こ、こんなの……えっちすぎるよぉ』
ボクの心臓が跳ね上がった。ボクの心拍の音でバレちゃうんじゃないかって不安になる。
それからまた、水音が響いた。二人の呼吸が荒くなってきて、ボクの耳にその音が届く。
『ゆたか、ゆたかっ』
熱っぽい声でパートナーの名前を呼ぶ。『みなみ』も声が乱れてきていた。
僕の知識と想像力では何が起こっているのか、全くわからない。だから、ただその
声と音だけを聞いていた。
『みなみちゃんっ……すごいよ、これっ』
『んっ……ああっ……ゆたか……』
二人の声のボリュームが上がって、水っぽい音のテンポが上がって、ボクの心拍数も高く
なっていった。たぶん、この二人はもっと激しいはずだった。
それがどれだけ続いたのか、わからない。ボクの聴覚以外の感覚はとっくに狂っていた。
『あ、あ、あっ、みなみちゃんっ、みなみちゃんっ、もうだめっ』
『ゆたか、わたしも、もうすぐ、もうすぐっ』
もうすぐ何かがある。ボクはそれを待ち望んでいるような、ずっと来てほしくないと
思っているような、変な気持ちだった。
『みなみちゃん、あ、あ、あ、あーーーーっ!!』
『ゆたか、ゆたか、ゆたか、んっ、んんんんっ!!』
一際大きい声で二人が叫ぶと、それきり二人は黙って、ただ乱れた息の音だけが響いた。
『みなみちゃん……はあっ……』
『ゆたか……んんっ』
ずっと続けている。五分だったか十分だったか、とにかく長い時間、続いてる。
そうこうしているうちに、衣擦れの音が――
――って、衣擦れ!?
ボクがここにいるんだよ! ――などと言うわけにもいかない。ボクが出ていくにしても、
ドアを開けるときに音がしちゃうはず。今この二人の邪魔をするわけにはいかない。結局、
ボクが存在を悟られないようにここにいるしかない。
始めるなら周りに誰かいないかを確認するべきだ。この二人がそれを怠っただけであって
ボクは悪くない。うん。
『ゆたか……』
『うん……』
確認するような『みなみ』の声と、答える『ゆたか』の声。
それからキスの音。というより口で吸ったりするような音。
『あっ……みなみちゃ……ふあっ』
『ゆたか』の声は、明らかに今までとは声色が違ってた。
ボクは全神経を耳に集中している。
『みなみちゃん、そんなところ、ああっ!』
そんなところがどんなところかはわからない。ただ、それからぴちゃっ、ぴちゃっという
水っぽい音のリズムが出来上がって、『ゆたか』の声が大きくなった。
『あっ、いやっ、あっ』
『ゆたか、濡れてる……』
『だって、みなみちゃんが……ふああっ!』
それからまた、衣擦れの音。それと、衣擦れっぽい音。
『ゆたか……重くない?』
『大丈夫だよ』
前言撤回。ベッドは二人で乗ることもある。
『私が動くから……』
主導権をとっているのは『みなみ』のほうらしい。
『こ、こんなの……えっちすぎるよぉ』
ボクの心臓が跳ね上がった。ボクの心拍の音でバレちゃうんじゃないかって不安になる。
それからまた、水音が響いた。二人の呼吸が荒くなってきて、ボクの耳にその音が届く。
『ゆたか、ゆたかっ』
熱っぽい声でパートナーの名前を呼ぶ。『みなみ』も声が乱れてきていた。
僕の知識と想像力では何が起こっているのか、全くわからない。だから、ただその
声と音だけを聞いていた。
『みなみちゃんっ……すごいよ、これっ』
『んっ……ああっ……ゆたか……』
二人の声のボリュームが上がって、水っぽい音のテンポが上がって、ボクの心拍数も高く
なっていった。たぶん、この二人はもっと激しいはずだった。
それがどれだけ続いたのか、わからない。ボクの聴覚以外の感覚はとっくに狂っていた。
『あ、あ、あっ、みなみちゃんっ、みなみちゃんっ、もうだめっ』
『ゆたか、わたしも、もうすぐ、もうすぐっ』
もうすぐ何かがある。ボクはそれを待ち望んでいるような、ずっと来てほしくないと
思っているような、変な気持ちだった。
『みなみちゃん、あ、あ、あ、あーーーーっ!!』
『ゆたか、ゆたか、ゆたか、んっ、んんんんっ!!』
一際大きい声で二人が叫ぶと、それきり二人は黙って、ただ乱れた息の音だけが響いた。
……さて、どうしよう。とんでもなく体が疼いてきた。
カーテンをめくれば、そこに二人がいる。だけど、この二人をボクの視線で汚しては
いけないような気がした。
音を立てないように布団をかぶって、闇に閉じこもる。気を鎮めるために。
『みなみちゃん……大好き……』
『私も……ゆたかのこと好きだよ……』
その声を聞いただけでボクの鼓動が速くなる。しばらくは静まりそうにない。
またしばらくして、衣擦れの音が聞こえてきた。たぶん服を着ている音だ。そう思いたい。
それから、チャイムの音。この二人の行為がもっと長引いていたらどうなってたんだろう。
一分もしないうちに、ドアが開かれる。
『田村さん』
先生かと思ったけど、『ゆたか』の声からして二人の友達なんだろう。
『二人とも、大丈夫? まだダメなようなら次も休むって言っておくよ』
『みなみちゃんはなんともないよ。私がわがまま言ってつきあわせちゃったの』
『ゆたか』は慌てたような声で言う。ごまかすのは下手なのかもしれない。
『それと、私も大丈夫。みなみちゃんのおかげですっかり元気だよ』
『それはよかった』
などと『田村さん』は言うが、『みなみちゃんのおかげ』が何を意味するのか、ボクには
わかっている。知らぬが仏ってことで、ボクのことを教えるつもりはないけど。
幸い、ボクのことはバレることなく、彼女たちは保健室から出ていった。ボクはそれから
十分な時間を空けて退室した。
カーテンをめくれば、そこに二人がいる。だけど、この二人をボクの視線で汚しては
いけないような気がした。
音を立てないように布団をかぶって、闇に閉じこもる。気を鎮めるために。
『みなみちゃん……大好き……』
『私も……ゆたかのこと好きだよ……』
その声を聞いただけでボクの鼓動が速くなる。しばらくは静まりそうにない。
またしばらくして、衣擦れの音が聞こえてきた。たぶん服を着ている音だ。そう思いたい。
それから、チャイムの音。この二人の行為がもっと長引いていたらどうなってたんだろう。
一分もしないうちに、ドアが開かれる。
『田村さん』
先生かと思ったけど、『ゆたか』の声からして二人の友達なんだろう。
『二人とも、大丈夫? まだダメなようなら次も休むって言っておくよ』
『みなみちゃんはなんともないよ。私がわがまま言ってつきあわせちゃったの』
『ゆたか』は慌てたような声で言う。ごまかすのは下手なのかもしれない。
『それと、私も大丈夫。みなみちゃんのおかげですっかり元気だよ』
『それはよかった』
などと『田村さん』は言うが、『みなみちゃんのおかげ』が何を意味するのか、ボクには
わかっている。知らぬが仏ってことで、ボクのことを教えるつもりはないけど。
幸い、ボクのことはバレることなく、彼女たちは保健室から出ていった。ボクはそれから
十分な時間を空けて退室した。
それからというもの、ボクは女の子同士でスキンシップをとるのを見るだけで胸が高鳴る
ようになってしまった。現実だけでは飽き足らず、マリみてやストパニなどいわゆる百合もの
にも手を出すようになって、ほどなくして同人誌にまで手をつけることになった。
特に気に入っているのは、ある即売会で手に入れた、眼鏡でロングヘアの女の子が売り子を
やっていたサークルの一冊の本。かつてボクが遭遇したのと(ボクは一切見ていないのだけど)
よく似たシチュエーションの漫画が描かれている。
ようになってしまった。現実だけでは飽き足らず、マリみてやストパニなどいわゆる百合もの
にも手を出すようになって、ほどなくして同人誌にまで手をつけることになった。
特に気に入っているのは、ある即売会で手に入れた、眼鏡でロングヘアの女の子が売り子を
やっていたサークルの一冊の本。かつてボクが遭遇したのと(ボクは一切見ていないのだけど)
よく似たシチュエーションの漫画が描かれている。
-おわり-
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- いい!!最高だよww
ひよりんがww -- みなみちゃん…というよりクーデレ好き (2013-04-24 20:59:51) - ひよりんに見られてたじゃんwww
-- 九重龍太 (2008-03-16 17:17:00) - GJ!おもろい!こーゆーオリキャラ好きだ。 -- 名無しさん (2007-09-18 16:08:36)