かがみは夏カゼをひいて、一人学校を休んでいた。
一度眠ってご飯はちゃんと食べ、病人としての義務をきちんと果たしてやることがなく
なると本を読み、それも飽きてきた頃には学校も終わってつかさが帰ってくる時間だった。
「ただいまー」
予定通りつかさの声。その足音が部屋の手前まできたところでドアが開いた。
「かがみー、お見舞いにきたよー」
「へ? なんであんたがいるのよ?」
こなたはきちんと用件を伝えたのだが、かがみの反応が遅れて間抜けな物言いになって
しまった。
「せっかくお見舞いにきたのにそれはないよ」
「それは……悪かったわよ……」
かがみとしては悪気はなかった。ただ、こなたがお見舞いに来るたびに何かしらのネタ
でからかわれたりするので、思わず警戒してしまっただけだ。
こなたはかがみの勉強机の椅子をベッドのとなりまで移動させて座った。かがみは特に
気にしなかったが、客として良い態度とはいえない。
「今日はかがみんとこのクラスは宿題ないみたいよ。よかったね」
「そっちはあるんでしょ。しっかりしなさいよ」
「まあなんとかするよ。いざってときはみゆきさんがいるから」
「あんたね……」
いつもと同じような会話。
「ところで、キスすると風邪がうつるっていうよね」
「ああ、言うわね。本当かどうかは知らないけど」
「あれってさ、キスをするくらい親しい関係で、近くにずっといるからうつっちゃうだけ
だと思うんだよね」
「よくわからないけど、こなたにしちゃまともな考察ね」
「と、いうわけで」
こなたは椅子から立ち上がると、いきなりかがみにキスをした。
「!?」
それもただのキスではなく、舌を絡ませ唾液を交換するような激しいキス。たっぷり時
間をかけたあと、こなたはかがみを解放した。
「な、何すんのよ!? ……はじめてだったのに……」
前半は大声で、後半は消え入りそうな声で言う。
「実験と証明だよ」
「はぁ?」
「さっきの私の説が正しいかどうかの実験。私の説が正しければこれだけじゃ感染しない
はずだよね。かがみに風邪をもらうのも悪くないけど」
「馬鹿なこと言うな!」
「名残惜しいけど退散させてもらうよ。本当にうつっちゃまずいからね。それじゃ」
部屋を出て、本当に帰ってしまった。
「な、なんなのよ……」
相手の都合もきかずにやりたいことだけをやっていきなり帰られてしまっては、怒りも
ぶつけられない。さっきの感触が消えず、もやもやした気持ちを持て余していた。
「お姉ちゃーん」
「つかさ……」
かがみはなるべく平静を装ってつかさを迎えた。
「こなちゃんが帰るまで、私はお姉ちゃんの部屋に入らないようにって言われたんだよね。
何かあったの?」
「な、なにもあるわけないでしょ、私がこなたなんかと!」
「う、うん……」
かがみの剣幕に、つかさは思わず及び腰になる。
「まったく、なんで私が――もうちょっとムードってものを――じゃなくて! 私は何を
言ってんのよ!」
「お、お姉ちゃん……?」
「あーもう! それもこれも全部こなたが悪い! 明日会ったらただじゃすまさないわ。
……べ、別にこなたに会いたいわけじゃないんだからね! 勘違いしないように!」
「私、何も言ってないよ……」
一度眠ってご飯はちゃんと食べ、病人としての義務をきちんと果たしてやることがなく
なると本を読み、それも飽きてきた頃には学校も終わってつかさが帰ってくる時間だった。
「ただいまー」
予定通りつかさの声。その足音が部屋の手前まできたところでドアが開いた。
「かがみー、お見舞いにきたよー」
「へ? なんであんたがいるのよ?」
こなたはきちんと用件を伝えたのだが、かがみの反応が遅れて間抜けな物言いになって
しまった。
「せっかくお見舞いにきたのにそれはないよ」
「それは……悪かったわよ……」
かがみとしては悪気はなかった。ただ、こなたがお見舞いに来るたびに何かしらのネタ
でからかわれたりするので、思わず警戒してしまっただけだ。
こなたはかがみの勉強机の椅子をベッドのとなりまで移動させて座った。かがみは特に
気にしなかったが、客として良い態度とはいえない。
「今日はかがみんとこのクラスは宿題ないみたいよ。よかったね」
「そっちはあるんでしょ。しっかりしなさいよ」
「まあなんとかするよ。いざってときはみゆきさんがいるから」
「あんたね……」
いつもと同じような会話。
「ところで、キスすると風邪がうつるっていうよね」
「ああ、言うわね。本当かどうかは知らないけど」
「あれってさ、キスをするくらい親しい関係で、近くにずっといるからうつっちゃうだけ
だと思うんだよね」
「よくわからないけど、こなたにしちゃまともな考察ね」
「と、いうわけで」
こなたは椅子から立ち上がると、いきなりかがみにキスをした。
「!?」
それもただのキスではなく、舌を絡ませ唾液を交換するような激しいキス。たっぷり時
間をかけたあと、こなたはかがみを解放した。
「な、何すんのよ!? ……はじめてだったのに……」
前半は大声で、後半は消え入りそうな声で言う。
「実験と証明だよ」
「はぁ?」
「さっきの私の説が正しいかどうかの実験。私の説が正しければこれだけじゃ感染しない
はずだよね。かがみに風邪をもらうのも悪くないけど」
「馬鹿なこと言うな!」
「名残惜しいけど退散させてもらうよ。本当にうつっちゃまずいからね。それじゃ」
部屋を出て、本当に帰ってしまった。
「な、なんなのよ……」
相手の都合もきかずにやりたいことだけをやっていきなり帰られてしまっては、怒りも
ぶつけられない。さっきの感触が消えず、もやもやした気持ちを持て余していた。
「お姉ちゃーん」
「つかさ……」
かがみはなるべく平静を装ってつかさを迎えた。
「こなちゃんが帰るまで、私はお姉ちゃんの部屋に入らないようにって言われたんだよね。
何かあったの?」
「な、なにもあるわけないでしょ、私がこなたなんかと!」
「う、うん……」
かがみの剣幕に、つかさは思わず及び腰になる。
「まったく、なんで私が――もうちょっとムードってものを――じゃなくて! 私は何を
言ってんのよ!」
「お、お姉ちゃん……?」
「あーもう! それもこれも全部こなたが悪い! 明日会ったらただじゃすまさないわ。
……べ、別にこなたに会いたいわけじゃないんだからね! 勘違いしないように!」
「私、何も言ってないよ……」
翌日。
「え、こなた欠席?」
「ええ、風邪だそうで……」
教室に訪ねたかがみに、みゆきは申し訳なさそうに言った。みゆきは悪くないのだが。
「お姉ちゃんの風邪がうつっちゃったのかな……風邪はうつせば治るっていうよね」
「よく言われますね。実際には、時間的に人にうつる頃にはもう治ってるっていうことだ
そうですが」
「そっかぁ。でも昨日こなちゃんがお姉ちゃんと一緒にいたのって五分もなかったよね」
「そんなものかしら……」
昨日のことを思い出してしまい、曖昧に答えた。
「……なんでよりによって、今日休むのよ」
「せっかく、泉さんに調べもののことを教えようと思ったのですが……」
「調べもの?」
「ええ……昨日、キスが風邪の感染に関係するかどうかという話を泉さんとしたんです。
俗説はともかく科学的根拠はないかと思っていろいろ調べてみたら、粘膜が接触するから
空気感染よりも感染力は強いらしいという結論に至ったのですが――かがみさん、どうか
なさいましたか?」
「あ、いや、なんでもないわよ」
「熱があるのでしたら無理はなさらないほうが」
「だ、大丈夫よ。もう完治したから」
「でしたらいいのですが……」
かがみの心境などつゆ知らず、みゆきは心配そうな顔をしていた。
「それじゃあ、ドラマとかでよく言ってるのって本当だったんだ」
「ええ。ただ、風邪の患者とそうでない被験者をキス以外の接触を絶って感染するかどう
かを実験で調べたという話は聞いたことがありませんので、完全に正しいと証明されたわ
けではありません。今後もそんな実験をする人なんか現れないでしょうし……」
「そ、そうよね、そんな実験するヤツいるわけないわよね」
かがみは乾いた笑いは教室のざわめきにかき消された。
「え、こなた欠席?」
「ええ、風邪だそうで……」
教室に訪ねたかがみに、みゆきは申し訳なさそうに言った。みゆきは悪くないのだが。
「お姉ちゃんの風邪がうつっちゃったのかな……風邪はうつせば治るっていうよね」
「よく言われますね。実際には、時間的に人にうつる頃にはもう治ってるっていうことだ
そうですが」
「そっかぁ。でも昨日こなちゃんがお姉ちゃんと一緒にいたのって五分もなかったよね」
「そんなものかしら……」
昨日のことを思い出してしまい、曖昧に答えた。
「……なんでよりによって、今日休むのよ」
「せっかく、泉さんに調べもののことを教えようと思ったのですが……」
「調べもの?」
「ええ……昨日、キスが風邪の感染に関係するかどうかという話を泉さんとしたんです。
俗説はともかく科学的根拠はないかと思っていろいろ調べてみたら、粘膜が接触するから
空気感染よりも感染力は強いらしいという結論に至ったのですが――かがみさん、どうか
なさいましたか?」
「あ、いや、なんでもないわよ」
「熱があるのでしたら無理はなさらないほうが」
「だ、大丈夫よ。もう完治したから」
「でしたらいいのですが……」
かがみの心境などつゆ知らず、みゆきは心配そうな顔をしていた。
「それじゃあ、ドラマとかでよく言ってるのって本当だったんだ」
「ええ。ただ、風邪の患者とそうでない被験者をキス以外の接触を絶って感染するかどう
かを実験で調べたという話は聞いたことがありませんので、完全に正しいと証明されたわ
けではありません。今後もそんな実験をする人なんか現れないでしょうし……」
「そ、そうよね、そんな実験するヤツいるわけないわよね」
かがみは乾いた笑いは教室のざわめきにかき消された。
一方、そのころの泉家。
「以上……証明終了です――げほっ」
こなたは風邪に倒れながら満足げな笑みを浮かべていた。
「以上……証明終了です――げほっ」
こなたは風邪に倒れながら満足げな笑みを浮かべていた。
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- こなたの説が正しいかどうかの実験だから間違っていた事が証明されたねw
じゃあ笑みの正体はかがみとのキス?w -- 名無しさん (2008-04-12 01:52:47)