kairakunoza @ ウィキ

Happy Wedding

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だれでも歓迎! 編集
「はい、柊です」
「あ、もしもしかがみ? こなただけど」
「ああ。どうしたの?」
「明日空いてる?」
「うん。私もつかさも予定は無いけど」
「実はブライダルショーのチケットが何枚か手に入ってさ。良かったらみんなで行ってみようかなって」
「へー、面白そうね」
「でしょ。ウェディングドレスの試着とかも出来るんだって」
「それはつかさが喜びそうだわ」
「んじゃあ決まりで。これからみゆきさんも誘ってみるから。時間とかは後でメールするね」
「オッケー」

 そんなわけで、こなた、かがみ、つかさ、みゆきの四人は、とあるビルで行われるブライダルショーにやってきた。
「うわあ……思ったより凄いイベントだね」
 ビルの大きさと人の多さに、つかさが感嘆の声を上げる。お客さんにはやはりカップルが多いが、若い女性が友達と連れだって来ているのもちらほら見られた。
 今日のブライダルショーでは、ファッションショーを始め、ドレスの試着と写真撮影、仮想結婚式体験、引き出物の展示会、式場・ホテルのお料理試食に至るまで、盛りだくさんの企画が用意されている。
「えーと、まずはウェディングドレスのファッションショーね。あとちょっとで始まるみたい」
「その前に試食コーナーで腹ごしらえしない?」
「あとちょっとで始まるって言ってんでしょうが」
 ちょっぴりそれもいいかなと思いつつ、こなたを窘めるかがみだった。

 ファッションショーで美人のモデルさんと煌びやかなウェディングドレスに目を輝かせ、試食コーナーで豪華な料理に舌鼓を打ち、引き出物展示会場で実用性皆無な品々に苦笑いし……こなた達はブライダルショーを目一杯満喫していった。
 そしていよいよお待ちかね、ウェディングドレスの展示・試着コーナーである。
「うわあ、凄い沢山あるよー!」
 目移りしそうなほど並べられたウェディングドレスを前に、つかさはいつになく興奮していた。
「お姉ちゃんこれこれ! さっきのファッションショーで出てたやつだよ」
「分かったから、そんなにはしゃがないでよ」
「あの、これ試着してもいいですか?」
 つかさは近くにいたスタッフのお姉さんに尋ねる。お姉さんは丁寧に「どうぞこちらへ」と更衣室へ案内してくれた。
「それじゃ、私達もせっかくだから試着してみようか」
 こなたに倣って、かがみとみゆきも並べられたドレスを吟味していく。
「こんなに沢山あると、どれがいいのか迷ってしまいますね」
「みゆきさんはやっぱりこう、前の方が大胆に開いたのがいいでしょ。自分の持ち味を活かせるドレスにしなきゃ」
「え、ええっ?」
「みゆき。こなたの言うことは気にしないで、自分が良いと思ったのにすればいいから」
「そう言うかがみはどれにするのさ?」
私は……これが良いかな」
 そう言ってかがみが選んだのは、ややクラシカルな趣きの正統派ウェディングドレスだった。
「へー、意外に乙女チックな」
「な、何よ!? 別にいいじゃない」
「ううん、良いと思うよ。ねえ、みゆきさん?」
「はい。きっとかがみさんにお似合いだと思います」
「そう? それじゃあ、これ試着してみよっと」
 こなたとみゆきもそれぞれドレスを選び、更衣室へ向かう。

 着替えが終わり、四人の少女は揃って麗しい花嫁姿となった。
 つかさはふんだんに使われたレースとフリルが特徴的なミニのドレス。こなたはピンクのリボンを多数あしらった個性的なデザイン。みゆきとかがみはこれぞウェディングといった感のある純白の正統派ドレス。
 恐らくこなたの父そうじろう、そしてかがみ・つかさの父、みゆきの父の三人がこの場にいたら、いずれ訪れるであろうその日を思って滂沱したに違いない。
「うわあ……みんな凄く似合ってるね」
「つかささんも、とてもお似合いですよ」
「えへへ、ありがとう」
 やはりウェディングドレスは女の子の憧れ。こうしていると気分も自然と浮き立ってくる。
「お客様、記念写真はいかがでしょうか?」
 スタッフのお姉さんがそう勧めてくる。もちろん断る理由は無かった。
「ねえねえ、かがみ」
 みんなが思い思いのドレスで写真を撮っている中、こなたがかがみに話しかけた。
「一つお願いがあるんだけど」
「断る」
「まだ何も言ってないじゃん」
「この状況であんたのお願いなんか、ろくでもないことに決まってるじゃないの」
「別に大したことじゃないよ。私と二人で写真を撮って欲しいんだけど」
「何で私がこなたと一緒に――」
「この通り。一生のお願いだから」
 こなたは両手を合わせて頭を下げる。本気でお願いの姿勢だった。
「う……仕方ないわね。そこまで言うなら――」
「よしっ! それじゃあ、はいこれ」
 コンマ一秒の間も置かず、白のタキシードを差し出すこなた。
「断る」
「何で!? こちとら一生のお願い使ったんだよ」
「何で私がタキシードなのよ!?」
「似合いそうだから!」
「理由になってねーだろ!」
 押し問答が続くこと十数分。結局押し切られたかがみは、タキシードを着るはめになった。

 かがみが髪をまとめて細身のタキシードを着ると、似合っていた。滅茶苦茶似合っていた。
「かがみ……素敵だよ」
 瞳を少女漫画みたいにキラキラさせて、こなたが呟く。
「じろじろ見るな!」
 恥ずかしそうに顔を赤くして、かがみが吼える。
「でもお姉ちゃん、本当に格好良いよ」
「ええ。ウェディングドレスも綺麗でしたけど、そのタキシードも凛々しくて素敵です」
「そ、そうかな……?」
 二人から褒められてまんざらでもないのか、かがみは照れくさそうに頬を掻く。
「よしっ。それじゃあかがみ、写真撮ろう」
 こなたが撮影を頼もうとしたその時、
「お客様。すぐ隣のルームで仮想の結婚式を挙げられますので、撮影もそちらで行ってはいかがでしょうか」
 気を遣ったスタッフのお姉さん、(かがみにとっての)爆弾発言。
「お、ナイスアイデア。それじゃあそっちに行こう、かがみん」
「うああ、余計なことをーっ!」
「あら。でしたら私が神父役を務めさせて貰いますね」
「ちょっ……みゆきまで悪ノリしないでよ!」
「お姉ちゃん、頑張って!」
「何をだよ!?」
 引きずられるように仮想結婚式場へ連れて行かれるタキシードかがみ。その様子はまるで荷馬車に乗せられた仔牛のようだった。

「こなた。あなたは、その健やかなる時も、病める時も――」
 みゆき扮する神父が、誓いの言葉を厳かに述べていく。幸せそうな顔のこなたと、恥ずかしそうにやや顔を俯かせたかがみがそれを聞く。カメラのフラッシュ音が時折響く。
「夫を愛し、夫を敬い、生涯この者を伴侶として生きていくことを誓いますか?」
「誓います」
 こなたはハッキリと答えた。
「かがみ。あなたは、その健やかなる時も、病める時も、妻を愛し、妻を敬い、生涯この者を伴侶として生きていくことを誓いますか?」
「……ち――」
(……こ、これはただの仮想結婚式なんだから……ごっこみたいなもんなんだから……!)
「誓います……」
 ほとんど蚊の鳴くような声で、かがみが答えた。
 みゆきはニッコリと微笑み、
「では、誓いの口付けを」
 平然とそれを要求した。
「なっ……!?」
 何でそんなことまで、と怒鳴りかけたかがみだが、式としてはその流れで間違っていない。
(ま、まさか本当に……!?)
「かがみさん、フリだけで結構ですので」
 みゆきが小声で伝えてくる。かがみは「当たり前だっつーの!」と叫びたいのを何とか押さえ込んだ。
 深呼吸を何度も繰り返してから、かがみはようやく行動を起こした。
 こなたが被っていたシルクのヴェールを、かがみの手がゆっくりと持ち上げる。
 こなたは静かに、かがみを待っている。普段の言動からは想像も出来ないほど、愛らしく楚々とした姿で。
(……え……?)
 これを錯覚というのかどうか。今この場、この雰囲気の中で、可憐なウェディングドレスに身を包んだこなたを、本気で愛しいと思っているかがみが確かに存在した。
 かがみがこなたの肩に手をかけ、ゆっくり顔を近付ける。
 少しずつ、二人の唇がその間を狭めていく。
 吐息がかかるほどの距離まで近づき、あと僅か――
 その瞬間。パシャッとフラッシュが焚かれる音で、かがみは我に返った。
「はい、お疲れ様でした。とても良い式でしたね」
 スタッフの中の偉い人らしきおじさんが声を掛ける。仮想結婚式は無事終了したらしい。
「いやあ、それにしても女の子同士の結婚式というのは初めてでしたよ」
 人当たりの良さそうなおじさんは、朗らかな笑い声を上げる。式の最中はテンパっていて気付かなかったが、スタッフや一般のお客さんなど、いつの間にかかなりの数のギャラリーが、かがみとこなたを見つめていた。
 穴があったら入りたい――かがみはまさにそんな心境だった。
「お疲れかがみー。これは良い思い出になるよ」
 ホクホク顔のこなたが話しかけてくるが、かがみは答えなかった。
「かがみ? どしたの?」
「うるさい。人の気も知らないで……」
 素っ気なく言い放ち、そっぽを向く。
「……あ、そっか」
 ポンと手を打ったこなたは、かがみの手を引いて小走りに駆け出した。
「ちょ、ちょっとどこ行くのよ?」
「更衣室だよ。やっぱりかがみも花嫁役やりたいんだよね。私もタキシード着てみたいから丁度良かった」
「誰がそんなこと言っとるかーっ!!」
 真っ赤な顔で怒鳴るかがみと、あくまで楽しそうなこなたが、バージンロードを駆けていく。その姿はまさしく、幸せな一組のカップルだった。

(おまけ)
 ブライダルショーから数日後。こなたが柊家を訪れてきた。
「この前の写真が送られて来たよー」
「わあっ、見せて見せて!」
 こなたから写真の束を受け取ったつかさは、楽しそうに一枚一枚を眺めていく。隣で一緒に眺めながら、かがみは落ち着かない様子だった。
「ああ、結婚式の写真はこっちだよ」
 こなたはそう言って、胸ポケットからタキシードかがみとウェディングこなたの写真を数枚差し出した。
「べ、別にこれが見たいなんて言ってないわよ! ていうか、何でこれだけ分けてんだ」
「後で写真立てに入れて飾ろうと」
「するな! ……まさかこの写真、人に見せたりしてないでしょうね」
「んー、見せたりっていうか……」
 こなたはごそごそと鞄を探り、
「凄く良い写真だったからさ――」
 その見本を取り出した。
「真・らき☆すた萌えドリルDXパックのパッケージにしてみました☆」ジャーン!
「ぎゃああああああああああ!!?」
 かがみ絶叫。
「やめろおおおぉぉ! それだけはホントやめてええぇぇっ!!」
「いやいや大丈夫だって。こういうのが意外と受けるんだって」
「そう言う問題じゃあ――」
「それと誓いの口付けの時の写真だけど」
「口付けのフリだろ! ホントにはしてないだろ!!」
「こっちはTシャツにプリントしてみました♪」ジャジャーン!
「あんたそれ着て外歩いたら私ゃもう海外に移住するぞ!!」
「あ、それいいかもね。アメリカとかオランダとかカナダとか、一部の国では認められてるから」
「何がだよ何を認めるんだよ私は何も認めねぇーっ!!」
 立て続けの全力突っ込みに、肩で息をするかがみ。
「ぜえ、はあ……そもそも、あんな結婚式、ただの遊びみたいなもんなんだから――」
「でもお姉ちゃん、誓いの口付けの時、かなり本気っぽい顔してたよね。あの時、ホントにキスするんじゃないかと思っちゃった」
「んなっ……そ、それは……」
 つかさの何気ない一言で、かがみ硬直。
「かがみ。その気になったら言ってね。私の方はいつでもOKだから」
「な、な……なるかーっ!!」


おわり


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  • これは神SS
    是非とも漫画で見たい -- FOAF (2014-02-08 10:04:32)
  • 百合はダブルウェディングドレスがデフォでしょ。
    と言いたいが、白タキシードのかがみ(とこなた)もイイかも~。 -- 名無しさん (2011-04-11 00:59:18)

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