~~拾死地の巻 「ダンス・ウィズ・マッドドッグ中編」~~
物事には流れというものがある。人の流れ、物の流れ。運もそうだ。
誰かが不幸に直面したとき、反対に誰かが幸運を掴むときがある。化学ニンジャのトライ・マグナムにとっては今がその時だ。
誰かが不幸に直面したとき、反対に誰かが幸運を掴むときがある。化学ニンジャのトライ・マグナムにとっては今がその時だ。
昨今、化学ニンジャ隊構成員たちの脱落が相次いでいる。
組織が活動規模を拡げ方々に忍を派遣するようになった以上、損害が増すのはやむを得ない。
だが化学ニンジャ隊の作戦行動は、明らかに失敗の黒星が増加傾向にあった。
それというのも例の“黒装束の忍”の存在が大きい。
どういう忍術か、奴は化学ニンジャの行く先々に現れては、無慈悲にその生命と陰謀を摘み取っていく。
組織が活動規模を拡げ方々に忍を派遣するようになった以上、損害が増すのはやむを得ない。
だが化学ニンジャ隊の作戦行動は、明らかに失敗の黒星が増加傾向にあった。
それというのも例の“黒装束の忍”の存在が大きい。
どういう忍術か、奴は化学ニンジャの行く先々に現れては、無慈悲にその生命と陰謀を摘み取っていく。
先日の日本防衛軍襲撃作戦は大成功だったが、あのときも奴のせいで画竜点睛くこととなった。
最後の最後での乱入、妨害。
あげく暫定四天王のBUZZ=僧、四天王のダブル・トマホーク、更にシルバー四天王デッド・イーグルが死亡した。
最後の最後での乱入、妨害。
あげく暫定四天王のBUZZ=僧、四天王のダブル・トマホーク、更にシルバー四天王デッド・イーグルが死亡した。
――高く厚い壁と思っていた幹部の列に、いきなり三つもの穴が空いたのだ。
(勿怪の幸い! 四天王の奴らと気は合わねえが、死んだ奴には花を手向けてやるよ)
すでに実績を挙げているトライ・マグナムなら、デッド・イーグルの後釜としてシルバーに四天王に昇格する可能性が高い。
“シルバー”という称号は、いささか気に入らない。
そもそも四天王が20人もいる現状も釈然としない。だがこの際は目をつぶろう。
トライ・マグナムは幹部の末席に加わる機を逃さぬため、今回の仕事も着実に完遂する意気込みで臨んでいた。
“シルバー”という称号は、いささか気に入らない。
そもそも四天王が20人もいる現状も釈然としない。だがこの際は目をつぶろう。
トライ・マグナムは幹部の末席に加わる機を逃さぬため、今回の仕事も着実に完遂する意気込みで臨んでいた。
この秘密の研究施設で開発されたのは、サイボーグや義体に使われる人工筋肉、その最新版だった。
高い汎用性と法定外のパワーを有しており、既存の義体群、多様な規格にそのまま適用できる互換性まで持つ。
大量生産されればサイボーグ、義体の闇市場に大きな流れを作ることが出来るだろう。
そのテストパーツがこれから出荷されるが、トライ・マグナムには護衛任務達成の暁に、テストパーツ実装を約束されている。
そして同時に四天王の地位に手をかければ……トライ・マグナムは未来に光明が差すのを実感していた。
股間のマグナムが疼く。しばらくご無沙汰だったが、この仕事の後には少しぐらい休暇もとれるだろう。
久しぶりに忍ぶのもやめて女を漁りたい気分だ。
高い汎用性と法定外のパワーを有しており、既存の義体群、多様な規格にそのまま適用できる互換性まで持つ。
大量生産されればサイボーグ、義体の闇市場に大きな流れを作ることが出来るだろう。
そのテストパーツがこれから出荷されるが、トライ・マグナムには護衛任務達成の暁に、テストパーツ実装を約束されている。
そして同時に四天王の地位に手をかければ……トライ・マグナムは未来に光明が差すのを実感していた。
股間のマグナムが疼く。しばらくご無沙汰だったが、この仕事の後には少しぐらい休暇もとれるだろう。
久しぶりに忍ぶのもやめて女を漁りたい気分だ。
『ビーッ! ビーッ!』
突如、研究所内に警戒音が響く。異常事態の発生を報せる警報だ。
警備担当がすぐ外に控える忍に連絡をとるが、誰も応答がない。すでに倒されたようだった。
警備担当がすぐ外に控える忍に連絡をとるが、誰も応答がない。すでに倒されたようだった。
(外の忍がやられた? 襲撃か、すぐ内部に侵入して来るな)
いったいどこの組織の仕業か。――こういうとき、化学ニンジャたちの脳裏を過るのは、やはりあの男である。
化学ニンジャ隊の目下の敵となっている“黒装束の忍”がそれだ。
この重要なミッションを妨害してくることも想定の内にあったが……。
化学ニンジャ隊の目下の敵となっている“黒装束の忍”がそれだ。
この重要なミッションを妨害してくることも想定の内にあったが……。
「警備の忍は直ちに迎撃用意だ! 積み荷を運び出す用意は続けろ、データと機材の処分いつでもできるように!」
トライ・マグナムは各部署に指示を出し、自身も率先して侵入者の迎撃に向かう。
黒装束の男よ、来るならば来い。その首を挙げて四天王の筆頭に躍り出てやる。
己が野心に燃料を投下。トライ・マグナムは両手に愛銃の45口径オートマグナムを構えた。
黒装束の男よ、来るならば来い。その首を挙げて四天王の筆頭に躍り出てやる。
己が野心に燃料を投下。トライ・マグナムは両手に愛銃の45口径オートマグナムを構えた。
ダーンッ!!!!
「ギャアーッ!」
「ギャアーッ!」
銃声とともに、先行した忍の断末魔が聞こえた。すでに接敵したか。
トライ・マグナムも急ぎ向かう。
トライ・マグナムも急ぎ向かう。
ドォンッ!!!!
「「「ギャアーッ!」」」
「「「ギャアーッ!」」」
今度は爆発音とともに断末魔が複数。すでに守りが崩されているようだ。敵は何人いるのか?
「「「ギャアーッ!」」」
トライ・マグナムの視界に血まみれの警備兵が三人、次々と転がってきた。
一人は頭を砕かれ、他のものは銃で撃ち抜かれている。
一人は頭を砕かれ、他のものは銃で撃ち抜かれている。
「これは貴様の仕業か?」
立ち込める煙の先にその男は立っていた。大柄なシルエットはところどころ厳つくて、鎧を着込んでいるように見える。
ただのエージェントではなさそうだ。奴もサイボーグ? 強化外骨格?
疑問はあったがトライ・マグナムも歴戦の勇者である。考えつつも身体が先に動き、銃口が敵に向けられた。
ただのエージェントではなさそうだ。奴もサイボーグ? 強化外骨格?
疑問はあったがトライ・マグナムも歴戦の勇者である。考えつつも身体が先に動き、銃口が敵に向けられた。
「ファイアッ!」
ドウッ! ドウッ!
凶悪な454カスール弾が放たれ標的を捉えた! ――だがその時!
凶悪な454カスール弾が放たれ標的を捉えた! ――だがその時!
チュイン! ガキィン!
弾が弾かれたのだ!
弾が弾かれたのだ!
(バカな、マグナム弾だぞ!? 戦車の装甲でも着込んでるのかよ!)
その疑問はすぐに霧散することとなる。
侵入者は機敏な足運びで左右に動き撹乱、間髪入れずトライ・マグナムに迫り、重い前蹴りで吹き飛ばした!
侵入者は機敏な足運びで左右に動き撹乱、間髪入れずトライ・マグナムに迫り、重い前蹴りで吹き飛ばした!
「グアーッ!?」
トライ・マグナムはゴム毬のように跳ねて、椅子や机を押しのけ、重いコンテナに直撃してようやく止まることができた。
その間、意識が途絶えていた。呼吸も途切れ、体中が酸素を求め肺が必死に空気を吸い込む。
それでも両腕だけは銃を握りしめ、再びオートマグナムを前方に向けた。
その間、意識が途絶えていた。呼吸も途切れ、体中が酸素を求め肺が必死に空気を吸い込む。
それでも両腕だけは銃を握りしめ、再びオートマグナムを前方に向けた。
ガァーーンッ!
今度は銃撃! トライ・マグナムの右手が銃ごとはじけ飛んだ!
今度は銃撃! トライ・マグナムの右手が銃ごとはじけ飛んだ!
「グアーッ!?」
ガァーーンッ!
再度銃撃! トライ・マグナムの左手が銃ごとはじけ飛んだ!
再度銃撃! トライ・マグナムの左手が銃ごとはじけ飛んだ!
「グアーッ!?」
トライ・マグナムの両手は敵の銃撃で指が落ち、銃など到底握れない損傷を負った。
それと同時に反撃の意志も挫け、その場に力なくへたり込んだ。
それと同時に反撃の意志も挫け、その場に力なくへたり込んだ。
侵入者の足音が近づいてくる。
気づけば彼の周囲からも別の銃撃音が聞こえ、研究所内の各所で戦いが起きていることがわかる。
気づけば彼の周囲からも別の銃撃音が聞こえ、研究所内の各所で戦いが起きていることがわかる。
(敵は少なくない戦力と組織力を持った集団……)
トライ・マグナムは相手の姿を確かめようと顔を上げた。
そこに立っていたのは、壮年の無精髭を生やした男だった。身にまとう服は見覚えがある。たしかバチカンの聖堂騎士団ではなかったか……。
それにしても、先刻煙の中に見たいかついシルエットとは似ても似つかない。本当に同じ人物か?
疑問を抱くトライ・マグナムに、男は言葉を投げかける。
そこに立っていたのは、壮年の無精髭を生やした男だった。身にまとう服は見覚えがある。たしかバチカンの聖堂騎士団ではなかったか……。
それにしても、先刻煙の中に見たいかついシルエットとは似ても似つかない。本当に同じ人物か?
疑問を抱くトライ・マグナムに、男は言葉を投げかける。
「その顔、見覚えがある。化学ニンジャのリストにあった、トライ・マグナムだな?」
「……そういうテメエは聖堂騎士団だな?」
「……そういうテメエは聖堂騎士団だな?」
ボゴォ! 突然トライ・マグナムは顔面を殴打された。男の左手には無骨なメイスが握られている!
「ゲガッ……!」
「すでに尋問は始まっている。聞かれたことに答えろ」
「ヘッ……、誰が簡単に口を割るかよ」
「化学ニンジャの特性については知っている。痛覚を鈍らせてあるから、拷問も効果が低いのだろう」
「すでに尋問は始まっている。聞かれたことに答えろ」
「ヘッ……、誰が簡単に口を割るかよ」
「化学ニンジャの特性については知っている。痛覚を鈍らせてあるから、拷問も効果が低いのだろう」
男は衣服のポケットから注射器のようなものを取り出すと、トライ・マグナムの身体を押さえつけた。
「だが反面、苦痛に耐える訓練を積んでいない。
この薬は感覚を鋭敏化する作用があるから、そのうえで尋問するとしよう」
「なっ……おい待て、そんな……!」
この薬は感覚を鋭敏化する作用があるから、そのうえで尋問するとしよう」
「なっ……おい待て、そんな……!」
もがくトライ・マグナムだが男の力は強く、サイボーグ化してるトライ・マグナムが逃れられない。
そうしているうちに注射を打たれ、次第に鈍っていた痛覚が蘇ってくる。まず最初に、男に負わされた傷が激しく痛みだした。
そうしているうちに注射を打たれ、次第に鈍っていた痛覚が蘇ってくる。まず最初に、男に負わされた傷が激しく痛みだした。
「アガガガガ!?」
「お前に問う。化学ニンジャ隊の本拠地はどこにある?」
「な……なんのことだかわからねえな……」
「お前に問う。化学ニンジャ隊の本拠地はどこにある?」
「な……なんのことだかわからねえな……」
ボギャア!
男のメイスがトライ・マグナムの顔面を打ち据える!
男のメイスがトライ・マグナムの顔面を打ち据える!
「アバーッ!?」
「もう一度訊く。素直に質問に答えろ。化学ニンジャ隊の本拠地はどこにある?」
「ぐぐ……ぎぎ……知るかよ」
「もう一度訊く。素直に質問に答えろ。化学ニンジャ隊の本拠地はどこにある?」
「ぐぐ……ぎぎ……知るかよ」
ボギャア!
男のメイスがトライ・マグナムの顔面を打ち据える!
男のメイスがトライ・マグナムの顔面を打ち据える!
「アバーッ!?」
「もう一度訊く。素直に質問に答えろ。化学ニンジャ隊の本拠地はどこにある?」
「へっ……、オレ如き下っ端には知らされてねえんだよ」
「もう一度訊く。素直に質問に答えろ。化学ニンジャ隊の本拠地はどこにある?」
「へっ……、オレ如き下っ端には知らされてねえんだよ」
ボギャア!
「アバーッ!?」
「お前のことはデータで知っている。中忍の“トライ・マグナム”だ。
お前ほどの忍が何も知らないはずはない」
「フ……へへ……顔がかゆいんだ、もっとかいてくれねえか?」
「お前のことはデータで知っている。中忍の“トライ・マグナム”だ。
お前ほどの忍が何も知らないはずはない」
「フ……へへ……顔がかゆいんだ、もっとかいてくれねえか?」
ボギャア!
「アバーッ!?」
ボギャア!
「アバーッ!?」
過酷な拷問がしばし続いた。その間に施設内の銃声は止み、男と同じ聖堂騎士団の制服を着た侵入者の姿が増え始めた。
彼らは生存者を見つけると即座にとどめをさした。それと平行して、研究機材は破壊し、書類やデータ類を収集していく。
彼らは生存者を見つけると即座にとどめをさした。それと平行して、研究機材は破壊し、書類やデータ類を収集していく。
ボギャア!
もう何度目になるか。男は懲りずにメイスを打ち込む。
そしてトライ・マグナムの方は意識を保つのがやっとのありさま。全身ボロボロの血塗れである。
もう何度目になるか。男は懲りずにメイスを打ち込む。
そしてトライ・マグナムの方は意識を保つのがやっとのありさま。全身ボロボロの血塗れである。
「喋る気になったか?」
「………………か、がくニンジャの基地は……地下……」
「ほう」
「入り口は多い……。地下鉄とつながってるところもある……。
だが、迷路になってるうえに定期的に入れ替わるから、けして辿り着くことは出来ない……」
「入れ替わる……か。その法則はあるのか? いったい誰が決めている?」
「そこまではわからねえ……上の奴だけが知ってる。
俺が任務で通ったルートもすでに捨てられてる頃だ。戻るときは……基地の方から帰還ルートを指示してくるようになってる」
「………………か、がくニンジャの基地は……地下……」
「ほう」
「入り口は多い……。地下鉄とつながってるところもある……。
だが、迷路になってるうえに定期的に入れ替わるから、けして辿り着くことは出来ない……」
「入れ替わる……か。その法則はあるのか? いったい誰が決めている?」
「そこまではわからねえ……上の奴だけが知ってる。
俺が任務で通ったルートもすでに捨てられてる頃だ。戻るときは……基地の方から帰還ルートを指示してくるようになってる」
その通り。
化学ニンジャ隊の本拠地『機岩城』は地下深くに作られた拠点だが、その実態を掴んでいるのは機械将軍ぐらいのものだろう。
四天王たちですら正確な座標を知りうるものはいないのだ。
化学ニンジャ隊の本拠地『機岩城』は地下深くに作られた拠点だが、その実態を掴んでいるのは機械将軍ぐらいのものだろう。
四天王たちですら正確な座標を知りうるものはいないのだ。
「さ、さあ喋ったぜ」
「ああ、よく喋ったな」
「ああ、よく喋ったな」
男は今一度メイスを握り直した。
「だがずっと答えずにいたのに、急に態度を変えたな。
いま言った内容、はたして信用できるかどうか」
「それはテメエが殴るから……!」
「お前の言葉が信に足るかどうか、確かめることにしよう」
「待て! 俺は嘘なんか言ブゲラッ!?」
いま言った内容、はたして信用できるかどうか」
「それはテメエが殴るから……!」
「お前の言葉が信に足るかどうか、確かめることにしよう」
「待て! 俺は嘘なんか言ブゲラッ!?」
グシャ!
再びメイスがトライ・マグナムの顔を打ちのめす!
再びメイスがトライ・マグナムの顔を打ちのめす!
「や、やべてくえー!!!!」
◆◆◆◆◆
聖堂騎士とトライ・マグナムのやり取りの一部始終を、楔は物陰から見ていた。
研究所の破壊のために潜入した楔だったが、よもやこんな所で聖堂騎士団に先回りされるとは、予想のしようがなかったことだが。
研究所の破壊のために潜入した楔だったが、よもやこんな所で聖堂騎士団に先回りされるとは、予想のしようがなかったことだが。
(些少だが情報は聞けた)
楔も化学ニンジャを見つければ、手当たり次第に拷問にかけて情報を聞き出したいところだ。
しかし、彼は単独で行動することが多いため、敵の忍を捕らえておく時と場所が限られる。
よって相手に逃げられる前に殺してしまうことが多かった。
そのため、彼ら聖堂騎士団が敵を制圧し、情報まで聞き出してくれたことには助かるところがある。
しかし、彼は単独で行動することが多いため、敵の忍を捕らえておく時と場所が限られる。
よって相手に逃げられる前に殺してしまうことが多かった。
そのため、彼ら聖堂騎士団が敵を制圧し、情報まで聞き出してくれたことには助かるところがある。
(研究資料なども欲しかったが、それは譲ろう)
欲を言えば、もう少しトライ・マグナムを絞って情報を吐かせて欲しい。
楔はそのまま名前も知らない聖堂騎士の動向を見守った。
楔はそのまま名前も知らない聖堂騎士の動向を見守った。
「そこのネズミ、動くな」
突如、男の鋭い声が飛んできた。
周囲の温度が急速に低下したような緊張感。場を一気に凍りつかせる声音。
楔は息を潜めて気配を殺す。それでも空気が張り詰めるのを止められない。
周囲の温度が急速に低下したような緊張感。場を一気に凍りつかせる声音。
楔は息を潜めて気配を殺す。それでも空気が張り詰めるのを止められない。
ドウッ! ガァーン!
男が発砲! 弾丸は身を隠す楔の直ぐ側に着弾した。
――気づかれている。素早く切り替えた楔は陰から身を乗り出し、迎撃の構えを取った。
男は、銃を構えるが、すぐに発泡することはしない。
――気づかれている。素早く切り替えた楔は陰から身を乗り出し、迎撃の構えを取った。
男は、銃を構えるが、すぐに発泡することはしない。
「お前も化学ニンジャか?」
「否」
「だが忍には違いあるまい。何者だ?」
「答える気はないが、敵対するつもりもない」
「否」
「だが忍には違いあるまい。何者だ?」
「答える気はないが、敵対するつもりもない」
楔が答え直後、銃弾が飛んだ。
それを素早い反射で避けた楔は、一度柱に身体を隠し、時間差で姿を見せると、五枚の手裏剣を立て続けに投擲した。
それを素早い反射で避けた楔は、一度柱に身体を隠し、時間差で姿を見せると、五枚の手裏剣を立て続けに投擲した。
対する男の反応もさるもの。投じられた手裏剣のうち三枚は飛んで躱し、避けきれない二枚はメイスで叩き落とす!
楔は己の自惚れ自覚した。彼は聖堂騎士団と対立することを避けるため、この男に深手を負わせる気がなかった。
それ故に投じた手裏剣も切れ味を欠くものとなっていたのだ。
だが相手は相当の手練のようである。手こずれば他の聖堂騎士まで駆けつけ包囲されることは必至。
それ故に投じた手裏剣も切れ味を欠くものとなっていたのだ。
だが相手は相当の手練のようである。手こずれば他の聖堂騎士まで駆けつけ包囲されることは必至。
方針を転換する。楔は隠れるのをやめると、鋭角的な走りで男に迫り、拳を握った。
「向かってくるのか!?」
その動きを見て男は、再び銃を楔に向ける。
ここまでの発砲は、楔の正体を吐かせるために急所を狙わずに来た。
だが楔の決断的動きに危険を感じると、今度は容赦なく心臓に狙いを付け、引き金を引く!
ここまでの発砲は、楔の正体を吐かせるために急所を狙わずに来た。
だが楔の決断的動きに危険を感じると、今度は容赦なく心臓に狙いを付け、引き金を引く!
カチィン!
――しかしっ、楔の手裏剣が飛んで銃口を逸らした。
銃撃はあさっての方向に向かい、肉薄した楔の拳が二発、三発と男の胴体に突き刺さる!
――しかしっ、楔の手裏剣が飛んで銃口を逸らした。
銃撃はあさっての方向に向かい、肉薄した楔の拳が二発、三発と男の胴体に突き刺さる!
「グボッ!」
男は数歩後退。それでも銃とメイスを構え直すが……その手に銃は握られていなかった。
突然のことに困惑した男だが、眼前の楔の手に銃が握られているのを見て得心した。
あの僅かな間、後退する間際に奪われたのだ。
突然のことに困惑した男だが、眼前の楔の手に銃が握られているのを見て得心した。
あの僅かな間、後退する間際に奪われたのだ。
「フンッ!」
楔が気合を込めると男の銃は折れ曲がり、部屋の隅に捨てられた。
軽く瞠目しつつ、男は顔に鋭い剣幕を広げた。
軽く瞠目しつつ、男は顔に鋭い剣幕を広げた。
「その力……やはりお前も呪われし改造者か。素のままでは敵わないな」
「改造者? 生憎とお前が思っているような力ではない」
「改造者? 生憎とお前が思っているような力ではない」
その力、と言われたが、楔としては鍛錬の成果だとしか言えない。
だがそんなことはお構いなしに、男は言葉を継ぐ。
だがそんなことはお構いなしに、男は言葉を継ぐ。
「我らの役目は、呪われしものたちを一人残らず地上から殲滅すること」
ス――と懐から注射器のようなものを取り出す聖堂騎士。
その針を首に刺し、中の薬物を注入する。
その針を首に刺し、中の薬物を注入する。
「クッ……ハァァァァ……」
「ドーピングか……?」
「ドーピングか……?」
嫌な予感がした。
楔はケリを付けるために踏み出そうとするが、そこで男の様子に変化が現れる!
楔はケリを付けるために踏み出そうとするが、そこで男の様子に変化が現れる!
“ 人 為 変 態 !! ”
見れば男の体が、内側からこみ上げる“何か”によって膨張しているではないか!
その“何か”はやがて外に溢れ、男の全身を包むように展開していった。
その“何か”はやがて外に溢れ、男の全身を包むように展開していった。
「貴様自身も改造者だったというわけか……」
楔の目の前で男は“変身”した。
それは甲殻。男はその身より生じた甲殻を身にまとい、人外の怪物へと変貌をとげたのだ。
それは甲殻。男はその身より生じた甲殻を身にまとい、人外の怪物へと変貌をとげたのだ。
「ヒ、ヒイイィィィィ!?」
部屋の隅でうずくまっていたトライ・マグナムが悲鳴を上げる。楔もその存在を忘れていたほど男の変化は尋常でなかった。
「さあ、呪われしもの同士戦おうか。その生命、神に返しなさい」
聖堂騎士団 ロベルト・ヴィスコンティ バチカン市国
人為変態手術 昆虫型
ベース:ニビイロクワガタ
人為変態手術 昆虫型
ベース:ニビイロクワガタ