影狼隊徒然記【隊長の優雅な休暇】その1
~ 夜間 アムステラ基地・アフリカ大陸南部支部上空 ~
満天の星空の元。闇に紛れる様な深緑色の操兵が単機、夜間飛行をしていた。
基地に近付いた時、その操兵のパイロットは砕けた口調で基地へと通信を入れる。
基地に近付いた時、その操兵のパイロットは砕けた口調で基地へと通信を入れる。
「・・・あぁ~、夜分に済まねーけどな。こちら影狼隊所属のバドス。着陸許可を申請するぜぇ~」
「こちらジョーゲン補佐官。当基地への着陸を許可します」
「こちらジョーゲン補佐官。当基地への着陸を許可します」
~ アムステラ基地・アフリカ大陸南部支部 基地内執務室 ~
「私は『鷲鼻のバトゥロ』。現在、司令官代行を務めている。貴殿の来訪目的を伺っても宜しいかね?」
来客用のソファーにだらしなく寄り掛かっているバドスに静かに問い掛けた声の主は、全身に『青』を纏った静謐なる男。
車椅子に腰掛けた姿とはいえ、その風貌からは弱々しさを一切感じられず、むしろ重厚な威厳を醸し出して居る。
車椅子に腰掛けた姿とはいえ、その風貌からは弱々しさを一切感じられず、むしろ重厚な威厳を醸し出して居る。
両拳を顎の下で組んだバトゥロの車椅子が、動力や付き人も無しに自分の前に来たのを見て、バドスは一瞬、怪訝な顔をする。
しかしすぐにニヤリと笑みを浮かべ、軽薄な口調でバトゥロの問いに答える。
しかしすぐにニヤリと笑みを浮かべ、軽薄な口調でバトゥロの問いに答える。
「あぁ、実は用件が2つあるんだわ。まっ、1つは私用っちゃ私用なンだけどなぁ」
「まずは赤スーツ大佐も関わる用件から済ませっちまおうか。悪ぃがボギーのオッサンと一緒にシミュレーター室に集合してくんねぇ?」
「まずは赤スーツ大佐も関わる用件から済ませっちまおうか。悪ぃがボギーのオッサンと一緒にシミュレーター室に集合してくんねぇ?」
今度はバトゥロが怪訝な顔をする番であった。しかしあれこれ尋ねるよりも見た方が早いと判断して、バドスの言葉に従う。
~ シミュレーター室 ~
無精ヒゲによれよれ軍服姿のバドスと、車椅子に座った青い顎鬚に青い服のバトゥロ。そして室外から聞こえる3人目(?)の足音。
軽快な足音と共にやって来たのは、赤い軍服姿の”レッド・スーツ・ボギー”ことボギヂオ・クラケット大佐である。
軽快な足音と共にやって来たのは、赤い軍服姿の”レッド・スーツ・ボギー”ことボギヂオ・クラケット大佐である。
「ハァ~シュポシュポ! こんな夜更けに何だい? バトゥロ君! ・・・えっ? 呼んだのはそこの小汚い・・・誰?」
「あぁ。俺ぁ影狼隊のバドスってモンですわ。迷(…ゲホンッ!)名将・ボギヂオ大佐のお噂はかねがね聞いてますぜぇ~」
「ハァ~ッ! 私の勇名が知れ渡ってるってのは、誰から聞いても嬉しいよねぇ~。・・・んで? 君、何やってんの?」
「あぁ。俺ぁ影狼隊のバドスってモンですわ。迷(…ゲホンッ!)名将・ボギヂオ大佐のお噂はかねがね聞いてますぜぇ~」
「ハァ~ッ! 私の勇名が知れ渡ってるってのは、誰から聞いても嬉しいよねぇ~。・・・んで? 君、何やってんの?」
自己陶酔気味なボギヂオの科白を半分聞きしつつ、シミュレーターの設定を調整してたバドスは、2人(?)に向き直って説明する。
「お宅らが現在進行中の『ギガント破壊指令』とやらに関して、俺達も一口噛ませて貰えないかと思ってねぇ~」
「あぁ、うん・・・でも、『(地上戦艦)赤福』も壊れちゃったしね。うちに支援を求められても困るんだけど・・・」
「いやいや。あんたらがそんだけ苦戦してるギガントとやらの力量を測りたくてよぉ。でもまぁ、倒しちまうかもしれねぇけどな?」
「えぇっ! それ本当かいっ!!」
「まぁな。あ、もし倒せたら手柄は今まで頑張って来たアンタらのモンだから安心しな」
「ハァ~ッ! シュポシュポポッ!! やったねボギーちゃん! 手柄が増えるよ!!」
「あぁ、うん・・・でも、『(地上戦艦)赤福』も壊れちゃったしね。うちに支援を求められても困るんだけど・・・」
「いやいや。あんたらがそんだけ苦戦してるギガントとやらの力量を測りたくてよぉ。でもまぁ、倒しちまうかもしれねぇけどな?」
「えぇっ! それ本当かいっ!!」
「まぁな。あ、もし倒せたら手柄は今まで頑張って来たアンタらのモンだから安心しな」
「ハァ~ッ! シュポシュポポッ!! やったねボギーちゃん! 手柄が増えるよ!!」
バドスの寛大な申し出を聞いて、狂喜の踊りを舞いだすボギヂオと、懐疑的な眼差しで見つめるバトゥロ。そして虚空で密かに響く舌打ち。
そしてバドスは「まずは今言った事を実演してやるから」と言いつつ、シミュレーターを起動させる。
そしてバドスは「まずは今言った事を実演してやるから」と言いつつ、シミュレーターを起動させる。
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~ シミュレーター空間 ~
アフリカのサバンナを模したフィールド内に聳え立つ巨体。そう、この機体こそがレゼルヴェ国の守護神! ギガント28号であるっ!!
・・・と、言いたいのは山々なのだが。この仮想ギガント、何故か見た目はメイド服を着た丸っこい鋼鉄の黒ウサギである。
そしてその頭上に浮かぶ深緑色の機体は、空戦操兵の斬風一式改・禍風。
・・・と、言いたいのは山々なのだが。この仮想ギガント、何故か見た目はメイド服を着た丸っこい鋼鉄の黒ウサギである。
そしてその頭上に浮かぶ深緑色の機体は、空戦操兵の斬風一式改・禍風。
べらんめぇなアメリカン口調で挑発する仮想ギガントに対し、禍風はその上空で頭部を下に向けて構えを取る。
「あ、判った! なーんだ、気付けば簡単じゃないか! ハァ~ッ、シュポポポッ! 奴が届かない位置から攻撃すりゃ良いんだね!」
得意げなボギヂオの科白を裏付けるかの様に、禍風の両腕と翼から多数の連装ミサイルが仮想ギガント目掛けて発射される。
四方八方から襲い来る小型ミサイルの群れは、両腕を振り回して迎撃する仮想ギガントへと容赦無く喰らいつく。
数発のミサイルをその豪腕で叩き落したところで結果は変わらない。程なく、仮想ギガントは巨大なガラクタと化して大地に倒れ込む。
四方八方から襲い来る小型ミサイルの群れは、両腕を振り回して迎撃する仮想ギガントへと容赦無く喰らいつく。
数発のミサイルをその豪腕で叩き落したところで結果は変わらない。程なく、仮想ギガントは巨大なガラクタと化して大地に倒れ込む。
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「実演終了、と。禍風の装備を整えてから後日、この方法でやっこさんの実力を測ってやる予定でさぁ。満足して貰えましたかねぇ?」
「ハアァァ~ッ! シュポポポンッ!! 良いね! 次にキミが来た日がギガントの命日だよっ! 今日は良い夢見られそうだぁ~」
「そりゃー良かった。んじゃお休みなせぇ、司令官」「うんっ、お休み!」
「ハアァァ~ッ! シュポポポンッ!! 良いね! 次にキミが来た日がギガントの命日だよっ! 今日は良い夢見られそうだぁ~」
「そりゃー良かった。んじゃお休みなせぇ、司令官」「うんっ、お休み!」
スキップしながらシミュレーター室から去って行くボギヂオを見送ってから、バトゥロは沈鬱な面持ちでバドスを諭す。
「君の戦法は有効かもしれんが・・・だが、本物のギガント28号相手では不足だと言わざるを得ない。彼はそんなに甘い相手では無いぞ!」
しかしバドスは、珍しく怒りを帯びた顔付きで身を屈め、バトゥロの真正面から鼻先を突き合わせて言い放つ!
「舐めるんじゃねぇっ! アンタらが考えてる以上に、ギガントの野郎を痛めつけてやるから安心しやがれっ!!」
その科白を聞いて、バトゥロの顔付きが変わった。虚空に片腕を掲げて制止の構えを取ると同時に、密やかな声で問い返す。
「・・・ちょっと待ってくれ。今、君は『痛めつける』と言ったな? ギガントを倒す前提では無さそうだが・・・?」
「流石だねアンタ。ボギーのオッサン相手じゃそういう話は通じないからな。色々と省略した」
「流石だねアンタ。ボギーのオッサン相手じゃそういう話は通じないからな。色々と省略した」
バドスも表情を一変させて、ニヤニヤ笑いながらその問い返しに答えてゆく。
「俺達もギガント関係の情報は集めてるが、正直マトモに勝てる気しねぇんだよな。だからまずは力量を測るつもりなのさ」
「そうか・・・しかし、くどい様だが先ほどの戦法だけで挑むのは自殺行為だぞ」
「・・・言っとくが、さっきのシミュレーションは仕掛ける手のごく一部だ。全容は本番でのお楽しみって奴さ」
「ならば良いが・・・くれぐれも気を付けてくれたまえ」
「なぁに。アンタらが打倒ギガントを掲げてるって件も確認済みさ。だから俺たちゃ死なない程度に時間を稼いでやるぜ」
「そうか・・・しかし、くどい様だが先ほどの戦法だけで挑むのは自殺行為だぞ」
「・・・言っとくが、さっきのシミュレーションは仕掛ける手のごく一部だ。全容は本番でのお楽しみって奴さ」
「ならば良いが・・・くれぐれも気を付けてくれたまえ」
「なぁに。アンタらが打倒ギガントを掲げてるって件も確認済みさ。だから俺たちゃ死なない程度に時間を稼いでやるぜ」
パンパン! と手を叩いてバドスはこの話を打ち切る。そしてもう一つの用件について話しだす。
「んでまぁ、もういっちょの用件だが。コレ実はトワイス快王宛なんだわ。で、こいつがトワイスちゃん様宛ての手紙な」
「(…トワイスちゃん様?)だが彼は今、ブラッククロスと協力してバチカン攻略戦を遂行中なのだが・・・」
「そりゃ知ってるがね。うちの隊長の私用なんで、そっちの任務の後からでも構わんってさ。隊長も目下、休暇中だしなぁ~」
「そうなのか。むっ、その予定表は一体? ・・・こっ、これはっ!!」
「(…トワイスちゃん様?)だが彼は今、ブラッククロスと協力してバチカン攻略戦を遂行中なのだが・・・」
「そりゃ知ってるがね。うちの隊長の私用なんで、そっちの任務の後からでも構わんってさ。隊長も目下、休暇中だしなぁ~」
「そうなのか。むっ、その予定表は一体? ・・・こっ、これはっ!!」
バドスが手紙と一緒に差し出した予定表に何気なく目を通したバトゥロが驚愕の声を上げる。
「おっ、大蛇毒砲(おろち どっぽ)だとっ!! かつて、百文字(ジ・ハンドレッド)と死闘を繰り広げた漢だぞ彼はっ!!」
「あー、それな。隊長が以前見たとかいう『蛇輪』って技をもっと良く知りたいから訪ねるんだとさ」
「あー、それな。隊長が以前見たとかいう『蛇輪』って技をもっと良く知りたいから訪ねるんだとさ」
「次は趙深虎(チャオ・シェンフー)だとっ?! 拳王・李白鳳(リー・パイフォン)と同門で、彼と並んで竜虎と評される腕前とも聞くっ!!」
「だからだよ。その『拳王』とやらにゃテッシン老が先にツバ付けたらしーんでな。となると、そっちの趙って奴になるだろ?」
「しっ、しかし彼は趙財閥の御曹司だぞ。そう簡単に手合わせ出来るものでもあるまい?」
「そこはまー、死合する訳でもねーからな。穏便に試合するだけならどうとでもならぁな」
「だからだよ。その『拳王』とやらにゃテッシン老が先にツバ付けたらしーんでな。となると、そっちの趙って奴になるだろ?」
「しっ、しかし彼は趙財閥の御曹司だぞ。そう簡単に手合わせ出来るものでもあるまい?」
「そこはまー、死合する訳でもねーからな。穏便に試合するだけならどうとでもならぁな」
「・・・待ってくれ。何だこれは。何の冗談だ? 『トワイス快王と試合』とあって、その後に『耐撃の百文字と面会』とあるのは・・・」
「いやいや、大マジ。さっき『ギガントの力量を測りに行く』って言ったろ? ギガントの性能は操縦者(?)と直結してっからなぁ~」
「そ、それはその通りだが・・・しかしな・・・」
「いやいや、大マジ。さっき『ギガントの力量を測りに行く』って言ったろ? ギガントの性能は操縦者(?)と直結してっからなぁ~」
「そ、それはその通りだが・・・しかしな・・・」
予定表に書かれた面子を確認したバトゥロは、嘆声と共に率直な感想を述べる。
「君のとこの隊長は自分の実力を過信してるのか? それとも自殺志願者か? これだけ見るとそうも言いたくなるな」
「なぁ~に。あの人ァ俺と並んで逃げ足が速ぇんで大丈夫さ、多分」
「そうか・・・しかし、もう一つ言わせてくれ。『これの何処が休暇だ?』」
「・・・さぁね。俺にも隊長の感覚がよー判らん時がある。軍務から離れて好き勝手やりたいから『休暇にした』そうだけどなぁ~」
「なぁ~に。あの人ァ俺と並んで逃げ足が速ぇんで大丈夫さ、多分」
「そうか・・・しかし、もう一つ言わせてくれ。『これの何処が休暇だ?』」
「・・・さぁね。俺にも隊長の感覚がよー判らん時がある。軍務から離れて好き勝手やりたいから『休暇にした』そうだけどなぁ~」
予定表を見たバトゥロが、感嘆の念も籠った呆れ顔を虚空に居る娘と向き合って晒していた頃。
『休暇中』の影狼隊隊長は、予定表にある最初の相手と出会う準備をしていた・・・。
『休暇中』の影狼隊隊長は、予定表にある最初の相手と出会う準備をしていた・・・。