影狼隊徒然記【隊長の優雅な休暇】その2
~ 日本・某所にあるキャバクラ(@実はブラッククロス傘下) ~
壊れた部分を板で応急修理した上に『休業中』と札が掲げられた扉。そして店内では3人の店員が清掃作業をしていた。
・・・しかしそのうちの一人は、身長170cm台だが、灰色のマスクを被ったレスラーを思わせる風体の男だった。
・・・しかしそのうちの一人は、身長170cm台だが、灰色のマスクを被ったレスラーを思わせる風体の男だった。
「・・・乱入したアホ共の後片付けを俺達がするなんて、そんなの不公平じゃん」
「仕方ないよラ・メーン。僕達だってここを警察に調べられたら困るんだもの」
「キィスト! これでモシャス(裏工作)が完了したから、もう安心して帰れるね!」
「仕方ないよラ・メーン。僕達だってここを警察に調べられたら困るんだもの」
「キィスト! これでモシャス(裏工作)が完了したから、もう安心して帰れるね!」
しかし店内の清掃も終わり、さぁ今日はもう引き上げようかという空気になった時。灰色マスクの男が当惑した声を上げる。
「・・・キィス? アイス君、ボクの本を知らない? さっきそこに置いてたと思うんだけど」
「僕は知りませんよ、パラディンさん。ラ・メーンは知ってる?」
「俺も見てないじゃん?」「・・・あぁ、済まない。興味深い内容だったので、勝手に読ませて貰って居た」
「僕は知りませんよ、パラディンさん。ラ・メーンは知ってる?」
「俺も見てないじゃん?」「・・・あぁ、済まない。興味深い内容だったので、勝手に読ませて貰って居た」
・・・ッ? ! ?
「キィストッ?!!」「誰だっ!」「泥棒じゃん?!」
謎の声に3人が身構えた時。『大蛇流空手道・鍛錬編~立木突き1日1万本!~』という通信講座の本を手にした男が、カウンターの陰から
ゆらりと立ち上がった。
ゆらりと立ち上がった。
日本に潜入していた影狼隊隊長。まずは現地でブラッククロスと接触。しかし何故、日本支部に行かなかったのか?
ちょっとした謎を残したまま、場面は数日後に移動する・・・。
ちょっとした謎を残したまま、場面は数日後に移動する・・・。
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~ 日本・某所にある繁華街 ~
繁華街の一角にある高級中華料理店で、平日の夜とはいえ宴会場を丸々貸切にした男が居る。
しかしその招待主の前に居る客は1人のみ。豪華な酒肴を前に、右手首の包帯をさすりながら何とも言い難い顔をしている。
しかしその招待主の前に居る客は1人のみ。豪華な酒肴を前に、右手首の包帯をさすりながら何とも言い難い顔をしている。
「・・・先生。これは一体・・・」
「だから快気祝いって言ってるじゃねぇか加羅よォ。オイラの純真な眼を見れば判るだろ?」と、隻眼を見開いてニヤニヤ笑う招待主。
「いや、毒砲先生のやりたい事は判りますよ。判りますけどね・・・」客(加羅)は諦めの溜息を漏らす。
「だから快気祝いって言ってるじゃねぇか加羅よォ。オイラの純真な眼を見れば判るだろ?」と、隻眼を見開いてニヤニヤ笑う招待主。
「いや、毒砲先生のやりたい事は判りますよ。判りますけどね・・・」客(加羅)は諦めの溜息を漏らす。
短い会話の後、双方豪快に飲み食いを始めた。しばらくして口一杯に頬張った肉をゴクリと飲み込んで加羅が言う。
「それじゃ、そろそろ闘(や)りますか? 先生」
「・・・あぁ、オイラもそのつもりだったけどよォ? その前にお客さんだぜぇ」
「・・・あぁ、オイラもそのつもりだったけどよォ? その前にお客さんだぜぇ」
毒砲が指差した方へ振り向いた加羅が見たのは、黒い長袖のTシャツに綿のズボンを着て、腰にジャケットを巻いた男。
それだけならば街中で歩いていてもそう目立たない風体だが、顔を張子の狐面で隠した怪しい姿である。
それだけならば街中で歩いていてもそう目立たない風体だが、顔を張子の狐面で隠した怪しい姿である。
「貴様、何者だっ!」
「お初にお目に掛かる・・・済まないが怪しい者だ。毒砲氏に用件があってね」
「いやいや、怪しいのは見りゃ判るんだがよォ? オイラに用事ってかい?」
「お初にお目に掛かる・・・済まないが怪しい者だ。毒砲氏に用件があってね」
「いやいや、怪しいのは見りゃ判るんだがよォ? オイラに用事ってかい?」
見た感じ丸腰なその怪しい男の目的を、毒砲と加羅は測りかねて顔を見合わせる。
このままじゃ埒が明かないと思ったか、狐面の男が来訪目的を告げる。
このままじゃ埒が明かないと思ったか、狐面の男が来訪目的を告げる。
「実は先日、貴公のお嬢さんと手合わせする機会があったのだが。その時見た『蛇輪』という技を生身で受けてみたくてね・・・」
「おいおい。ありゃあウチの奥義だぜ? 怪しい一見さん如きに軽々と見せられるかってぇの」
「何、只でとは言わん。『蛇輪』を封じる技を編み出したので試したい。さしずめ『大蛇喰み』(おろちはみ)とでも言おうか・・・」
「・・・ほほぉ~っ、面白いフカシをこくアンチャンだなァ?!」
「おいおい。ありゃあウチの奥義だぜ? 怪しい一見さん如きに軽々と見せられるかってぇの」
「何、只でとは言わん。『蛇輪』を封じる技を編み出したので試したい。さしずめ『大蛇喰み』(おろちはみ)とでも言おうか・・・」
「・・・ほほぉ~っ、面白いフカシをこくアンチャンだなァ?!」
顔面をピクピク痙攣させつつ、恐ろしげな笑みを浮かべた毒砲は狐面の男を睨む。
「時に、一般人を巻き込むのは本意では無いのだが。ここで闘っても大丈夫かね?」
「あぁ、ここはオイラが懇意にしてる店だ。しばらく邪魔しな(ヒュッ!)い様に言ってあ(コツッ!)…」ガシャーン!!
「あぁ、ここはオイラが懇意にしてる店だ。しばらく邪魔しな(ヒュッ!)い様に言ってあ(コツッ!)…」ガシャーン!!
喋っている毒砲の腕が突然霞み、その軽く握った正拳突きが、眼にも留まらぬスピードで狐面の男の胸板を叩く。
その突然の強打を喰らって吹き飛ばされた狐面の男は、奥の壁へと激しく叩きつけられた。
その突然の強打を喰らって吹き飛ばされた狐面の男は、奥の壁へと激しく叩きつけられた。
しかし見守っていた加羅が意外に思った事に、毒砲は追撃を入れず、その場で首を振って留まる。
そう言えば毒砲の科白が尻切れトンボになったのは、狐面の足が顎を掠めたからか?と、加羅が気付いた時に会話が再開する。
そう言えば毒砲の科白が尻切れトンボになったのは、狐面の足が顎を掠めたからか?と、加羅が気付いた時に会話が再開する。
「オイラの『菩薩拳』を受けて、吹き飛ばされる勢いを利用して蹴りで反撃(カウンター)するたぁな。味な真似してくれるじゃねーか」
「『朽木倒し』の応用だ・・・しかし『消力』していても痛いものは痛いな。まだ修行が足りんか・・・」
「『朽木倒し』の応用だ・・・しかし『消力』していても痛いものは痛いな。まだ修行が足りんか・・・」
互いに話しつつ、改めて毒砲と狐面は対峙する。毒砲は腕を引いて何時でも『蛇輪』を放てる構えに。
狐面も構えるが、妙な事に軽く開いた両拳を脇の下まで引いて構えている。しかも掌を上に向けた状態で。
狐面も構えるが、妙な事に軽く開いた両拳を脇の下まで引いて構えている。しかも掌を上に向けた状態で。
(「何だ?あの掌の構えは。『紐切り』に似てるが、それとも異なる・・・あれで先生の『蛇輪』にどう対抗する気だ?」)
両者、じりじりと間合い詰めて行くが、狐面は下半身のみ左に向けて捻り、左方向へと弧を描く様に動く。
つまりは毒砲から見て右手側に動いており、右眼が見えない毒砲にとっては死角に入られる事となる・・・のだが?
つまりは毒砲から見て右手側に動いており、右眼が見えない毒砲にとっては死角に入られる事となる・・・のだが?
「へっ!オイラにゃ『散眼』があるから、右側だって死角にゃならんぜ!・・・んナァッ?!」
眼筋の精妙なる動きにより、右へと回る狐面の位置をキッチリ把握していた毒砲であるが。狐面の意外な動きに思わず眼を疑う。
毒砲から見て右へと、滑る様に歩いている狐面が、足の動きとは裏腹に左へと滑る様に後退して居るのだ!
毒砲から見て右へと、滑る様に歩いている狐面が、足の動きとは裏腹に左へと滑る様に後退して居るのだ!
「ちょ、おまっ。何でここでソレなんだよっ!!」
毒砲はその現象の正体にすぐ気付くが、だからといって驚きが軽減される訳でもない。むしろ知ってるが故に驚きが増大した節もある。
それは俗に『ムーンウォーク』と呼ばれる、『バックスライド』という歩法。前進する足の動きなのに、後ろとへ滑る不思議な歩法である。
それは俗に『ムーンウォーク』と呼ばれる、『バックスライド』という歩法。前進する足の動きなのに、後ろとへ滑る不思議な歩法である。
『ムーンウォーク』で毒砲の正面に戻って来た狐面は、そのまま下半身の向きを正面に戻して毒砲へ向かって身を沈める。
軽く動揺した毒砲は、思わずそれに反応して右腕で『蛇輪』を放つ!
軽く動揺した毒砲は、思わずそれに反応して右腕で『蛇輪』を放つ!
ヒ ュ ッ ! パ シ ィ ィ ィ ! !
毒砲が右腕で『蛇輪』を放つのと同時に放たれた狐面の右掌が、毒砲の腕が伸びるよりも早く、その拳を包む様に受け止めていた。
「にゃにぃっ!!」「・・・右腕の攻撃を、左へと受け流す」
そして『蛇輪』の捻りに逆らわず、むしろ『蛇輪』の捻り速度と拳速を速める様に捻りつつ急激に腕を引く。
それによって毒砲の右腕は左前方へ引っ張られて、勢い余ってつんのめる形になる。
それによって毒砲の右腕は左前方へ引っ張られて、勢い余ってつんのめる形になる。
(「にゃろうっ!『蛇輪』の捻りと速度を早送りにして、タイミングを狂わせる事で威力を殺してやがるっ!!」)
ビ リ リ ッ !
タイミングの狂った『蛇輪』の威力が周囲に拡散し、両者の服も右袖の肘から先が同時に千切れ飛ぶ。
「・・・流石は本物の『蛇輪』だ。やはり操兵越しに放たれたものとは迫力が違うな」
「・・・へっ。言うだけの事はあるな、アンチャン!」
「・・・へっ。言うだけの事はあるな、アンチャン!」
『蛇輪』を受け流された毒砲は、大きく間合いを広げて狐面から離れる。
(「『大蛇喰み』ってか。中々のモンだが、ぶっちゃけ『つるべ蛇輪』の手数にゃ対応しきれまいし、『蛇輪菩薩』は見切れめぇ?」)
(「・・・だがなァ~。滅多に無い機会だから、やっぱ魅せたいよなぁオィ?」)
(「・・・だがなァ~。滅多に無い機会だから、やっぱ魅せたいよなぁオィ?」)
「大サービスだっ! 冥途の土産にイイもん魅せてやるぜっ! 奥 義 ・『 蛇 輪 脚 』 ウ ゥ ッ ッ ッ ! ! 」
狐面に向かって、素早いダッシュからの低空錐揉みキックを『蛇輪』の要領で繰り出す毒砲。
その足を左掌で受けて『大蛇喰み』を試みようとした狐面ではあるが・・・
その足を左掌で受けて『大蛇喰み』を試みようとした狐面ではあるが・・・
「左足の攻撃を、右へと受け流・・・せ ん わ あ ぁ ぁ ~ っ ! ! 」 バ リ バ リ ッ ! ズ ガ ア ァ ァ ァ ン ! !
受けるのは無理すぎた。途中で諦めた狐面は『消力』で攻撃の勢いを流そうとするが、流すには余りにも強烈な威力だった。
蹴りの勢いを受けた狐面の左袖は肩からバラバラに千切れ飛び、毒砲もズボンの左半身と左の靴が完全に粉々になる。
蹴りの勢いを受けた狐面の左袖は肩からバラバラに千切れ飛び、毒砲もズボンの左半身と左の靴が完全に粉々になる。
錐揉みしながら、先程とは比較にならない衝撃で壁に激突した狐面。
しかし、毒砲や観戦していた加羅が近付くよりも早く立ち上がって窓へと駆け寄る。
しかし、毒砲や観戦していた加羅が近付くよりも早く立ち上がって窓へと駆け寄る。
「大蛇流空手を存分に堪能させて貰ったが、流石にこれ以上やると命取りだ。ここで退散しよう」ガ シ ャ ー ン ! !
「・・・ちっ。逃げ足の速い奴だぜぇ」「追いましょう、先生!」
「・・・ちっ。逃げ足の速い奴だぜぇ」「追いましょう、先生!」
窓を破って逃走した狐面を追おうと叫ぶ加羅。しかし毒砲は追いつけないと見切ったか? しばしの沈黙の後、口を開く。
「・・・なぁ、加羅よ」「絶対嫌です」
ぐ に ゃ ~ ~ ~ ~ 2人の間の空気が熱気で歪む。
「 満 月 斬 ッ ! 」
「マ・ワ・シ・ウ・ケ!!」
「マ・ワ・シ・ウ・ケ!!」
加羅が飛び立ちながら遠当てを撃ち込み、毒砲が腕の回転でそれを弾く。
「弟子から2度もズボンを奪うなんてそれでも師匠かあんたはー!」
「オイラに隠れてコソコソ動いて、右手首チョンパしてる様な奴に言われたくねえぜぇー!」
「こないだのガチバトルで容認してくれたでしょうがー!」
「その直後、また不祥事を起こすとか思わねえだろ普通はー!」
「オイラに隠れてコソコソ動いて、右手首チョンパしてる様な奴に言われたくねえぜぇー!」
「こないだのガチバトルで容認してくれたでしょうがー!」
「その直後、また不祥事を起こすとか思わねえだろ普通はー!」
ズボンを賭けた、通算2度目のガチバトルが始まった。