ウルトラマサイ 第6話
【主席ルイヌーヴォーの公邸】
「マリリンモンローは左右の足の長さの違いにより独特の歩き方を生み出しました。
私の使った技術もそれと同じ事ですよ」
私の使った技術もそれと同じ事ですよ」
フェミリアはルイヌーヴォーの顔の前に右手を広げて見せる。
普通の女性の手よりやや大きめのその手は親指だけが異様に長く、人差し指と同じ程になっている。
普通の女性の手よりやや大きめのその手は親指だけが異様に長く、人差し指と同じ程になっている。
「2」
そう言うと親指が徐々に短くなり、その分の長さが人差し指に足されていく。
「3、4、5」
指の成長はカウントと共に左側へと移り、5の時点で小指だけが長い状態になっていた。
ルイヌーヴォーはフェミリアの右手に起こる変化を見る度におおっと声を上げ関心し凝視していた。
ルイヌーヴォーはフェミリアの右手に起こる変化を見る度におおっと声を上げ関心し凝視していた。
「次は全部大きくしますね」
みるみるうちに5本の指が同時に伸び、掌自体も拡大されていく。
10秒程で成長は止まり、ルイヌーヴォーの目の前に広げられたフェミリアの右手は
彼の顔よりも大きくなっていた。
10秒程で成長は止まり、ルイヌーヴォーの目の前に広げられたフェミリアの右手は
彼の顔よりも大きくなっていた。
「そして…リセット」
右腕からゴボンとポンプの様な音がすると同時に、一瞬でフェミリアの右手は普通のサイズと形へと戻った。
「私が歌手としてステージに上がっていた頃はこの力を使い、観客からの遠近感を
理想のものに近づけてたんですよ」
「いやあ、これはいいものを見せて貰ったよ。君の舞から感じられる独特の魅力に
この様なトリックがあったとは。吾輩の辞書に記すべき美しきものがまた一つ増えた」
理想のものに近づけてたんですよ」
「いやあ、これはいいものを見せて貰ったよ。君の舞から感じられる独特の魅力に
この様なトリックがあったとは。吾輩の辞書に記すべき美しきものがまた一つ増えた」
惜しみない拍手、そして笑顔。鼻息は荒く、興奮は目に見えて分かる。
ルイヌーヴォーの賞賛は新しいゲームのデモを見た時の子供の様に素直で飾らないものだった。
フェミリアは商談相手の心を掴むのに成功したのを喜ぶと同時に肩の力が一気に抜けた。
ルイヌーヴォーの賞賛は新しいゲームのデモを見た時の子供の様に素直で飾らないものだった。
フェミリアは商談相手の心を掴むのに成功したのを喜ぶと同時に肩の力が一気に抜けた。
(この反応、彼も事件の元凶じゃなかったって事か。これまでの情報を辿ると一番怪しかったんだけど)
体液及び、外部から取り込んだ水を自在に操作する術。
フェミリアにこの術を教えた男ボン・マッハとその娘ネール・マッハ(通称マハン)との別れは数年前、
ボン・マッハが自室で惨殺体となって発見され、ネール・マッハは何処かへ消え去った。
フェミリアにこの術を教えた男ボン・マッハとその娘ネール・マッハ(通称マハン)との別れは数年前、
ボン・マッハが自室で惨殺体となって発見され、ネール・マッハは何処かへ消え去った。
二人に何があったのかを調べ続けていたフェミリアは、このレゼルヴェ国に答えがあるのではと思って
商談のついでにレゼルヴェの主席ルイヌーヴォーにカマをかけてみたのだが、結果はこの通りである。
商談のついでにレゼルヴェの主席ルイヌーヴォーにカマをかけてみたのだが、結果はこの通りである。
(商談中に感じた彼の本質は素直で小心者。追い詰められると嘘が付けない人間。
もし彼がマハンを連れ去った、あるいはマハンと手を組み脱出を手伝った事に関与しているなら
私の能力を見てこんな反応をするはずがない)
もし彼がマハンを連れ去った、あるいはマハンと手を組み脱出を手伝った事に関与しているなら
私の能力を見てこんな反応をするはずがない)
あてが外れたがフェミリアはすぐにこれでよかったのだと思い直す。
もし、ルイヌーヴォーが事件の黒幕だったとしても師匠の仇打ちとしてこの場で
手刀で首を撥ね飛ばそうものなら、事はインドとレゼルヴェの関係だけでは済まない。
最悪、指導者を失った空白期間に一気に南アフリカがアムステラのものになりかねない。
もし、ルイヌーヴォーが事件の黒幕だったとしても師匠の仇打ちとしてこの場で
手刀で首を撥ね飛ばそうものなら、事はインドとレゼルヴェの関係だけでは済まない。
最悪、指導者を失った空白期間に一気に南アフリカがアムステラのものになりかねない。
だからこれでよかったのだ。練習機の契約も順調だしこの国で自分が出来る
最善の事は果たした。マハンの行方を追うのは戦争が終わってからでも出来る。
最善の事は果たした。マハンの行方を追うのは戦争が終わってからでも出来る。
「…では、今日はそろそろ」
「あ、いや、ちょっと待ちたまえ」
「どうなさいました?」
「君はロストテクノロジーに詳しいと聞いたのだが、もし時間があるなら一つ頼まれてくれんかね?」
「取り敢えず話を聞かせて貰います。私に出来るかどうかはその後で」
「うむ」
「あ、いや、ちょっと待ちたまえ」
「どうなさいました?」
「君はロストテクノロジーに詳しいと聞いたのだが、もし時間があるなら一つ頼まれてくれんかね?」
「取り敢えず話を聞かせて貰います。私に出来るかどうかはその後で」
「うむ」
ルイヌーヴォーは小さく咳払いしてから頼み事について語りだした。
「君も知っての通り、このレゼルヴェでは現在民間よりパイロット候補を募集し
試験を行なっておる」
「私の部下も試験官補助として務めさせていただいておりますアレの事ですね」
「ああ、君の協力もあって試験は順調だよ。多少血の気の多い受験者に手を焼く時もある様だがね。
ハハハ、話を戻そうか。実は今回の受験者に一人ロストテクノロジーと思われる武器を持ち込んできた
人物がいてね、彼が持ってきたその武器は面接の後に我々が預り中身を解析しておるのだが…」
試験を行なっておる」
「私の部下も試験官補助として務めさせていただいておりますアレの事ですね」
「ああ、君の協力もあって試験は順調だよ。多少血の気の多い受験者に手を焼く時もある様だがね。
ハハハ、話を戻そうか。実は今回の受験者に一人ロストテクノロジーと思われる武器を持ち込んできた
人物がいてね、彼が持ってきたその武器は面接の後に我々が預り中身を解析しておるのだが…」
ルイヌーヴォーは顔を曇らせる。続きを聞かずとも成果が出てない事が容易に想像出来た。
「現時点ではまだ何も成果報告が出てないと」
「こういったモノへ積極的にアプローチ出来る程、我が国に研究部門は成熟しておらぬのでな。
一人頼りに出来そうな人物はいるにはいるのだが…その女性は本業にかかりっきりでこちらへは回せない」
「そこにタイミング良く私が現れたと言うわけですね。分かりました、取り敢えず現物の場所に
案内してくれないでしょうか?」
「おおっ、やってくれるかね!!」
「こういったモノへ積極的にアプローチ出来る程、我が国に研究部門は成熟しておらぬのでな。
一人頼りに出来そうな人物はいるにはいるのだが…その女性は本業にかかりっきりでこちらへは回せない」
「そこにタイミング良く私が現れたと言うわけですね。分かりました、取り敢えず現物の場所に
案内してくれないでしょうか?」
「おおっ、やってくれるかね!!」
フェミリアにとってはこれは商談相手の心象を良くするだけの事ではない。
もし、本当にロストテクノロジーだった場合ここで得た情報は今後の他国との交渉のカードになりうる。
そうでなくとも、この国の技術レベルを直接目にする事が出来る。
故に、ここでの選択はイエス一択。
もし、本当にロストテクノロジーだった場合ここで得た情報は今後の他国との交渉のカードになりうる。
そうでなくとも、この国の技術レベルを直接目にする事が出来る。
故に、ここでの選択はイエス一択。
「でも、よろしいのですか?余所者の私が」
「構わぬよ。『許可はもらっておる』」
「構わぬよ。『許可はもらっておる』」
『許可はもらってある』、つまり少なくとも兵器関係においてルイヌーヴォー以外に決定権を持つ
存在がいるということだ。
存在がいるということだ。
ルイヌーヴォーの言葉でフェミリアはこの国のクーデターの事を思い出した。
主席も国名も変わらなかったが、首都のあらゆる場所で暴動が起こり無数の建物が破壊され
その日を境にレゼルヴェの方針は180度変化した。
外から見れば「結局何があったんだよ」と説明を要求せざるを得ない革命であり、
孤立してしかるべき政策から一変しようともレゼルヴェの国際信用度が中々上向かない
最大の要因となっている。だからこそフェミリアのビジネスチャンスがあったのだが。
主席も国名も変わらなかったが、首都のあらゆる場所で暴動が起こり無数の建物が破壊され
その日を境にレゼルヴェの方針は180度変化した。
外から見れば「結局何があったんだよ」と説明を要求せざるを得ない革命であり、
孤立してしかるべき政策から一変しようともレゼルヴェの国際信用度が中々上向かない
最大の要因となっている。だからこそフェミリアのビジネスチャンスがあったのだが。
(あの革命の日以後ルイヌーヴォーと並ぶ国のリーダーが誕生したという事なんだろうけれど…
それらしい人とはまだ会ってないわね。どんな人かしら)
それらしい人とはまだ会ってないわね。どんな人かしら)
◇◇◇
【第一次試験会場】
試験開始の合図と共に一気に厨房に飛び出した人影が一つ。
他の受験者がマニュアルを読み出し、あるいは何をやればいいか分からずオロオロし、
あるいは同じ組の人物の支持を待つ中飛び出した奴の名は―
他の受験者がマニュアルを読み出し、あるいは何をやればいいか分からずオロオロし、
あるいは同じ組の人物の支持を待つ中飛び出した奴の名は―
「ギャインギャイン、このような試験で俺様の実力を測ろうとは~」
「あーっと、真っ先に料理を始めたのは受験番号165番、日本出身の
鎌瀬犬一(かませ けんいち)だーっ!!」
「なにい、知っておるのか、バド電」
「あーっと、真っ先に料理を始めたのは受験番号165番、日本出身の
鎌瀬犬一(かませ けんいち)だーっ!!」
「なにい、知っておるのか、バド電」
マイクを手にし、鎌瀬の動きを追い始めたバッドにブブラカが質問する。
「鎌瀬犬一、現在18歳186cm97kg。アマチュアボクシング会では日本人でありながら
恵まれた体格とスピードを持ちヘビー級世界王座を期待された逸材。
だが、試合前に全身に青痣を付けて相手の狙いを惑わすという無茶な戦術を好んだ結果、
プロ入り間もなくして失明寸前に陥りライセンスを失った。視力回復後も痣は消えず、
総合格闘に転身した後のあだ名は『ダルメシアンマン』だーっ」
「語呂悪いみょん!ダルメシアンかダルメシマンでいいじゃないか」
「相変わらず、ガイド業モード、絶好調だな、バッド」
恵まれた体格とスピードを持ちヘビー級世界王座を期待された逸材。
だが、試合前に全身に青痣を付けて相手の狙いを惑わすという無茶な戦術を好んだ結果、
プロ入り間もなくして失明寸前に陥りライセンスを失った。視力回復後も痣は消えず、
総合格闘に転身した後のあだ名は『ダルメシアンマン』だーっ」
「語呂悪いみょん!ダルメシアンかダルメシマンでいいじゃないか」
「相変わらず、ガイド業モード、絶好調だな、バッド」
「…、ウォルテガさん、ここに書いてある大きめの炊飯器探してきてくれませんか」
「あの三人ほっといてええのか?」
「その内戻って来ます、たぶん」
「あの三人ほっといてええのか?」
「その内戻って来ます、たぶん」
鎌瀬はまずフリーザーを開け豚肉の塊を取り出す。
「見せてやるぜ~っ、俺がダルメシアンマンと呼ばれるもう一つの所以を~っ」
ブォン!!
「鎌瀬選手20キロはあろうかという豚ブロック肉を高々と放り投げた!」
「い…いったい」
「な…なにをするつもりだ」
「い…いったい」
「な…なにをするつもりだ」
「もっと水を多めに入れて、両手で素早く洗ってください」
「おう」
「おう」
鎌瀬は豚肉を追う様に飛び空中でクルクルと回転を始める。
「ドッグヒーローへの応援歌その3!俺は捧ぐっ、かつて奥羽軍の2代目総大将と
呼ばれた秋田犬へと、この絶・天狼抜刀牙を―――――!!」
「『絶・天狼抜刀牙』とはっ、全国を股にかけ活躍した犬軍団のリーダー
銀の必殺技だ!豚肉はたまらずバラバラになったー!!」
「「すげえ~っ」」
呼ばれた秋田犬へと、この絶・天狼抜刀牙を―――――!!」
「『絶・天狼抜刀牙』とはっ、全国を股にかけ活躍した犬軍団のリーダー
銀の必殺技だ!豚肉はたまらずバラバラになったー!!」
「「すげえ~っ」」
「えーっと、野菜はこれで全部だな」
「ムチャウ、米洗い終わったぞ」
「ムチャウ、米洗い終わったぞ」
肉をバラバラにした鎌瀬は着地し鼻を動かしながら周囲を見渡す。
「犬人間と呼ばれる俺の嗅覚は常人の1.00000倍!!
豚肉の臭いと絶・天狼抜刀牙の時に付けた俺のツバの臭いで落下点を当ててくれるわーっ!
クンクン…そこだーっ!!」
「鎌瀬の指さした先は…床だーっ」
「そうか、しゃべてる間に豚肉は下に落下していたんだ!!」
「おおーっ、床に落ちた豚肉を丼に広い集めていく!」
豚肉の臭いと絶・天狼抜刀牙の時に付けた俺のツバの臭いで落下点を当ててくれるわーっ!
クンクン…そこだーっ!!」
「鎌瀬の指さした先は…床だーっ」
「そうか、しゃべてる間に豚肉は下に落下していたんだ!!」
「おおーっ、床に落ちた豚肉を丼に広い集めていく!」
「よし、念のためにマニュアルを読んだけど俺の見た記憶と違いは無いな」
「油はこの天ぷら用植物油で190度、薄く切り衣を付けた豚肉をじっくりと」
「油はこの天ぷら用植物油で190度、薄く切り衣を付けた豚肉をじっくりと」
20キロの豚生肉の積み重ねられた丼を持ち鎌瀬は厨房から食堂へと戻る。
そのまま、出口に一気に走り込み審査員の目の前に丼を勢い良く叩きつけた。
こぼれ落ちる自然解凍すらしてない豚肉が審査員の顔にかかる。
そのまま、出口に一気に走り込み審査員の目の前に丼を勢い良く叩きつけた。
こぼれ落ちる自然解凍すらしてない豚肉が審査員の顔にかかる。
「ギャイン、ギャイン、さあっ、喰らいやがれ。この試験のナンバーワンはこの鎌瀬犬一様だーッ」
「料理をなめるな!」
「料理をなめるな!」
ガッツポーズチックな怒りのアッパーカットを受け、鎌瀬は10m近くぶっ飛び意識を失った。
「ああーっと、Mr審査員の一撃によって鎌瀬選手失神KOだーっ。この試験最初の失格者になってしまったー!
…さて、戻るか。全員でムチャウとおっさんに土下座だな」
「やっぱ私も謝らなきゃ駄目かな?正直9割バッドが悪い気がするのだけど」
「ダメ」
「あ、思ったより早く戻ってきたな」
「お主らの仕事はたっぷり残っとるぞ。ネギ切り・盛りつけ・タレ作り、
完成後の調理器具を洗い戻すのと、それから厨房の掃除。手分けして行くからな」
…さて、戻るか。全員でムチャウとおっさんに土下座だな」
「やっぱ私も謝らなきゃ駄目かな?正直9割バッドが悪い気がするのだけど」
「ダメ」
「あ、思ったより早く戻ってきたな」
「お主らの仕事はたっぷり残っとるぞ。ネギ切り・盛りつけ・タレ作り、
完成後の調理器具を洗い戻すのと、それから厨房の掃除。手分けして行くからな」
試験開始から1時間、ムチャウの記憶も役立ち彼らの組は最初の合格者となった。
最も、カツ丼の出来自体はそれ程重要ではなく、この試験ではマニュアルに従い
他の仲間と分業出来るかを判断する試験だったので他の組も多少の時間の差はあれど
ほぼ全組が似たような時間で攻略していった。
最も、カツ丼の出来自体はそれ程重要ではなく、この試験ではマニュアルに従い
他の仲間と分業出来るかを判断する試験だったので他の組も多少の時間の差はあれど
ほぼ全組が似たような時間で攻略していった。
そして、試験時間終了3分前。
「キャ、キャイ~ン。これでどうでしょうか」
「まあこのぐらいならいいだろう」
「まあこのぐらいならいいだろう」
あれから目を覚ましてはとてもカツ丼と呼べない様なものを提出してその度に
料理をなめるなとアッパーを喰らい気絶するのをループする事五回。
顔の痣を倍に増やし、すっかり室内犬の様に大人しくなった鎌瀬犬一も何とか合格する事が出来た。
料理をなめるなとアッパーを喰らい気絶するのをループする事五回。
顔の痣を倍に増やし、すっかり室内犬の様に大人しくなった鎌瀬犬一も何とか合格する事が出来た。
戦う国際警察官エルンスト・シリング40歳、好物のカツ丼を思う存分食べ続け
その数たるや6時間で約200杯。彼の胃袋はカツ丼なら何杯でもいけるというのか。
もちろん食べきれなくて、一杯毎に一口食べた後の残りは全部タッパーの中。
残りは少しずつ自宅で処分する予定だ。
その数たるや6時間で約200杯。彼の胃袋はカツ丼なら何杯でもいけるというのか。
もちろん食べきれなくて、一杯毎に一口食べた後の残りは全部タッパーの中。
残りは少しずつ自宅で処分する予定だ。
マサイの青年ムチャウ・ザイネン24歳、地味に一次試験最高点を獲得した彼だが
これはまだ始まりに過ぎない。果たして次からの試験ではどうなるのか。
それは闇が開けてから。今は明日に備え休め、ホテルのエアコンは涼しい。
これはまだ始まりに過ぎない。果たして次からの試験ではどうなるのか。
それは闇が開けてから。今は明日に備え休め、ホテルのエアコンは涼しい。