A 医の倫理と医師の義務
101C5
患者の権利でないのはどれか。
a 自分の病状について家族に知らせないよう医師に求める権利
b 医師が示した見解に対して他の医師の意見を求める権利
c 診療録中の記載の誤りを医師に訂正するよう求める権利
d 医学的に妥当でない治療でも医師から受ける権利
e 真実を知ることを放棄する権利
解説 難易度★☆☆
患者に不利益が及ぶようなものは権利といわないはず。よって、知識がなくても国語力で解けないかチャレンジしてみる。
aは○○権という形では聞かないが、臨床現場ではよくありそうだから消す。bはセカンドオピニオンのことだろうからこれも切る。cは個人情報保護法でもあてはまるし、bで他の医師にダメ出しされた場合を考えてみれば切れそうである。
dが正解のようだがいったんスルーしてeに移る。がんを本人ではなくて家族からムンテラするケースを思い浮かべてみれば、知らないほうが幸せということがあってもおかしくないように思われる。
ちなみに、正解はdであろう。試験本番では本当かどうかあせるが、ものみの塔(エホバ)信者らのように宗教上の問題があるときは妥当でない治療(輸血拒否)を受けることが出来る。輸血拒否は「自己の意思に基づく治療拒否」であり、患者の権利の一つとして認められうる。ここでいう、妥当でない治療とは科学的根拠を欠く民間療法等のことである。
(以下詳解)
a 患者の病状など、患者に属する情報の秘密は守られる権利があり、患者の同意があるか、あるいは法律で規定されている場合にのみ開示できる。 b 患者にはいかなる治療段階においても、他の医師の意見を聞く権利がある。
c 患者が開示された診療録中に事実と異なる記載を発見した場合,担当医に訂正を求めるのは当然である。明文化された宣言はないが、患者の医療への積極的参加といえる。
d 患者には自己決定権があるが、その権利は医学的に妥当な診療の選択または同意にあたって用いられる。医師は医学的に妥当でない治療を実施してはならない。法学的に考えると「権利」の語は「義務」と対応しています。患者にdのような権利があるのなら、それはとりもなおさず、医師に「医学的に妥当でない治療を患者に施す義務」が生じるということになりますが、そんなことを厚生労働省が公認するとはとても思えません。だから正解はdということになるのだと思います。大げさに考えるとdを認めることは医師国家試験を施行していること自体を否定することになりますから、これは最大の禁忌肢といえるかも(笑)
e 患者は自身の健康に関する情報を知る権利を有すると同時に、知りたくないことは「知らされない」権利も有する。患者の権利は、患者が人間としての尊厳を保ちながら適切な医療が受けられることを保障するために謳われているのであり、患者の権利と医師の義務とは表裏一体をなす。患者の自律を尊重しながらも、医学的妥当性を守ることは医師に課せられた責務である。
患者に電子カルテを見せて確認しながら、現病歴や既往歴などの事実関係を記載する医師も存在する。
解答 d
101C6
成人患者が手術の当日に「手術は死んでもいやです」と担当看護師に訴えている旨の報告を受けた。既に、手術について説明し同意は得られている。担当医の対応として適切なのはどれか。
a 予定どおり手術を行う。
b 手術以外の治療法を考える。
c ほかの病院への転院を勧める。
d 患者の説得を家族に依頼する。
e 患者から直接話を聴いてから判断する。
解説 : 難易度☆☆☆
臨床実習で見た光景。ドクターの対処は見事だった。
c「うちの病院がいやなら出て行け。」→d「今すぐ家族呼んで。さっさと静かにさせてもらって」→a「なんとか時間通りにはじめられるな。ったくしょうがねえな。オペ室の師長にイヤミ言われるじゃねえかよ」→「セルシン筋注な」
国試に落ちるような反面「医師」がいるうちの大学病院とはいったい。
まじめな解説をすると、文中では「成人患者」と書かれているが、判断力が正常であることが前提となっている。薬物中毒や救急搬送された錯乱した患者であればaも不正解とはいえない。そこはしょせんは国試であるので、シンプルに考えなくてはやってられない。
まじめに考えると、acは禁忌肢の可能性あり。
a 禁忌肢。インフォームドコンセントはいつでも撤回できるので,この場合には同意のない手術となり,実施すれば傷害罪が成立してしまう。
b 言葉の意味通りの解釈では患者の真意を汲み取れない。この時点で手術を選択肢から除外するのは適切な解決法とはいえない。
c この場面での医師の「転院の勧め」は、患者にとっては医師の一方的な治療関係の打ち切り宣言に等しく、医師患者関係が崩壊する。
d 患者の意思を尊重したインフォームドコンセントの手続きを再開するのは医師の責務である。また、「説得」は患者の意思を尊重していない。
e 患者の意思、希望を直接聞いてみることから始めることが、最も適切な解決への道を開く。
医療、特に手術では多くの医療者が事前の準備のもとに計画的に働くので、直前の計画変更は医療現場にかなりの負担をもたらす。しかし、手術は患者の同意を得て行うものであり、いったん同意した手術を「死んでもいや」という言葉は、何かを強く恐れていることを推測させるし、インフォームドコンセントが説明不十分、理解不十分、あるいは自由な意思に基づかない同意であった可能性がある。先のインフォームドコンセントは撤回されたと判断すべきである。
解答 : e