バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

生きる者達

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kyogokurowa

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ブチャラティ達は、進み続ける。
九郎の背には、見るからに重態の少年がおり、まさにその命は風前の灯に見えた。
フレンダも、この状況では逃げ出すわけにもいかず、二人の後をついていく。

「ブチャラティさん、あとどの程度ですか?」

「もう少しのはずだ。とにかく急ごう」

ブチャラティは周囲の警戒を怠らないまま進む。
こんな状況でも、襲い掛かろうとする不埒な参加者がいないとも限らないからだ。

向かう先は、病院。
とにかく、今はそこを目指すだけだったが人影が見えた。

そこにいたのは、一人のホスト風のスーツ姿の若い男。
傍らには妙な帽子姿の人形(?)に、銀髪のオカッパ頭の少年がいる。

一応、警戒は解かないが、少なくとも即座に攻撃を仕掛ける意思はないようだった。
相手の男はこちらを見て、少し驚いたように目を見開き、

「……お前ら、ブローノ・ブチャラティとライフィセットか?」

こちらから何か喋るよりも先に、男が訊ねた。

前者はともかく、後者の名前に関しては心当たりはない。
男の向けた視線の先から自分の事かと九郎も思ったが、

「2号!?」

「ら、ライフィセット!? どうしたんでフか!?」

 銀髪の少年と、帽子姿の人形が背中にいる少年の方へと近寄ってくる。

スーツ姿の男の視線もよくみれば自分ではなく先ほど、あの魔王から保護した今も重態の少年へと向けられている事に気づく。

 九郎に変わってブチャラティが、

「この少年の知り合いなのか? いや、それよりも何故、俺の名を――」

 それを訪ねようとした矢先、


『――参加者の皆様、ご機嫌よう――』


 ここで、あの忌々しい声が響く。
 この会場にいる皆が知っているであろう声が。

 ゲーム開始直後。
 そして、前回の放送で多くの者に怒りと絶望を与えた声。

 だが、それを聞いて相手の男は「ちょうどいいか」と呟く。

「俺の名は垣根帝督。テメエら、話を聞く気があるなら着いて来い。歩きながら、話してやるよ」

 そう言って、背を向けて歩き出した。

「……どうします?」

 九郎がブチャラティに問いかける。

「ちょ、ちょっと待ってよ! な、何だかあの男は怪しいし、やめた方がいいかなー、何て私は思うわけよ」

 ……と何故だか、異様な焦り具合を見せるフレンダが口を挟んでくる。

「いや、行くべきだろう」

 だが、それをブチャラティはバッサリと切り捨てる。

「確かにこんな状態で会った相手を、すぐに信頼しろというのは難しいかもしれないが、少なくとも奴には問答無用で攻撃してこようという気はないらしい。奴の口ぶりから、ジョルノの情報も手に入るかもしれん」

 何より、と九郎の背にいるライフィセットへと視線を動かす。

「奴の歩いていった方向は病院だ。どちらにせよ、目的地だしあの男――垣根とやらを怪しんでここで足踏みしていたら、この少年が危険だ」

「そうですね。僕も同意です」

「……っ!」

2体1となり、自分の意見を押し通す事が難しくなったフレンダは黙りこむ。

「納得してくれたようだな。行くぞ」

そう言うと、ブチャラティは足早に垣根の後を追った。
続いてライフィセットを背負った九郎と、それを心配そうに銀髪の少年と帽子の人形が追った。

「ああもう!」

 それを見て、ひとり残されたフレンダは頭を掻きむしる。

「こうなったら、覚悟を決めていくしかないってわけよ……」

 それから肩を落としながら、その後を続いた。

◇  ◇  ◇



病院は、幾度かの戦闘によりひどい有様だ。
それでも、病院としての機能はある程度は残っており、薬や治療用の機材もある。

幸いというべきか、ギャングとして抗争の経験の多かったブチャラティも、不本意な経緯ながらも様々な治療法に関する知識のあった九郎が少年――ライフィセットの応急処置をしてベッドへと寝かせた。

だが、少年を蝕む謎の火傷のような痕は、二人の知識をもってしても原因が掴めない。
今もビエンフーとシルバ――聖隷と言う存在だと説明を受けた――ら二人で心配そうに傍らにいる。

それでも一旦は、落ち着いた事もあり、ようやくまともに話しあいがはじまろうとしていた。

「ジョルノが……」

垣根は病院まで向かう間、それにブチャラティ達がライフィセットの治療をしている間にも簡易な経緯の説明をしており、そして放送によって確定してしまった事実。

ジョルノの死。
ブチャラティにとって、それはとてつもない衝撃だった。

垣根の話によればマギルゥというこの少年の仲間と出会い、組まれた臨時チーム『スクール』。
そして、そのチームでの主催打倒を目指したという流れ。
なるほど、いずれも自分の知るジョルノ・ジョバァーナという少年らしい行動であり、彼がジョルノとチームを組んでいたという事に疑いは持たなかった。

だからこそ、先ほどの放送とも合わせて垣根から知らされた事実は衝撃だった。

――ジョルノが死んだ。

相手は、鬼舞辻無惨というらしい驚異的な再生能力持ちの怪人物。

いや、この際は誰が相手などという事実よりもジョルノが死んだという事実にブチャラティは衝撃を受けていた。

ブチャラティは目を閉じて回想する。
ジョルノとの出会ってからの期間は、極めて短い。
『涙目のルカ』の一件から接触し、『ボス』への反逆まではわずか数日間の出来事だ。
この会場に来てから出会った者達と比べても、そこまで差はない。

だが、それでもジョルノという存在の死に予想以上にブチャラティは衝撃を受けていた。

パッショーネの『ボス』がトリッシュの件で裏切る前にしていた、もう一つの裏切り。
ブチャラティにとっての禁忌である、麻薬の売買。
その事実を知った時、ブチャラティの心は死んだ。
生きながらも死んだ状態だった。

ジョルノは、そんなブチャラティを再び生き返らせてくれた存在――まさに黄金の風だった。
その衝撃は大きかった。

間違いなくジョルノは死んだのだろう。
放送がデタラメを言っているわけでも、垣根が嘘をついているとも思わない。
垣根のこれまでの話から、間違いなく自分の知るジョルノ・ジョバァーナだと確信が持てる。

「ブチャラティさん……」

前回とは逆に、今回は九郎の知人――といっても、元々の知人で残されたのは岩永琴子のみであるが――の犠牲者は出ていない。
前回の放送の時とは真逆の立場に立つ事になった九郎から、不安そうに声をかけられる。

「こっちは話してやったんだ。お前らのここまでの話も聞かせろ」

垣根からしても、ジョルノやマギルゥへの義理立てのみで情報を話したわけではなかった。
見返りとしての、情報交換――いわば当然ともいえる要求である。

「……ああ、そうだな」

「ブチャラティさん、僕の方から話します」

それに応じようとするブチャラティを止め、九郎から話し始める。
これまで、臨時チームともいうべき自分達のまとめ役のような役割をやってきていたブチャラティだが、先ほどの放送を聞いてから明らかに気落ちしているように見える。

それゆえの配慮だった。
それが伝わったのか、ブチャラティも「頼む」とのみ小さく言った。

そして、九郎は話し始める。
これまでの経緯。キースやジオルドといった「乗った側」に襲われた事や、ホテルで別れたアリアや新羅の事。
最後に、列車でのあの魔王との戦闘やライフィセットの救出の事などだ。


一通り語り終えた後、

「とりあえず、岸谷先生が心配ですね」

九郎が放送を聞いてまず気になった事を口にする。
先ほどの放送で呼ばれた者の一人。

――セルティ・ストゥルルソン。

岸谷新羅にとって大事な人。
特にゲーム開始直後から一緒にいた九郎にとっては、散々その名前を聞かされており、彼女とは直接会っていなくてもどれだけの思いを聞かされている。
そんな存在を失ったとなれば、新羅がどう動くか。

「それに、神崎さんの方も心配ですね」

もし仮に、新羅がマーダー化しようものなら、真っ先に犠牲になるのは同行しているはずのアリアだろう。
さらには彼女の知り合いと聞いた高千穂麗まで退場している。

「ああ。だが、彼女も無力な存在ではない。最悪の場合でも、何とか切り抜けてくれると良いのだが……」

ブチャラティもキースとの戦闘でアリアの実力は見ている。
だが、ここで問題となるのがアリアの性格だ。彼女の性格からして、逃げ出そうとするのではなく不殺を守り何とか新羅を無力化しようと考えるだろう。
それが裏目に出なければ良いが、と内心で少し不安になる。

「ま、ここにいねえ奴らの事を心配しても仕方がねえだろ」

そんな風に話す二人に、冷たい口調で垣根が話を戻す。
彼からすれば、どちらも一度も会っていない相手であり文字通り他人事なのだろう。

「それより、お前の話を聞いてジョルノの事で少し気になってる事がある」

垣根の知る「ジョルノ」は間違いなくブチャラティの知る「ジョルノ」だった。
だからこそ、一つの疑問が生まれる。
それは、垣根が聞いたジョルノとの話の間に生じた矛盾。

「ジョルノは、チョコラータとやらと戦い、コレッセオに向かう途中だと――そう言ったんだな」


垣根達、『スクール』は当初の予定では元々ジョルノの目的地だったコロッセオに向かい、その後にマギルゥら仲間が集う可能性が高いバンエルティア号へと向かう予定だった。
ところがその途上でチョコラータに屠られた参加者(妖夢)の死体を発見し、病院へと向かい、その予定も事実上消滅してしまったわけだが、こうして当初の目的を達してしまったのは皮肉というほかない。

「ああ。俺の知る限り、ジョルノがチョコラータとやらと交戦した記憶はない」

つい先ほど、垣根達が戦ったという相手、カビを用いて戦うスタンド使いでありボス親衛隊だというチョコラータ。彼は、元々の世界でも敵対した相手だったらしく、ジョルノの話によるとブチャラティもその相方と戦ったという。
だが、ブチャラティにその記憶はない。

「俺の知る限り、組織を、『ボス』への裏切りを決意したのがここに来る最後の記憶だ」

「だが、俺の知るジョルノの奴はそうじゃなかった」

垣根も詳細までは聞いてはいないが、大まかな流れは聞いている。
ジョルノらの所属していた組織『パッショーネ』から離反から、暫く経っていたらしく、『ボス』への反逆を決意した直後から来たというブチャラティの話とは矛盾している。

ブチャラティも、垣根が嘘をついているともジョルノが垣根に嘘をついたとも思っていない。
こんな意味不明の嘘をつく理由がなく、汗で見抜くまでもない。

――そうなると、だ。


「呼ばれた時間が違う、んじゃないかな」


不意に、ブチャラティや九郎にとって初めて聞く少年特有の高い声で答えがきた。

◇  ◇  ◇



(ここ、どこ……?)

草木の類は見えず、ただ暗いだけの闇が続いている。

身体が浮き上がり、今にも消えてしまいそうな現実感のない感覚。
朦朧としながらも、ライフィセットは理解する。

(これは、夢……?)

だが、ひたすらに暗く深い。
夢は夢でも悪夢だ。

どこか、あの地脈と似た感覚の場所。
光らしきものも、生を感じさせるものがなく、ひたすらに暗い。

そんな中――それを見つけた。

一人の見覚えのある少女の姿。

「えれ、のあ……?」

一度目の放送で死を告げられた少女。

ゲーム開始からさほど経っていなかった頃。
この病院の地で、一人の参加者が命を散らした。

エレノア・ヒューム。
ライフィセットの器であり、元は敵対していた聖寮の退魔士の少女。

同じく参加者であるメアリ・ハントの『死の水』によって命を落とした。

そのような事情は、当然ライフィセットも知らない。

『ライフィセット』

エレノアは告げる。

「エレノア、僕は……」

ここは、死後の世界だというのか。
なんで――と思いかけた時、同時に思い出した。

(そうだ、ベルベットが……っ!)

ようやく会えたと思った存在。
何よりも大事だったはずの存在。

だが、そのベルベットは何かがおかしかった。

――そして。

(――っ!!)

全ての記憶が戻る。
様子のおかしかったベルベットに自分は殺され――、


『いえ、貴方は生きています』


そんな中、どこか憂いを帯びた表情のままエレノアが告げた。

『ですが、このまま私のところに来てしまった方が幸せかもしれません』

「どうして……?」

『起きても、苦しい事や嫌な事ばかりかもしれませんよ』

別人と豹変したベルベット。
いつ死んでもおかしくない重傷。痛くて、苦しい状態。
今もどこかで死んでいるかもしれない、他の仲間達。
問題は山積み。
このまま、意識を永遠に手放してしまった方が楽かもしれない。

『ですので、このまま――』


「嫌だ」


だが、エレノアが最後まで言う前に、ライフィセットが告げる。

「確かに生きてるって事は、悲しい事や苦しい事だってあるかもしれない。けど――それ以上に楽しい事だって、やりたい事だってやらなきゃいけない事だってある。だから僕は、生きる」

生きる者――そう名付けてくれたベルベット。
そして、目の前の少女に対しての答えだった。

「それに、ムネチカだって、僕のために戦ってくれた。その気持ちを裏切りたくない」

『そうですね。貴方ならそう言うと思っていました』

そんな返答を予想していたのか、エレノアも小さく笑う。

『ならば、多くを語る必要はありません。ただ――生きてください』

それだけを告げると、そこにいたエレノアが薄れていく。

「エレノア!?」

これは、少年の見たただの幻だったのか。
それとも本来、二人に契約の繋がりがあった事によって起きたバグのようなものだったのか。

――あるいは、最期を迎える瞬間にもエレノアがライフィセットの行く末を案じた事によって起きた正真正銘の奇跡だったのか。

それは誰にも分からない。

(ん……)

だが、一つの事実として朧気ながらも、ライフィセットは意識を取り戻していた。
全身が重傷で、全てを覆いつくさんばかりの暗い穢れに蝕まれたこの状態で、まさに奇跡ともいうべき出来事。

そんな中、漠然と、耳の中に入って来る声。

朦朧としながらもあの場から、この場にいる者達に助けられた事。

聞き覚えのある声もする。片方は、よく知る仲間の一人。
そして、もう片方も――記憶の中にある声と一致するものがある。

そんな会話が繰り広げられる中、身体をまともに動かす事すらできない状態のためか、逆にあの時の事を今になって冷静に回想できた。
あのベルベットとは、色々と嚙み合わない事が多々あった。


『やっぱりあんたは、ラフィじゃない』


彼女の言い様ではまるで、ライフィセットの事を仲間である「フィー」ではなく、実の弟の「ラフィ」であるライフィセット・クラウを騙っているかのような言い方だった。

先ほどから、ブチャラティ達の会話を聞いていて――もし、彼女が自分と出会うタイミングから来ていたとした――そんな推測がガッチリと噛み合った。

もしかしたらあのベルベットはこの会場に――。


「呼ばれた時間が違う、んじゃないかな」


気が付けば、声が出ていた。

「ら、ライフィセット!? 気が付いてたんでフか?」

「に、2号、大丈夫なの……?」

部屋にいた者達、全員がこちらを見て、ビエンフーとシルバが不安そうに声をかける。

「うん。ビエンフー。それにシルバもいたんだね」

「2号……」

「ううん。僕は2号じゃなくてライフィセットだよ、シルバ」

顔色の悪いまま、ライフィセットはそう訂正する。
ビエンフーはともかく、シルバはあのカノヌシによってドラゴン化してしまい、自分の意思を持ち、話していたシルバという聖隷としては完全に死んでしまった。
そんな相手と再開できた事はこんな状況でさえなければ、手放しで喜べた事だった。

「えっと……」

そんな中、代表する形でブチャラティが前に出る。

「ああ、改めて自己紹介をしよう。俺はブローノ・ブチャラティだ、ライフィセット」

「うん、助けてくれてありがとう。その、ムネチカは……?」

未だに顔色は悪く、全身を蝕む穢れや激痛にこらえながらもライフィセットは同行者だった女性の事を口にする。

「ムネチカ、というのは一緒にいた獣耳の彼女の事か?」

状況的におそらくは間違いないとは思うが、確認の為に訊ね、ライフィセットが頷いたのを見てブチャラティは答える。

「すまない。彼女までは助けている余裕がなかった。だが、先ほどあった放送でもその名前は呼ばれてはいない。ひとまずは安心していいはずだ」

実際のところ、安心などできない。
あのような危険な連中の虜囚となった可能性が高く、生きているからといって何をされているか分からない。
だが、それをわざわざ口にする事はなかった。

それでもそれが分かっているからか、ライフィセットはその表情をさらに悲痛なものへと変える。

「それよりもだ。呼ばれた時間が違うってのはどういう事だ?」

だが、それに構う事なく垣根が口を挟む。

「いや、その前にお前の知っている事を教えろ。ここに来てからこれまでの全部だ」

「か、垣根さん、ちょっとそれは……」

「ううん、ビエンフー、いいから……」

奇跡的に意識を取り戻しているとはいえ、半死人状態の少年を相手に情報提供を要求する垣根に、ビエンフーが苦言を呈そうとするが、ライフィセットは苦し気に顔を歪めながらも、話はじめる。

ここに来てからムネチカと会った事、ジオルドと名乗る相手との遭遇や、列車で意識を取り戻してからの戦闘。そして、噛み合わないベルベットとの会話などをだ。

「ジオルド・スティアート、か」

「ええ、やっぱりと言うべきですか……」

キース・クラエスと同様に、カタリナ・クラエスのために殺しあいに乗った者。
実際にその様を見ている九郎が、当時の事を思い出す。
案の定、殺しあいにのったまま、未だに会場のどこかにいるようだ。何とかすべき存在である事に変わりないが、今は他に問題がある。

「そ、それじゃあベルベットはずっと前の状態で呼ばれたって事でフか!?」

「うん。そう考えるしかないと思う」

ビエンフーの言葉にライフィセットは頷く。

「それも確かに気にかかるが――そのベルベットとやらと手を組んでるって奴は多分、俺の知ってる奴だな」

「そうなのか?」

「ああ、同じ学園都市の第四位のレベル5だ」

ライフィセットの語る外見的な特徴や能力から垣根はそう推測する。
これまでずっと黙っているフレンダがビクリと動いた気がしたが、垣根は気にする事なく続ける。

「けどまあ、それよりもだ。単に過去から来たってだけじゃあ、説明がつかねえ事がある。そうだろ」

あれは、ベルベット・クラウであってそうでない者へと変貌した。

「もしか、したら、何か、されているのかもしれない。もし、そうなら、何とかして……」

そう言いかけた時、先ほど以上に顔色の悪くなっていたライフィセットの意識が再び闇に落ちた。

「ら、ライフィセット!」

ビエンフーとシルバが慌てて近づくが、再びライフィセットは深い眠りについているようだ。

「無理もない。この状態だ。これまで話せていた事が奇跡だ」

穢れを抜きにしても、身体全体にダメージを受けており、両腕もないまま。応急処置こそしたものの、未だに重傷のままだ。
奇跡的に意識を取り戻していたとはいえ、喋ることすらきつかったはず。

「凄まじい精神力、ですね」

「ああ」

そんな状態で話していた事に、九郎も驚き、ブチャラティも頷く。
幼い身体でありながらも、彼の目には弱っていても決して折れない強い意思の力を感じた。

(そうだな。俺も落ち込んでばかりいられないな、ジョルノ)

ブチャラティは今は亡き部下に改めて近い、意識を切り替える事にした。

再びライフィセットは寝かせられ、ここで九郎が口を開く。

「それで、何ですが一ついいですか?」

「ああ、どうした?」

「その、ここに来てから話そうとしていた事があるんですが」

そう言って、九郎は話始める。

――鋼人七瀬。

天然のものではなく、現代を生きる人間達の妄想や願望によって生み出された『想像力の怪物』。
かつて、九郎の従姉である桜川六花が放たれた存在であり、岩永琴子によって消滅させられた。
九郎もそれに助力したため、当然ながらよく覚えいている。

七瀬かりんという亡くなったアイドルに対するイメージから生み出され、誹謗中傷をした世間への復讐心から夜な夜な人を襲う怪人となり、実際に人を襲い始め、ついには死人が出てしまう。

これを放置すれば、完全に手のつけられない化け物へと変貌し続けてしまうと考え、九郎の恋人であり知恵の神である岩永琴子と共に無力化し、ついには消滅させる事に成功した存在を。

「それと今の話に出て来たベルベット・クラウが、似ていると?」

ブチャラティとしても、今更九郎の言葉を疑いはしない。
スタンドだけでなく、魔法だ聖隷だ超能力だと言った話が出てきているのだ。
想像力の怪物などといった存在を聞かされても、嘘だとは思わない。

「ええ。何を、と言われても説明には困るんですが」

だが、これは鋼人七瀬と実際に対峙し、直接戦った九郎だからこそ分かる感覚であり、ブチャラティにそれを伝える事は困難だった。

(想像力の怪物、ねえ)

そんな中、垣根は二人の会話を聞きながら、冷静に思考を進める。

超能力は、オカルトの類ではなく科学的な力によってつくりだされたものだが、その根幹となるものは『自分だけの現実』であり、ある意味では妄想であり、思い込みに近い。

だが、それはあくまできっかけとなるだけのものであり、科学的な力の補助を受け、開発とカリキュラムを進め、ようやく身に着ける事ができる。

「おい、ビエンフー」

 ここで、垣根はビエンフーに視線を向ける。

「なんでフか?」

「ベルベット・クラウは、元々そんな力は持っていなかったんだよな」

「そうでフねえ、ベルベットは喰魔っていう特別な業魔だったでフが、そんな力はなかったでフよ」

 おそらくはビエンフーがベルベット達、災禍の顕主御一行に加わったのは、マギルゥがエレノアからビエンフーを奪い返して以降の話。
 少なくともライフィセット合流前の段階らしいベルベットのようだが、そんな力を持っていたという話も聞いていない。

「となると、その力に目覚めたのは、この会場に来てからって事か。という事は、だ。やっぱりコレが関係してるかもしれねえ」

そう言って、ジョルノやマギルゥの首輪を取り出す。

「それは、首輪か」

「ああ、俺達をこんなクソみてえなゲームに縛り付けてる元凶だ」

ブチャラティの言葉に、垣根は苦々しげに答える。

「さっきも言ったように、こいつには色々と書かれてあった」

色々と優先して話す事があったため、後回しにしていたが、改めてこの首輪に関して書かれてあった事を垣根は話す。

仮想世界。さらには、自分達が生み出された存在であるかのような書き方にさすがのブチャラティも九郎も目を瞬かせる。

「メビウスをベースとした世界だの、生み出した存在だの色々と気になる事が書かれてありますね」

「ああ、だがそれなら納得してしまう事もある」

ここが生み出した世界、あるいは仮想世界だというのはブチャラティにとってある意味、説得力がある答えでもあった。
何せ、ブチャラティの身体はあの時、『ボス』によって完全に殺されていたのだ。
ジョルノによって与えられた奇跡でも、決して長くは持たないと思われていた。

それが、確かな肉体を持って蘇っている。
あの時のブチャラティを拉致して会場に連れて来て、新しく肉体をつくりだしたなどと考えるより、よっぽどか説得力が出る。

そしてそれは、九郎にとっても同様。
何せ、この人魚の力とくだんの力を身に着けた身体はあらゆる意味で手の施しようがなかった。
力を失う事もできず、だからこそ六花は様々な策を取ろうとしていたのだ。
にも関わらず、その片割れである未来予知の力があっさりと失われている。
身体に手を加えて改造した、と考えるよりはくだんの力は再現しなかった、と考える方が説得力が出てしまう。

「垣根。お前はここが作られた世界で、俺達も作られた存在だと考えているのか?」

ブチャラティの質問に、垣根は「いや」と返す。

「今の時点じゃ、結論は出せねえ。都合の良い事ばかり考える脳ミソお花畑のつもりはねえが、何もかも悪い方にばかり考えてウジウジと悩み続けるつもりもねえ。今の時点じゃ、コイツに書かれてある文章のみだ。それも、こんな風にご丁寧にわざわざと書かれた、な」

別の場所で考察を進めている、岩永琴子やレインとは違い、垣根の手元にあるのメビウスに関する情報源は首輪の説明のみ。
二人と違い、バーチャドールや楽士といった情報源がない以上、考察という点では後れを取らざるをえなかった。

「それに俺は俺だ。このクソみてえな殺し合いに従う気なんざ微塵もねえし、ぶち壊す気でいる」

「……そうだな。少なくとも俺も、『ブローノ・ブチャラティ』としての心を持っている。ならば、やるべき事は変わらない」

ブチャラティも納得したように、垣根の言葉に頷いて見せる。
ジョルノを失った喪失感からも立ち直りつつあり、強い決意の力を瞳に宿しはじめていた。

「それで、話を戻すぞ。ここがメビウスとやらかは置いておいて、かなり特殊な空間だって事に違いはねえ」

だからこそ、起こりえた事。

「お前の言う、鋼人七瀬とやら以上に意思やら妄想やらの力がモロに影響を受けやすいのかもしれねえ」

「それが、あの魔王のような変貌を果たしたと?」

「ああ、まあ、実際にはそんな単純なものじゃねえだろうが、色々と条件が重なったんだろうな」

垣根としては、この戦いの目的として異能力者達を戦わせる事によって既存の存在とも違う存在を生み出そうとしているのではないか――と推測もしているが、これはあくまで推測。
それ以上は話す気はなかった。

「まあ、良い。俺はそいつと関わる気はねえ。何かする気があるなら、お前らで相談でもしてな」

マギルゥとの約定は、あくまで災禍の顕主の御一行であるベルベット・クラウに対してのもの。
この会場にいるベルベットがその枠組みから外れた存在であるならば、何の義理もなく関わる気もない。
もちろん、襲ってくるというのであれば返り討ちにする気ではあるが。

あの魔王ベルセリアについての話は、いったんここまでとなり、垣根は次の議題へと移る。

「俺はこの後、あの触手野郎――鬼舞辻無惨をぶっ潰す気でいる」

無惨という男が、ジョルノを含む垣根の仲間達を殺した事は既に聞いている。

「仲間の復讐なんて言う気はねえが、あのクソ野郎がのうのうと会場をうろついているってだけで虫唾が走るんでな」

「……そうか」

ジョルノの仇を殺すと宣言する垣根に、ブチャラティの返答はあっさりとしたものだった。

「自分の手で部下の仇討ちをする気はねえのかよ」

「ああ。ジョルノの奴なら、自分の仇討ちを優先しろとは言わないだろうからな」

――ブチャラティ、それよりも他の事を優先しましょう。

ブチャラティの脳裏に、部下だった黄金の少年の言葉が聞こえた気がした。
ジョルノの意思を継ぐのであれば、この状況下でブチャラティ一人でとび出し、どこにいるかも分からない鬼舞辻無惨という男を討つべきだ――などとは間違っても言わないだろう。

「確かに、アイツならそう言うだろうな」

半日ほどの付き合いでしかなかったが、垣根もそれに同意する。

冷静で、思慮深く、それでいて行動力もある。窮地でも落ち着いて行動のできる優秀な男。
そんな男が、 


『――後は頼みます』


「――っ!」

最期の場面が、垣根の中で再生される。

(クソが。だったら、頼むのは俺じゃねえだろうが)

最後の希望を垣根に託し、ジョルノは逝った。

「どうかしたのか?」

「なんでもねえ。それよりもだ」

ジョルノの顔を脳裏から振り払い、垣根は続ける。

「テメエらのボス――ディアボロも見つけ次第、俺が殺す。そっちにも文句はねえな」

ブチャラティやジョルノの所属する組織『パッショーネ』のボスであり、リゾットにとっての仇でもある人物。
リゾットの部下であるソルベとジェラートを殺した実行犯は、先ほどリゾット自らが屠ったチョコラータであっても命令したのは間違いなくこちらだ。
もしリゾットが生き残っていたのであれば、間違いなく追い続けていただろう。

「ディアボロ――それがボスの名前か」

ブチャラティにとって、その名前を知るのはもう少し後の時間軸の話。
このブチャラティにとっては初めての事だった。

「ボスも、この殺し合いに巻き込まれていたとはな」

複雑な思いを抱えながら、ブチャラティは呟く。
ブチャラティにとって、参加者名簿の中で知っている相手はジョルノのみのはずであり、アリア達にもそう答えていた。
しかし、実際にはチョコラータやリゾット、そしてディアボロのような存在までいたのだ。

「そいつも俺の獲物だ。構わねえな?」

無念の思いを抱えて死んだリゾットの代理などという気持ちはない――つもりだ。
それに、垣根がディアボロに対して好印象を持っていなかったのは事実だ。
自身は安全圏から見下ろし、リゾットらに危険な仕事をやらせながらも冷遇した存在。それが、学園都市上層部とどこか重なっていた。

一方、ブチャラティにとって、ディアボロことボスは許せない存在ではある。

しかし、ボスを倒そうとしたのは、あくまでトリッシュを、そして仲間の安全のため。
さらには組織を牛耳り、麻薬を国や街から排除しようというジョルノの思いに共感したからだ。
ボスの命そのものには、そこまで執着はなかった。

最も、この殺し合いに参加しているというのであれば、ボスが大人しくしているはずはない。向こうから狙ってくるのであれば、別である。
その時は、絶対に排除する必要のある相手だ。

だが、少なくとも現状で自分から動く気はない
最も部下であるレオーネ・アバッキオがボスによって始末された後の時間軸から来ていたのであれば多少は優先順位が変わっていたかもしれないが。

「俺は無理にボスを狙う気はない。お前がどう動いても止めはしない」

その答えに垣根も「そうかよ」とのみ答えた後、

「それで、お前らの方こそこれからどうする気だ?」

「とりあえずは、彼――ライフィセットをどうにかする方法を探そうと考えている」

相変わらず眠り続けている、ライフィセットを見る。
先ほど意識を取り戻せていたのが奇跡か何かのように、再び深い眠りについている。

「そうですね。身体の欠損だけなら、何とかなる方法があるかもしれませんが……」

九郎の言う事は、決して気休めではなかった。
九郎の再生能力、さらにはブチャラティの知るジョルノのゴールドエクスペリエンスのように身体の部品をつくるような能力者もいる。
重傷であるライフィセットの身体を治す方法もあるかもしれない。

だが、問題は、

「これ、ですよね……」

ライフィセットの身体を蝕む強力なナニか――ビエンフー曰く彼の元の世界にあった穢れと呼ばれる存在に近いもの。

「ビエンフー。これはお前の知る穢れとやらに近えんだよな」

「そうでフね。全く同じとはいえないでフが……」

「その穢れっつうのは、器とやらと契約しちまえば何とかなるはずだな」

本来、聖隷と呼ばれる存在である彼は人が発する穢れは猛毒らしく、清純な存在である器と呼ばれる存在と契約する必要があるらしい。

「なら、話は簡単だ。聖隷契約とやらをしてみれば何とかなるかもしれねえぞ」

「ええ!? でも、これは単なる穢れとは明らかに違うでフ。そんな事をしても何とかなる保証はないでフよ?」

「このままなら、間違いなく死ぬぞ」

垣根の言葉に、ビエンフーも黙り込む。
何も手を打たず放置するか、何とかなる「かも」しれない手を打ってその可能性にかけるか。
その二択しかない。

「だが、俺達はその契約とやらのやり方を知らないぞ」

「いや、そのやり方ならここに書いてある。本来なら、対魔士とやらじゃねえとできねえらしいが、ここでは問題ないようだ」

ブチャラティの言葉に、垣根が数枚の紙片を差し出す。
それは、マギルゥの遺品を整理している時に、見つけたものだった。

『これを読んでいるという事は、儂は死んでいるというという事じゃろう。おお、何という悲劇、この大魔法使いの葬儀は盛大にするのじゃぞ! 具体的にはお主の全財産の半分くらいを使ってな♪』

そんなふざけた――マギルゥらしい書き出しからそれははじまっていたが、そこからの内容は真面目なものだった。

非常時に備え、万一の場合があった場合、シルバと契約するようになっている事。
スタンド使いのジョルノにはそれが難しい事。
先ほど、ビエンフーと話した推測通りの内容だ。

途中から、様々なパターンを想定した事が書かれてある。
今、実際にそうなったようにマギルゥとジョルノが死んで、垣根が生き残った場合。
マギルゥのみが死んだ場合。

そして今渡したのは、マギルゥと垣根が死んでジョルノが生き残った場合のパターンのものだ。
その場合のフリーになった聖隷――シルバを他の参加者と再契約する場合を想定して、聖隷と契約するための手順の説明が書かれてある。

それを垣根はブチャラティに手渡す。

「いいのか?」

「ああ。俺はもう目を通した。必要ねえよ」

「感謝する」

ブチャラティが受け取ったのを確認する。

「だが、契約とやらをしたところで何とできるかは……」

「それ以上は、俺は責任を持つ気はねえ」

そこまで言うと、垣根は立ち上がった。

「さて、とだ。話す事はこんなものか」

「行くのか?」

「ああ。悪いが、いつまでも仲良しこよしってのは性に合わねえ。ここから先は好きにさせてもらうぜ」

垣根からすれば、あの鬼舞辻無惨やディアボロを討ち、さらには主催者も討つ気でいる。
義理は果たし、情報交換もすませた以上、いつまでも病院に留まる気はなかった。

ここにいる面子で再び対主催チームを、という気も起きない。
あのメンバーこそが特別であり、他のチームなんて考えられない――というわけでもなかった。

単純なチームとしての相性の問題だ。
ジョルノやマギルゥの話からも聞いていたし、実際に出会ってからのやり取りでも分かったが、
ブチャラティはギャングではあるが、義侠の者。目の前で窮地に陥っている者を放ってはおけない。初見の相手であるライフィセットを窮地から救ったりした事からも分かる。
ライフィセットや九郎にしても、そちら側だろう。

垣根は悪党を自称しているし、必要のない鬼畜行為を行うような外道と呼ばれるまでに堕ちる気はないが、必要とあれば非道な手であろうが、垣根は取る気でいる。無惨やディアボロ、そして主催打倒のためなら手段を選ぶ気はない。

こうして情報交換を交わす程度ならば問題はないだろうが、長期的に行動を共にすれば、そういった事に対する意識のズレはいずれ綻びとなって出てくるだろう。

「それに、さっき言ってたテメエらの仲間。何かあれば伝言程度は伝えてやるよ」

「アリア達の事か?」

新羅が放送の後、どうなっているかは分からない。だが仮に二人とも、無事で何事もなかったにせよ、このまま池袋駅に向かわれても合流できないかもしれない。

「それなら、こちらに――病院に向かうように言ってもらえませんか?」

「……分かった」

九郎の言葉に垣根は頷く。
今の状態で、下手に病院から動くのは逆に危険だろう。
さらにいうなら、問題のセルティ・ストゥルルソンがこうなってしまった以上、池袋駅に集合する理由も一つ減っている。
首輪の解析についても必要がなくなったため、研究所に行く必要性も薄れた。

「ありがとうございます」

「あくまでついでだ。会えなかったとしても、文句言うなよ」

「いや、それでも感謝する」

今度はブチャラティが言う。

「それより、お前ら。こんな目立つところにいつまでも留まるつもりか?」

病院は、地図にも表記されており、遊園地や映画館などといった場所とは違い、怪我人の出やすいこの状況では人が集まりやすい。
事実、ブチャラティ達がここに来たのもそれが理由だ。

「そうせざるを得ないからな」

だが、ライフィセットの事がある以上、下手に動くわけにもいかない。
とはいえ、「乗った」側が来てしまえば、窮地に陥る事は間違いない。

(何か罠でも仕掛けておいた方がいいかもしれんな)

幸いにも、フレンダが色々と使えそうなものを持っていたはずだ。少なくとも足止め程度はできる罠を設置できるかもしれない。

垣根は「そうか」と頷いた後、続けて先ほどから、心配そうにライフィセットに付き添ったままの少年――シルバへと視線を動かす。

「それでお前はどうする気だ?」

「!!」

「俺は今言ったように、ここから去る。お前がそいつの所に残りたいなら、好きにしろ」

「え? いいの……?」

思わぬ言葉に、シルバは驚いたように目を瞬かせる。

「残りたいならはっきり言やいい。嫌がってる奴を無理に働かせても大した力にはならねえよ。敢えていうぞ、命令じゃねえ。お前の意思で選べ」

「……」

シルバは黙り込む。

暫しの沈黙の後、小さくだがはっきりとした言葉が出た。

「その、僕は2号と、ライフィセットと残りたい」

「そうか」

垣根の返答は短かった。
それに込められていたのはいかなる感情か――少なくとも、未だ幼いままのシルバには分からなかった。

「そ、その。また会える、よね……?」

そう言ったシルバに垣根は「違えよ」と修正する。

「……会えるか、じゃねえ。また会うんだよ。テメエ自身の力でな。邪魔な連中倒し続けてりゃあ、どうせそのうちまた会えるだろ」

「はい!」

そう頷いたシルバに背を向け、垣根は今度こそ病院を出ていった。

◇ ◇ ◇



「ま、待って欲しいでフ~」

病院を出た垣根は、背後から来たビエンフーの方を向く。

「ああ、そういえばお前もいたな」

「ひ、ひどいでフ!?」

今気づいたと言わんばかりの態度の垣根にビエンフーは近づいていく。

「一応、離れていても聖隷術とやらは問題なく使えるみてえだし、テメエも残ったところで別に良かったんだがな」

「そんな冷たい事言わないで欲しいでフよ……」

ビエンフーとて、旅の仲間であるライフィセットが心配でないはずがない。
重傷を負い未だ危機的状況にある状況にあるのだ。

だが、あちらにはブチャラティ・九郎・フレンダ、さらにはシルバが着いているのに対し、垣根は仲間を皆失って一人のままだ。

亡き主の意思もあるし、現時点の主でもある垣根をこのままにはできない。
それに、このまま放任しておけば何処かで誰にも知られずに亡くなりそってしまいそうであり心配だった。

が、それを口にする事はなかった。
それを口にする事は間違いなく垣根はそれを否定するだろうし、ビエンフーも素直に口にする事はできない。

「そういえばあの金髪の娘、一言も喋って来なかったでフね」

そんな思いを誤魔化すように、ビエンフーは何故か一言も喋ってこなかった少女の事を、ふと口にする。
何やら驚いたり、焦ったりしている様子はあったので、聖隷2号時代のライフィセットのように意思を封じられているというわけではないようだが。

「ああ、あいつは多分、俺の口から都合の悪い事を話されたくなかったんだろうな」

「ええ!? あの娘の事、知ってたんでフか?」

「アイツは、俺と同じ出身だ」

顔写真付きの参加者名簿にもしっかりと書かれてある。

フレンダ=セイヴェルン。
ここに来る直前――本当にここがメビウスとやらならそれも怪しくなるが――返り討ちにして、情報を引き出した「アイテム」の女。

「じゃ、じゃあ、どうして言わなかったんでフか!?」

「別に必要ねえからな」

フレンダを助けるつもりも、糾弾する気もなかった。
ただ、別に必要がないと判断した。それだけの事だった。

奴も学園都市の暗部組織の人間ではある。あの反応からして、おそらくブチャラティ達に全てを語っているわけではあるまい。ただの巻き込まれた一般人として振る舞っているのかもしれない。

垣根も学園都市の暗部の人間。
人の事をどうこう言うべき立場にないし、咎める資格もない。
そしてそれは、つい最近までカタギだったらしいジョルノはともかく、マギルゥやリゾットにしても同様のはず。

この会場に来る前の事など、どうでも良かった。
脱出の為に協力できる存在であるか、無惨のように邪魔な存在か、何の役にも立たない存在。
過去の事などどうでもよく、垣根にしても大事なのはそこだ。

問題なのはここに来てからの行動だった。
共闘ができ、主催者打倒という目的を持っていれば殺人者だろうがテロリストだろうがどうでも良い事だ。

故に、敵対する気がない限り放置。
それが、垣根の対応だった。

――最も、垣根は知らない。

ここに来てから、フレンダは様々な問題を起こしている事を。
流竜馬を罠に嵌めた事を。さらには、その竜馬の悪行をでっちあげ、他の参加者に広めていた事を。
そして、その悪行を知る参加者が各地で出始めていた事を。

最もそれを知ったところで、どうする気もなかっただろうが。

垣根はフレンダの事など、気にする事なく歩を進めていった。

【E-6/一日目/日中】

【垣根提督@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(小)、全身に掠り傷、強い決意
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3、ジョルノの心臓から生まれた蛇から取り出した無惨の毒に対するワクチン、ジョルノの首輪、マギルゥの首輪、妖夢の首輪、リゾットの首輪、ビエンフーテイルズ オブ ベルセリア@、土御門の式神(数個。詳しい数は不明)@とある魔術の禁書目録、マギルゥの支給品0~1、ジョルノの支給品0~3、顔写真付き参加者名簿、リゾットの支給品2つ
[思考]
基本方針: 主催を潰して帰る。ついでにこの悪趣味なゲームを眺めている奴らも軒並みブッ殺す。
0:とりあえず、大いなる父の遺跡の方角に向かいアリア達に伝言を伝える
1:あの化け物(無惨)は殺す。
2:リゾットの標的だったボスも正体を突き止めていずれ殺す。
3:未元物質と聖隷術を組み合わせた独自戦法を確立する。道中で試しながら行きたい。
4:異能を知るために同行者を集める。強者ならなお良い。
[備考]
VS一方通行の前、一方通行を標的に決めたときより参戦です。
※ジョルノ、リゾット、マギルゥの支給品も垣根が持っています。
※未元物質を代用した聖隷術を試しました。未元物質を代用すると、聖隷力に影響を及ぼし威力が上がりますが、制御の難易度が跳ね上がります。制御中は行動が制限されます。
※首輪の説明文により、自分たちが作られた存在なのではないかと勘繰っています。
※ブチャラティ達と情報交換をしました。

◇  ◇  ◇



「ああもう!」

フレンダは、一人で頭を抱えている。

「結局、状況は何も改善してないってわけよ……」

警戒も兼ねて外の見張りをしてきて欲しい、というブチャラティの頼みにより、病院の周囲を歩きながらぶつぶつ呟く。

自分を警戒しているであろうブチャラティが、自分を外して九郎と何か相談でもしたいのだろう――と想像はつくが、断る事もできずに従っていた。

「あの第二位が何も言わなかったのは助かったけど……」

垣根帝督――あの麦野が対抗意識を強く持っていた相手であり、学園都市の第二位。
何か自分の不利益になるような事を言いだすのではないかと、ずっとハラハラしていたが、特にそんな事はなかった。

「とにかく、何か考えないとまずいってわけよ」

ふう、と一つ息をついてから、先ほどまでの会話を頭の中でまとめる。

様々な情報が彼らの間で飛び交っていたが、フレンダは最後まで口一つ挟む事はしなかった。

放送が流れ、この会場で知り合った彩声の退場を知ってもそこまで心は動かない。第一回放送で亡くなっていたのであれば、自分のせいかもという罪悪感も多少はあったかもしれないが、第一回放送の時点では生き残っていた。
おそらく自分とは無関係の原因で亡くなったのだろうと素早く割り切る事にした。

同じ『アイテム』である絹旗の退場を知っても、弔いどころか驚きの言葉すら口にする事はできなかった。
何せ、自分の知り合いは浜面と滝壺のみだと、ブチャラティと九郎には話してしまっている。
ライフィセットの口から、麦野らしき人物について触れられた時も同様だった。

何かしら矛盾が出てしまえば、自分が窮地に追いやられる。
レインの時も、もう少し大人しく立ち回っていれば、もっとうまくやれたかもしれないという後悔もあった。

(なんだってこんな事に……)

放送によれば、あの流竜馬も平和島静雄もレインも未だに存命。
あれから既に何時間も経っているのだ。逆に自分の悪評を他の参加者にバラまかれている可能性は高い。
時間が経てば経つほど、自分の首は絞まっていくだろう。

竜馬を嵌め、悪評をばらまいていった行動は完全に裏目に出てしまっている。

さらには、麦野はあの化け物とさらにもう一人と手を組んでいる可能性が高い。
それだけでも問題なのに、向こうが気づいているかは分からないが、その麦野から獲物を搔っ攫うような真似の手伝いをしてしまったのだ。
もしバレていれば、マズい。とてつもなくマズい。

その上で、自分の失態の尻拭いなど頼めるはずがない。
もはや麦野との合流という選択肢も潰れてしまったに等しい。

退路は完全に塞がれ、頼れる味方もいない。
こうなると、残された手段は。

(ブチャラティ達に本当の事を話して、守ってもらう?)

竜馬ならわからないが、ブチャラティも九郎も問答無用に自分を処断するような真似はしないだろう。付き合いは短いがそれは分かる。
曲がりなりにも、ライフィセット救出の際には役立ったのだ。その功績もある。

だが、それでも今後の行動に大きく制限をかけられるかもしれないし、再度裏切ったり出し抜く事は絶望的になるかもしれない。

やっぱり、それはやめてこれまで通りにうまく立ち回ろうとするべきか。
そう考えた時、


『俺は生きたいと願う気持ちは否定しない。だから考えろ。犯した罪にどう向き合うかは、きみ次第だ』


不意に、第一回放送で散ったあの炎の男の言葉が脳裏に蘇る。

あの後、結局は竜馬や静雄への謝罪という道を取る事はできなかった。そして、その後にあったシグレ達に、そしてブチャラティ達に本当のことを言う事なくズルズルきてしまい、気がつけばこの状態だ。
まるで、真綿で首でも絞められているかのように、じわじわと追い詰められ、取れる選択肢を失い続けてきている。

(私は――)

悩むフレンダだが、その結論を出すまでに考える時間はあまり残っていないかもしれない。

なぜなら竜馬からフレンダの悪行を知らされた、博麗霊夢とカナメがこちらに近づいてきているのだ。

彼女に残された決断までのタイムリミットは、決して長くなかった。

「フレンダさん、大丈夫でしょうか……」

垣根とビエンフーに続き、フレンダも外に出ているため、一気に人口密度の下がった部屋で九郎は呟く。

この「大丈夫」というのは、フレンダの事を心配しての言葉ではあるが「何かしでかすのではないか」という警戒心からの意味も含まれている。

垣根との情報交換の間もフレンダは挙動不審な様子であり、ブチャラティほど警戒していなかった九郎からみても、明らかに怪しかった。

「何事もなければ、それに越した事はないのだがな」

ブチャラティとしても、フレンダがシロだというのであればそれに越した事はない。
だが、あまりにも怪しい言動が多かった。
かといってクロだという確定的な証拠があるわけでもなく、現状ではこうやって行動を共にしながらも警戒し続ける事しかできない。

「腹を割って話す事ができれば良いんだが、そう簡単にはいかんな」

結局のところ、今のままではフレンダは「とても怪しい」止まりなのだ。
何か隠し事をしているようだが、無理に暴くわけにもいかない。

「それよりも、当面の問題は」

「ええ」

二人の視線が、未だに眠り続けるライフィセットに向けられる。
シルバも不安そうにそのそばにいる。

先ほど、意識を取り戻せていたのが嘘のように深く苦し気な眠りだ。
傷口への手当はしたものの、黒い火傷のような穢れは消えておらず、誰がどうみてもまずい状態だ。

「問題はこの穢れ、というのに近いコレを何とかする必要がある事ですね」

「ああ、聖隷契約とやらは俺では難しいらしいが……」

垣根らの説明によるとスタンド使いでは、聖隷契約ができない可能性が高い。
かといって、色々と疑わしい事が多いフレンダにやらせるわけにもいかない。

となれば、消去法で九郎という事になるが、その場合も問題がないわけではない。

聖隷の器とは、聖隷が穢れないよう本来は清純さを維持した存在がなるものらしい。
だが九郎は人ならざる者であり、妖怪やら物の怪などと言われる存在からも異常な存在らしい。
不死の力や、こちらに来てから使えないとはいえ未来予知の力もある。
そんな存在と契約を結んでしまえば、どんなイレギュラーな事態になるかわからない。

「そうですね。いざとなったら僕がするしかないでしょう」

だが、それでも試さないと確実にライフィセットは死ぬだろう。
ハイリスクだろうが、躊躇っているうちに死にましたなどという事は避けなければならない。
今は応急処置をしつつ、何とか延命させているがいつまで持つかもわからない。

「そうだな。絶対に助けなければ」

ブチャラティにとって、幼い子供のような存在は絶対に守るべきものだ。

あのように、強い意思を見せた存在であればなおさら。
ブチャラティは知らないが、ライフィセットの間にはある共通点があった。それは、ある人物と出会うまで両者ともに「生きて」いなかった。

ライフィセットは、意思の封じられた聖隷2号として、そこに自分の意思は存在せず、主であるテレサに従うだけの生きながら生きていない状態。
ブチャラティはジョルノと出会うまで、麻薬を憎みながらも麻薬を売る
パッショーネの一員として活動するという矛盾を抱えながらも生きながらも死んだ状態だった。

そんな状態からライフィセットはベルベットと、ブチャラティはジョルノと出会う事によって再び「生きる者」となったのだ。
そういった事からの、無意識でのエンパシーでもあった。

「ところで九郎。お前の言う鋼人七瀬とやらは、最後は消滅したんだったよな」

ライフィセットの件もあるが、あの魔王ベルセリアへの対策も必要だった。
今は後回しにしても、いずれは対処する必要がある。

「はい。ですが、鋼人七瀬は無から生まれた存在ですので、今回のケースとはだいぶ違っていますが」

鋼人七瀬は桜川六花が無から生み、育てた存在だ。
あくまで、何かしらの外付けの力があったらしい、このケースとは異なっている。

だが仮に。
ベルベット・クラウが、完全に別の存在と成り果てた時、魔王ベルセリアの消滅はベルベット・クラウの消滅と同義になるかもしれない。

これはもちろん、仮定に仮定を重ねた話だ。
実際にどうなるかは分からない。

(その時に、最悪の場合は――)

もし、彼がここまで慕うベルベットを元に戻す方法がなかったとしたら。 
あるいは、消滅という手段でしか残されていなかったとしたら。

(――すまない)

わずかな会話だけでもこの少年がベルベットという女をどれだけ慕っているかはわかる。
だが、あれは放置するにはあまりに危険だ。
その時は、この目の前の少年にどれほど怨まれようと決断を下すしかない。
そうブチャラティは密かに決意していた。

【D-6/病院/一日目/日中】


【フレンダ=セイヴェルン@とある魔術の禁書目録】
[状態]:全身にダメージ(小)、心痛、右耳たぶ損傷、頬にかすり傷。衣服に凄まじい埃や汚れ、腹下り(極小)。
[服装]:普段の服装(帽子なし)
[装備]:麻酔銃@新ゲッターロボ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、『アイテム』のアジトで回収できた人形爆弾×2他、諸々(その他諸々の内パラシュート3つと、入っていた全てのばくだんいし@ドラゴンクエストビルダーズ2は使用済み)。レインの基本支給品一色、やくそう×2@ドラゴンクエストビルダーズ2、不明支給品1つ(確認済み)、鯖缶複数(現地調達)
[思考]
基本方針:とにかく生き残る。現状は首輪の解除を優先するが、優勝も視野には入れている
0:ブチャラティ達にこれまでの事を話す?
1:ブチャラティは要注意。ボロを出さないようにしないと。
2:煉獄の言う通りに竜馬と出会うことがあれば、謝る?
3;麦野との合流は、諦めた方がいいかも…
4:絹旗、彩声、死んじゃったんだ…でも、私のせいじゃないよね?
5:煉獄、死んじゃったんだ…


【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
[状態]:疲労(小)、フレンダへの疑念(中)、強い決意
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3、スパリゾート高千穂の男性ロッカーNo.53の鍵) サーバーアクセスキー マギルゥのメモ
[思考]
基本:殺し合いを止めて主催を倒す。
0:ライフィセットの容態を何とかする。
1:放送を聞いた新羅への不安と、アリアへの心配。何とか合流したい。
2:病院に何か罠でも仕掛けておいた方がいいかもしれない。
3:魔王ベルセリアへの対処。
4:余裕ができてから高千穂リゾートを捜索。
5:フレンダを警戒。彼女は何かを隠している。
6:あかり、高千穂、志乃、ジョルノ、カナメ、シュカ、レイン、キースの知り合いを探す。
7:カタリナ・クラエスがどのような人間なのか、興味。
[備考]
※ 参戦時期はフーゴと別れた直後。身体は生身に戻っています。
※ 九郎、新羅と知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 
※ 新羅から罪歌についての概要を知りました。
※ 垣根と情報交換をしました。


【桜川九郎@虚構推理】
[状態]:健康 静かに燃える決意、魔王ベルセリアに対する違和感
[服装]:ホテルの部屋着
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~3
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
0:ライフィセットの容態を何とかする。
1:あの彼女(魔王ベルセリア)、何とかしかければ……。
2:フレンダは、念のため警戒。
3:岩永を探す
4:ジオルドを始めとする人外、異能の参加者、流竜馬、仮面の剣士(ミカヅチ)を警戒
[備考]
※ 鋼人七瀬編解決後からの参戦となります
※ 新羅、ジオルドと知り合いの情報を交換しました。
※ アリア、ブチャラティと知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 
※ 新羅から罪歌についての概要を知りました
※ 魔王ベルセリアに対し違和感を感じました。
※ 垣根と情報交換をしました。


【ライフィセット@テイルズ オブ ベルセリア】
[状態]:気絶、穢れによる侵食(重大)、両腕欠損、全身のダメージ(大)
[服装]:いつもの服装
[装備]:ミスリルリーフ@テイルズ オブ ベルセリア(枚数は不明)
[道具]:基本支給品一色、果物ナイフ(現実)、不明支給品2つ(本人確認済み)本屋のコーナーで調達した色々な世界の本(たくさんある)、シルバ@テイルズ オブ ベルセリア
[思考]
基本:ベルベットを元に戻して、殺し合いから脱出する
0:(気絶中)
1:ブチャラティ達と行動する
2:ムネチカへの心配
3:ベルベットの同行者(夾竹桃、麦野)への警戒
4:ロクロウ達との合流
5:エレノア……。
[備考]
※参戦時期は新聖殿に突入する直前となります。
※異世界間の言語文化の統一に違和感を持っています。
※志乃のあかりちゃん行為はほとんど見てません。
※魔王ベルセリアによる穢れを受けた影響で、危険な状態です。このまま何の処置もせず放置すれば確実に死ぬでしょう。
※呼ばれた時間に差がある事に気づきました。
※マギルゥの死に関してまだ聞いていません。

前話 次話
カウントダウン 投下順 Revive or Die Again(前編)

前話 キャラクター 次話
最後に笑うは 垣根帝督 ギャクマンガ虚獄 ~ムギノインパクト~
Liber AL vel Legis -THE WORLD REVOLVING- ブローノ・ブチャラティ 過去が今、私の人生を収穫に来た
Liber AL vel Legis -THE WORLD REVOLVING- 桜川九郎 過去が今、私の人生を収穫に来た
Liber AL vel Legis -THE WORLD REVOLVING- フレンダ=セイヴェルン 過去が今、私の人生を収穫に来た
Liber AL vel Legis -THE WORLD REVOLVING- ライフィセット 過去が今、私の人生を収穫に来た
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