「―――おい、ガキンチョ。」
殺風景とも、戦火の後とも形容出来る電車内の惨状が、全くもない唯一の車両の中。
黒髪のセーラー少女が、飼いならされた犬のように懐き、恍惚の表情で頬を赤らめる大人の女性を膝枕しているという、甘ったるい百合小説の様な光景を睨みながら。
麦野沈利は殺意にも似た鋭い眼光を以て、夾竹桃へと話しかけてきた。
黒髪のセーラー少女が、飼いならされた犬のように懐き、恍惚の表情で頬を赤らめる大人の女性を膝枕しているという、甘ったるい百合小説の様な光景を睨みながら。
麦野沈利は殺意にも似た鋭い眼光を以て、夾竹桃へと話しかけてきた。
まず、さっきまで殺りあってた片割れの、犬っころのような耳の女が、人の知らぬ所で愛玩動物みたいな事になっていると来た。
主に殺したいとは思っていたが、ここまで『壊された』ようでは殺す気分も削がれるというもの。
その手の"モノ"を売買しているであろう雑貨家業(デパート)なら先ず金を生む果実として回収しそうではある。
今からでも歯向かってくるなら殺しがいはあっただろうが、こうなってしまっては興が醒める。せいぜい偽りの幸せの中でボロ雑巾になるまで利用されていろ、という事だ。
まるで淫獣だな、と心の内で吐き捨てながらもその他諸々の事を後回しにしてでも、夾竹桃に聞かなければならないことがあった。
主に殺したいとは思っていたが、ここまで『壊された』ようでは殺す気分も削がれるというもの。
その手の"モノ"を売買しているであろう雑貨家業(デパート)なら先ず金を生む果実として回収しそうではある。
今からでも歯向かってくるなら殺しがいはあっただろうが、こうなってしまっては興が醒める。せいぜい偽りの幸せの中でボロ雑巾になるまで利用されていろ、という事だ。
まるで淫獣だな、と心の内で吐き捨てながらもその他諸々の事を後回しにしてでも、夾竹桃に聞かなければならないことがあった。
「……穏やかじゃないわね。でも、まあ、……選択肢なんて無いんだろうけれど。」
夾竹桃とて、いつか問い詰められるとはわかっていた。
渋谷駅の一件において、麦野沈利とベルベット・クラウは戦闘最中に気を失った。
あの真実を未だ知らない他に、麦野沈利としては魔王の誕生という一点において懸念すべき材料が増えている。
水面下での状況の転移、目覚めてそこまで時間が経ってはいないが、魔王の誕生によって麦野沈利にとっても無視できない――更に言えば、これは麦野沈利個人の夾竹桃に対する印象も関連している。
渋谷駅の一件において、麦野沈利とベルベット・クラウは戦闘最中に気を失った。
あの真実を未だ知らない他に、麦野沈利としては魔王の誕生という一点において懸念すべき材料が増えている。
水面下での状況の転移、目覚めてそこまで時間が経ってはいないが、魔王の誕生によって麦野沈利にとっても無視できない――更に言えば、これは麦野沈利個人の夾竹桃に対する印象も関連している。
「わかってるじゃねぇか。……勿論、てめぇの返答次第じゃその顔に綺麗な大穴空けてやるつもりだったがな。」
「あら怖い。」
不敵に笑みを浮かべ、理解も納得もできていると、一応の納得の態度に悪態をつく。
この夾竹桃はいつもそうである。年頃に似合わず……いや、学園都市の裏ではよくあるミステリアスなガキの様相。スギライトの輝きで満ちた瞳は、言葉に似合わず麦野沈利と言う暴虐独尊の女王を前にしても震え一つ起こしていない。
ゆっくりと車体を揺らす無限列車とは違い、この車両は静寂という緊張だけが満ちていた。
この夾竹桃はいつもそうである。年頃に似合わず……いや、学園都市の裏ではよくあるミステリアスなガキの様相。スギライトの輝きで満ちた瞳は、言葉に似合わず麦野沈利と言う暴虐独尊の女王を前にしても震え一つ起こしていない。
ゆっくりと車体を揺らす無限列車とは違い、この車両は静寂という緊張だけが満ちていた。
「……内容の予想は出来るけれど、これでも気を使うつもりはあるのよ。あなた自身にも関わるわけだし。……それでもいいのかしら?」
今更気遣いなんぞ必要ねぇ、と再び睨む。
その様子だと本当に碌でもない、知ってる当人はともかく、他にとっては重要であろう情報。
その様子だと本当に碌でもない、知ってる当人はともかく、他にとっては重要であろう情報。
「勿体ぶらずに話しやがれ。そんな覚悟無かったらこんなこたぁ訪ねてねぇんだよ。」
「………。」
「………。」
睨み、というよりも麦野沈利の視線は殺意のそれであった。
一歩でも足を運べば直ぐ様に滅殺の光が差して丸焼きバーベキューの出来上がりに為りかねない。
生死の境界線を目の前に、悠然と、冷然に、麦野沈利の姿を見つめ夾竹桃という少女は落ち着いたまま、口を開いた。
一歩でも足を運べば直ぐ様に滅殺の光が差して丸焼きバーベキューの出来上がりに為りかねない。
生死の境界線を目の前に、悠然と、冷然に、麦野沈利の姿を見つめ夾竹桃という少女は落ち着いたまま、口を開いた。
「簡潔に言わせてもらうわ。あなたが気を失っていた後、結果として主催の連中は取り逃がした。その後に彼女……『岩永琴子』から、この世界が仮想で、私たちはデータ上の人物だって……あくまで彼女の考察よ。」
婉曲も欺瞞も忌憚も一切なく、ただ真実だけを告げた。
この事実を、夾竹桃こそは気にも留めなかった。気にしなかった、というわけではない。
勿論この内容を何れ話さなければいけない場合のデメリットも考慮していた。このまま真実を終盤まで知らないまま行けばよかったが、それで済むなら苦労はしていない。
麦野沈利もベルベットも凡そ感情論の人間だ。前提を覆され、あまつ操り人形に等しい事実に、癇癪を起こされては溜まったものではないからだ。
この事実を、夾竹桃こそは気にも留めなかった。気にしなかった、というわけではない。
勿論この内容を何れ話さなければいけない場合のデメリットも考慮していた。このまま真実を終盤まで知らないまま行けばよかったが、それで済むなら苦労はしていない。
麦野沈利もベルベットも凡そ感情論の人間だ。前提を覆され、あまつ操り人形に等しい事実に、癇癪を起こされては溜まったものではないからだ。
「…………。」
予想に反し、麦野沈利は微かに眉を動かした以外は黙って頷き、考え込む。
間違いなく存在意義に関わる、予想とは言えその事実に対し冷静でいられるかどうか、夾竹桃の見立てでは麦野沈利は冷静ではいられない、とは思っていたのだから。沈黙の後、麦野沈利の問いが出た。
間違いなく存在意義に関わる、予想とは言えその事実に対し冷静でいられるかどうか、夾竹桃の見立てでは麦野沈利は冷静ではいられない、とは思っていたのだから。沈黙の後、麦野沈利の問いが出た。
「……それは、主催のクソどもの関係者もか?」
「……どういうこと?」
夾竹桃が確認した限り、殺し合いの説明時にいたテミスとμ。それに加えリック、セッコ、そして黒い骸骨の仮面を被った男の計五名。
岩永琴子の考察である『平行世界の人間の情報をインストールされた同一世界の人間』において、殺し合いの主導であるあれらも本当に参加者と同じ条件か、という別視点での初歩的な疑問ではある。
が、それでも夾竹桃としても少しばかり驚いた。というよりも、よく考えれば思い浮かぶことを、抜け落ちていた、というべきか。
岩永琴子の考察である『平行世界の人間の情報をインストールされた同一世界の人間』において、殺し合いの主導であるあれらも本当に参加者と同じ条件か、という別視点での初歩的な疑問ではある。
が、それでも夾竹桃としても少しばかり驚いた。というよりも、よく考えれば思い浮かぶことを、抜け落ちていた、というべきか。
「クソ女二人に、クソ骸骨野郎と地雷を置いたやつ、そして地面から這い出てきた野郎。……いや、後者3つはどうでもいい。……このクソッタレな催しがクソ女二人主導でやってるかどうかって話だ。」
なるほど、と夾竹桃は思う。
前提として、参加者たちの視点において殺し合いの『主導』というのはテミスとμの二人に絞り込まれる。
ここが仮想世界であり、彼女らが現実で仮想世界の運営を行っている、というのなら。
つまりは、基底となる仮想世界の生み出し元が『テミスのいる世界』か、もしくは『μが存在する世界』の2つへと絞られる訳となる。
μという存在そのものが、仮想空間における一種の管理人(アドミニストレータ)の権限を用いる電子存在であり、そんな彼女を制御しているのがテミスということならば。
取捨選択として『テミスのいる世界へμが呼ばれたか』、『μがいる世界にテミスが呼ばれたか』、この二択となるのだ。
もしここが、夾竹桃が知恵の神一行から得た情報通りの『μがいる世界にテミスが呼ばれたか』なら、この世界が仮想空間メビウスである可能性は濃厚となる。
前提として、参加者たちの視点において殺し合いの『主導』というのはテミスとμの二人に絞り込まれる。
ここが仮想世界であり、彼女らが現実で仮想世界の運営を行っている、というのなら。
つまりは、基底となる仮想世界の生み出し元が『テミスのいる世界』か、もしくは『μが存在する世界』の2つへと絞られる訳となる。
μという存在そのものが、仮想空間における一種の管理人(アドミニストレータ)の権限を用いる電子存在であり、そんな彼女を制御しているのがテミスということならば。
取捨選択として『テミスのいる世界へμが呼ばれたか』、『μがいる世界にテミスが呼ばれたか』、この二択となるのだ。
もしここが、夾竹桃が知恵の神一行から得た情報通りの『μがいる世界にテミスが呼ばれたか』なら、この世界が仮想空間メビウスである可能性は濃厚となる。
「この仮想世界、いや。私達の情報がある世界は、『テミスのいる世界』もしくは、『μが生まれた世界』ということになるのね?」
「一応は、まず前提はこれとしてあたしは考えている。じゃあ次だ。平行世界の情報ってはどうやって手に入れる?」
「……私の聞いた話だと、μ単体にそういう平行世界の移動が出来るだとか、干渉できるだとかは否定されてたわね。となると……テミスの方が怪しいのかしら?」
「もしくはそいつの裏にいるやつら、か。あれであのクソ女も情報体だった、ってならお笑い草だがな。」
麦野が軽く笑う。テミスもまた自分たちと同じく、と言う可能性も捨てきれない。
ともかく『テミスのいる世界』と『μの生まれた世界』が、この殺し合いの仮想世界の基底である現実世界が前提となりうる。その上で、次に把握すべきは―――。
ともかく『テミスのいる世界』と『μの生まれた世界』が、この殺し合いの仮想世界の基底である現実世界が前提となりうる。その上で、次に把握すべきは―――。
「次に、あたし達の情報はどこで手に入れた? 本か? 聞き伝えか? ゲームか? マンガか? アニメか? 小説か? ……そんな程度で再現できるわけねぇだろ。」
その言葉には、間違いなく憤怒が、煮え滾り沸き立つ活火山の如き赫怒が秘められた言葉だった。
表面上冷静だと思いきや、間違いなく中身は熱り立っている。まあ、そうでなければ麦野沈利がないのだが、と、不謹慎な感情を夾竹桃は唾に飲み込んで忘れることにした。
表面上冷静だと思いきや、間違いなく中身は熱り立っている。まあ、そうでなければ麦野沈利がないのだが、と、不謹慎な感情を夾竹桃は唾に飲み込んで忘れることにした。
それはともかく、麦野の言葉には一理がある。情報の観測、もとい入手手段にも多種多様はある。それが前提として、平行世界の一人物の個人情報を完璧に再現できる、となるならば。
「AIに特定住民を観測させてそいつらの情報全部手に入れろって命令してみろ、ショート確定だろ。まず不可能に決まってる。たとえそれが平行世界へ観測できるやつだろうと、な。」
μのスペックは聞いていた。仮想世界の住人への異能の授与及び記憶操作等。まさに女神の権能にふさわしい力だ。そもそもμという単語の由来はギリシャにおける詩と音楽の神であるミューズから成り立っている。仮想世界の管理人、運営者。いわば神と同義である存在として名をつけるならばこれ以上の名付けは存在しないだろう。
だが、それほどのスペックがあったとして、『平行世界への観測・干渉からの、特定住人の情報の完全な入手を得ての再現』が出来るのだろうか。……答えは、否となる。
まず、情報の入手手段として、観測だけではどうにもならない、という点だ。もしテミスがその手段を得ていたとしても、細部までの情報を、その個人の知る知らないまでをも判別出来るのか?
だが、それほどのスペックがあったとして、『平行世界への観測・干渉からの、特定住人の情報の完全な入手を得ての再現』が出来るのだろうか。……答えは、否となる。
まず、情報の入手手段として、観測だけではどうにもならない、という点だ。もしテミスがその手段を得ていたとしても、細部までの情報を、その個人の知る知らないまでをも判別出来るのか?
「そうさ、無理に決まってんだろ。それにな、平行世界を観測して、干渉する手段ってのがあるなら、出来なくはないだろ? ……その世界の住人を使って、だ。」
「……それ、私達の中身だけこの仮想世界に連れてこられて、生身の体は眠ったままだとか、そう言いたいの?」
「その可能性もなくはねぇ、って話だ。そいつの情報を完璧にするならわざわざ不完全な情報よりはより確実性はあるだろ。」
その発想は、思いつかなかったかもしれない。
平行世界の情報を観測し、それを入手する。干渉できるという事象がそれと同義であれば、その世界の住民を金なり物欲なりで釣り上げて、彼らを使い何かしらの手段で参加者候補を眠らせ、その中身を仮想世界へ引きずり込ませれば良い。
いや、そんなものよりも効率のいい方法はある。歌を響かせる人工知能、μ、平行世界への干渉。そうだ、簡単じゃないか。
平行世界の情報を観測し、それを入手する。干渉できるという事象がそれと同義であれば、その世界の住民を金なり物欲なりで釣り上げて、彼らを使い何かしらの手段で参加者候補を眠らせ、その中身を仮想世界へ引きずり込ませれば良い。
いや、そんなものよりも効率のいい方法はある。歌を響かせる人工知能、μ、平行世界への干渉。そうだ、簡単じゃないか。
「私たちがここに呼ばれる前に、歌を聞いていた可能性は?」
「……へぇ、その発想はなかったな、ガキんちょ。」
歌。もしくは特定の人間以外の可聴域では聞き取れないような『音』を用い、そのようなやり方が出来たのならば。
否定は、出来ない。まずリュージなる人物のいた世界におけるダーヴィンズゲームの参加者はシギルという異能を用いていたし、麦野沈利の居た世界に、精神感応に特化したレベル5能力者がいるという話だ。
間違いなく、平行世界から情報を取得したりとか、平行世界の人間を物品対価で利用してだとか、よりは間違いなく手間もリスクもかけずにすむ。
μ単体にそれがどこまで出来たか、という疑問はあるが、人の精神に働きかける類の異能力を、テミスが所有していたとしたら話は別だ。
恐らくμ単体では、仮想世界の住人の精神には干渉は出来こそ、現実世界の住人の精神に対し真の意味で干渉は出来ない。
そこで、仮にテミスが精神干渉系の異能を保持しているという前提で、その効能をμの歌声に付与したとしよう。
おそらくデモンストレーションのようなことはやっていたのだろう。それは対象を気絶させ、精神を引き込むというやり方ではなく、対象をどれぐらいに操作することが出来るかという前提で。
それで無自覚なスタッフは完成だ。高位の精神能力者でなければ『声』を聞いた瞬間にアウトとなる。耳を潰すというイカレた手段を取らない限りは確実だ。
対象に対し『精神を引き込む歌』を聞かせ、気絶した生身は事前に用意した『スタッフ』にでも適当なところに身柄を運ばせてやればそれでいい。
否定は、出来ない。まずリュージなる人物のいた世界におけるダーヴィンズゲームの参加者はシギルという異能を用いていたし、麦野沈利の居た世界に、精神感応に特化したレベル5能力者がいるという話だ。
間違いなく、平行世界から情報を取得したりとか、平行世界の人間を物品対価で利用してだとか、よりは間違いなく手間もリスクもかけずにすむ。
μ単体にそれがどこまで出来たか、という疑問はあるが、人の精神に働きかける類の異能力を、テミスが所有していたとしたら話は別だ。
恐らくμ単体では、仮想世界の住人の精神には干渉は出来こそ、現実世界の住人の精神に対し真の意味で干渉は出来ない。
そこで、仮にテミスが精神干渉系の異能を保持しているという前提で、その効能をμの歌声に付与したとしよう。
おそらくデモンストレーションのようなことはやっていたのだろう。それは対象を気絶させ、精神を引き込むというやり方ではなく、対象をどれぐらいに操作することが出来るかという前提で。
それで無自覚なスタッフは完成だ。高位の精神能力者でなければ『声』を聞いた瞬間にアウトとなる。耳を潰すというイカレた手段を取らない限りは確実だ。
対象に対し『精神を引き込む歌』を聞かせ、気絶した生身は事前に用意した『スタッフ』にでも適当なところに身柄を運ばせてやればそれでいい。
「あのクソ歌姫の力を、誰かが超能力レベルまで開発……いや改造でもしたか?」
ただ観測・干渉するだけ。大した事はしていない。ただ『声』さえ聞かせればそれでいい。
異能を付与した歌声、それを他の異世界における参加者となり得る対象のみに聴かせる。身柄を確保し、その精神のみを仮想空間へと引きずり込む。
もし仮に当人を身柄を運び器具等で仮想空間へと接続させるという回りくどい手段も思いつくが、それについては可能性の低さから保留となる。
異能を付与した歌声、それを他の異世界における参加者となり得る対象のみに聴かせる。身柄を確保し、その精神のみを仮想空間へと引きずり込む。
もし仮に当人を身柄を運び器具等で仮想空間へと接続させるという回りくどい手段も思いつくが、それについては可能性の低さから保留となる。
「その理論だと、μの力に別のものを『外付け』しているって事になるわよね。……今の私達、一応仮想世界のデータ存在よね。」
ここで、ふと思い返す。
データ存在、という事は『データを直接手に入れる』手段があるならば、そのデータを自らが吸収して己が力とする手段が確立できるのではないか。
そうだ、そういえば。ベルベット・食らうは『喰魔』だ。業魔を喰らって、その力を手に入れることが出来る希少な存在だ。
データ存在、という事は『データを直接手に入れる』手段があるならば、そのデータを自らが吸収して己が力とする手段が確立できるのではないか。
そうだ、そういえば。ベルベット・食らうは『喰魔』だ。業魔を喰らって、その力を手に入れることが出来る希少な存在だ。
「……麦野、あなたはベルベットをレベル6って言ってたけれど。」
「あいつは、あたしの原子崩しを『喰らった』。」
ベルベットの変貌が、それをトリガーとするのならば。
ベルベットの覚醒が、『他の世界の情報』を喰らった事によることならば。
それをベルベットが、正しい意味で理解し、『使いこなす』までに進化したというのならば。
ベルベットの覚醒が、『他の世界の情報』を喰らった事によることならば。
それをベルベットが、正しい意味で理解し、『使いこなす』までに進化したというのならば。
「……こっからだ本題だ、ガキ。」
そして、確信への一つの考え。主催のからくりがそうであるという前提で。
喰魔としての本質が、この仮想世界において『情報を捕食し取り込む』という形で再現したベルベットという存在が。
今となって魔王を名乗る程に進化したベルセリアという怪物は。
喰魔としての本質が、この仮想世界において『情報を捕食し取り込む』という形で再現したベルベットという存在が。
今となって魔王を名乗る程に進化したベルセリアという怪物は。
「てめぇの話から推測も併せてだが。今のあいつは『贄の一つ』だ。いや、ただの贄だけならまだましだっただろうな。それと同時に『蒐集の器』になりやがったなら。」
「……なんですって? 贄にして、同時に器って?」
夾竹桃も、これには驚いた。
贄、つまり魔王に進化したベルベットですら『生贄』過ぎないのか。いや違う。そういうことじゃない。先の考察では、μの歌声に別の異能を『付与』させたという推測があった。
つまり、ベルベットのあれもそれに似て非なるものだというのなら。
贄、つまり魔王に進化したベルベットですら『生贄』過ぎないのか。いや違う。そういうことじゃない。先の考察では、μの歌声に別の異能を『付与』させたという推測があった。
つまり、ベルベットのあれもそれに似て非なるものだというのなら。
「まあ贄ってだけなら、もう何人か生まれてるかもな。簡単な話だ、別の情報(いのう)同士をかけ合わせりゃ良いんだからよ。」
「―――!?」
つまり、魔王級にまで届かなくとも、偶発的に、あるいは意図的に、異なる世界の異能とカテゴライズされている情報、もしくはそれに連なる現象を掛け合わせ、使いこなせた者が覚醒者の条件となるなら。
現実世界はこうはいかない。だがここは仮想世界だ、仮想世界では現象も異能もデータとして一括されている。予期せぬ反応を、上の連中は待ち望んでいるのだ。
その上で、『贄』だ。混ぜ合わせ、純化された力をもしもμの異能として『付与』出来るのなら?
生まれた情報を異能として、μに取り込ませることが出来るのなら。手段はどうする? 何を言っている、この会場が仮想世界なら、テレビの電源を落とすように、データだけを抜き取ってしまう手段など山ほどあるだろう。それが、この『世界で生まれたモノ』というのなら、正にさもありなん、である。
現実世界はこうはいかない。だがここは仮想世界だ、仮想世界では現象も異能もデータとして一括されている。予期せぬ反応を、上の連中は待ち望んでいるのだ。
その上で、『贄』だ。混ぜ合わせ、純化された力をもしもμの異能として『付与』出来るのなら?
生まれた情報を異能として、μに取り込ませることが出来るのなら。手段はどうする? 何を言っている、この会場が仮想世界なら、テレビの電源を落とすように、データだけを抜き取ってしまう手段など山ほどあるだろう。それが、この『世界で生まれたモノ』というのなら、正にさもありなん、である。
「つまり、もう生まれてるの? ……ベルベット以外にも、『異なるモノを複合させた力に目覚めた』参加者が。」
「かもな。……狩りがいがあるだけ、こっちとしてはまあ良いとは思ってるがよ。が。」
女神の贄。アルテミスの怒りを鎮めるがために自らを捧げたアウリスのイーピゲネイアのように。
力あるものは、女神の贄として捧げられる、現実を侵す歌を齎す供物として、女神の権能をより強固にし、電子という位相を超え現実へと顕現しかねない。
女神がその気ならば、その歌は平行世界全てを侵し、捻じ曲げる事ができる。それこそ、彼女のいるメビウスでその権能を振るうのと同じように。
力あるものは、女神の贄として捧げられる、現実を侵す歌を齎す供物として、女神の権能をより強固にし、電子という位相を超え現実へと顕現しかねない。
女神がその気ならば、その歌は平行世界全てを侵し、捻じ曲げる事ができる。それこそ、彼女のいるメビウスでその権能を振るうのと同じように。
蠱毒の壺。いや、蠱毒などではない。楽園だ。
女神が治める地平は、仮想世界は。メビウスというのは、そういうものだ。住人の願望を反映し、それを叶える。幸せを与え、楽園の一部とするものだ。
否、何が楽園だ。これでは無限地獄ではないか。いや、住人は仮初めの幸せを得ているのだ。簡単な話だ。
天『獄』だ。偽りの幸せ、偽りの平和を歌姫が統べる幻想に揺蕩い溺れ朽ちる。肉の身体は消えて、電子というナノミクロン以下の情報として管理され、虚構の中でハッピーエンドを迎え、終わる。
電子世界がいつか終わるとしても、その終わりを彼ら彼女らは認識すらしない。永遠に幸せが続くと認識したまま、終わる。
女神が治める地平は、仮想世界は。メビウスというのは、そういうものだ。住人の願望を反映し、それを叶える。幸せを与え、楽園の一部とするものだ。
否、何が楽園だ。これでは無限地獄ではないか。いや、住人は仮初めの幸せを得ているのだ。簡単な話だ。
天『獄』だ。偽りの幸せ、偽りの平和を歌姫が統べる幻想に揺蕩い溺れ朽ちる。肉の身体は消えて、電子というナノミクロン以下の情報として管理され、虚構の中でハッピーエンドを迎え、終わる。
電子世界がいつか終わるとしても、その終わりを彼ら彼女らは認識すらしない。永遠に幸せが続くと認識したまま、終わる。
「……生まれちまったんだよ。汎ゆる異能を喰うバケモンが。最初は『穢れ』を自在に操作するっていう解釈の力で。それが『蒐集の器』、今のベルベットとかいうクソ女だ。」
そう、『生まれてしまった』のだ。証明してしまったのだ。確立させてしまったのだ。
ベルベットの喰魔の力はあくまで『業魔』を喰らい『業魔』の力を得る異能だ。だが、麦野の原子崩しという、『異界の情報を内包した異能そのもの』を喰らってしまった、そしてそれを技として転用できて、理論を理解して『しまった』。
現状の魔王の権能は『未現物質』にも似た穢れそのものの行使だ。今の認識はそれで打ち止めになっている。
ではもし、主催の目的が覚醒者の異能をμに宿らせるものと仮定して、いつか『蒐集の器』たる魔王の権能を本質を、その魔王当人が真に理解してしまったのなら。
ベルベットの喰魔の力はあくまで『業魔』を喰らい『業魔』の力を得る異能だ。だが、麦野の原子崩しという、『異界の情報を内包した異能そのもの』を喰らってしまった、そしてそれを技として転用できて、理論を理解して『しまった』。
現状の魔王の権能は『未現物質』にも似た穢れそのものの行使だ。今の認識はそれで打ち止めになっている。
ではもし、主催の目的が覚醒者の異能をμに宿らせるものと仮定して、いつか『蒐集の器』たる魔王の権能を本質を、その魔王当人が真に理解してしまったのなら。
「……それ、本気で言ってるの? もしそれが本当なら―――」
「もしも、魔王の異能を、『蒐集の器』としての力を。μが手に入れちまったらどうなる?」
焦りに満ちた張り上がった夾竹桃の声が響く。
汎ゆる異能を喰らい、蒐集する力を、μが手に入れてしまえばどうなるか。全てを楽園へ引きずり込むという思想に至ってしまったらどうなるか。
汎ゆる異能を喰らい、蒐集する力を、μが手に入れてしまえばどうなるか。全てを楽園へ引きずり込むという思想に至ってしまったらどうなるか。
「何もかも。"ひっくり返る"。」
「―――――ッ!」
絶句。今までのポーカーフェイスは剥げ、張り詰めた焦燥の汗を、毒の少女は流していた。
現実は反転し、仮想こそが真実となる。虚構が『正常』となる。
幸か不幸か、誰もが『予想できなかった』事なのだろう。主催側としても、『いい意味で予想外の出来事』としか認識できていない。
もしベルベットが『喰らう力』の拡大解釈を果たしてしまったならば、それを主催側が見逃すはずがない。
それをμに付与され、現実を何もかも仮想へとひっくり返してしまう力を得てしまったなら。
文字通り『現実』は終わる。正常と異常の境界がひっくり返り、女神が統べる地平が誕生するのだ。
現実は反転し、仮想こそが真実となる。虚構が『正常』となる。
幸か不幸か、誰もが『予想できなかった』事なのだろう。主催側としても、『いい意味で予想外の出来事』としか認識できていない。
もしベルベットが『喰らう力』の拡大解釈を果たしてしまったならば、それを主催側が見逃すはずがない。
それをμに付与され、現実を何もかも仮想へとひっくり返してしまう力を得てしまったなら。
文字通り『現実』は終わる。正常と異常の境界がひっくり返り、女神が統べる地平が誕生するのだ。
「……ま、あたしからしちゃ、世界なんぞどうなろうが構わねぇ訳だが。浜面も殺れて一応は満足した。」
麦野沈利個人としては、世界の行く末がどうなるかなどという一点においては、どっちでもいい。むしろ何も知らないパンピー共からすれば、理想が何もかも叶う夢の楽園なんてむしろ歓迎するだろう。
「……だから、なおさら気に入らねぇ。」
人を巻き込んでおいて、殺し合えと言っておいてその果ての結末がおそらく蠱毒の蒐集?
楽園という名の天獄、虚構に塗れた新時代(ニューワールド)?
手に入れた複合異能(クロススキル)を片道切符に、他も含めて楽園へとご招待?
楽園という名の天獄、虚構に塗れた新時代(ニューワールド)?
手に入れた複合異能(クロススキル)を片道切符に、他も含めて楽園へとご招待?
「笑い話にもならねぇクソじゃねぇか。他人の満足度をテメェの物差しで測るんじゃねぇよ。」
彼女は、麦野沈利は、下らないの一言で吐き捨てる。
全てが叶うであろう輪廻の理想郷、それが予想であったとしても未来に迫りくる夢の楽園を、ただ気に入らない、その一言で。
その片方、夾竹桃が俯いたまま麦野の言葉を無言で聞いたままで。
全てが叶うであろう輪廻の理想郷、それが予想であったとしても未来に迫りくる夢の楽園を、ただ気に入らない、その一言で。
その片方、夾竹桃が俯いたまま麦野の言葉を無言で聞いたままで。
「……で。テメェはどうする?」
故に、麦野沈利は夾竹桃に問う。麦野沈利の視点では、夾竹桃の腹の底は見えていない。
だからこそ、この憶測の上で、安倍晴明という男と協定を結んでいたであろう、その安倍晴明から興味を引く何かを聞いた夾竹桃へ。
だからこそ、この憶測の上で、安倍晴明という男と協定を結んでいたであろう、その安倍晴明から興味を引く何かを聞いた夾竹桃へ。
「何を聞いたかしらねぇが……テメェの思い描いてる『手に入れたいモノ』ってのを手に入れた瞬間、てめぇは贄に早変わりだ。一応、裏切らなければ命だけは見逃してはやるが―――。」
問い掛けは忠告に変わる。夾竹桃の『毒』(と同人誌CPネタ)に対する好奇心と執着は並外れている。
その『毒』を手に入れて、夾竹桃もまた『混じった』のなら、彼女もまた歌姫の贄と為りうる可能性は無きにしもあらず。
もっとも、その『贄』の意味合いが、女神を守る眷属としてか、はたまた文字通りの意味か。
その『毒』を手に入れて、夾竹桃もまた『混じった』のなら、彼女もまた歌姫の贄と為りうる可能性は無きにしもあらず。
もっとも、その『贄』の意味合いが、女神を守る眷属としてか、はたまた文字通りの意味か。
「テメェがそれを手に入れりゃ、今後次第でテメェはぶち殺し確定だと思え。」
そして、警告へ。文字通り、複合異能の覚醒を齎すのがこの虚構の箱庭の本来の役目であるというのなら。
夾竹桃が望む『未知の毒』とやらで変貌するという結末に至った上で。それをμの異能として蒐集されるということになるならば。
麦野沈利は、主催の目的全てをぶち壊す前に立ち塞がる邪魔な壁として、夾竹桃を始末することになるだろう。
何もしないで、殺意の奔流にも近しい威圧が列車内に充満する。その眼は、夾竹桃の返答を待ち構えている。殺すか、まだ利用価値があるのか。ミイラ取りがミイラになるのなら、それはもはや死刑宣告の他ない。
麦野沈利はそういう怪物だ。学園都市最強のレベル5の一角。暴虐無比たる殲滅女王。暴虐故に判断は冷静に、決まれば一直線。レベル5とは所謂『狂人』。人智の及ばぬ超能力を携え、それを手足のごとく自在に行使する。それに見合った狂気と認識を持ってそれを振るうのだ。
夾竹桃が望む『未知の毒』とやらで変貌するという結末に至った上で。それをμの異能として蒐集されるということになるならば。
麦野沈利は、主催の目的全てをぶち壊す前に立ち塞がる邪魔な壁として、夾竹桃を始末することになるだろう。
何もしないで、殺意の奔流にも近しい威圧が列車内に充満する。その眼は、夾竹桃の返答を待ち構えている。殺すか、まだ利用価値があるのか。ミイラ取りがミイラになるのなら、それはもはや死刑宣告の他ない。
麦野沈利はそういう怪物だ。学園都市最強のレベル5の一角。暴虐無比たる殲滅女王。暴虐故に判断は冷静に、決まれば一直線。レベル5とは所謂『狂人』。人智の及ばぬ超能力を携え、それを手足のごとく自在に行使する。それに見合った狂気と認識を持ってそれを振るうのだ。
「もう一度聞くぞ、テメェは――」
「……コレクションって、自分が手に入れてこそ、って思うのよ。」
麦野の言葉を遮るように、夾竹桃からポツンと言葉が出た。
流れ出る焦燥の汗は止まっている、濁らない杉石色の瞳が麦野沈利を見つめ返している。
流れ出る焦燥の汗は止まっている、濁らない杉石色の瞳が麦野沈利を見つめ返している。
「何でも願う楽園、もしそこに入園出来たら、同人誌のネタなんて腐るほど出来るでしょうね。」
μの根本となる仮想世界メビウスの話は頭には入っている。μのさじ加減一つで、住人の願望が反映されそれが叶う世界。
「でも、おそらくその世界には、私が探し求めている毒は無いと思うわ。」
だが、何もかもが叶ってしまう世界とは、余りにも陳腐なものでしかない。
輪廻の理想郷、それが成立した暁には住人全てが願望の生産者となりうる上下のない世界。
誰もが平等に、誰もが公平に、女神に再現された己が望んだ願いの中で永遠の幸福のままに生きて行ける。
――それは、人間として生まれてきた意味があるのだろうか?
輪廻の理想郷、それが成立した暁には住人全てが願望の生産者となりうる上下のない世界。
誰もが平等に、誰もが公平に、女神に再現された己が望んだ願いの中で永遠の幸福のままに生きて行ける。
――それは、人間として生まれてきた意味があるのだろうか?
「望めば何でも手に入る、だなんて、詰まんないわよ。そんな世界。毎日最高だけどありきたりのネタなんて陳腐にも程があるわ。」
夾竹桃は悪人である以前に求道者である。百合咲き誇る友情を、深淵の泉の最奥にある猛毒を求め続ける探求者でもある。
「麦野、私は未知を、晴明から教えてもらったゲッター線は諦めきれないけれど。その上でつまんない世界は懲り懲りね。アレの目的がどうであれ、私達の世界、ろくなことにならなさそうだし。」
だからこそ、『未知』という喜びを何もかも奪い去るであろう女神の地平は認めるわけには行かない。
望むべき探究を、そう、憧れは止められないものだ。それが、安倍晴明という存在から教わった『ゲッター線』という存在があるのならば尚更なこと。
望むべき探究を、そう、憧れは止められないものだ。それが、安倍晴明という存在から教わった『ゲッター線』という存在があるのならば尚更なこと。
「……ちょっと迷ってたのよ、もしもそれが本当だったら、私は主催側につくのも吝かじゃないって。でも、やっぱ辞めたわ。……下手したら魔王を敵に回しかねない行動を取るつもりはなかったんだし。」
「オイオイ、そんなことで悩むクチだったってのか? 思いの外に底が浅ぇガキだったようだな。」
「私だって人間よ、知りたいことは知りたいし、手に入れたいものは手に入れたいのは性ってものよ。だってあなたも私も『悪党』でしょ?」
「悪党ねぇ。……いや、好き勝手やってるだけだろ。あたし達は。そもそも暗部を悪党の一括りで収まらせてるんじゃねぇ。」
彼女たちは秩序に真っ向から逆らう悪人、悪党だ。そう、悪に『救済』など笑い話以下なのだ。その幸福は己が手で全てを薙ぎ払った先にでも掴むものだ。
渇きともいうべきか、頂への欲求、未知への探究心。多種多様であれど、欲望のまま、救いも滅びも薙ぎ倒して生きてゆくのが正しく『生きている』ことなのだろうだから。
渇きともいうべきか、頂への欲求、未知への探究心。多種多様であれど、欲望のまま、救いも滅びも薙ぎ倒して生きてゆくのが正しく『生きている』ことなのだろうだから。
「……到着までそろそろね。それに放送の方も。」
夾竹桃が思い出したかのように呟く。列車内に掛けられている、恐らく主催が配置したであろう掛け時計は『11:59』を示している。
そして、列車の窓より、赤が垣間見える。それは深紅で構築された建造物。太陽よりも朱く染まった、紅の夢幻。
エリアF-6、紅魔館。ツェペシュの幼き末裔の紅たる吸血鬼の住処。本来ならレミリア・スカーレットが住まう館である。
そして、列車の窓より、赤が垣間見える。それは深紅で構築された建造物。太陽よりも朱く染まった、紅の夢幻。
エリアF-6、紅魔館。ツェペシュの幼き末裔の紅たる吸血鬼の住処。本来ならレミリア・スカーレットが住まう館である。
ガタンゴトン、ガタンゴトンと鉄に轍を残し列車は走る。災禍の魔王とその同志を乗せ、列車は無機質に次の目的地へと進む。向かう先は知識の蔵庫、大魔導師の大図書館。
そしてその到着、その前に。
そしてその到着、その前に。
『参加者の皆様方、ご機嫌よう。』
テミスによる、二回目の死亡者放送が、その耳障りな甲高い声で鳴り響くのだ。
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