バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

英雄の唄 ー Ⅴ章 STAMPEDE ー

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kyogokurowa

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わずらわしいこえがちいさくなった。

いまもまだおれにむけてうめいているが、もうすぐきえるだろう。

ふうぜんのともしび、だったか?そういうかんじのやつだ。

これでゆっくりねむれそうだ。

ここちいいおとをこもりうたに。

うたかたのゆめをまくらにして。

そのはずなのに。

うっとおしいとおもっていたひかりが、またかがやきだした。



【これで終わりだ。根源たる神よ】

破壊神は息を切らしながら、ウィツアルネミテアに語り掛ける。
彼女の身体はクオンの眠る核を境目に両断されており、その上半身部分が破壊神に足蹴にされていた。

虚空の王によって切裂かれた部位を再生する力はもはや残っていない。
ウィツアルネミテアは核の中で眠るクオンの治療に残る全ての力を使っていた。
ウィツアルネミテアの心臓部はあくまでもクオンにある。
彼女が死ねばそれで終わってしまうため、否が応でも力を割かないわけにはいかなかったのだ。

【貴様を喰らい、我は更なる高みへと昇り詰める】

破壊神は命を喰らう度にその力を増していく。
この会場においてマリア・キャンベル、王、セルティ・ストゥルルソンの三名の命を喰らっただけでこうまで力を増したのだ。
もしも己よりも格式の高い神である、ウィツアルネミテアを喰らえばどうなるかは想像もつかない。

ようやく戦いを終えた達成感とこれからへの高揚感に胸を躍らせ、破壊神はその大口を開く。
鋭利に生えそろった牙から目を背けることなく、ウィツアルネミテアは己に迫るソレを眺め―――












それはまさに水を得た魚のような速さで割り込んできた。
破壊神の顎から打ち抜き、ウィツアルネミテアの捕食を阻止、アッパーカットの如き衝撃に破壊神はよろめき体勢を崩す。

【なんだ...!?】

不意の攻撃に破壊神は忌々し気に敵を睨みつける。
その先にいるにはウィツアルネミテアではなく。

「さすがに硬いな...抉り取るつもりだったんだが」

左腕には巨大なドリルを、背中には飛行用のスラスターを、肩にはアリアを乗せた神隼人だった。
カタルシス・エフェクトは心の結晶。
そこから生まれる武器もまた彼の心に巣くうモノ。
神隼人のカタルシス・エフェクトの形は彼の駆るゲッター2を模したもの。
疑似的なゲッター2の再現―――この異常事態に於いても彼の心には、変わらず『ゲッター』の存在があった。


【小蠅が。今更貴様などの出る幕はない】

破壊神は先の蹂躙と同じように腕を振るい隼人達を屠ろうとする。
その手にウィツアルネミテアへの攻撃と同等の殺意はない。
そんなものが無くとも、小さな人間如きに負けないのは証明済みだったからだ。

「いくぞアリア!」
「合点招致だってばさ!」

隼人の号令と共に、アリアは思い切り息を吸い始める。

(ねえ、μ。あたしさ、今までずっと悔しかったんだよ。あたしはあんたのこと大好きだけど、でも、どうしてあたしはあんたみたいになれないんだろうって)

アリアはμを止めるために動いてきたが、その過程でμの成し遂げた功績を多く見てきた。
偽りの世界とはいえ、μを求める声が絶えず、多くの人々は幸せに満ちており、道行く人々がμの歌を口ずさんでいた。
同じバーチャドールのはずなのに、気が付けば手の届かないほどの差が出来ていた。
それを悔しいと思わなかったといえばウソになる。

μはすごい。μは大きい。
メビウスでの彼女のやってきたことは間違いだとは思うけれど、それでも彼女は確かに輝いていた。

「あたしだって同じバーチャドールなんだ...あたしだって...!」

アリアの想いに応えるように、隼人の纏うカタルシス・エフェクトのオーラが増していく。

「辛いかもしれないけど...それでも、あいつを倒す為に!」
「出し惜しみなんざするな、やれアリア!!」

「行くよ、カタルシスエフェクト・オーバードーズ...」

アリアの呟きに呼応し、彼女の身体が光り輝くのと同時に隼人の身体に注がれる力も増していき、脳髄にかかる負担も殊更に増していく。
理性も知性も吹き飛びそうになる狂暴的なほどの衝動が、身体を引き裂かんと暴れまわる。
それを歌に乗せて調律するのがバーチャドールの役目だ。

「Go Liiiiiiiiive!!!」

彼女は叫ぶ。
μが楽士たちの曲を唄うように。
バーチャドールの意地を見せつけるように。
小さな妖精の形態からしなやかな肢体の女性的フォルムに変貌する。
彼女が唄うのは、カタルシス・エフェクトを通じて伝わる隼人の魂を表現する歌。

その歌声が、感情を暴走させる。

眼前にまで迫る破壊神の掌。
それが触れる瞬間、隼人の姿が消えた。
見失ったと驚愕するのも束の間、破壊神の眼前に影が現れる。

隼人だ。そこにはなんのタネも仕掛けもなく、人間では考えられない速度で破壊神との距離を詰めたのだ。



―――♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪

バーチャドール・アリアの歌が響き渡り隼人の身体に力を与える。
その効果は、速さの上昇。
アリアの歌の力が加わった隼人は、まさにゲッター2そのものであった。

「ドリルアーム!!」

隼人の突き出したドリルが破壊神の右目を貫き、ぐじゅりと生々しい音が響き渡り体液が飛び散る。
走る痛みに破壊神が思わず目を抑えると、今度はがら空きになった耳ヒレ目掛けて突き進み、削り取った部位から破片と血液が零れ落ちる。

ズキリ。

隼人の脳髄が痛みという警鐘を上げ始める。
カタルシスエフェクト・オーバードーズ。
それは単なる強化ではない。
カタルシス・エフェクトのポテンシャルを存分に発揮させる代償に感情を暴走させ、身体に否応なく負担を強いる危険な代物だ。

だが。
この程度の痛みで隼人は止まらない。
ゲッターロボという、操縦者すら食い殺さんと牙を剥く兵器を駆り続けたこの男の枷には程遠い。

「ドリルアタック!!」

【小癪な!】

鼻目掛けて射出されたドリルを難なく指で弾き飛ばし、残る目で射出元の隼人を睨みつけるが―――既にいない。

「よく見ておけ、こいつが音速を越えた戦いだ!」

放たれる言葉は頭上から。
破壊神が見上げた瞬間、隼人は高速で降下し破壊神の身体を抉り取る。

【この程度...ッ!】

血は流れるが耐えられぬ痛みではない。
通り過ぎた隼人めがけて巨腕を振るうが、空振りした、と認識した時には既に再び己の身体を抉り取られていた。

追いつけない。

如何な物をも粉砕する破壊神の攻撃も、万物を切り裂く虚空の王も、当たらなければどうということはない。
空から、地から。四方八方から突撃する隼人の攻撃は確かに破壊神の身体を削り取っていく。

これこそが神隼人の、ゲッター2の得意とする高速での戦いだ。


―――♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪♪



【鬱陶しいわ!!】

度重なる攻撃に苛立ち、破壊神は翼を広げ暴風を起こそうとする―――が、できない。

破壊神の身体にはタルの連なる鎖が巻きつき、その動きを制限していた。
隼人が抉り取る際に巻き付けていたのだ。

【こんなもので我が身を抑えるつもりか!】
「今でおじゃる!!」

マロロの号令に合わせて志乃が飛び出し飛燕返しでタルを一斉に切り裂き、着地と共に離脱する。

【...!?】

斬りつけられるはずの斬撃は己の身に届かず、代わりに身体に纏わりついたベトベトとした感触に不快感を抱く。


「ジオルド殿!」
「はい」

マロロが笏を構え炎の術を放ち、それに合わせてマロロに従うよう命じられたジオルドもまた炎の魔法を放つ。
二つの火種が交わり、一筋の蛇となり破壊神に着火。
先の戦いでは小火程度の効果しか与えられなかった二人の火遁だが、今回は違う。
志乃が斬ったタルの中に入っていたのは大量の油。

一つのタルに並々に詰められた油がいくつも付着した身に炎など受けようものならどうなるかは想像に容易い。
山火事の如く燃え盛る炎に破壊神の全身が瞬く間に呑まれてしまう。

―――♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪♪♪

アリアの歌声は隼人のみならず、他の面々にも影響を及ぼし始める。

(不思議...身体に力が漲ってくる。これなら...!)

志乃はあかりちゃんボックスから取り出したストローを咥え、破壊神へと斬りかかる。
彼女を叩き潰さんと破壊神は岩石を雨あられと投擲する。
当たれば即死間違いなし。
その極限においても志乃は微塵も恐れない。

ジオルドという肉壁がいるから?
他に頼れる采配師と最速の男がいるから?
どれも違う。

(あかりちゃんヘアー、三本使用)

ストローを堪能し尽くした志乃はあかりちゃんボックスから採取した髪の毛を口内に含み、その味と感触を堪能し飲み込む。

その髪に特殊な力はない。
だがしかし、間宮あかりの髪の毛、というだけで志乃には十二分に意味がある。

(あかりちゃんを全身で感じる)

いま、志乃の制服の下、もっと言うならば下着の下の地肌には胸の部位にはあかりちゃん人形が、股間には間宮あかりの盗撮写真が、そして全身にはあかりから密かに採取した使用済み歯ブラシやつまようじ、絆創膏などありとあらゆる非公認間宮あかりグッズが貼りつけられている。
そしていま、口内をストローで、内臓を髪の毛で染め上げ、あかりちゃん成分を文字通り全身で摂取した志乃の心はこれ以上なく滾り、溢れんばかりの愛(あかりちゃん)を脳髄に滾らせ送られた電気信号は彼女の身体をより強く、速く伝わり反映される。
実際にそんなことがありえるのだろうか?
本来ならばありえないだろう。
だが。
この会場が凡そ『思い込み』や『妄想』といった感情を反映させやすい環境にあること、アリアのフロアージャックがささやかながら影響していること。
この二つと志乃の間宮あかりへの執念が重なり合い、彼女の身体も秘めるポテンシャルをこれ以上なく発揮していた。
迫りくる死への脅威を紙一重で、最速で躱しながら懐に飛び込む。

(せっかく集めたあかりちゃんグッズ...)

迫りくる剛爪を掻い潜り、その腕を伝い一気に破壊神へと駆け出す。

(でもいいの)

破壊神は振り払おうと両腕を振るも、志乃はそれを器用に跳躍で辿り一気に肉薄。

(思い出はまた作ればいい...あかりちゃんの全てはまた採取しなおせばいい)

やみのちからを解放し、破壊神は目には見えぬ防壁を張る。
ウィツアルネミテアとの戦いでの消耗でその防御力は落ちている。
だが、それでも小さな人間を相手取るには充分だった。

ガキン、と硬いもの同士が衝突する音を立てて志乃の突きが防壁に阻まれる。

「だから」

だがそれも束の間。
やみのちからで張られた防壁を志乃の切っ先は徐々に切り開いていく。


破壊神のやみのちからは邪なもの以外を拒絶する強力な壁である。
それを突破するにはやみのちからを浄化できるものか、それ以上にどす黒く悍ましいほどの闇があればいい。
友愛・愛情・異常性・劣情・情欲・性欲・その他諸々。
ありとあらゆる佐々木志乃の愛を一身に受け食いつぶされた妖刀・罪歌には、まさしくこの世に比類なく悍ましきやみのちからが宿っていた。

――――♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪


「貴方を倒してあかりちゃんのもとへ帰るんです!!」


罪歌の切っ先がやみのちからの防壁を微かにこじ開ける。

志乃が死力を尽くして開けた穴。
それを見逃す隼人ではない。

「――――おおおおおぉぉぉッ!!!」

罪歌に連なるように隼人のドリルが穴を穿ち共に穴を押し広げていく。
穴を広げさらに深く掘り進める。これがドリルの本来の使い方だ。

バキリ、という音と共に防壁の一部が破壊され、罪歌の切っ先が破壊神の肩に突き刺さる。
破壊神は少々驚きはした―――が、それだけだ。
壊された防壁は一部だけ。呪いなど所詮は彼にとっては餌程度のもの―――

『あかりちゃん』

否。これはもはや呪いなどというものではない。

『あかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃん』

兼ねてより流されていた呪いはあかりちゃんに侵食され、破壊神の脳髄はズキズキと痛み始める。
愛と呪いの入り混じるソレはもはや何人も抗えぬ猛毒。


【やめ...ぬかぁ...!】

しかも。
呪いへの耐性を有している破壊神だからこそ、狂いきれず、洗脳されることもできず。
ただひたすらに『あかりちゃん』は彼の脳髄を苛め抜く。

『あかりちゃんだいすきあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃん××あかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃん私のパイも食べてあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃんあかりちゃん』

【ぐおおおおおおおおおおおおおおお!!!】

激しい頭痛に苛まれ始めた破壊神が頭を抱え呻き声を上げ始める。

「このまま追撃を...!」
「待つでおじゃる志乃殿!隼人殿、ここはマロたちに任せて離脱を!」

マロロの指示に従い、隼人は志乃を抱えて距離を取る。
僅かに遅れて破壊神の爪が二人のいた空間を空振り、遅れて発動する虚空の王は、下手から放たれた酒瓶を切り裂きその指を酒に濡らす。
破壊神が不快感を抱いた瞬間、ジオルドの炎の魔法が破壊神の指に燃え移り、小火はたちまちに大きな火勢と化す。

「力任せに技を振るうだけならばいくらでも打つ手はある...マロたち采配師はその為にいるのでおじゃる!戦を舐めるな、物の怪よ!」

【手間取らせてくれる...!】

決して決定打を打たれているわけではない。
だが、先の戦いでは、破壊神という共通の敵を前に共闘はしていたが、ただ個々で立ち向かっていただけだった。
だから連携が取られておらず、迎撃も容易かった。
今回は違う。
采配師マロロの指揮のもと、互いに連携し合うことで攻撃の有効性を引き上げている。
それが破壊神には癪だった。
先に蹂躙した時とは違う手ごたえに破壊神の苛立ちは募っていく。


「張り切ってやがるな隼人のやつ!こっちも負けてられねえぜ!」

一方、破壊神たちから少し離れた平地では、ビルドの敷いた図面を基に設計作業が行われていた。
マロロが手配した策は、攻めの起点を隼人とした攻撃チームにマロロとジオルド、機動力のある志乃を組み込み、残る面子は防衛チームとして設計製作に集中させるというもの。
しかし素材といってもあるモノはせいぜい破壊された校舎の瓦礫と使い道があるかわからない木片程度。

「皆さん、集めてきたそざいはこの箱の中に!」

そこで要となるのが東風谷早苗の『奇跡を起こす程度の能力』である。
彼女の起こす『奇跡』は幅が広い。ただの水を甘くするような超自然的なものから、無いところから物を出すような手品染みたところまで。

久美子、咲夜、弁慶、コシュタ・バワーの集めてきた瓦礫を収納箱に入れ、早苗がその能力を行使するとあら不思議。
たちまちのうちに鉄や石材、木材のようなそざいに変貌してしまった。

無論、主催側がこの能力を把握していないはずがなく、大規模な奇跡には相応の消費と前準備を。
なんでも殺せる武器を生み出せる、首輪に奇跡をかけて即座に解除!...などというあまりにも都合のいい奇跡の解釈には制限をかけている。
だからこそのそざいなのである。


そざいであれば、少ない消耗で連続して使えるし、そこから加工・精製するのはビルダーの領分であるため、そざいからそざいへの変化は制限の範囲から免れた。
しかしあくまでも早苗の『奇跡』は幸運を呼び寄せるものではない。
どちらかといえば『偶然』の極致であり、それが幸を呼ぶか不幸を呼ぶかも己では制御しきれていない。
そのためこれはギャンブル的な要素の強い策だったのだが

(なんだかすごく調子がいいですいまのわたし!!)

不思議なことにそざいは全てとは言わずとも、7・8割程度は必要なものに変貌し設計には支障ない範囲に抑えられていた。
彼女は知らない。いまのこの空間に漂うウィツアルネミテアから飛び散った体液は、本来であれば代償と引き換えに願いを叶える代物であることを。
破壊神との戦いで気体状に変化したソレに触れていた早苗の願いを微かに反映し、『てつが欲しい』と願えば『石材』が生まれたり、『木材が10欲しい』と願えば『木材5、てつが4』などと歪みに歪んだ形で出力されていることに。
その失敗した2割程度が代償として扱われていたのはまさに彼女自身の奇跡と言えよう。

【なにをしている貴様ら!】
「ッ!気づかれました!」

隼人達の攻撃の隙間を縫い、破壊神の掌に全てを破壊し尽くすエネルギーが溜められる。
狙いは建築に勤しむビルドと彼の作ろうとしているモノ。

【今更貴様の出る幕などない、消え失せよビルダー!!】

この局面で、こんな目と鼻の先で堂々とものづくりをしようというのだ。
そこから生まれるものにはよほど期待をかけているのだろう。
だからこそ真っ先に破壊する価値がある。
破壊神はかつてハーゴンがやっていたように、ビルダーを始末することで贄たちの希望を摘み取らんとはかいの光線を放った。
迫りくる光にもビルドは怯えない。目もやらない。護ってくれると信じていたから。


「ここは俺の出番だな!」

ビルドと光線の間に弁慶が立ちふさがり、両腕に装着されたソレを盾のように構える。
彼の腕に着けられているソレの名は『みかがみのこて』。
かつてビルドがシドー共に探検したオッカムル島にて、まものの光線を幾度も弾き返したシロモノである。
弁慶の怪力がないと扱えない為、彼が扱うこととなったのだ。

構えた腕の盾に光線が着弾すると、重たい衝撃が弁慶の身体に襲いかかる。

「ぐおっ...」

その重さに溜まらず声が漏れ出すが

「なめんじゃねえ...この程度で参ってちゃゲッターロボなんざ乗れねえんだ!!」

両腕の筋肉が盛り上がり、咆哮と共に腕を解き放てば、光線は放った破壊神へと弾き返された。

【ぐおっ!?】

己の攻撃の威力にのけ反り苦悶を漏らせば、その隙を突き志乃の刀と隼人のドリルが身体を斬りつける。

「ぐぅっ...!」
「大丈夫ですか弁慶さん!」
「心配すんな!これくらいなら慣れっこよ!」

駆け寄る早苗に、額に脂汗を浮かべながらも弁慶は笑って見せる。
だが、彼は理解していた。
反射には体力と筋力の消耗が非常に激しい。
あとなんど成功するかはわからない、と。



【ちょこざい真似を!】

破壊神は隼人と志乃を振り払い、今度は巨大な岩石を掴み投擲する。
光線とは違い、弾き返すことのできないソレに弁慶は立ち尽くすことしかできない。

「させない」

弁慶に代わり、今度はみぞれが躍り出る。
罪歌で支配した彼女に志乃が命じたのは『なにがなんでも守り抜け』。
その命令は半死人の彼女の身体すら凌駕し、容赦なく酷使する。

それでも。彼女の顔が笑みを浮かべているのは罪歌のせいか、あるいはこんな身体でも動けることへの感謝か。
巨大な岩が迫る中、みぞれは片腕を上げぼそぼそと呟く。


「緋の蒼――リズと青い鳥」

掌から放たれた氷の鳥が岩石に触れると、瞬間的に氷が包み込み、その勢いは瞬く間に殺され、岩石は届くことなく地に落下する。
それを見届けると、ガクリとみぞれの膝が崩れ落ちる。

「おっ、おいみぞれちゃん!」

倒れそうな身体を弁慶が慌てて支えるも、みぞれはぼそぼそと口元を動かし言葉を紡ぐ。

「まだ...飛べる...私は...まだ...」

倒れそうになりながらも尚も立ち上がるみぞれに弁慶は息を呑む。
本当なら。
多少の被害を被ってでもみぞれを休ませてやりたい。その分を他の面々でカバーしてやればいいと言いたい。
けれど、戦況はそれを許さない。
この作戦は誰か一人でも欠ければ著しく成功率が下がる。
ただでさえ針の穴を通すような成功率の前でのソレは、0%と同意義。
だからみぞれは止まらない。
弁慶も、誰も彼女を止められない。

「ッ...みんな、急いで瓦礫を集めてきてくれ!早く!」

マロロたちが攻撃を仕掛け続けていることで破壊神からの攻撃パターンはかなり絞られている。
それが前提の防御の布陣だ。
しかし、この均衡がいつまで続けられるかはわからない。
オフェンス側もディフェンス側も消耗が激しく、どちらか片方が潰れればその時点で詰み。
弁慶の号令に気を取り直した一同は再び瓦礫をかき集めるためにその足を動かす。



まただ。

ひかりがひときわかがやきをますとこんどはさっきとはべつのみみざわりなおとがみみをつんざきはじめた。

あかりちゃんってだれだ。

やめろ。

イライラする。

これじゃあきもちよくねむれない。

なのに。なんで。

なんでおれはこのひかりからめをはなせないんだ。

おれはこのひかりをいったいどうしたいんだ


度重なる攻撃の波に。
攻撃を放っては弾き返され、あるいは叩き落とされ。
その繰り返しに痺れを切らした破壊神は腹の底から怒りの雄たけびを上げる。

その咆哮と共にどろりと影が蠢き、骸骨兵が際限なく湧き出してくる。
狙いはものづくりを担う六人と一頭。

だが、攻撃チームの誰も彼らへの援護には向かわない。
予定通り。
あのような雑兵たちを向かわせねばならないほどに、破壊神はウィツアルネミテアとの戦いで消耗しきっていることの証左に他ならない。

「そのぶん奴は俺たちに集中するってことだがな...お前たち、恥をかくなよ!」
「貴方こそ、逸りすぎて足元を掬われないように!」
「ジオルド殿、マロたちも次なる攻撃準備を!」

四人は纏まって攻撃されないよう散開し、アリアもまたフロアージャックを切らさないよう歌を続ける。

――――♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪



湧き出てくる骸骨兵たちには一瞥もくれずビルドは装甲車の製作を、早苗は小さな奇跡を起こし続ける。
時は一刻を争う。周囲を囲むブラックホールは動きを再開しており、最悪、直接壊されずとも、あのブラックホールに飲み込まれて全滅もあり得る。
つまり奴らの狙いはこちらの時間を削ることだ。
それをさせないためにマロロは攻めの面子よりも防衛の面子を多めに振り分けた。

「生憎とこれより先は通行止めよ」

早苗へと襲い掛かる骸骨兵たちは、その剣を振りあげた途端にその眼前にナイフが突き立てられ、兵の悉くがかき消されていく。
咲夜の時間停止からのナイフの雨あられはこの雑兵相手にはうってつけの防衛ラインだった。

「咲夜さん」

早苗は背を向けそざいを変化させながら語り掛ける。

「貴女がこの殺し合いでどう動いていたかはなんとなく察してます」
「......」

咲夜は答えない。
早苗はそれでいいと言わんばかりに言葉を紡ぐ。

「咲夜さん、私たちは決して親しい仲ではないかもしれません...いいえ、この催しに呼ばれた私たちは多くがそんな関係です」

早苗の言葉に返事を返さず、咲夜は迫る影たちにナイフを投擲し対処していく。
みんな、顔見知りではあるし互いに名前を把握はしている。
けれど、わざわざプライベートでも積極的には絡みにいかず、よしんぼそんなことがあっても極まれな、そんな程度の関係性だ。

「だから、あの人たちがいなくても私たちの日常は続く...そんなものは幻想だって思い知らされました」

魔理沙。妖夢。鈴仙。
彼女たちがいなくなったと理解した時、もうそこには今までの日常なんてないと思い知らされた。
永劫なんてものはなく、些細なキッカケ一つで全てが壊れていくなんてわかっていると思っていた。
けれど。
知識として知っているのと実体験するのではまるで話が違う。

嫌だ。こんな理不尽な形で私たちの日常を失うなんて。
納得できない。こんなものをただ受け入れろだなんて。

そんな、現人神としてはあまりにも幼稚で、人間的な我儘が早苗の胸中を占め続けていた。

「咲夜さん。貴女はいなくならないでくださいね」

激励とも懇願とも判断しづらいその言葉。
咲夜は相も変わらず答えはしなかったが、しかしその耳は確かに聞き遂げていた。

カタカタと音を鳴らし迫りくる骸骨兵たちに久美子はひっ、と恐怖で喉を鳴らし一目散に背を向ける。

「こっ、こないでぇ!」

校舎の瓦礫を抱えて逃げ出す久美子目掛けて骸骨兵たちは駆けてくる。
骸骨兵たちは決して素早いわけではない。
しかし、瓦礫を抱える一般人相手となれば、久美子と彼らの距離はどんどん縮まっていく。

「いやあああああああ!」

悲鳴をあげて逃げる久美子を掴もうと伸ばされる腕。

それを遮るように聳え立つ氷の柱。
次いで放たれる氷の礫が骸骨兵の影が次々に消えていく。

「みっ、みぞれせんぱ...」

助けてくれたことに礼を言おうとした久美子の視界に、二つの影が躍り出る。
フルフェイスマスクの女性とドレッドヘアーの筋骨隆々とした影。
見覚えのあるその二つの影が久美子を囲み、その命を狩らんと襲い掛かる。

(あ、だめ...)

鎌と手刀が迫り、諦めが久美子の脳裏を過る。

「ヒヒーン!!」
「させねえ!」

影の鎌をコシュタ・バワーが、手刀を弁慶が割り込み防ぐ。

ブルルン、と荒い鼻息を鳴らしながら、コシュタ・バワーは鎌を抑え込む。
いま相対する影は主人であるセルティ・ストゥルルソンではないのは解っている。
だが、それでも。
姿かたちでも主に似たモノに、主の意思を穢させるような真似はしない。
そう言わんばかりに、コシュタ・バワーは一歩も引かない。

「セルティ...俺は信じてるぜ、お前が久美子ちゃんを殺そうとするはずないってなぁ!」

弁慶は王の形をした影をセルティの形をした影に投げてぶつけ、二人を倒しその動きを止める。

「久美子ちゃん!その馬に乗ってはやくその素材を持ってけ!」
「はっ、はい!」

弁慶の指示に従い、久美子は慌てて周囲の瓦礫をかき集め、コシュタ・バワーの荷台に乗り込み早苗たちのもとへ移動する。

(セルティさん)

横を通り過ぎる最中、久美子はセルティの形をした影に思わず唇を噛む。
ここに連れてこられてからずっと助けられてばかりだった。
なのに何も返せないどころか足を引っ張って殺してしまった。
その感謝も謝罪もまだまだ足りないけれど、いまは足を止めている暇はない。

「ごめんなさいっ!」

久美子を乗せたコシュタ・バワーは全速力で駆けだす。
その後を追おうとする王の影はみぞれの氷の槍で貫かれ固定され、セルティの影には弁慶が相対し足止めをする。

「もっ、持ってきました!」

早苗のもとに辿り着いた久美子とコシュタ・バワーは急いで瓦礫を収納箱に詰め込み、その全てを入れ終わるとへとへとと力を抜き尻餅を着く。

「誰が休憩を許したの?」
「ひゃっ、ひゃいっ!」

咲夜のドスの効いた低い声に久美子は跳び起き、慌ててデイバックから、ビルドに作り与えられた法螺貝に口を当てる。

ボオオオォ―

低い音が響き渡る。

久美子はただの吹奏楽部に携わってきただけの一般人である。
しかし、吹奏楽におけるユーフォニアムには肺活量も求められ、その点のみに絞って言えば、号令の音を吹くという役割は咲夜や早苗よりも久美子に部があった。

「ようやくか!」

法螺貝の音を合図に弁慶はみぞれを担ぐと急遽引き返し、ビルド達の待つ建築現場に向かい始める。
その後を追おうとするセルティと王の影の足をみぞれが凍り付かせれば、骸骨兵たちが代わりに後を追い始める。

「咲夜さん、彼らに援護を!」
「わかってるわ」

弁慶たちの姿を認めると、咲夜は時間を止め、後を追ってくる骸骨兵たちへとナイフを投擲しかき消す。

「弁慶さん、みぞれさん、ここです!このラインです!」

早苗が両人差し指で指し示す線を跨ぎ弁慶とみぞれの身体が入り込む。

「緋の蒼・乖離光」

早苗の示したラインを身体が超えた瞬間、みぞれの呟きと共に氷の牢獄され、建築現場を包み込む。
触れれば燃える氷の檻。
しかしこれは内部を破壊するためのものではなく、周囲からの攻撃から身を護るための牢獄である。
現に、この氷を破壊しようと剣を振るった骸骨兵たちはたちまちに凍り付き、燃えていき、感染するかのように次々にその効果が波及していく。
破壊神の攻撃には流石に耐えられないが、雑兵相手ならば十二分に効果を発揮した。

「――――ぅ」
「みぞれ先輩!」

力尽き、どさりと倒れ込むみぞれに慌てて久美子が駆け寄り容態を看る。
素人目から見ても限界だとわかった。
罪歌の呪いで無理やり動かされたその身体は、もはや立ち続けることすら困難。
今はまだ辛うじて意識があるが、もしも意識が途切れればその瞬間、牢獄は解け骸骨兵たちはなだれ込むだろう。
そうはさせない。
その一念だけがどうにかみぞれの意識を繋ぎ止める。

「よく頑張ったな、みぞれちゃん。あとは俺たちに任せろ」

弁慶はみぞれに労いの言葉をかけながら頭に手をやり、ビルドへと向き直る。

「ボウズ!準備はできたのか!?」

その問いかけにビルドは頷き、己の成果を一同に披露する。

氷の壁に囲まれた建築場。
そこに敷かれた図面には鋼鉄で出来た土台が全て揃っており、装甲車を作るのに必要な材料も、早苗の奇跡から創り出したそざいを使い作り出してある。
後は組み立て・設計もほとんど完成しており、あとは足りない部分をつなぎ合わせて形にし、最後のメンテナンスを仕上げれば完成だ。

「おお、けっこう出来たんだな!ここまでくれば俺たちにも手伝えるぜ!」
「ここまでくればあと少し...ですが、もう時間はありません!みなさん、すぐに取り掛かりましょう!」

早苗の音頭に各々は返事を返し、すぐさま作業に取り掛かる。


ひかりがつみあがっていく。

ひとつだったはずのおおきなひかりにいくつものちいさなひかりがつみかさなりかたちをなしていく。

おれはこれをしっている。

このひかりのむれをしっている!

ずっとあこがれてきた。ずっとうらやましがってた!

だからおれはそいつを。おれにはできないそのひかりを―――。





破壊神の雄叫びは一層勢いを増し、その身を包む鎖の拘束を、脳髄を蝕む『あかりちゃん』を消し飛ばす。
やみのちからの全力解放。
その圧力は攻めの四人の身体を押しつぶさんほどのプレッシャーを放ち、その身に重ね刻まれた傷へとベホマをかければたちまちに最悪の災厄が再臨する。
それだけではない。
周囲を囲むブラックホールの速度が目に見えて増していき、絶望へのカウントダウンが殊更に速くなっていく。

「お遊びはここまでってことか...!」
「まだあんな余力が...私たちには、もう...」

ウィツアルネミテアとの激闘を経て消耗しきった上でも、破壊神にはまだこの参加者たちを全員葬れるだけの力は残っている。
一方の隼人も志乃も、もはやだましだましで身体を動かし続けるのが限界だった。
度重なる激闘に加え、隼人はオーバードーズの負担に、志乃は腹部に刻まれた怪我が尾を引き。

「嫌...まだ、まだもってよあたし!なんにも終わってないんだよ!?」

アリアもまた、フロアージャックの長時間使用につき、その身体がもとの妖精体系に戻りつつある。

「隼人殿、志乃殿、アリア殿。マロの采配を信じていただき感謝するでおじゃる」

ただひとり。
マロロだけは比較的余力を残しつつ、この局面まで粘ることが出来た。

「マロを信じてくれたお陰でここまで辿り着けた...数少ない犠牲でこの戦を凌げれば、マロたちの勝利でおじゃる」

これより魅せるは一人の采配師の大一番。
己の身すら顧みぬ文字通り命がけの術法。

マロロは、隼人、志乃、ジオルド、そしてウィツアルネミテアの残骸から零れ落ち眠るクオンに順に目を遣り、口元を綻ばせる。
死にたい訳ではない。
オシュトルへの恨みを忘れた訳ではない。
しかし、一時とはいえ共に戦ってくれた彼らなら。
共に目的を果たさんと命を賭けてくれた彼らならば。

例え、自分が散ろうともその恨みを引き継いでくれるはずだ。
最早、自分の手でなくとも良い。
誰かが奴を斃してくれればそれでよい。

だからマロロはその足を踏み出す。
彼らの道を切り開くために。
己の復讐心を繋ぐために。

修羅と化した采配師は、友の恨みを晴らすためならば神すら恐れない。
神ですら、己が復讐の火への薪とする。

その想いを体現するかのように、マロロの足元から業かの如く火柱が湧きあがり、渦を巻き、破壊神へと襲い掛かる。
やみのちからによる防壁により、破壊神の身体にはもはや焼き痕などつかない。
しかし、例えその身体には触れずとも、破壊神の身体を覆い切れば視界を塞ぎその動きを止めることが出来る。

【小賢しい真似を】

そのほのおの渦を、破壊神は翼を広げ、その暴風で一蹴。
それでマロロの火柱は消え去る―――はずだった。

【なにっ?】

消えかけた炎の渦は破壊神の起こした気流に乗り再び絡みつく。

(奴の送った塩に縋るのは屈辱でおじゃるが...それが巡り巡って奴の首を絞めることになればそれもまた一興)

マロロの脳裏に過るは、オシュトルたちを一網打尽にしかけたところで策を破られ、自慢げに言い放たれた言葉。
火計とは本来はただ焼き尽くすのではなく風を以て炎を制すること。
マロロは破壊神との戦いの最中、ずっと戦いの中における『風』を分析していた。
破壊神があの腕を振り下ろした時、翼を広げた時、風はどう動くのか。どう移るのか。

その分析のもと、マロロは炎の渦を蛇のように自在に操ることに成功したのだ。

「ハアアアアアアアアアアアアアア!!!」

マロロの雄叫びのもとに籠められる炎の勢いが、渦巻く炎の量が一気に増していく。
彼の脳髄に巣くう『蟲』が、復讐心と求める力に応えてマロロの許容量を超えた氣を産み出していく。
だが。
神を一時的にでも食い止めようとする程の炎が代償無しで生み出せるはずもない。
血涙が、鼻血が、鼓膜からも血が垂れ落ち、彼の化粧をドロドロに溶かしていく。
身体は震え、僅かにでも動けば即座に崩れ落ちるほどの疲労感と苦痛が蝕んでいく。

それでもなお。
ここまで命を削ってもなお。

稼げた時間はせいぜい十数秒。
マロロにとってはあまりにも長く、現実の時間においてはあまりにも短い。

しかし、その僅かな刻が、彼らの命運を決定した。

ブオオォ~~

再び、法螺貝の音が鳴り響いた。


カンカンカン

タンタンタン

槌や工具の音が鳴り響き、溶接や補修が施され。

時折、瞬間移動で現れる王の影をたいまつの火で追い払い。

協力して作り上げるは

メタリックな鋼鉄で出来たボディ
先端には、サイコロステーキ先輩の日輪刀の素材である『猩々緋砂鉄』と『猩々緋鉱石』を塗り込んだ2メートル超の巨大なドリル。
スピードを出すことしか考えていないような、幾つも積まれたエンジン。

車を象るものが続々と着けられ―――

最後にバイクを弄れる弁慶がエンジンのメンテナンスを終えれば―――



―――――――――――――――――
| まぼろしの装甲車が完成した!! |
―――――――――――――――――

「良かった...出来ましたぁ~~」

汗だくになった早苗がへなへなと力なく尻餅を着き、頬を緩める。
まだ戦いが終わった訳ではないし、窮地を脱したわけでもない。
しかし、この状況においてもモノを作りあげた達成感というものは生まれてしまうもので。

早苗だけでなく、弁慶も、久美子も、ビルドも、みぞれも、咲夜までもがその喜びが身体から溢れんばかりの気持ちになった。

「っとと、喜びに浸ってる場合じゃねえ。ボウズ、速くソイツに乗り込め!」

弁慶の言葉にビルドはハッと顔を上げ慌てて操縦席に着き、その助手席には早苗が、後部座席には咲夜がみぞれに肩を貸しながら乗り込む。
装甲車には運転席と助手席、そして後部座席に二人と最低限の人数が乗り込むだけのスペースしか作られていない。
この装甲のほとんどが破壊神の攻撃に耐えるためだけに作られたものであり、空間を作れば作るほど装甲が脆くなってしまうからだ。

残る弁慶と久美子の二人は乗り込めない。

「あ、あのっ」

ハンドルを握りしめるビルドに久美子が躊躇いがちながらも、それでも意を決したかのように声を振り絞る。

「その、友達の貴方に言うことじゃないかもしれないけど...私、やっぱりあの子を許せない。勝手に襲ってきたくせに、勝手に自殺したと思ったら、こんなことまでしでかして...」

久美子の言うあの子とはシドーのことだとビルドは解釈し、黙って耳を傾ける。

「でも、もっと許せないのは、自分だけ楽になろうとしてること!私だって、苦しくて辛いのに、逃げられないのに...あの子だけ勝手にスッキリするなんてイヤ!だから、もしも言葉が届いたら伝えてほしいの。
このまま何も言わずに逃げだしたりしたら許さないって!」

ビルドはシドーと久美子の間になにがあったかは知らない。
彼の友達に対してこんなことを言うのだから性格も良いとは言えないとも思った。
けれど、シドーに対しての苛立ちは共感できた。
説明もなく、勝手に自己完結して終わらせようとした彼に対して怒りを抱いていたのは、ビルド自身もそうだったから。
だからビルドは久美子の言葉に強くうなずき返した。

「お前たち、俺たちのことは気にせず全力でぶつかってこい!なあに、失敗しても誰もお前たちを恨みやしねえさ」

笑みさえ浮かべそう背中を押す弁慶に、ビルドと早苗は微笑みすら浮かべて頷き、出発準備に入る。
ビルドと早苗、両者の足元にペダルが備え付けられている。
ビルドのペダルはエネルギーを消費し車を前へと進めるもの。早苗のペダルは踏み込むことで彼女の神力ともいえる力を抽出するもの。
この車はガソリンではなく、早苗の身体から搾り取った力をエネルギーとして消費しエンジンとするのだ。

「本当に...はぁっ...ガソリンで動けばよかったのですが...んんっ...ままならないものですね、『奇跡』というものは...ぁッ」

早苗の力が注ぎ込まれ、彼女に脱力感が襲い掛かる。
車を設計する折に、そのエネルギーにまで割く余力はなく、早苗の奇跡を起こす程度の力でも無から有を産み出すほどの時間はなかった。
全てがギリギリの瀬戸際だった為の緊急的な措置である。
エンジンが溜まっていくのを受け、車が光り輝いていく。

ビルドがペダルを踏みこむと、ドリルが回転しながら車体が進み、氷の壁を破壊し、一直線に、高速で走りだす。

その光景を。

光り輝く氷模様を背景に、破壊神へ向かっていく車を見送りながら、『なんだか戦車をRPGゲームに突っ込ませたB級映画のパッケージみたい』なんて場違いな感想を抱き、思わずふふっと笑みを零してしまった。

そして。

オフェンスチームにも知らせるための法螺貝の音を鳴らし、それを合図にコシュタ・バワーも二人のもとへと訪れる。

「ここもそろそろ危ないからよ、俺たちも拝みにいこうぜ。この戦いの果てをよ」



轟音と共に氷の壁を破壊し、破壊神へと迫りくる車を視界に入れたマロロの目が見開かれる。

ついにきた。

この悪魔を止める可能性のある最後の一矢が。
あの車がやみのちからの防壁を破壊し、奴の身体の中に眠る首輪をも貫けば勝てる。

だが。
その為には破壊神を逃がしてはならない。

(マロが...マロがやらねば...!)

マロロは残る力を振り絞り、火勢を増そうとする。
だが。

「ごぽっ」

ボタボタと血が零れ落ちる。
血管が切れ、喉元からは血だまりが吐き出された。

限界だ。
車を完成させるために稼いだ十数秒で、もはやマロロの身体はボロボロだった。

(口惜しや...せめて、せめて一度だけでも...!)

もう一度、火柱を起こそうとするが、生まれるのはせいぜいが小火だけ。
これでは破壊神を抑え込むなど出来やしない。

(こんな...こんなところで...!)

マロロの視界が滲む。
所詮自分はこの程度なのか。
たとえ修羅と化し復讐心の身を費やそうとも。
結局は、ライコウやミカヅチたちのような英傑とはなれず。
この程度しかできない男でしかないのか―――

「まだ終わっちゃいねえええええ!!」

上空からの叫びにマロロは思わず顔を上げる。
破壊神のさらに上、空まで飛びあがった隼人とそれにしがみついてきた志乃とジオルド。
アリアによる強化で残された最後の力を振り絞り、急降下する形でジオルドの炎がやみのちからの防壁の輪郭を露わにし、志乃の罪歌が突くことで穴を空け、隼人のドリルが穴を広げ、微かではあるが背中を傷つける。

彼らの捨て身の特攻の成果は、破壊神の身体にほんの少しの傷をつけただけ。
しかし、彼らのその姿が。
戦友(とも)たちの雄姿が。

マロロに最後の力を振り絞らせる。

(かさねがさねかたじけないでおじゃる...!)

「んあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

獣のような咆哮をあげ、血塗れの采配師が再び立ち上がる。
修羅の如き紋様は更に色を濃くし、血だまりは更に地面を赤く染め上げ。
ほんの少しだけ火勢を強くした火柱が、少しだけ破壊神の目を隠すと―――ほどなくして、線が切れたかのように、マロロの身体もまたどさりと崩れ落ちた。

それに微かに遅れて、落下したジオルドは着地をすると志乃の指示に倣い彼女をどうにか受け止め、隼人は受け身を取るのと同時、カタルシス・エフェクトが消え倒れ込む。
彼らを気遣うアリアも、すっかり小さくなった妖精形態で彼らのもとへ飛んでいくが、その軌道はあまりにも拙い。
最早彼らに戦う力はない。破壊神がその気になれば即座に四人を殺せるだろう。

【弱き者よ】

だが。彼は敢えて語り掛ける。
慈愛などなく、死力を尽くした彼らを嘲笑うように。

破壊神の見据える先には、既にビルドたちの駆る装甲車を捉えている。

破壊神は近づいてくるソレに微塵も恐れを抱かなかった。
ビルダーが作り上げたものが故に、警戒する心はある。
だがそれ以上に。
ハーゴン教団が掲げた『破壊』とはただ破壊するだけではなく、希望の芽を見せてから摘んでより濃い絶望を見せつけるモノ。
だから、マロロたちが力を振り絞らずとも、アレが完成した以上は逃げるつもりなど更々なかった。

【よく見ておけ。これが貴様らの生の果てだ】

破壊神の二対の腕が掲げられると、彼の頭上にやみのちからが瞬く間に溜まっていき、一個の黒い球体が生まれる。
それはまさに黒い太陽だった。違うのは、放っているのは熱ではなく全てを呑み込むブラックホールであること。
そんなものをどうしようというのか―――

「まさか...」

ジオルドから思わず漏れたその呟きに、破壊神は口角を釣り上げる。
二対の腕がゆっくりと
黒き太陽を、そのまま装甲車目掛けて放り投げる動作。
まさに太陽を投げつけるようなその姿―――『Stoner Sunshine(ストナーサンシャイン)』とでも名付けるべきだろう。

全ての者に破壊と絶望を与える為、その破壊の技は、たった一つの装甲車に向けて放たれた。


速さは足りている。
だが傾斜が足りない。

ビルドは空に浮く破壊神目掛けて車を走らせる前に気が付いていた。
だから彼女の力が必要だった。
瞬間的に、即効性の足場を作れる鎧塚みぞれの力が。

「これが、最後の...」

破壊神との距離が迫る中、みぞれは力を振り絞り、屋根から上半身を出し狙いを定める。
その視線が向くのは、破壊神そのものではなく、その少し手前の平地。

「お願い...リズと青い鳥...」

掌に載せた氷の鳥を、フッと息で吹くと、鳥は真っすぐ飛んでいき、平地に着地すると、破壊神にまで届く氷の坂道が出来上がった。

「これで私たちはお役御免ね」
「ええ、ありがとうございます咲夜さん」

氷の坂道を作った以上、もはや咲夜とみぞれが居る意味はない。必要なのは早苗とビルドだけだ。
咲夜は既に死に体のみぞれをわきに抱え、時間を止めると装甲車から跳び降りた。

別にみぞれを連れ出さなくてもよかった。
ただ、もし彼女が力尽きて死んで、ビルドたちに動揺が走り失敗、なんてことになれば目も当てられない。
そういった予期せぬトラブルの種を排除しただけであり、決して早苗の言葉に思うところがあった訳ではない―――そう、言い聞かせることで主たるレミリア・スカーレットへの忠誠を忘れていないと自分に証明し、胸の奥底に渦巻くモヤつきを誤魔化した。

(まあ...どのみちアレの前では誤差も誤差だけれど)

しかし咲夜のそのごまかしも、車に迫りくる黒い太陽の前にはあまりにもちっぽけだった。

(本当にありがとうございます)

早苗はみぞれの気持ちを汲んだ上で、彼女を連れていくよう頼んでいた。
それがみぞれの願いであり、彼女の決意を尊重するためだと。
そして今、みぞれは役目を果たした。
彼女だけではない。
久美子も。弁慶も。コシュタ・バワーも。咲夜も。隼人も。マロロも。志乃も。ジオルドも。アリアも。
みんながみんな、己が役目を果たした。
後は早苗とビルドの番だ。

車が氷の坂道を駆け上がり、破壊神へ目掛けて飛んでいく。

「ねえ、ビルドさん。私の能力はただ手品みたいなことが出来る訳じゃないんですよ」

己の身が車諸共、死に近づいていくというのに、早苗の顔色には恐怖の影はない。

「強い信仰のぶんだけ私の力が増していく―――こう見えても私、神様の端くれなんですよ。だから貴方が信じてくれれば私の力で動く車も強くなれます」

それはハッタリかもしれないし真実かもしれない。
この車の大部分を作ったのはビルドであり、早苗たちは仕上を手伝っただけだから。
それでも。
早苗は報いたい。
友を救いたいという一心でここまでやってのけたビルドの気持ちに。
自分が駄目だと微かにでも思えば、彼の、彼らの頑張りも無駄になってしまう。
だから。

「助けますよ、彼を!」

この窮地にも、彼女は笑うのだ。

【消え失せよ、ビルダーよ】
「私の信仰と貴方の破壊、どちらが勝つか勝負です!」

全てを破壊する破壊神の力か。
友を救わんとする信仰か。

二つの神の衝突、その結末は―――


「駄目...!」

神格の域に達する『彼女』であり、第三者の目線だからこそわかる。

全てを破壊する破壊神の力か。
友を救わんとする信仰か。

二つの神の衝突、その結末は、あまりにもあっけない。
微塵も、勝負にすらならない。
装甲車はブラックホールに呑まれ、他の者たちも皆殺しにされる。

そんなわかりきった結末だ。

「ビルド...!みんな...!」

『彼女』は必死に手を伸ばそうとする。
だが届かない。
鳥かごに入れられた鳥のように、叫ぶことしかできない。

【心得よ】

背後よりかけられる声に『彼女』は息を呑む。
誰だ。わからない。けれど、確かにこの声には覚えがある。

【我が力を使えば奴らの道を切り開けるやもしれん―――だが、もしそれを叶えれば我の力は消え失せるやもしれん】

『声』の主は『彼女』を目を隠し優しい声音で語り掛ける。

【奴らはたかだか会って数時間の関係だ。一部の者に至っては敵のようなものだ。その為に、汝は、汝を愛してきた者たちの証を捨て去れるか?】

『声』の主に敵意は感じ取れない。
むしろ自分を気遣っているようにも聞こえる。

【全てを背負う必要はない。愛する者だけを護り、愛する者の為に力を振るう。それを誰が責められよう】
「そう、かもしれない...」

『彼女』は決して自分を聖人君子だとは思っていない。
割と我儘を言うし、好きでもない人を含めて全部救いたいなどとは思っていない。
それは仲間たちもそうだ。
護りたいものを護り、そのために力を振るう。それは誰しも当たり前のことで。
だから、【声】の言っていることも理解している。

「それでも私は、あの子を助けたい」

関わりは決して多くないが、クオンは知っている。
ビルドがひたむきに友を助けたいと奔走していたことを。
そして見せつけられている。
友を止めるために死地にすら躊躇いなく飛び込んでいる様を。

友を見捨てた上で偽りの仮面を被り、『彼』を未だに友だと言い張るオシュトルなんかとは違う彼の力になってあげたい。

友達がいなくなるのは、とても寂しいことだから。

「だからお願い...あの子を助けて!」

『彼女』は己の目を隠していた掌を退けて、【声】に願う。

【...我は根源なる者。自身の願いは叶えられぬ。だが...】

【声】は『彼女』の目を真っ直ぐ見据え、言った。

【我が力を以てして、奴らがどうなるかは奴ら次第だ】


車と黒き太陽が衝突する。

まさにその瞬間だった。

白の巨腕が伸ばされ、黒き太陽を握りしめたのは。

ウィツアルネミテア。

既に敗北を喫したはずの神の腕が、破壊の力を握りしめた。


【馬鹿な...まだ邪魔をするか、根源たる神よ!】

破壊神は怒りに声を荒げる。

『―――――――ッ!』

全てを吸い込むブラックホールとて、神を吸い込むのは容易きことではない。
しかし、もはや力尽きかけている身。
このまま握りつぶそうにも、精々が規模を削るのが限界だ。
故に。

『新人神(ヒト)よ』

ウィツアルネミテアは唯一神格に達している早苗に呼びかける。

『この破壊の力を削り切ることはできぬ―――あとは、其方ら次第だ』

理由はわからないが、ウィツアルネミテアは助け船を出してくれている。
どの道、退く猶予もなにもないのだ。
だったら、進むしかない。

「エンジン全開!このまま掌ごとブラックホールを突っ切ります!!」

ペダルから早苗の力が流れ込み、車は推進力を増していく。
ビルドはそれに応え、全力でペダルを踏み込み、ウィツアルネミテアの掌にドリルを差し込む。

抉る。抉る。抉る。

その果てには―――全てを吸い込まんとする黒い太陽、ブラックホール。

その引力は、発生するエネルギー同士の衝突は、車体だけに留まらず、車内のビルドと早苗にも容赦なくダメージを浴びせる。

「ぐううううううっ!?」
「くぅ、あああああああああッ!!」

まるで万力で挟まれるかのような痛みに二人は悲鳴をあげる。
車から彼らを引きはがさんと、爪が弾け、皮膚が裂け血が噴き出るが、それでも彼らは離さない。

進む。ただ愚直に、友を救うために。

「「いっ...けええええええええ!!!!」」

二人の叫びが重なり、徐々にだが車がブラックホールから引き離されていく。
そして―――

パ ァ ン

弾けた。
ウィツアルネミテアの腕は弾け飛び、ブラックホールを突き抜け、装甲車は征く。
装甲車―――否、もはや装甲は丸裸。天井は剥がれ、装甲を為していたモノも全て剝ぎ取られ。
スクラップ寸前のガラクタに残るは二人の座るシートとペダルとエンジン、そしてドリル。

【よくぞここまで辿り着いたと誉めてやろう、ビルダー】

それを迎える破壊神は逃げも隠れもしなかった。
何故か。
ビルドがやろうとしていることは無駄だと知らしめるためだ。
あんなオンボロの機体で。
あんな満身創痍の姿で。
やみのちからの防壁を突破することなど出来はしないと。

その時こそ、至極の破壊を満喫できるはずだ。

おんぼろの機体にドリルが着弾し、哀れその機体と共に彼らもまた崩れ落ち―――

【なんだと?】

なかった。

このドリルはただの無機物による削岩機ではない。
早苗の神力とも呼べる、彼女の力の源をエネルギー源として動いている。
それは即ち、破壊神のやみのちからの防壁を突破できる早苗の力を纏っていること。
加えて。
彼らは一度、ウィツアルネミテアの掌を貫通することでその体液を手に入れている。
そしてそれをサイコロステーキ先輩の刀から取り出した、陽光を―――光の力を有する『猩々緋砂鉄』と『猩々緋鉱石』が浴びればその輝きは更に増す。
偶然にも二つの神力を纏ったそのドリルは、破壊神の防壁を打ち消すに足る力を有していたのだ。



こじ開けられていく防壁に、初めて破壊神は焦燥を浮かべる。

このままアレを受けるべきではない。
本能がそう訴えかけてくる。

もはや避けきれぬところまで近づく車。
だが、破壊神には唯一避ける手段がある。

虚空の王。自在に瞬間移動できる空間移動の術が。

破壊神がそれを発動しようとしたその時。

空気が。音が。時間が。破壊神以外の全てが静止した。
先の小蠅の小細工か。そう察し、慌てることは無い。

(無駄だ。時間を止めようとも我が動きは止めれぬ)

構わず、虚空の王による瞬間移動を発動しようとするも―――移動できない。

【!?】

困惑を浮かべる破壊神。
その疑問に答えるように、いま一時だけの支配者はぽつりと呟く。

「瞬間移動とは要するに空気に乗り移動すること...貴方自身が動けたところで、他の空気が止まっていれば、瞬間移動などできるはずもない」

ただ傍観していただけでなかった。
ただ腐っていたわけではなかった。

破壊神とウィツアルネミテアの戦いを彼女は見ていた。
その行動パターンも大まかには覚えていた。
だから、時折見せていた瞬間移動を使うならここしかないと思っていた。
咲夜のその直感は的中した。


そして時が動き出す。

破壊神以外の全てが再び動き出す。
もはや逃げ道はない。
横やりを挟む隙間もない。

ただ、互いの信仰への信頼がぶつかり合う。



【―――ビルダアアアアアアア!!!】



破壊神は宿敵を。



「シドオオオオオオォォォォォォ!!!」



少年は友の名を。



そして。



二つの強大な力の衝突の果てに。



長き戦いに決着がついた。

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