バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

第三回放送

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kyogokurowa

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参加者の皆様方、ご機嫌よう。
ゲーム支配人のテミスです。
これより、三回目の定時放送を始めます。
皆様、だいぶお疲れかと思いますけど、聞き漏らしがないよう注意して下さいね。

それでは、まず禁止エリアの発表から。

C-6
D-4
F-5

以上3つのエリアが21時から進入禁止になります。
くどいようだけど、禁止エリアに進入してしまうと、首輪が爆発してしまうので、ご注意を。
折角ここまで紡いだ命ですもの、我々としても無碍にはして欲しくないです。

さてさて、続けては、皆さまお待ちかねの死亡者の発表よ。

【シドー】
【鎧塚みぞれ】
【ジオルド・スティアート】
【武蔵坊弁慶】
【佐々木志乃】
【ビルド】
【マロロ】
【富岡義勇】
【シグレ・ランゲツ】
【カタリナ・クラエス】
【神崎・H・アリア】
【岸谷新羅】
【博麗霊夢】
【フレンダ=セイヴェルン】

以上14名となります。
75名で始まったこのゲームも、残すところは32名―――半分以下となってしまったわね。
ふふっ…、生き残っている皆様がたには、今一度、自分が43名の屍の上に立っているということを認識して貰いたいわぁ。
過程はどうあれ、抱える事情はどうあれ、皆さま方は彼らに勝った強者よ。
それは紛れもない事実―――。
どうか、貴方がたには、その事実を受け止めて、優越感に浸るもよし、罪悪感を味わうもよし―――。
ともかく、弱者たる彼らの敗北を糧として、これからのゲームにも臨んでください。

そして、どうか我々に、もっともっと、見せて下さいませ。
強者同士による全力の殺し合いを-――。
その末に生まれる悲劇と喜劇を---。

皆様が、このゲームで織りなす全てを、我々は見届けさせていただく所存でございます。

今回の放送はここまで。
最後に恒例となりましたが、放送の締めくくりに、μが皆様に生歌をプレゼントいたします。
うふふっ、皆様も、密かに楽しみにしていたのではないでしょうか?
今回歌っていただく曲は、「おんぼろ」―――これは私のお気に入りの曲なの。
作曲者の込めた感情が顕著に表れていて、癖になる曲だから、是非是非聞き入ってくださいね。

それでは、また次の放送でお会いできることを願っております。
ご機嫌よう〜。



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歌姫が唄うは、声なき少女が綴った絶望と怨嗟の叫び。
家族に囲まれて、時には褒められて、時には叱られて―――。
そんな平穏で、傍から見たら何て事のない幸せを、たった一人の悪意によって、踏みつぶされた少女の感情は、μの歌声によって、少女自身が立つ会場に運ばれる。

「何度聴いても、良い曲よね」
「あん? あんた、本当にこんな陰鬱な曲が好きなのか?
どっちかっていうと、金髪の女楽士の曲のが、お似合いだと思ってたが?」

ステージ上で声を響かせる歌姫を眺めながら、テミスと田所は言葉を交わす。

「楽士ミレイの曲も勿論好きよ。
だけど、梔子さんの曲は、如何にもザ・不幸って感じがして、とても愛らしいのよ。
首輪を付けて、撫でてあげたいくらいにね……私は彼女のファンよ」

愉悦と共に、テミスは目を細める。
その表情は、単に好感を抱いている人間に対するものではなく、薄幸の楽士の境遇を見下し、嘲笑うものであった。
そんなテミスに、田所は呆れたような視線を送る。

「良い趣味してんな、お前」

「褒め言葉として、受け取っておくわ。
そういう貴方はどうなの? この曲は好みではなくて?」

「俺はμが歌ってくれれば、曲なんざどうでも良いんだが、あの梔子とかいうガキには、苦い思い出があるからな……。
あいつが作った曲となりゃ、手放しでノレねえんだよ」

「あら、そう。難儀なものね」

相槌を打つテミスだが、その目はどこか小馬鹿にしたように笑っていた。
田所はそんなテミスを一睨みすると、不機嫌そうに鼻を鳴らした。

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「それで…俺らは、このまま待機ってことで良いのかよ?」

「えぇ、その通りよ。 護衛の皆様は、もう暫く、ここで高みの見物をすることになるわ。
必要があれば、μと一緒に動いてもらうことになりそうだけど……あの方の命令待ちね」

「あのいけ好かねえ、仮面野郎か……」

田所は、第二放送直後に面会したGM(ゲームマスター)の事を思い出すと、顔を顰めた。
このイカれたゲームの黒幕の面がどんなもんかと、興味本位に付いて行ったが、いざ対面するとその面貌は、仮面に覆われて拝むことは叶わなかった。
声色から男性だということは伺い知れたが、それ以上の素性は掴めなかった。

「仮面だったら、貴方も装ってるでしょうに……。
随分とGMのことを毛嫌いしているようね」

「あんな得体の知れない奴を、信用しろっていうのが無理あんだろ。
言っていることも、ぶっ飛びすぎてて、シャブでもキメてんのかと思ったぜ――」

田所としては、GMが顔を隠していたのも気に食わなかったが、彼から告げられた内容も、途方のない話で、それでいて胡散臭く聞こえたのである。

「まぁまぁ、そこまでにしときなさいな。
私達はあくまでも雇われの身――ただ与えられた仕事をこなせば良いのよ。
それに、あのお方のおかげで、今の貴方があるのも、どうかお忘れなく」

不満を口に出す田所に、テミスは釘を刺す。
田所は「チッ」と舌打ちをすると、口を噤んだ。
そんな田所の様子を横目で見ながら、テミスはステージ上のμへと視線を移した。
そして、先の面会で、彼女の雇い主に語られた内容を反芻する。

「虚構と現実の逆転―――」

GMがテミス達に告げた、彼の最終目標。
この殺し合いは、あくまで、それを実現するための手段に過ぎないという。
そして、それを実現するためには、眼前の歌姫がキーパーソンになるということだ。

「確かに、あのお方が仰った計画には、私も驚かされたわ。
だけどもし、それが実現するのであれば、それはそれで素晴らしいことだと、私は思うわ。
貴方は、そう思わなくて?」

「……世界がどうなろうが、知ったこっちゃねえよ。
俺は間近でμの歌を聴けるなら、それで良い」

「……ふふっ、『μの歌を聴けるなら』ね……」

「あん? ……何か文句あるかよ?」

含みのある言い方をするテミスに、田所は訝しむような視線を向ける。

「いいえ、何でもないわ。
だいぶ彼女にお熱のようで、妬いてしまっただけよ」

妖艶な笑みを浮かべるテミスに対し、田所は「けっ!」と悪態をついて、再び視線をステージに戻した。
そんな田所の様子を見て、テミスは心の内でほくそ笑む。


(――さてさて、全てが終わった時に、果たして、彼女は『歌姫』のままなのかしらね)

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かつて、全てを失い、絶望した男がいた。
男は、己が父母に反目した結果、彼らを失うことになった。
彼らが注いでくれた愛情に気付いたのは、全てが終わった後。
自分に付き従っていた三人の冠童達もまた、彼への忠を捧げたまま、逝ってしまった。
もう彼を支えてくる者は誰一人いない。

全ては筋違いの妬みと野心を招いた自らの失態―――。
しかし、それを悟っても、失ったものは戻ってこない。

失意の中、彼が手にとったのは原初の仮面。
この仮面を纏いし者は、超常の力を得るとうたわれる代物。

そして、彼はその力に縋った。

『仮面(アクルカ)よ、我に力を―――!!』

だが――。

『――っ……』

先の戦闘で損傷を負ったのか、仮面は、本来の機能を失っており、根源への扉を開くに至らなかった。
男が異形に変わることも、人智を超えた力を得ることはなかったのである。

唯一残っていた蜘蛛の糸を、手繰り寄せることが出来なかった男は、その残酷すぎる現実に絶句する。

しかし――。

『あなたも苦しいんだね? 辛いんだね?』

原初の仮面は、本来保有している能力を発動する代わりに、異界より白き歌姫を遣わした。

『貴方は……?』

そして、男に彼女を使役する能力を与えたのであった。

せめて、彼女の力を以って、己が理想を叶えよ、と告げるように。

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―――残す検体は32体。実験は、順調に進行中。

無機質な部屋のデスクに腰掛ける、その男は、会場の様子が投影されたモニターを眺めながら、思考する。
男の顔は、仮面に覆われており、その面貌を窺い知ることは出来ない。

彼こそが、このバトルロワイアルの元締めであり、テミスからGMと呼称された男である。

―――注目すべき検体は、この二体……。

モニターをタップし、表示されるは【ベルベット・クラウ】と【間宮あかり】の二名の覚醒に関するレポート。
複合異能は度々ゲーム内で、様々な参加者に発現しているが、この二人の覚醒は特筆すべきところがある。
今後も、更なる進化及び彼女達と接することで、他の参加者の覚醒を促すことも期待できるだろう。


―――ゲームの運営は、現状維持が妥当か……。

ここで、男は、現行の運営陣を振り返る。

ゲーム運営を取り仕切るテミスは、会場内で猛威を振るった魔王ベルセリアに臆したのか、第二放送後に、Lucidこと田所興起を伴って接触してきた。
故に、彼女に語った。全ては想定の範囲内であると。
そして、このゲームは、魔王ベルセリアのような複合異能体を誕生させ、彼らの魂をμに取り込ませることが目的であるが為、彼の者の誕生はむしろ喜ばしいということも。
その内容に、テミスは当初こそ面食らった様子ではあったが、未だゲームの盤面は此方の掌中にあると理解すると、その顔に余裕を取り戻した。
自分の保身を第一に考える彼女らしい。

彼女は主催者として、優秀だ。
自分が安全位置にいると確信を得ている間は、まだまだ利用価値はあるだろう。
またリック、セッコ、田所興起の三人も、μへの依存という点で見れば、信頼はおける。
歌姫の護衛という役割については、全うしてくれるだろう。

今のところ、運営サイドに問題はなく、ゲームの運営そのものについて、自らが陣頭指揮をとる機会はないだろうと、総括する。

―――そして、『収穫』の機については、慎重に見極める必要あり。

最後に、男は、今後の方針について思考を巡らした。

この計画の最終目標は、ゲームの完遂などではない。
最後の一人になるまで、殺し合いをさせて、優勝者を出す必要などないのだ。

太古の人類、大いなる父(オンヴィタイカヤン)が構想した、電脳計画――。
それを流用して、μの力を以って再構築した電子の世界。
この虚構の牢獄に、招いた75の魂を相争わせて、成長させ、研鑽させ、進化させて―――最終的にμに吸収させる。
そして、強化した彼女の力を奮って、現実(じごく)を虚構(りそう)で塗り替える―――。

それが今回の計画の目的である。

故に今は、検体達の進化を観察し、『収穫』の機会を伺うことにする。

「―――父上、見ていてください。 私は成し遂げてみせます……」

かつて、ヤマト八柱が一人―――『影光』とうたわれた、その青年は、虚空に向けて、そう呟くのであった。


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【死亡者43名 残り32名】

【ウォシス@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:プロトタイプ@うたわれるもの
[思考]
基本:μを強化させて、現実(じごく)を、虚構(りそう)で塗り替える
0:暫くはゲームの経過を観察する
1:ゲームを進行させ、『複合異能』を誕生及び成長させる
2:誕生させた検体について、ゆくゆくはμに『収穫』させる
3:ベルベット・クラウ、間宮あかりの動向に注目
[備考]
※ プロトタイプは本来の能力を失っていますが、μを使役する力だけは行使できるようです。

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