バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

闇を暴け(下)

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kyogokurowa

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フレンダは眼前で起きた光景に思わず瞬いた。
自分の頸を刎ねんとした大剣を防いだ炎。そこから現れた朱色の羽織は、フレンダを仮面の男から守るように立ちふさがっていた。

「フレンダ=セイヴェルンだな」

背を向けたまま呼ばれた名前に、ドキリと身体が跳ねそうになる。

「俺は煉獄杏寿郎というものだ。流竜馬とレイン少女から話は聞いている」
「っ...!」

告げられた二人の名に思わず唇を噛み締める。
最悪の展開だ。

レインはおろか、竜馬までも健在となれば、静雄ももちろん無事だろう。
それに加え眼前の男ときた。これで最低でもフレンダの敵は四人。
仮にミカヅチから逃げられたとしても、今度はこの四人から逃げ続けなければならなくなってしまった。

さすがの麦野でも、レインを除いた厄介な三人を押し付けられればかなり不機嫌になり、お仕置きもかなりキツくなるかもしれない。

...それ以前に、この場から逃げられるとは到底思えないのだが。

「フレンダ。君の『生きたい』という願いが本当ならば、流竜馬たちのもとへと戻るんだ」

はぇ?と気の抜けた声が漏れる。
殺されないために逃げていたというのに、なぜ殺そうとしてくる者の下へと戻らなければいけないのか。

「俺は生きたいと願う気持ちは否定しない。だから考えろ。犯した罪にどう向き合うかは、きみ次第だ」

―――弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさねばならぬ使命なのです。

かつて、今は亡き母と交わした約束を思い出す。
自分がほかの人よりも強く生まれたのはなぜか。それは弱き人を助ける為だと。
杏寿郎はそれに納得し、そう在りたいと願い鬼殺隊の柱になるまで己を鍛え上げた。
だからこの殺し合いにおいてもやることは変わらない。
弱き人を助ける。
その弱き人とは、戦う術を持たない無辜の民はもちろん、フレンダのように己の欲に負けそうになる者もだ。
こんな異様な状況なのだ。己の保身を優先し強行に縋りたくなる気持ちもわからないではない。
だが、一時の生を得る為に他者を害し数多の命を摘み取れば、それはもはや悪鬼となんら変わらない。

だから、そうならない為に煉獄は手を差し伸べる。
幸いにもまだ彼女の手による死者は出ていない。まだ、心から悔い償いに励めば赦される。そう、煉獄は信じている。

そんな煉獄の意図を察したか否か、フレンダはそろそろと立ち上がると、数秒だけ視線を地に向け唇を噛み締め、背を向け一目散に駆け出した。

本来ならば、この殺し合いが終わるまで彼女に同行し、罪を犯さぬよう見届けるのが責務を果たすということなのだろう。
だが、この場ではそうはいかない。眼前の男は、それを許してくれるような相手ではない。

「話は済んだようだな」

フレンダが逃げ出したのを見届けたミカヅチが口を開く。

「最後まで話をさせてくれたことには礼を言おう」
「礼を言いたいのはこちらの方だ。この戦に不純物は不要」

ミカヅチが剣の柄を両手で握りしめ、煉獄へと切っ先を向ける。

「さあ、武士(もののふ)よ。存分に死合おうぞ」

ミカヅチの鋭い双眸に射貫かれながらも、煉獄は恐れることなく堂々と向き合う。

(この男は...違う)

煉獄から見ても、ミカヅチはフレンダとは違いこの殺し合いを受け入れ完全に乗っている。
だが、この男からは保身に敗けるような弱さも鬼のような弱者を甚振る醜悪さも感じられない。

「...君の名を聞かせてもらおうか」
「左近衛大将ミカヅチ。貴様は?」
「俺は鬼殺隊が一人、炎柱の煉獄杏寿郎。ミカヅチ、きみはこの殺し合いで何を望む。なぜ悪女たちの甘言に賛同する」

煉獄の問いかけにミカヅチは口を開きかけるが、しかし唇を引き締め、つい出そうになった言葉を飲み込む。

「煉獄よ。戦において言葉で探るなど無作法の極み。全てはこの剣で語り合おうぞ」

説得や交渉は無意味。ミカヅチの鋭い眼や放たれる殺気から、煉獄もまた察し、瞼を閉じ

「―――承知!如何な理由があろうと、罪なき命に振るわれる凶刃を見逃す謂れはなし!!」

カッと見開き、剣を構えた。
それを見たミカヅチは思わず口元をフッと緩める。

(そうだ。それでいい。強者との闘いこそが俺の血を滾らせる)

本来、戦いとは相応の覚悟を持った者同士で執り行われるべきもの。
その価値観に当てはめれば煉獄杏寿郎という男はこれ以上なく剣を交えるに相応しい相手だと見受けられる。

「―――参る!」
――――ス ゥ ゥ ゥ

ミカヅチが吼え、煉獄の呼吸が変わったその瞬間、離れていた筈の両者の距離が瞬く間に詰められ、互いの剣が交叉した。

甲高い音が鳴り響き、両者は怯むことなく斬撃を放っていく。

袈裟切り。
逆袈裟。
右薙ぎ。
左薙ぎ。
左切り上げ。
右切り上げ。
逆風。

放つ斬撃は何れも同時。互いに引くことも押されることもなく、ほぼ互角。

二人の一振りごとに大気は揺れ、草木が弾け、地面が抉られていく。

―――炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天

煉獄の刀が下から上に向けて振るわれる。
ミカヅチはそれを刀身で受け、その上体が衝撃により空へと投げ出される。
浮いたミカヅチへと追撃をかけようとする煉獄だが、しかしただならぬ気配を察知し咄嗟に横へ飛ぶ。
その予感は当たっていた。
昇り炎天を耐えきれないと踏んだミカヅチは、身体の力を抜くことで抵抗を無くし、煉獄の想定以上の高さまで打ち上げられ、僅かに生じる誤差を利用し、宙返りする。
その遠心力を使い、一層強力な打ち下ろしを放っていたのだ。

煉獄のいなくなった地面を叩いた『クロガネ征嵐』は地面を砕き砂ぼこりを巻き上げ両者の視界を防ぐ。
だがそんなことに構う二人ではない。
例え視界が塞がろうとも、斬るべき敵はそこにいる。

ならば―――攻めるまで。

煉獄とミカヅチがまたも同時に踏み込み、剣が交叉し衝撃で埃が霧散する。

―――炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり

またも交わされる乱撃は更に加速する。
互角だった戦況は、煉獄の炎のように荒ぶる剣筋が勢いを増していくことで徐々に傾いていく。

微かにだが、ミカヅチに斬撃が刻まれ、奔る痛みと共に至る箇所の皮膚が裂け、次第に出血も増えていく。

「―――ヌゥえええいいぃ!!」

咆哮と共に、ミカヅチが力任せに剣を横なぎに振り、煉獄を弾き飛ばす。
着地後、すぐに駆けようとする煉獄だが、しかし間に合わず。
体勢を立て直した時には、既にミカヅチは距離を詰め始めていた。

横なぎに振るわれる剣を煉獄は咄嗟に飛び退き躱す。

「ッ!」

胸元を走る痛みと共に、真一文字に皮が裂け血が噴き出した。

深くはないが決して浅くもない。放置すれば行動にも支障が出るだろう。
それはミカヅチとて同じ。
受けた傷の一つ一つは大した大きさではないが、それでも身体は痛みを訴え、出血量も目に見えて増えている。

(この男...!仮面の者(アクルトゥルカ)である俺と正面からこれほどまで打ち合えるとは!)
(あれほどの身の丈と得物でありながら、力を損なわずああも軽やかに舞えるとは。まだまだ己の未熟さを痛感させられる)

ミカヅチは煉獄の剣の速さと技量に、煉獄はミカヅチのパワーとその身の丈に似合わぬ身の軽さに素直に感服する。

―――フ ウ ゥ ゥ

荒れた呼吸を整える二人。
煉獄は全集中の呼吸で、ミカヅチは己の筋肉を引き絞ることで出血を抑える。

傍目には最初の再現と見えるだろう。だが、二人は理解している。
実力は拮抗している。だからこそ、ほどなくしてこの戦いも終わるだろうと。


「煉獄よ。お前ほど俺とここまで戦えた武士(もののふ)はそうはおらん...この時を終えるのが惜しくなってきたわ」
「...ミカヅチ。なぜきみはその剣を振るう」

先ほどの問いと酷似した疑問を投げかける煉獄。
再び口を噤もうとするミカヅチだが、しかしこちらを真っすぐに見据える煉獄の目を見ている内にふと力が抜ける。

「...護るもののため。俺の護るべきものは、ここにはない」

気づけば、そう口に出していた。
本来ならば、戦場において相手の戦う事情などノイズに等しい。互いに知るべきではないことだ。
先もそうやって断った。
だが、剣を交えて改めて思う。この漢にならば話すべきだろうと。

なぜなら。

「そうか、ならばこれ以上は何も言うまい!俺は俺の責務を果たす為にこの剣を振るうだけだ!」

煉獄杏寿郎という漢はこう答えるだろうと解っていたからだ。

「...ああそうだ。俺は俺の、お前はお前の護るものの為に戦う。ただそれだけのことだ」

思わずミカヅチの口元がふっと緩む。
不思議な気分だ。
戦において邪魔になると思っていたものを曝け出したというのにこうも心が軽くなるというのは。
静雄に対しても先の煉獄との殺り取りにしても、決して手加減をしていた訳ではない。
だが、実際に口に乗せて宣戦したことで、微かな迷いも削ぎ落ちた。自然と剣を握る力も強まった。

(それはお前も同じだろう、煉獄よ)

言わずともと解る、と言わんばかりの自信に満ち溢れた煉獄の笑みにつられ、ミカヅチもまた口端を吊り上げ笑い返す。

「...煉獄よ。俺の國に美味い酒がある。この催しを終えた後、一献くれてやるとしよう」
「酒か!望むところ!ならば俺は鯛の塩焼きとさつまいご飯を用意しよう。きっと君も気に入るはずだ!」
「そうか、それは酒の摘まみにちょうどいいな。楽しみだ」

ミカヅチは思う。
利権の関わらぬ闘争に身を置けたのはいつ以来だろうか。
叶うならば、かつての友たちを交え、酒宴にて後先考えぬ馬鹿騒ぎにでも興じたいところだ。
だがそれは叶わない。ミカヅチはミカヅチの、煉獄には煉獄の護るべきものがある以上は道を譲られぬ。
ならば、せめて墓の前で語らい飲み明かすとしよう。

二人は共に得物を握り、己の型へと姿勢を合わせる。

「...行くぞ」
「応ッ」

決して、互いに憎んでいる訳じゃない。恨んでいる訳でもない。ただ譲れないものがあるだけだ。

「我は鳴神也。仮面アクルカよ」
―――炎の呼吸 奥義

ミカヅチは仮面に手を添え、煉獄は刃を引き脚に全力の力を籠める。

「無窮なる力以て、我に雷神を鎧わせたまえ!」
―――玖ノ型 煉獄!!

放たれるは両者の全力の技。

ミカヅチの身体に電流が迸り、刀身から迸る炎が煉獄の身体へと渦のように纏わりつく。
ミカヅチが刀を振り上げた刹那、煉獄の身体が光の如き速さで突進する。
振り下ろされる雷撃の刀。突き出される炎獄の刀。

「「おおおおおおおおおォォォォォォォ――――――ッッッ!!!!」」

互いの雄たけびが交わり、両者が刀を打ち付ける音が鈍く響き渡る。
衝突の衝撃が大気を震わせ、木々の表皮は剥がれ、二人の周囲を灼熱が包む。

呼吸すらも肺を焼きかねない熱の中、しかし二人は微塵も揺らがない。
ただ己の我を通す為だけに己の全力をぶつけるのみ。

(負けられん!我が使命を果たす為にも!)

ミカヅチの腕に、はちきれんばかりに悍ましいほどの筋が走り、剣に奔る電撃がさらに勢いを増す。

(俺は俺の責務を全うする!これ以上の無用な犠牲は誰一人出さん!!)

煉獄が歯を食いしばるのに呼応し、ほのおの剣は更に火炎を増していく。


攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。
ミカヅチの雷撃を煉獄の炎が威力を抑え、煉獄の炎をミカヅチの雷撃が勢いを抑え。
互いに最大の技を放ったにも関わらず、両者の剣技のみがモノをいう状況に陥っている。
両雄、互いに拮抗状態。

―――パ ァ ン

弾いた。弾かれたのは煉獄―――否、ミカヅチもだ。
共に体勢を崩し後退するが、その決定的な隙を見逃す両者ではない。

煉獄は即座に最適な型へと切り替え、ミカヅチは空いた距離を利用し、独楽のように回転し遠心力を伴い剣を振るう。

―――炎の呼吸 伍ノ型
武士(もののふ)よ!」

地を駆ける虎の如く炎がうねり、空を舞う龍の如く雷が奔る。

―――炎虎!!!
「我が力をその身に刻み込め!!!」

龍虎相搏つ!!
炎虎がミカヅチへと牙を剥き、龍爪が煉獄へと突き立てられる。

奔る激痛の中、それでも両者の眼は前だけを見据えている。
身体が焼かれた程度ではこの漢たちは止まらない。
ただひたすらに己の剣のみに全てを賭ける。

「ガアアアアアア!!!」
「オオオオォォォォ――――ッッ!!!」

ミカヅチの、煉獄の叫びに応じて荒れ狂う虎と龍が収束していき、そして―――雷炎が周囲一帯を飲み込んだ。



「―――でね!あいつってばウィキッドの時もすぐに部員の皆を疑って!疑う気持ちはわかるけどああも断定するかのように言われたこっちもイラつくのよ!わかる!?」
「ああ、うん...」

機関銃のように琵琶坂への不満を喚き散らす彩声にたじろぎつつも、梔子は彼女の言葉に耳を傾け続けた。
やはり間違いない。キレやすい言動、自分が世界の中心であるかのように狡猾に立ち回る様。
間違いなく、自分の知る琵琶坂永至だと確信する。

(待っていろ琵琶坂永至...お前は絶対にただでは帰さない...!)

内心で琵琶坂へと憎悪を募らせる中、こちらの顔を覗き込む彩声の視線に気づきはっと我に返る。

「ねえ、大丈夫?さっきから難しい顔してるけど...」
「あ、ああ...問題ない。気にしないでくれ」
「ならいいけど...体調悪くなったらすぐに言ってね?」
「...ありがとう」

敵同士だというのにここまで心配してくれる彩声に今さら申し訳なく思う。
もしも琵琶坂に、彩声が彼のことを話したと知られればなにをされるかわかったものじゃない。
それは彩声自身もわかっている筈だが、しかし彼女と自分とでは考えている度合は違うだろう。
あの男は、恐らく彩声相手でも容赦なく殺すはずだ。

(...今さら善人面はできないな)

改めて思う。
自分のような悪党に彼...煉獄杏寿郎が傍にいるのは相応しくないと。
彼のような人を気遣え、強く優しい男はもっと救いを求める者の力になった方がいいに決まっている。

(あの人なら琵琶坂に騙されるようなことはないだろうが...)

目的が果たせるまでは共に行動したくないとは思っていても、見ず知らずの自分を助け支えてくれた恩人だ。
どうか彼が無事でありますように、可能であれば琵琶坂以外の多くの人の支えになれますようにと、梔子は心の内でそっと願った。




「......」
「...まだ気にしてるんですか」
「...すまねえ」
「先ほども言ったでしょう。お互い様だと」

レインを背負いながら歩を進める静雄の面持ちは暗い。
彼は、レインとフレンダを置いて一人で先行したことを悔やんでいた。
殺し合いである以上はこうなることも想定しなければならなかったのに、いつものように頭に血が上り抑えきることができなかった。
その結果、レインは道具を奪われ傷つくことになってしまった。
静雄はそれを平然と流せるほど鈍い男ではなかった。

一方のレインは、静雄が先行したのを責めるつもりは一切なかった。
そもそも静雄が向かうのを止めなかったのは自分だ。フレンダを連れて、あるいは逃がして静雄と共に竜馬のもとへと向かうことが出来たはずなのにそれもしなかった。
己の思考はどうであれ、レインは静雄との接触から流竜馬という人物を測ろうとした―――言い方を変えれば静雄を当て馬に使ったのだ。
故にこの失態は代償であり、静雄が気にする必要は一切ない―――そう説明はしたのだが、結局、静雄はレインに気を遣わせていると一層落ち込んでしまった。

「...チッ」

二人の先を進む竜馬が舌打ちと共に振り返り、静雄へと指を突き付ける。

「やいてめえ、さっきからネチネチネチネチとイジけやがって」
「...あ?」

静雄のこめかみにピキリと筋が入る。

「肝ならそっちのガキの方がよっぽど座ってらあ。終わっちまったことを引きずるくらいならとっとと前を向きやがれ玉なし野郎」
「てめえ...!そいつは喧嘩売ってるってことでいいんだよなぁ、あぁ!?」
「やるかぁ!?」
「はいはいそこまでですよ二人とも」

今にも額同士がぶつかりそうなほど顔を近づけ火花を散らす二人にレインが割って入り仲裁する。
さすがに少女に諫められてはバツが悪く、二人揃ってしぶしぶと引き下がる。

「...それにしてもあなたがこちらに来るとは意外でした」
「勘違いすんなよ、俺はてめえらとツルむつもりはねえ。煉獄の野郎に頼まれたから来てやっただけだ」

元々、竜馬はフレンダを探しに行く予定であった。
しかし、煉獄に自身にこの件を預け、且つ警察署にいる仲間に合流し誤解を解いてほしいと頼まれた為に予定を変えた。
無論、最初こそは反対しフレンダを殺しに向かおうとした竜馬だが、犠牲を増やすことで主催の掌で踊らされるのを避けたいという煉獄の進言と下げられた頭には流石に喚き散らすこともできず。
また、一番被害を被ったレインがこれ以上危害を加えないなら彼女を殺そうとは思わないと煉獄に賛同した為、余計に何も言えなくなり、しぶしぶ煉獄の頼みを聞き入れたのだ。

(...ま、野郎が命を張ってるのだけは認めてやらあ)

二人を無視してフレンダ捜索に向かってもよかったが、己の身体を張るヤツは嫌いではない。
それに煉獄には借りがある。
静雄との闘いはもはやどちらかが死ぬまで止められない領域にまで達しかけていた。
それを身体を張って止めた煉獄に、竜馬は決して感謝を口にすることはないだろうが、それを借りだと認識する程度には良識があった。
その為、フレンダの第一声が謝罪であれば拳骨一発を条件に煉獄の頼みを聞き入れた。
静雄とレインもまた断る理由もないため、三人は共に警察署へと向かっていたのだ。

―――尤も、煉獄が真に気遣ったのは、疲弊しきっていた竜馬と静雄であることはレインしか気づいていないのだが。

三人で黙々と進む中、レインにある不安が過る。
煉獄は確かに強い。だが、この殺し合いには王やミカヅチのように一筋縄ではいかない相手がいるのも事実。

「...もしも煉獄さんが放送で呼ばれたら」

「「いやあいつは死なねーだろ」」

一抹の不安を漏らしたレインに反応した二人は、全く同じ言葉を同時に発したため思わず顔を見合わせ、しばしの沈黙の後に再び前へと向けた。

(これもまた、信頼の形なんですかね)

レインは同盟を組むときは必ず損得を勘定に入れて手を組み、信頼はその後についてくるものだと思っている。
だが、彼らはこうもあっさりと煉獄を信頼していた。
男は拳を交えれば解りあえる、とでもいうのだろうか。
きっと自分には縁のない世界なんだろうな、とレインはため息交じりに思った。


フレンダは煉獄たちから離れた後、がくりと肩を落とし、とぼとぼと来た道を戻っていた。
煉獄の言葉に感銘を受けた...という訳ではなく、彼の言葉に従うかを決めあぐねていたのだ。

(たぶん、あの言い草だと竜馬たちと話はつけてある...ってことだとは思うけどね...)

煉獄はフレンダに対して必要以上の悪感情は抱いていないのだろう。
問題は、竜馬が煉獄との話を無視して殺しにかかってきた場合だ。
煉獄がいれば守ってくれるだろうがその煉獄はミカヅチの相手をしている。

ならば彼の言葉を無視して少しでも早く麦野と合流し竜馬たちを蹴散らしてもらうか?
それが安全といえば安全だが、しかしそれまでにあの三人が大勢の参加者に自分の悪評を広めればそれこそ詰みだ。
それを危惧するならやはり大事にならないうちに、竜馬たちを信じて謝りにでもいくか...

なんにせよ、どう転んでもリスクは負わなければならない。

「う~、せめて一緒に来てくれないとどうしようもないって訳よ...」

もしも煉獄の名が告げられればそれだけで竜馬たちとは敵対関係になってしまうだろう。
かといって、放送まで待ちその間に取り返しのつかないほど事態が動いてしまえばどうにもならないので、どう動くかは極力早めに決断しなければならない。
せめて煉獄の名が放送で呼ばれないようにと祈りながら、ふらふらと足取りを進めるのだった。






燃えてゆく。飛ばされた己の左腕が、寸前まで斬り合っていた漢が。

崩れていく身体へと右手を伸ばす。指先が触れると、僅かに原型をとどめていた灰の塊がさらりと溶け、握りしめた掌に命の柔らかさを感じさせる。

...もしも。もしも、こんな場所で出会わなければ。否、こんな場所で剣を交えたからこそ、彼は宿敵(とも)となったのだろう。

後悔はない。悲しむつもりもない。

故に、この身に刻まれた痛みと共に彼の者の名を抱きしめる。

「煉獄杏寿郎。お前という漢がいたことは決して忘れんぞ」

その言葉と共にドサリと倒れこむ。

瞼に焼き付く命の光に微睡みながら、左近衛大将ミカヅチはしばしの眠りについた。

燃え尽きた屋敷の灰が舞い、昇る陽光は夜の終わりを告げる。

立っていたのは、墓標のように地に刺さる朱色の剣だけだった。


【煉獄杏寿郎@鬼滅の刃 死亡】





【B-5/警察署/早朝/一日目】


【梔子@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:健康、疲労(小)、パニック発作(ほぼ治まってる)
[服装]:メビウスの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品3
[状態・思考]
基本行動方針:琵琶坂永至に然るべき報いを
0:彩声と共に行動する。
1:琵琶坂永至が本人か確かめる
2:本当に死者が生き返るなら……
[備考]
※参戦時期は帰宅部ルートクリア後です。
※キャラエピソードの進行状況は後続の方にお任せします。

【天本彩声@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:顔にダメージ(大)
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3(食料品を抜かれている)
[思考]
基本:殺し合いからの脱出。
0:梔子と共に行動する。
1:暴力的な男(特に竜馬)は絶許。μとももう和解なんて考えない。
2:琵琶坂にもStorkにもウィキッドにも要警戒する。梔子は彼女次第では協力しようと思う。
3:ウィキッドが鳴子先輩なのか確かめる。
[備考]
※参戦時期は琵琶坂生存ルートでウィキッド編で閉じ込められている最中。部長は女のようです。




【C-4/早朝/一日目】

【流竜馬@新ゲッターロボ】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、出血(小~中)、身体に軽い火傷。
[服装]:
[装備]:悲鳴嶼行冥の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、彩声の食料品
[思考]
基本方針:主催をブッ殺す。(皆殺しでの優勝は目指していない)
0:静雄たちと共に警察署に向かい、そのあと早乙女研究所に向かう。
1:粘着野郎(晴明)を今度こそぶっ殺す。
2:戦う気のない奴に手を出すつもりはない。
3:弁慶と隼人は、まあ放っておいても死にゃしねえだろう。
4:煉獄に免じて素直に謝れば拳骨で勘弁してやる。まだ歯向かってくるようなら容赦はしない。
※少なくとも晴明を倒した後からの参戦。


【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、全身火傷(小)、出血(小~中)、全身に複数の切り傷(小)
[服装]:いつものバーテン服(ボロボロ)
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、不明支給品3つ
[思考]
基本:主催者を殺す
0:竜馬と共に警察署に向かい、そのあと池袋駅に向かう。
1:さっきの仮面野郎は絶対殺す
2:セルティと新羅を探す
3:ノミ蟲(臨也)は見つけ次第殺す
4:煉獄の言っていた女の子たちも見つけたら保護してやる
[備考]
※静雄とミカヅチの戦闘により、公園が荒れ放題となっております。
仮面アクルカによる閃光は周辺地域から視認できたかもしれません。


【レイン@ダーウィンズゲーム】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)
[服装]:普段の服
[装備]:ベレッタM92@現実
[道具]:
[思考]
基本:会場から脱出する
0: 竜馬と共に警察署に向かい、そのあと池袋駅に向かう。
1: 【サンセットレーベンズ】メンバーとの合流を目指す
2: 狙撃銃が欲しいところです
3: μについての情報を収集したい
4: 王、ヒイラギイチロウを警戒
5:煉獄の言っていた子供たちも一応気に留めておく。
[備考] 
※参戦時期は宝探しゲーム終了後、カナメ達とクランを結成した頃からとなります。
※ヒイラギが名簿にいることから、主催者に死者の蘇生なども可能と認識しております






【D-4/早朝/一日目】

【フレンダ=セイヴェルン@とある魔術の禁書目録】
[状態]:全身にダメージ(中)、疲労(絶大)、右耳たぶ損傷、頬にかすり傷。衣服に凄まじい埃や汚れ。
[服装]:普段の服装(帽子なし)
[装備]:麻酔銃@新ゲッターロボ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、『アイテム』のアジトで回収できた人形爆弾×2他、諸々。レインの基本支給品一色、やくそう×2@ドラゴンクエストビルダーズ2、不明支給品1つ(確認済み)
[思考]
基本方針:とにかく生き残る。現状は首輪の解除を優先するが、優勝も視野には入れている
0:煉獄の言う通りに竜馬に謝りに行く?それともさっきの連中とは別の参加者を探す?
1:麦野たちと合流できればしたい...後々を考えると複雑な気分ではあるが。
2:あの化け物(ミカヅチ)から逃げる。絶対に関わり合いになりたくない。
3:彩声にちょっぴりの罪悪感。まあでも仕方ない、切り替えていこう
4:死なないで煉獄、マジで
※フレンダの支給品の一つ、煙玉は使い切りました。



【D-3/早朝/市街地痕/一日目】
※周囲一帯がミカヅチと煉獄の戦いでほとんど壊滅しています。
※煉獄の支給品は燃え尽きました
※ほのおのつるぎ@ドラゴンクエストビルダーズ2は地面に突き立っています。


【ミカヅチ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]: ダメージ(絶大)、疲労(絶大)、左腕消失、全身火傷(大)、覚悟、主催者への怒り、気絶
[服装]:いつもの服装
[装備]:ミカヅチの仮面、クロガネ征嵐@テイルズオブベルセリア
[道具]:基本支給品一色、不明支給品1つ
[思考]
基本:ヤマトの民を守るため、優勝して元の世界へ戻る
0:気絶中
1:参加者を見つけ出して、殺す
2:先程の男(平和島静雄)との決着はいずれ……
3:オシュトル(ハク)とも決着をつける。姫殿下については……
4:覚悟は決めた。立ち塞がるのであれば、女子供であろうと容赦しない
5:煉獄杏寿郎、その名は忘れない。
[備考]
※参戦時期は少なくともオシュトル達と敵対していた頃からとなります。
※仮面の力に制限が課されていることに気付きました。


前話 次話
愛されるよりも、愛したい真剣(マジ)で 投下順 Big Brother

前話 キャラクター 次話
闇を暴け(中) 天本彩声 resonance
闇を暴け(中) 梔子 resonance
闇を暴け(中) 煉獄杏寿郎 GAME OVER
闇を暴け(中) 平和島静雄 resonance
闇を暴け(中) レイン resonance
闇を暴け(中) 流竜馬 resonance
闇を暴け(中) フレンダ=セイヴェルン Go frantic
闇を暴け(中) ミカヅチ 人生は選択肢の連続だ
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