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連載 - ハーメルンの笛吹き-13

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上田明也の綺想曲2~殺人鬼大惨事~


ある日のニュースで妙な事件が報道された。
通り魔殺人が続いていた地域で犯人と思しき男が殺されていたというのだ。
誰が?何の為に?噂は尽きることがなかった。
そのうち殺人鬼に脅える誰かが語り始めた。
「あれは殺人鬼専門の殺人鬼だ」と。
その噂は人々の間にまことしやかに伝えられる内に肉を付け骨を得てこの学校町に現れた。

夜の町。
月明かりだけが煌々と照る静かな町には不似合いな二人組が歩いていた。
一人は男、一人は少女。
この町では所謂不良少年や不良少女と呼ばれる人々が被害者の連続失踪事件が起きている。
犯人は通称、“ハーメルンの笛吹き男”
俺はあの二人組がそれだろうと判断し、声をかけた。
「あんた達が今話題の子供専門の殺人鬼かな?」
タァン、タァン、タァン!
後ろから声をかけたと同時に発砲される。
腕に一発、胸に二発、あまりに自然な動きだったので少々反応が遅れた。
遅れたが躱せないことはない、ジグザグに走って照準をずらす。
一見したところ普通の学生にしか見えなかったがどうやら違うらしい。
行動一つ一つに迷いがない、やり慣れていると言うべきだろうか。
何人もの人間を屠ってきて解ったことだが人間には基本的に二種類居る。
“食う”人間、“食われる”人間、この二種類だ。
明らかにこの男の方は他人を“食う”ことに躊躇いがない。

申し遅れたが俺の名前は「殺人鬼専門の殺人鬼」。
夜の町を駆ける正義の味方だ。毎晩正義の為に戦っているのだ。
容姿を説明すると外見年齢は高校生位。
髪はサイドを短く刈り込んで後ろだけダンサーみたいに長く伸ばしている。
髪が傷むのは嫌なので染めることはしていない。
耳にはピアス、タクティカルベストを着込んでいる。

「お前は誰だよ?銃弾を躱すなんて普通の人間の出来ることじゃねえよ。」
拳銃を俺に向けて構えたまま尋ねる男。
全身に一分の隙も無い。
だが俺からも一つ言ってやる、普通の人間は自分に話しかけてきただけの他人に向けて発砲しない。
良かろう、マナーとして名乗っておいてやる。
「俺は殺人鬼専門の殺人鬼。世の為人の為俺の快楽の為に……。」
ナイフを抜いて構える。
曇りの無い刃には病的な月の影だけが映る。
「一遍死ねよ。」
氷のように透き通った声と共に
さぁ、始めよう。

「マスター、あの都市伝説……かなり強いですよ?」
「解った、問題無いよ。」
少女は動揺を隠せずに男の方に問いかける。
どうやら少女の方が都市伝説のようだ。
男は飄々とした風情で問題無いと宣う。
殺人鬼専門の殺人鬼である俺がこの勝負でどれだけ有利だか解っているのだろうか?
「俺はハーメルンの笛吹き男、他ならぬ俺の為に……。」

チチッ
動物の鳴き声

パチィン!
指の鳴る音

「――――――死ね。」

違和感を感じたのと激痛が走るのがほぼ同時だった。
男が指を鳴らした瞬間にどこからとも無くやってきていた鼠が俺の脚に齧り付いていたのだ。
急いで振り払おうとするがその間にも大量の鼠がやってきて肉に骨に齧り付こうとする。
向こうから話を振ってきたのは恐らくこれの時間稼ぎだったのだろう。
逃げるか?
いや違う。
逆に攻める。
一気に走って距離を詰める。
狙うのは男の方ではない。
少女の方だ。
走ってきた勢いをナイフに乗せて少女の心臓に叩きつける。
少女の身体は簡単に吹っ飛んでいくが手応えがおかしい。

近くにあった壁に叩きつけられてグッタリはしているが出血量が明らかに少ないのだ。
しかしそんなこと考える余裕もなく、少女の隣に立っていた男から逃げるようにそのまま走り抜ける。

――――ブゥン

背後で何かの裂ける音がする。
パラパラと自分の髪が切れる音だった。

切れ口を手で触って確認するとそれこそ異常なまでに綺麗に断ち切られているのが解る。
当たったら不味い、それだけははっきりしていた。

「LOLIQLO……だったけか?」
おそらく原因は少女の着ている服だろう。
「さぁ?俺は知らないね。」
男は俺の髪の毛をパラパラと地面に捨ててみせながら惚ける。
「仕方ないね、解体てからゆっくりと調べさせて貰うよ!」
先程の少女はダメージのせいか動きを止めている。
鼠の攻撃も止まっていることから見ると彼女が鼠を操っていたのだろう。
この男だけならば只の人間。
只の殺人鬼。
俺の敵ではない。

パァン!パァン!
俺が走り出したのを見てからの発砲。
走っている最中ならば急には止まれないと判断したのだろうか?
だがそれは大きなミステイク。
それを確認した瞬間に地面を強く蹴って空中に飛び上がった。
高く飛んで男の頭上を軽く越える。

しかしすれ違いざまに空中から見ると男は笑っていた。

ゴン
何かが落ちる音
ガチャリ
何かが装填される音
タタタタタタ!
空中に居た俺に向けて男はサブマシンガンを撃った。

当然空中で躱す術など無い。
それでもナイフで何発かは弾いて致命傷を避ける。
「くそ………。」
俺は地面に倒れていた。
否、倒れている振りをしていた。
近づいてこい、近づいてその小刀で止めを刺しに来い。
それ以外ではあの鼠で食い尽くされない限り僕は死にはしない。
近づいてきたその瞬間こそが俺の勝利だ。

「手間かけさせやがって……。これで終わりだ。蜻蛉切!」
男がその小刀の名前らしき物を呼ぶと小刀は一層禍々しい気配を強くする。
5m……、4m……、2m……、今だ!

跳ね起きて男に向けてナイフを突き立てる。

突き立てる
突き立て……る?
身体が動かない。
何故だ?

「お前がその姿で現れてくれて助かったよ。やはり都市伝説相手では利きが悪いらしい。」
「マスターの作戦通りですね!」
「俺が戦っている間にこいつの笛でお前の身体の支配権を奪い尽くす、それが目標。
 お前の眼をこいつからそらす為にわざと鼠の能力で脅威を与えてこいつを狙わせた、これが下準備。
 わざとやられた振りをして鼠の能力を解除させてこいつに時間を作った、はいお仕舞い。
「なん、だと?僕が現れてから細かく作戦なんてもの立てる暇はなかった筈だ!」
「暇が無いなら前もってやれば良いだろう。」
男はさも当然のように言う。
「俺が名乗った後の台詞と作戦を対応させて幾つかのパターンを作っておけばそれ位造作もない。」
「……くそ。」
「そう言うわけだよ、他ならぬ俺の為に死んでくれ。殺人鬼専門の殺人鬼さん。」

パチィン

男はもう一度指を鳴らす。
そして俺の視界は真っ暗に染まっていった……。

【上田明也の綺想曲2~殺人鬼大惨事~fin】



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