「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 騎士と姫君-22

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匿名ユーザー

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「宴の終わりと新たな始まり」


 西区の外れ、とある路地にて。
 すでに日付が変わろうかという時刻、人通りもない路地を四人の人影が歩いていた。

「あー、終わっちゃいましたねえ宴会」
「ふふ、楽しかった?」

 だいぶ欠けた月を見上げ、残念そうにつぶやく女性にそう問いかけるのは、寝息を立てる少年を背負った女……いや、男性と言うべきか。

「はい、とっても! いろんな人とも知り合えましたし、久々にぱーっと飲みましたし!」

 アルコールのためか、ほんのりと赤らんだ顔に満面の笑みを浮かべた。
 するとその隣をぴょんぴょんとスキップしていた少年も、そんな彼女に負けじと口を開く。

「僕も友達できたんだよ! おいしいお菓子もいっぱい食べれたし、面白いものも見たし、あと、あと……」
「わ、私だってザクロさんの契約者の方と、可愛い女子高生の子と……えーと、とにかくたくさんアドレス交換したんですよ!」

 ゴーストの少年、そして彼と同じレベルで張り合う彼女ら二人の様子を、背中で眠る少年の父親は何とも微笑ましげに見つめている。
 そして同じくそんな二人(主に彼女一人をだが)を見つめる者がもう一人。

「………………」
「心配なの?」

 不意にかけられた言葉に、騎士は足を止める。

「大切な人を守りたいっていうあなたの気持ち、すごくよくわかるわ。私も何としてもこの子を守りたいもの」

 すやすやと寝息を立てる少年を愛おしそうに見やり、彼は微笑む。

「でもね、だからといってがんじがらめに縛り付けようとしてはだめよ。あの子にだって自分の意志があるんだから」

 その言葉に、騎士を取り巻く空気がさらに重くなる。
 しかしそれは怒りや戦いの時に感じさせる殺気じみたものではなく、いつになく沈んだ雰囲気を漂わせる。
 そうして何も語らない――いや、語れない騎士を、父親は苦笑気味に見つめていた。

「今回はいい教訓になったでしょう? あの子、あなたが考えてるよりずっと行動力もあるし、大人なのよ?」
「………………」

 一転、さらにむっつりと押し黙った騎士に父親はくすりと笑みをこぼす。

「あなたたち、もっとお互いを知った方がいいわね。そうすればあの子も無茶しなくなると思うわ」
「…………」

 すると騎士はぴくりと明らかな反応を見せ、ゆるりと父親へと向き直る。
 まるで「本当にそうなのか?」とでも問いたげな様子はどこか途方に暮れているようにも伺え、いよいよ少年の父親は笑みを隠せない。

「好きなものでも、故郷の話でも何でもいいわ。あの子にあなたの事を話してごらんなさいよ。大方ほとんど話したことないんでしょう?」
「……………………」

 そう尋ねられた途端、騎士はもぞもぞと気まずそうに身体をそらす。どうやら図星だったらしい。

「あの子は今、あなたが何を考えてるのか知りたがってるはずよ。それが少しでもわかってもらえたなら、きっとあの子だって答えてくれるわ」
「…………」
「ええ、保証するわ」

 そうにっこりと頷いてやれば、騎士は考え込むように腕を組む。
 しかしそれも先程からすればかなり力の抜けたもので、重い雰囲気はいつの間にかほぐれて消えてしまっていたのだった。
 その様子に父親は満足げに頷き、さて、と調子を変える。

「そろそろ行かないとあの子たち……あら?」

 彼の声に騎士もまた前方へと注意を移す。
 すると数メートル先で何やら柵の影に隠れて先を伺う様子の彼女の姿があった。
 ところが先程までそばに居たはずの少年の姿が見当たらず、父親は怪訝そうに眉をしかめた。

「何かあったのかしら……行ってみましょう」
「…………」

 同意の代わりに騎士が先に一歩を踏み出せば、父親もまた何も言わず足早に騎士の後を追う。
 そうして十数歩も進めば、二人は彼女の背中の後ろへとたどり着いていた。

「どうしたの? あの子は?」

 そう父親が声をかければ、彼女は弾かれたように彼らへと振り返る。

「あ、パパさんにホロウさん……実はあそこに誰かいるみたいなんです」
「誰か?」

 ほら、と示された指の先へと目を凝らせば、確かに数メートル先の電柱の影に黒い人影らしきものが伺え、途端に彼の表情が険しいものへと一変する。

「こんな路地に、しかもこんな時間に居る人の前なんてちょっと怖くて進めなくって……そしたらあの子、「じゃあ僕が何してるか聞いてくる」って消えちゃって……」
「まあ……」

 どうしましょう、と困惑した様子で彼女は再び辺りを見回した。

 これがもし通りすがりの酔っ払いであるとか、ただの変質者であるならば特に心配はいらない。
 少年は実体を持たない幽霊だからして、たとえナイフで刺されようとその影響を受ける事はほとんどないからだ。
 しかしそれが都市伝説であった場合、幽霊と言えど少年の身に危険が迫る可能性が生まれてしまう。
 もしも相手が攻撃的で、幽体にも影響のある攻撃手段を持っていれば――ほとんど身を守る力を持たない少年がどうなるかなど、考えるまでもない。
 もしそんな事になったら、とうろたえる彼女を、そっと父親が押しとどめた。

「パパさん……」
「大丈夫よ、じゃあ私たちも確かめに行きましょう」
「……はい?」

 思わぬ言葉に、彼女の反応が一瞬遅れる。

「あいにく滝夜叉は居ないけど、あなたの騎士様もいればなんとかなるわ。この子お願いするわね」
「あ、はい……って、パパさんも行くんですか!?」

 荒事に慣れている騎士はともかくとして、一般人である彼までもが同行すると聞いて穏やかでいられるはずがない。
 思わず彼の背中から降ろされた少年を受け取りはしたものの、せめてここで待つよう説得しようとした瞬間。
 彼の手に握られたライフル銃を認め、彼女の喉元まで出掛かっていた言葉が消え失せてしまった。

「大丈夫、私にはこれがあるから」

 月明かりに鈍く輝くそれを手に仁王立ちする姿は、何とも勇ましい。
 それ、一体どこに忍ばせていたんですかとか突っ込みたい点は多々あったものの、こう自信たっぷりに微笑まれてしまってはもはや反論できるはずもなく。

「……じゃあホロウさん、パパさんと一緒に見てきてもらえますか?」
「…………」

 その言葉を聞いた途端、騎士は腰の剣をすらりと抜き放つ。どうやらやる気満々のようである。

「ちょっ、な、なるべく穏やかに――」

 そんな様子のパートナーを慌てていさめようとした、次の瞬間。


「 うっぎゃあああああああああ!!!? 」


 路地に、男の悲鳴が響き渡った。

「こ、こっち来るんじゃねーよばかああああ!!」

 何事かと路地を伺えば、三人の目に飛び込んできたのは絶叫を上げながらこちらへと駆けて来る黒尽くめの男である。
 何か大きな物を背負った黒尽くめの姿だけでも奇怪だというのに、ガスマスクで素顔がまったくうかがえないとなれば怪しい事この上ない。

「黒尽くめのガスマスクの男……まさか」

 何か思い出したのか、そう少年の父親がつぶやいた瞬間。

「のわっ!?」

 足がもつれたのか、男は勢いよくアスファルトへと身を投げ出した。

「……あれ、何なんでしょう」
「…………」

 いてえ、とかうめきながら這いつくばっている姿を見ると、とてもそれが最近騒ぎを起こしている都市伝説だとは思えず、彼は口をつぐんだ。
 彼女にいたっては想像していたものとかけ離れていたせいか、心配そうに男の様子をうかがっている。
 どう見てもその姿は通りすがりの一般人には思えないのだが。

「んのクソガキが……ゴーストじゃなきゃ今頃このガスで……」

 そう恨めしげにつぶやきながら男は起き上がる。街灯と月明かりに照らされ、先程ははっきりと見えなかった装備までもが今はしっかり確認できた。
 一番に目を引くのはやはりその顔を覆うガスマスクと、背負われたガスタンク。そして黒一色で揃えられた服装は、夜の闇では容易に身を隠す事が出来るであろう装いである。
 体つきと声とを合わせて考えるにおそらく若い男なのだろうが、それもガスマスクと黒い帽子とに隠されてまったくうかがい知る事ができなかった。

「ストップ、そこまでよ」
「うるせーな、何だって……んなっ!?」

 不意に飛んだ鋭い一声に、男はぐるりとこちらを一瞥し――驚愕した。

「て、てめぇ……スリーピー・ホロウじゃねぇか! なんでこっちに居るんだよ!?」
「えっ?」

 男の口から漏れた意外な名前に、彼女は目を見開く。
 もしかしたら知り合いなのかと、男と傍らの騎士を交互に見比べてみるのだが、当の騎士といえば真っ直ぐに男を見据えたままで何の反応を返そうとはしない。

「しかもなんで俺がライフルなんぞ突きつけらてんだよ! ここはアメリカじゃねーんだぞ、日本だ日本!」

 確かにもっともである。

「くそっ、こうなったらてめぇもこのガスで――」

 焦りをにじませ、男が何やら背中からノズルを引っ張り出す。それはどうやら背中のガスタンクと繋がっているのかと彼女が理解したその時。

「………………」

 抜き身の剣を右手に携えたまま、騎士が一歩前へ踏み出した。それと同時に、じわじわと何ともいえない不安感が彼女たちを襲い始める。
 それは男も例外ではなく、それに加えて騎士の発する威圧感もが彼の身体にのしかかる。

「ぐっ……」
「……………………」

 じり、とわずかに後ずさりながらも男はその手を下ろそうとはしない。いや、下ろせないのだ。
 そこに騎士がさらに追い討ちをかけるようにもう一歩を踏み出せば、男は目に見えてうろたえ始め、そして。

「……て、てめぇら、覚えてろよ!!」

 お決まりの捨て台詞を吐き捨て、一目散に闇の彼方へと逃げ去ったのだった。

「ふぅ……何とかなったわね」

 ライフルを降ろし、少年の父親は安堵の息をつく。何はともあれ危険は去ったのだ。

「あ、あの人って……」
「マッドガッサー、厄介な都市伝説よ」

 そう語る彼の隣で騎士もまた剣を収めるが、その間も男が逃げた方をじっと見つめている。

「まあ、それは歩きながらでも話すわ。それよりあの子は――」
「呼んだー?」

 突然柵の上から顔を覗かせた少年に、たまらず彼女は「うひゃっ!?」と悲鳴を上げた。

「どっ、どこ行ってたんですかー!」
「え、そりゃあそこの様子を見に……って、あれ、あのおじさんもう行っちゃった?」

 先程の状況とあわせて考えるに、おじさんとは先程のガスマスク男のことだろうか。
 知り合いでも探すかのようにきょろきょろと辺りを見渡す少年に、彼女は深くため息をついた。

「勝手にどこか行っちゃダメよ、皆心配してたんだから」
「え、そうだったの?」

 そんな思いなど露知らず、少年はきょとんと彼らを見上げる。
 後でまた軽いお説教が必要だろうか、と考えつつも彼女は背中の少年(どうやらあの騒動の間も眠り続けていたようだ)を背負いなおした。

「とりあえず、そろそろ移動しませんか? もう遅いですし……」

 実際の時間はそれほど経ってはいないものの、このまま外で過ごすには少々物騒な時刻になりつつある。
 すでに先程の男――マッドガッサーの件もあり、父親もすぐに頷き返した。

「じゃあ少し遠回りになるけど、大通りを抜けて行きましょう。それなら多少車や人通りもあるから安全よ」
「はい!」

 元気のいい返事に彼も釣られて頷き返すと、四人は再び家路を目指して歩き始めたのだった。


<FIN>





「そういえばあの人に何したんですか?」
「これつけて、「こんばんはー」って挨拶しただけだよ」
「これ……って、血のりキット!?」
「大体びっくりしてもらえるんだよねー、これだと♪」
「…………はあ」
「…………」(肩ぽん)

今度こそFIN。



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