「……ふぅ」
ちゃぷり
天然の岩風呂温泉の湯に、体を沈める
相変わらず、この島の子供達は元気で明るい
それを、翼は良い事だと思うし……明るくいてくれる事は、ある意味で救いだ
天然の岩風呂温泉の湯に、体を沈める
相変わらず、この島の子供達は元気で明るい
それを、翼は良い事だと思うし……明るくいてくれる事は、ある意味で救いだ
都市伝説事件で両親を亡くした子供
「組織」に家族と引き離された子供
「組織」に家族を、大切な人を殺された者
……そんな人間が、ここには多いから
悲しみから、完全に救われたわけではないだろう
それでも、少しずつ、その悲しみが癒されていればいい
大きすぎる心の傷は、簡単には癒えてくれない
「組織」に家族と引き離された子供
「組織」に家族を、大切な人を殺された者
……そんな人間が、ここには多いから
悲しみから、完全に救われたわけではないだろう
それでも、少しずつ、その悲しみが癒されていればいい
大きすぎる心の傷は、簡単には癒えてくれない
………それは、翼自身が、よくわかっていた
両親から受けた扱いの記憶
大切な人が、鮮血に塗れた記憶
大切な人が、鮮血に塗れた記憶
どちらも、翼の心を大きく抉った、思い出したくもない記憶
しかし、その記憶はどちらも、ふとしたキッカケで翼の中で蘇り、彼を苦しめる
しかし、その記憶はどちらも、ふとしたキッカケで翼の中で蘇り、彼を苦しめる
「………」
ふと、脳裏をよぎった記憶を振り払う
生まれて始めて、心から惚れた相手が血に塗れたその記憶
生まれて始めて、心から惚れた相手が血に塗れたその記憶
「……エリカ、さん」
小さく、その人の名前を口にする
…もう、あんな事態に陥って溜まるか
大切な相手を、あんな目にあわせたりするものか……!
…もう、あんな事態に陥って溜まるか
大切な相手を、あんな目にあわせたりするものか……!
……と
気配を感じて、翼は顔を上げた
…誰か、浴室の方へと、来たのか?
そう考え、すぐに気に止めない翼
事実上混浴であるここは、あとから入ってきたのが女性であった場合もあるのだが…彼は、あまり着にしない
そもそも、Dカップ未満の女性を女性として見ない翼にとって、「首塚」の仲間内に女性として意識している相手などいないから、裸もあまり気にならない
どう考えても、相手は気にしそうなのだが
気配を感じて、翼は顔を上げた
…誰か、浴室の方へと、来たのか?
そう考え、すぐに気に止めない翼
事実上混浴であるここは、あとから入ってきたのが女性であった場合もあるのだが…彼は、あまり着にしない
そもそも、Dカップ未満の女性を女性として見ない翼にとって、「首塚」の仲間内に女性として意識している相手などいないから、裸もあまり気にならない
どう考えても、相手は気にしそうなのだが
……ただ
今回、この浴室に入ってきたのは、女性ではなく
今回、この浴室に入ってきたのは、女性ではなく
「…おや、何を考えこんでおる?」
「へ?………っま、将門様!?」
「へ?………っま、将門様!?」
--「首塚」首領、平将門、その人だった
くっく、と楽しげに笑い、湯の中に入ってくる
くっく、と楽しげに笑い、湯の中に入ってくる
「…いえ、なんでもありません」
将門の言葉に、翼は軽く首を振る
…己の思い出したくない記憶に関しては、「首塚」の仲間にもほとんど話した事はない
最低人種だった両親については多少は話した事もあるが………初恋の人の事に関しては、一度も話した事がなかった
口に出す事すら、翼にとっては辛かったから
…己の思い出したくない記憶に関しては、「首塚」の仲間にもほとんど話した事はない
最低人種だった両親については多少は話した事もあるが………初恋の人の事に関しては、一度も話した事がなかった
口に出す事すら、翼にとっては辛かったから
「そうか?…なら、良いのだがな」
ちゃぷり
将門が、ゆっくりと翼に近づく
その大きな手の平が、翼の頬に触れた
将門が、ゆっくりと翼に近づく
その大きな手の平が、翼の頬に触れた
「…悩みがあるなら、話せ。お前の表情が曇るのは良くない」
「…………すみません」
「…………すみません」
申し訳なさに、小さく苦笑死、視線を落とす
尊敬している将門にも、話す事ができない
あの血塗れの記憶は、それほどまでに翼の心に影を落としていた
両親の記憶とは別方向で、その心に深いトラウマを刻む
尊敬している将門にも、話す事ができない
あの血塗れの記憶は、それほどまでに翼の心に影を落としていた
両親の記憶とは別方向で、その心に深いトラウマを刻む
「…将門様」
「うん?」
「俺は…もっと、強くなりたいです」
「うん?」
「俺は…もっと、強くなりたいです」
「黒服も、望も……みんな、護れるくらい、強くなりたいです、だから、その…」
「…そうか、ならば、稽古でもつけてやろうか?」
「…そうか、ならば、稽古でもつけてやろうか?」
将門の、その言葉に
翼は、ぱっと表情を明るくして顔をあげた
翼は、ぱっと表情を明るくして顔をあげた
「い、いいんですか?」
「あぁ、もちろん……お前が、それを望むのなら、な」
「あぁ、もちろん……お前が、それを望むのなら、な」
くっく、と楽しげに笑う将門
翼は、はい、と大きく頷いた
翼は、はい、と大きく頷いた
強くなりたい
今以上に、強くなりたい
大切な人達が、もう二度と、血にまみれないように
皆を護れるだけの、強い力を
今以上に、強くなりたい
大切な人達が、もう二度と、血にまみれないように
皆を護れるだけの、強い力を
…翼の感情が、将門にも伝わる
貪欲に、力を求める感情
護る為の力を、どこまでも求めている
……その欲を、愛しいと思う
復讐感情以外にも、将門は人間の欲望にも反応を示す
目の前の青年のこの決意に、将門は答えるまでだ
力を求めるのなら、それに協力しよう
貪欲に、力を求める感情
護る為の力を、どこまでも求めている
……その欲を、愛しいと思う
復讐感情以外にも、将門は人間の欲望にも反応を示す
目の前の青年のこの決意に、将門は答えるまでだ
力を求めるのなら、それに協力しよう
…この祟り神 平将門の名にかけて
to be ?
「…ふむ、そうだな」
するり
湯の中で、将門の手が、翼の体に触れる
湯の中で、将門の手が、翼の体に触れる
「…?将門様?」
きょとんとする翼に構わず
するり、するり…その手が、触れていく
するり、するり…その手が、触れていく
「筋肉のつき方は申し分ない……あとは、体の動かし方だな」
つつ、とその指先が翼の脇腹を撫でて
ぴくりっ、翼の体が小さく跳ねて、揺れた湯がちゃぷりと音を立てる
気がつけば、将門は翼に密着するかのように、傍に来ていて
ぴくりっ、翼の体が小さく跳ねて、揺れた湯がちゃぷりと音を立てる
気がつけば、将門は翼に密着するかのように、傍に来ていて
「あ、あの…将門様?」
「うん?」
「うん?」
困惑している様子の翼に、将門は楽しげに笑う
つつつつ……と
脇腹を撫でていた手が腰に向かい、反対の手は何時の間にか翼の顎を捕え…
つつつつ……と
脇腹を撫でていた手が腰に向かい、反対の手は何時の間にか翼の顎を捕え…
「…………将門公、何をなさっているので?」
「!?」
びくーーーーーーんっ!!!
背後から聞こえてきた、黒服の低い声に、翼は思わず体を跳ねらせた
背後から聞こえてきた、黒服の低い声に、翼は思わず体を跳ねらせた
「おや、お前も来たか」
「…えぇ、大変と、嫌な予感がしたもので」
「…えぇ、大変と、嫌な予感がしたもので」
……振り返る事が出来ない
黒服が、将門にどんな表情を向けているのか見るのが若干怖く、振り返る事ができない
黒服が、将門にどんな表情を向けているのか見るのが若干怖く、振り返る事ができない
黒服は、後で望とゆっくり風呂に入っていればいいよな、と
そんな翼の気遣いは、この瞬間に見事に砕けていたのだった
そんな翼の気遣いは、この瞬間に見事に砕けていたのだった
「翼受けに需要がある」と言ったスレの変態の皆様に捧げて終わってしまえ