「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-42f

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だれでも歓迎! 編集
 …男を女に変えるだけで満足するようなら、か
 確かに、それならばまだ………いや、それはそれで混乱を振りまいているので、一応「組織」としては取り締まらなければならないのだが
 とまれ、それだけならば、まだ、可愛げがあったかもしれない
 しかし、マッドガッサーが企んでいる事は、残念ながらそんな可愛いことではない
 自分の契約者も二人、被害にあっているのだ
 見過ごす事はできない

 ……それでも、ふっと、考えてしまう
 仲間同士、まるで寄り添いあうかのように活動している彼らのことを
 …もしかしたら、自分たちのような組織から拒絶された者同士で、寄り添いあっているのではないか、と
 こんな騒ぎさえ起こしていなければ…起こさなければ、もしかしたら彼らは、静かに過ごす事を望むのではないか?と
 ……そう、考えてしまうのだ


「黒服さーん?」
「……ぁ」

 Tさんの契約者に声をかけられ、正気に戻る
 考え込んでしまっていたようだ

「大丈夫?やっぱ、疲れてるんじゃ」
「いえ、大丈夫です…すみません」

 小さく、頭を下げる
 まだ、さほど疲労を溜め込んでいるつもりはない
 今回のマッドガッサーの件やら、コーク・ロアの件やらも、自分以外も何人もの黒服が、「組織」の構成員たちが調べているし動いているのだ
 だから、自分一人が疲労を溜め込む事など…

「大丈夫大丈夫って言って、ぶっ倒れるのがお前だろ?適度に休んでおけよ」

 …かけられた、第三者の声
 そちらに視線をやると、そこには何時の間にか、同僚の黒服の姿があった
 しゅるり、その髪が一瞬、伸びている

「…あなたは」
「よぉ、そっちのお二人さんも、久しぶり」

 ひらひらと手を振って、その同僚はTさんたちに笑いかけている
 …顔見知りだったのか
 この同僚は顔が広いようだから、知り合っていてもおかしくはないと思うが

「あ、いつかの髪が伸びる黒服さん」
「覚えていてくれたか、嬉しいねぇ」

 しゅるり、と、また少し髪が伸びる
 …本当に、制御が全くできていない能力だ
 だからこそ、都市伝説に取り込まれ、黒服になってしまったのだろうが

「あなたが外回りをしているなんて珍しいですね…どうなさったんですか?」
「んー、例の正体不明の飛行型巨大都市伝説の情報収集。まぁ、見事に空振りだが」

 肩をすくめてくる同僚
 その言葉に、Tさんの契約者が首をかしげた

「…巨大都市伝説?」
「まだ、何か厄介な問題があるのか?」

 Tさんも続けてそう言って来た
 はい、と黒服は小さく頷く

「マッドガッサーたちの動きが活発化した直後から、学校町の上空を時折、正体不明の巨大都市伝説が旋廻しているんです」
「少なくとも「組織」所属の都市伝説じゃあねぇんだよ。普段は辺湖市辺りにでも潜んでるのか、気配もロクに感知できないと来た」

 存在が確認されたのが、マッドガッサーたちの動きが活発化した時期と重なっている事
 そこが、問題なのだ
 だから「組織」も余計に行方を追い、正体を掴もうとしているのだ
 …結果としては、空振りな訳だが

「もしや、「組織」はその巨大都市伝説も、マッドガッサーの一味だと?」
「…出現時期が時期ですので、可能性は否定できませんから」
「どんだけ仲間がいるんだよ、マッドガッサーには」

 うげー、と声をあげるTさんの契約者
 まぁ、気持ちはわかる
 現時点でわかっているだけでも、かなり厄介な人材が揃っているのだから

「それでも、10人以上の大集団…では、ないと思うのですが」
「連中、仲間同士の繋がりってか連帯感が異常に強いんだよ。少数精鋭だからこそ、じゃないか?」

 仲間の身に危険が及べば、即座に助けが入る
 仲間同士、気遣いあっているかのような目撃談もある
 それは、ある意味少数精鋭のメンバーだからこそ、そうであるのかもしれない

「…ま、とりあえず、こっちは続けて調べとくわ。Tさんとやらも、何かわかったらこいつにでいいから伝えてくれるか?ぶっちゃけマッドガッサー達の事は情報が足りなすぎるんだよ」
「まぁ、何か有益が情報がわかれば、伝えよう」

 うむ、と頷いてくれたTさん
 …良かった、この同僚も、「組織」以外の者に対しても、柔軟な対応をしてくれる
 そうでなければ、こうやって話など、してくれないかもしれないが

「あぁ、でも、お前は適度に休んでおけよ、マジで。またその内強制的に休み取らされるぞ?」
「いえ、大丈夫です。まだ、こちらも調べるべき事がありますので…」

 そう言って、Tさんたちとも別れようとする
 …その黒服に、あぁ、そうだ、と
 同僚が、何か思い出したように続ける

「それと、お前。お前の契約者の片割れ、そっちも少し休ませた方がいいかもしれないぞ?「日焼けマシンで人間ステーキ」の方」
「…?彼が何か?」
「さっき、バイト先に行く途中か「首塚」にでも行く途中っぽい姿見かけたけど、少しふらついてたぞ?」

 …そう言えば、最近、少し疲れている様子だった
 本人は大丈夫だ、と言っていたが…

「チャラい兄ちゃん、もしかして、男の時と同じ感覚で、バイト続けてんじゃないのか?」
「……あ」

 Tさんの契約者の言葉に、はっとする
 確かに、「日焼けマシン」の契約者は、女性の姿になってしまっても、アルバイトをほぼ休んでいない
 胸をさらしで隠す事でなんとか誤魔化せているからと、ほぼそのまま続けているのだ
 …なぜか、ピアノ教室の助っ人だけは、何らかの理由でしばらく休む事にしたようだが

「女性の姿になって、体力が落ちているだろうからな」

 Tさんが、契約者の言葉を補足するように、そう言った
 …まったく、その通りだ
 何故、自分は気づけなかったのか

「…教えていただき、ありがとうございます。彼がふらついているのを、どこで見かけましたか?」
「んー、こっからそう離れてないぞ。プチプチ・メルティーユだかっつーケーキ屋の近く」

 …そうか、あそこのアルバイトが終わった後なら、多分、「首塚」に顔を出す頃…
 ………
 …今の状態で、しかもふらついた、疲れている状態で「首塚」に、多分、将門公の傍に…
 …………

「…教えていただき、本当にありがとうございます。では、Tさん、私はこれで」
「あ、あぁ」

 Tさんたちと別れ、黒服は足早に進む
 …きちんと、「日焼けマシン」の契約者を休ませてやらなければ
 できれば、将門公の前以外で

 己の疲労やら周囲に休めと言われている事やら、その辺りを全く気にすることなく、黒服は己の契約者の事を気遣うのだった




「…いやぁ、面白いくらい反応するよなぁ。教えたかいがあった」
「え?わざと?」

 くっくと笑う黒服Hの様子に、Tさんの契約者が突っ込みを入れたわけだが
 その辺りの会話は黒服D本人の耳に入っていないので、なんら問題はない




終われ




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