…男を女に変えるだけで満足するようなら、か
確かに、それならばまだ………いや、それはそれで混乱を振りまいているので、一応「組織」としては取り締まらなければならないのだが
とまれ、それだけならば、まだ、可愛げがあったかもしれない
しかし、マッドガッサーが企んでいる事は、残念ながらそんな可愛いことではない
自分の契約者も二人、被害にあっているのだ
見過ごす事はできない
確かに、それならばまだ………いや、それはそれで混乱を振りまいているので、一応「組織」としては取り締まらなければならないのだが
とまれ、それだけならば、まだ、可愛げがあったかもしれない
しかし、マッドガッサーが企んでいる事は、残念ながらそんな可愛いことではない
自分の契約者も二人、被害にあっているのだ
見過ごす事はできない
……それでも、ふっと、考えてしまう
仲間同士、まるで寄り添いあうかのように活動している彼らのことを
…もしかしたら、自分たちのような組織から拒絶された者同士で、寄り添いあっているのではないか、と
こんな騒ぎさえ起こしていなければ…起こさなければ、もしかしたら彼らは、静かに過ごす事を望むのではないか?と
……そう、考えてしまうのだ
仲間同士、まるで寄り添いあうかのように活動している彼らのことを
…もしかしたら、自分たちのような組織から拒絶された者同士で、寄り添いあっているのではないか、と
こんな騒ぎさえ起こしていなければ…起こさなければ、もしかしたら彼らは、静かに過ごす事を望むのではないか?と
……そう、考えてしまうのだ
「黒服さーん?」
「……ぁ」
「……ぁ」
Tさんの契約者に声をかけられ、正気に戻る
考え込んでしまっていたようだ
考え込んでしまっていたようだ
「大丈夫?やっぱ、疲れてるんじゃ」
「いえ、大丈夫です…すみません」
「いえ、大丈夫です…すみません」
小さく、頭を下げる
まだ、さほど疲労を溜め込んでいるつもりはない
今回のマッドガッサーの件やら、コーク・ロアの件やらも、自分以外も何人もの黒服が、「組織」の構成員たちが調べているし動いているのだ
だから、自分一人が疲労を溜め込む事など…
まだ、さほど疲労を溜め込んでいるつもりはない
今回のマッドガッサーの件やら、コーク・ロアの件やらも、自分以外も何人もの黒服が、「組織」の構成員たちが調べているし動いているのだ
だから、自分一人が疲労を溜め込む事など…
「大丈夫大丈夫って言って、ぶっ倒れるのがお前だろ?適度に休んでおけよ」
…かけられた、第三者の声
そちらに視線をやると、そこには何時の間にか、同僚の黒服の姿があった
しゅるり、その髪が一瞬、伸びている
そちらに視線をやると、そこには何時の間にか、同僚の黒服の姿があった
しゅるり、その髪が一瞬、伸びている
「…あなたは」
「よぉ、そっちのお二人さんも、久しぶり」
「よぉ、そっちのお二人さんも、久しぶり」
ひらひらと手を振って、その同僚はTさんたちに笑いかけている
…顔見知りだったのか
この同僚は顔が広いようだから、知り合っていてもおかしくはないと思うが
…顔見知りだったのか
この同僚は顔が広いようだから、知り合っていてもおかしくはないと思うが
「あ、いつかの髪が伸びる黒服さん」
「覚えていてくれたか、嬉しいねぇ」
「覚えていてくれたか、嬉しいねぇ」
しゅるり、と、また少し髪が伸びる
…本当に、制御が全くできていない能力だ
だからこそ、都市伝説に取り込まれ、黒服になってしまったのだろうが
…本当に、制御が全くできていない能力だ
だからこそ、都市伝説に取り込まれ、黒服になってしまったのだろうが
「あなたが外回りをしているなんて珍しいですね…どうなさったんですか?」
「んー、例の正体不明の飛行型巨大都市伝説の情報収集。まぁ、見事に空振りだが」
「んー、例の正体不明の飛行型巨大都市伝説の情報収集。まぁ、見事に空振りだが」
肩をすくめてくる同僚
その言葉に、Tさんの契約者が首をかしげた
その言葉に、Tさんの契約者が首をかしげた
「…巨大都市伝説?」
「まだ、何か厄介な問題があるのか?」
「まだ、何か厄介な問題があるのか?」
Tさんも続けてそう言って来た
はい、と黒服は小さく頷く
はい、と黒服は小さく頷く
「マッドガッサーたちの動きが活発化した直後から、学校町の上空を時折、正体不明の巨大都市伝説が旋廻しているんです」
「少なくとも「組織」所属の都市伝説じゃあねぇんだよ。普段は辺湖市辺りにでも潜んでるのか、気配もロクに感知できないと来た」
「少なくとも「組織」所属の都市伝説じゃあねぇんだよ。普段は辺湖市辺りにでも潜んでるのか、気配もロクに感知できないと来た」
存在が確認されたのが、マッドガッサーたちの動きが活発化した時期と重なっている事
そこが、問題なのだ
だから「組織」も余計に行方を追い、正体を掴もうとしているのだ
…結果としては、空振りな訳だが
そこが、問題なのだ
だから「組織」も余計に行方を追い、正体を掴もうとしているのだ
…結果としては、空振りな訳だが
「もしや、「組織」はその巨大都市伝説も、マッドガッサーの一味だと?」
「…出現時期が時期ですので、可能性は否定できませんから」
「どんだけ仲間がいるんだよ、マッドガッサーには」
「…出現時期が時期ですので、可能性は否定できませんから」
「どんだけ仲間がいるんだよ、マッドガッサーには」
うげー、と声をあげるTさんの契約者
まぁ、気持ちはわかる
現時点でわかっているだけでも、かなり厄介な人材が揃っているのだから
まぁ、気持ちはわかる
現時点でわかっているだけでも、かなり厄介な人材が揃っているのだから
「それでも、10人以上の大集団…では、ないと思うのですが」
「連中、仲間同士の繋がりってか連帯感が異常に強いんだよ。少数精鋭だからこそ、じゃないか?」
「連中、仲間同士の繋がりってか連帯感が異常に強いんだよ。少数精鋭だからこそ、じゃないか?」
仲間の身に危険が及べば、即座に助けが入る
仲間同士、気遣いあっているかのような目撃談もある
それは、ある意味少数精鋭のメンバーだからこそ、そうであるのかもしれない
仲間同士、気遣いあっているかのような目撃談もある
それは、ある意味少数精鋭のメンバーだからこそ、そうであるのかもしれない
「…ま、とりあえず、こっちは続けて調べとくわ。Tさんとやらも、何かわかったらこいつにでいいから伝えてくれるか?ぶっちゃけマッドガッサー達の事は情報が足りなすぎるんだよ」
「まぁ、何か有益が情報がわかれば、伝えよう」
「まぁ、何か有益が情報がわかれば、伝えよう」
うむ、と頷いてくれたTさん
…良かった、この同僚も、「組織」以外の者に対しても、柔軟な対応をしてくれる
そうでなければ、こうやって話など、してくれないかもしれないが
…良かった、この同僚も、「組織」以外の者に対しても、柔軟な対応をしてくれる
そうでなければ、こうやって話など、してくれないかもしれないが
「あぁ、でも、お前は適度に休んでおけよ、マジで。またその内強制的に休み取らされるぞ?」
「いえ、大丈夫です。まだ、こちらも調べるべき事がありますので…」
「いえ、大丈夫です。まだ、こちらも調べるべき事がありますので…」
そう言って、Tさんたちとも別れようとする
…その黒服に、あぁ、そうだ、と
同僚が、何か思い出したように続ける
…その黒服に、あぁ、そうだ、と
同僚が、何か思い出したように続ける
「それと、お前。お前の契約者の片割れ、そっちも少し休ませた方がいいかもしれないぞ?「日焼けマシンで人間ステーキ」の方」
「…?彼が何か?」
「さっき、バイト先に行く途中か「首塚」にでも行く途中っぽい姿見かけたけど、少しふらついてたぞ?」
「…?彼が何か?」
「さっき、バイト先に行く途中か「首塚」にでも行く途中っぽい姿見かけたけど、少しふらついてたぞ?」
…そう言えば、最近、少し疲れている様子だった
本人は大丈夫だ、と言っていたが…
本人は大丈夫だ、と言っていたが…
「チャラい兄ちゃん、もしかして、男の時と同じ感覚で、バイト続けてんじゃないのか?」
「……あ」
「……あ」
Tさんの契約者の言葉に、はっとする
確かに、「日焼けマシン」の契約者は、女性の姿になってしまっても、アルバイトをほぼ休んでいない
胸をさらしで隠す事でなんとか誤魔化せているからと、ほぼそのまま続けているのだ
…なぜか、ピアノ教室の助っ人だけは、何らかの理由でしばらく休む事にしたようだが
確かに、「日焼けマシン」の契約者は、女性の姿になってしまっても、アルバイトをほぼ休んでいない
胸をさらしで隠す事でなんとか誤魔化せているからと、ほぼそのまま続けているのだ
…なぜか、ピアノ教室の助っ人だけは、何らかの理由でしばらく休む事にしたようだが
「女性の姿になって、体力が落ちているだろうからな」
Tさんが、契約者の言葉を補足するように、そう言った
…まったく、その通りだ
何故、自分は気づけなかったのか
…まったく、その通りだ
何故、自分は気づけなかったのか
「…教えていただき、ありがとうございます。彼がふらついているのを、どこで見かけましたか?」
「んー、こっからそう離れてないぞ。プチプチ・メルティーユだかっつーケーキ屋の近く」
「んー、こっからそう離れてないぞ。プチプチ・メルティーユだかっつーケーキ屋の近く」
…そうか、あそこのアルバイトが終わった後なら、多分、「首塚」に顔を出す頃…
………
…今の状態で、しかもふらついた、疲れている状態で「首塚」に、多分、将門公の傍に…
…………
………
…今の状態で、しかもふらついた、疲れている状態で「首塚」に、多分、将門公の傍に…
…………
「…教えていただき、本当にありがとうございます。では、Tさん、私はこれで」
「あ、あぁ」
「あ、あぁ」
Tさんたちと別れ、黒服は足早に進む
…きちんと、「日焼けマシン」の契約者を休ませてやらなければ
できれば、将門公の前以外で
…きちんと、「日焼けマシン」の契約者を休ませてやらなければ
できれば、将門公の前以外で
己の疲労やら周囲に休めと言われている事やら、その辺りを全く気にすることなく、黒服は己の契約者の事を気遣うのだった
「…いやぁ、面白いくらい反応するよなぁ。教えたかいがあった」
「え?わざと?」
「え?わざと?」
くっくと笑う黒服Hの様子に、Tさんの契約者が突っ込みを入れたわけだが
その辺りの会話は黒服D本人の耳に入っていないので、なんら問題はない
その辺りの会話は黒服D本人の耳に入っていないので、なんら問題はない
終われ