喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
携帯着信音
ある日の夕方
「そういえば、輪くんの携帯……着信音ってどんな曲?」
「え?……ああそうか、サチからしか掛かってこないから聞いたこと無いんだね」
「そっか……なるほど……」
納得した様子のサチ
「着信音はこれだよ」
そう言って、曲を流す
「え?……ああそうか、サチからしか掛かってこないから聞いたこと無いんだね」
「そっか……なるほど……」
納得した様子のサチ
「着信音はこれだよ」
そう言って、曲を流す
[♪ On the load 誰も旅の途中 本当の自分自身出逢うため ♪]
「この声……え~と……Gackt?」
「うん」
「へぇ~、輪くんってGackt好きなの?……なんか、意外」
「いや、これマスターの携帯だから」
「そっか……エッ?!……じゃあ、マスターがGackt好きだったの?!」
「そうじゃなくてね……マスターが好きなのは、仮面ライダー」
「ぇ?……???」
余計に混乱するサチ
「この歌、仮面ライダー ディケイドのオープニング曲なんだよ」
混乱した思考をほぐし、考える
「……ああ……そういうことなのね」
「うん」
「へぇ~、輪くんってGackt好きなの?……なんか、意外」
「いや、これマスターの携帯だから」
「そっか……エッ?!……じゃあ、マスターがGackt好きだったの?!」
「そうじゃなくてね……マスターが好きなのは、仮面ライダー」
「ぇ?……???」
余計に混乱するサチ
「この歌、仮面ライダー ディケイドのオープニング曲なんだよ」
混乱した思考をほぐし、考える
「……ああ……そういうことなのね」
*
「ああ見えて、仮面ライダーが好きでさ……
毎週日曜8時からは二人で一緒にTVに齧り付いてたよ」
「何か……ふふ……可愛いね」
「それでね……仮面ライダーには "おやっさん" というポジションがあって……」
「おやっさん?」
「うん、ライダー達に助言したりバックアップしたりする役割があるんだよ」
「ふ~ん」
「おやっさんって、大抵は喫茶店とかのマスターなんだよ」
「ふんふん」
「マスターさ……それにちょっと憧れてたんだって……」
「ぇ……まさか、ルーモアって……それで?」
「まぁ、そういうことだね……笑っちゃうよね」
「子供向けの特撮番組に影響されて……あのマスターが……」
「サチ……仮面ライダーは子供向けじゃない」
いつの間にか、ゆらりと近づき
「ぇ……ちょっと……輪くん?……ぇ?」
ガシッとサチの両腕を掴み、真剣な眼で語る
「あれは……漢字の漢と書いてオトコ……漢の子向け番組だからッ!」
「ハッ……ハイッ?!」
「って……マスターが言っていた」
天に向かって人差し指を立てながら輪
「……マスター……なんかイメージが……」
毎週日曜8時からは二人で一緒にTVに齧り付いてたよ」
「何か……ふふ……可愛いね」
「それでね……仮面ライダーには "おやっさん" というポジションがあって……」
「おやっさん?」
「うん、ライダー達に助言したりバックアップしたりする役割があるんだよ」
「ふ~ん」
「おやっさんって、大抵は喫茶店とかのマスターなんだよ」
「ふんふん」
「マスターさ……それにちょっと憧れてたんだって……」
「ぇ……まさか、ルーモアって……それで?」
「まぁ、そういうことだね……笑っちゃうよね」
「子供向けの特撮番組に影響されて……あのマスターが……」
「サチ……仮面ライダーは子供向けじゃない」
いつの間にか、ゆらりと近づき
「ぇ……ちょっと……輪くん?……ぇ?」
ガシッとサチの両腕を掴み、真剣な眼で語る
「あれは……漢字の漢と書いてオトコ……漢の子向け番組だからッ!」
「ハッ……ハイッ?!」
「って……マスターが言っていた」
天に向かって人差し指を立てながら輪
「……マスター……なんかイメージが……」
*
わたし達の日常は過ぎていく
時にはマスターについての話題で笑うこともある
故人を思い出し、悲しむことも時には良いだろう
だが、どうせなら笑いながら話せた方がずっと良い
その方が、語られる故人も嬉しいだろう
少なくとも……あのマスターならそう思うはずだ
故人を思い出し、悲しむことも時には良いだろう
だが、どうせなら笑いながら話せた方がずっと良い
その方が、語られる故人も嬉しいだろう
少なくとも……あのマスターならそう思うはずだ
夕飯を皆で食べて、カシマさんと二人で家路につく
「カシマさん、輪くんの稽古は順調なの?」
「順調だな」
「……そう」
わたしは少し複雑な気分だった
「彼は、とても優秀だよ……成長ぶりはワタシの予想を遥かに超えている」
「……喜んで……いいんだよね?」
「彼は同じ過ちを殆どしない……」
「……凄いんだね」
「一度教えた事は、次に確認すると殆ど出来ている」
「……」
「自分の失敗を……予知しているからだ」
「!」
「八年……いや、五年もすれば……ワタシを越えるかもしれない」
「じゃあ……もしこのまま強くなって……」
「順調だな」
「……そう」
わたしは少し複雑な気分だった
「彼は、とても優秀だよ……成長ぶりはワタシの予想を遥かに超えている」
「……喜んで……いいんだよね?」
「彼は同じ過ちを殆どしない……」
「……凄いんだね」
「一度教えた事は、次に確認すると殆ど出来ている」
「……」
「自分の失敗を……予知しているからだ」
「!」
「八年……いや、五年もすれば……ワタシを越えるかもしれない」
「じゃあ……もしこのまま強くなって……」
わたしは不安を抑える事が出来ない
「ねぇ……カシマさん……」
「何だね?」
「輪くんは……その……ふ……ふく……」
言葉を続けることが出来ない
「……復讐……かね?」
「!……うん」
言葉の意味にビクリとする
「そんなこと……考えてないよね……」
「……判らない」
「……」
「ワタシも出来る限りの事は……しているつもりだが……」
「うん……それは、分かってるよ」
カシマさんは複雑な表情を見せる
「彼の……マスターの存在は、あまりにも……大きくてな……」
「そう……だね」
「ねぇ……カシマさん……」
「何だね?」
「輪くんは……その……ふ……ふく……」
言葉を続けることが出来ない
「……復讐……かね?」
「!……うん」
言葉の意味にビクリとする
「そんなこと……考えてないよね……」
「……判らない」
「……」
「ワタシも出来る限りの事は……しているつもりだが……」
「うん……それは、分かってるよ」
カシマさんは複雑な表情を見せる
「彼の……マスターの存在は、あまりにも……大きくてな……」
「そう……だね」
*
もし、輪くんが……あの魔法使いに勝てる力を手に入れたら……
いや、そんな事はない……復讐なんてしない
違う、考えたくないだけだ
復讐を否定できない
わたしに力があれば、代わりに……そう思った事だって一度や二度じゃない
輪くんの復讐を……わたしには止める事が出来ないのか……
いや、そんな事はない……復讐なんてしない
違う、考えたくないだけだ
復讐を否定できない
わたしに力があれば、代わりに……そう思った事だって一度や二度じゃない
輪くんの復讐を……わたしには止める事が出来ないのか……
「サチ殿……あまり心労を重ねてはいけない」
「……うん」
「最近、少し無理が過ぎる様に思う」
「分かってる……」
「もっと自分の人生も大切にするべきだ」
「……ありがとう、カシマさん……でも……わたしには、輪くんしかいないから……」
「……サチ殿」
「……うん」
「最近、少し無理が過ぎる様に思う」
「分かってる……」
「もっと自分の人生も大切にするべきだ」
「……ありがとう、カシマさん……でも……わたしには、輪くんしかいないから……」
「……サチ殿」
季節は巡る
短い秋は過ぎ、寒く厳しい冬は目前まで迫っていた
短い秋は過ぎ、寒く厳しい冬は目前まで迫っていた