「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ※ただしイケメンに限る-04

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【平唯の人間観察 第四話「呼」】

――――――――――ねぇ

子供の頃、要らなくなった人形とか捨てたこと無いかな?
捨てていなくても良いんだ。
子供の頃は一緒に眠って、一緒に笑って、一緒に遊んでいた人形。
いつの間にか忘れちゃって何処に行ったかも解らなくなっていないかな?
私はある。
金色の髪に青い瞳。
メリーさんって名前を付けて可愛がっていた。

携帯電話は鳴り止まない。
何処に行っていても私を追いかける。
私を愛しているからどこまでも彼女は付いてきてくれる。


「――――――私、メリーさん――――」

ほら、電話ごしに声が聞こえる。

「今、貴方の家の前に居るの。」




「冗談みたいでしょう?」
「ええ。」
こんにちわ、皆様。
私の名前は平唯。
※ただしイケメンに(ryと呼ばれる都市伝説と契約した人間だ。
今は友人とお茶していた。

「それは怪談なの?」
「いいえ、実話よ。家の中に入れないの、って言って最後に帰るのがいつものパターンなのよ。」

私にこんな信じられない話をしている目の前の女性は久瀬由美。
至ってまともな電波系一般人。
家は大変なお嬢様な為か無意識に上品な気配を漂わせている。
気品って言うのかしらね、こういうの。

「本当なの?」
「本当よぉ。なんだったら今日、家に確かめに来る?毎晩電話は来るから。」
「別にお泊まりなら良いけど……。」

実はあまり良くない。
彼女こそ私を男装に目覚めさせた張本人なのだ。
中学生の時に学園祭で私を女装させて、
その年の学園祭の出し物のランキングで一位を取った彼女は今でも隙あらば私を男装させようとする。

「あら、嬉しい。じゃあ家の皆様に用意させるわね。」
そう言うとそそくさと携帯電話を出して電話しようとする


オーモーイーガーシュンヲーカケーヌーケテー

「あらあら、着信。」

丁度良く電話がかかってきたらしい。
なんだろうと思っていると彼女の顔がどんどん青くなっていく。
真っ青な顔のままこちらをみつめて携帯電話を私に渡す。

「私、メリーさん。今、貴方のお茶している喫茶店の前に居るの。」

コトン
足下で何かが転がる音がする。

「私、メリーさん。今、貴方のお茶している席の真下にいるの。」
「私、メ…………。」

プツッ

素早く電話を切った。
新手の都市伝説か……?
由美の手を引くと振り返らずにすぐに店を出る。
彼女の家までは人気のないトンネルを通ると近いのでその方向へ真っ直ぐ向かう。

「その電話ね、電話からかけられていないのよ。
 何度電話を変えても携帯電話を持っていなくても
 どこからともなく私に告げてくるの。
 嘘だと……思う?」
「何時からなの?」
「私のこの前の誕生日からだけど……。」
「解った、ちょっと待ってて。」

歩きながら電話をかける。
勿論、黒服Fの所にだ。

プルルルルルルル
プルルルルルルルルルルル

「はい、こちらFだよ、どうしたの平さん。」

プツッ

「私、メリーさん。いま、久瀬さんはどこなの?
 貴方が私の大事な久瀬さんを隠したの?
 返してよ、返し………」

プツッ

唯一の専門家と連絡がつかない。
不味い。
そうしている間にも私達はトンネルに辿り着いていた。
一旦、由美の家に帰ればメリーさんは入れない。
『コマッテルミタイジャネーカ、契約者。多分そいつはメリーサンダゼェ?』
急に頭の中に声が響いてきた。
ケメの声だ。
『当たり前じゃない!どうにかしてよ!』
『おやすいご用ダ!※ただしイケメンに(ryのノウリョクの正しい使い方をオシエテヤルヨー』
『どうすれば良いの?』
『マズハ………。』
『うっそ……、それはずるくない?』
『イケメンだからユルサレルンだよぉ!!』

私はケメから聞いた嘘みたいな能力の使い方を試してみることにした。
「ねぇ、由美。男装セット持っている?」
「え?貴方に使う為に持っているけど……。」

すばやくそれを奪い取るとトンネルの中で男装を始める。
ぴしっ!バシッ!ピキーン!

「ちゃんとできてるかい?」
「完璧…………///」
鏡がないので由美に尋ねると何故か顔を赤くしている。
「ねぇ唯ちゃん、押し倒して良い?」
「え、ちょ、ちょっと待って?俺、女だから?ね?」
この娘は友人に向けて何を言い出しているのだろうか?
そうだ、中学生の時もこうやって暴走していて……。
彼女は男装した女性と百合百合するのが好きな方なのだ。
「ああ、もう駄目!貴方の子供ならァ!!!愛の力でえええええええええ!!」
「いいいやあぁあぁぁああああああ!!」
やばい、奪われる。
そう思った瞬間だった。


プルルルルルルルルル


二人の動きが止まる。
また電話だ。
「ねぇ、由美。これから見ることは秘密だよ?」
「え……?」

電話を取る。

「私メリーさん。今、トンネルの前に居るの。」
「へぇ……。」
「私、メリーさん。今、貴方のずっと後ろにいるの。」
「早く来なよ。」
相手を誘う。


「私、メリーさん。今、貴方の後ろに居るの。久瀬さんを返して頂戴?」

背中を氷が這うような感触。
来た。


都市伝説発動、イケメンならば何でも許される!
私の“目の前”に現れたのは人形ではなく、沢山の人間の顔を一つに合わせたような化け物だった。

ガシッ!

そうだ、イケメンならば……

「その恨みも、そして貴方の能力を無視することも許せ!」

ガッシリとつかみ取る。
※ただしイケメンに限るのもう一つの能力。
それが都市伝説の能力に対する無効化能力。
発動すれば私の半径2mでは都市伝説の能力を無視しても許される。


手に残るのは柔らかい感触。
フワフワとした物が手の中にある。
綿の入った……、ぬいぐるみ?

「「え?」」

メリーさんと私はほぼ同時に素っ頓狂な声をあげた。

「なんで私をつかまえられるの?」
「もしかして只のぬいぐるみ?」

「あ、メリー!!!」

由美の声がトンネルに響く。
私が掴んでいるのは只のぬいぐるみだ。

「くーちゃん……。」

うわっ、喋った。
只のぬいぐるみじゃない。

「えっとね、唯ちゃん。そのぬいぐるみは私の小さい頃に持っていたぬいぐるみで……。
 名前はメリー。
 本当はもう捨てた筈だったの。」
目の前で起きている妙な状況に怖じ気づくこともなく彼女は私に説明をする。
メリーさんの方向に向き直ると彼女は問いかけた。
「ねぇ、貴方は本当にメリーなの?」
「そうよ、私はメリー。
 くーちゃんにまた会いたくって……。」
「でも、それなら何でまたわざわざこんな由美が怖がる方法で現れたの?
 嫌われちゃうじゃない。」
「う………。」



「それしかなかったんだよ。」



急に背後から声が響いた。
「その人形だって元を正せば只の人形だ。
 自分を捨てた主の所まで戻る力なんて有るわけがない。
 だから『なった』。そういうものに。
 解るかな、二年生の……平さんと久瀬さん。」

後ろを振り返ると見上げるような長身の男性が経っていた。
整った顔立ち、私達と同じ学校の制服、胸に輝くバッジに書かれているのは……。
“生徒会会計”の文字。
「こんにちわ、二人とも。
 俺は生徒会会計の田居中光だ。
 ちょっとした都市伝説マニア。」

謎の闖入者に私はメリーさんを持ったまま身構える。

「……俺は敵じゃないぜ?あとそのメリーさん、離してやれよ。
 そいつの目的はもう達成されている。
 そいつはそこの久瀬さんに会いたがっていたからなあ……。」
「まだ信用でき無いじゃない。
 メリーさんってそもそも危ない都市伝説だし……。」
「メリーさんはもう正気に戻っている。
 あとはそこの久瀬さんに判断を任せるべきだと思うぜ?」

「え?私は………、」
由美はゆっくりと口を開く。
「私は一度この子を捨てました。
 でも彼女は帰ってきて……
 だから、もうしばらくは家に居させてあげたいかなあ?って思うんです。
 狂ってしまうほどで、迷惑を掛けながらだったけど、私のことを思ってくれたから。
 つまりその………、うーんと……。」

………そうだな、そういうことなら仕方がないか。
ポン、と彼女にメリーさんを手渡して田井中の方向に向き直る。

「そうだね、それでメリーさんも幸せだ。
 ところで契約はしないのかい?」
いきなり由美に対して問いかける田井中。
「え?」
「えっとね、都市伝説は人間と契約ができて、
 契約すると人間が都市伝説の能力を使えたり、都市伝説がパワーアップするの。」
「へぇ……。
 なら私は別に良いわ?」

「ほう、なんでだい?」
「え、なんで?」

「もう、この子には普通の人形として過ごして欲しいもの。
 別にそう言うのも悪くないでしょう?」

久瀬由美は優しい笑顔でそう言った。

「ハッ……、敵わないね。
 優しい人だよ、あんたは。
 契約するっていうならまた別だったんだがそれじゃあ仕方ない。」
田井中はため息をつく。
「一体貴方は何の為に出てきたの?」
急な登場で驚いていたがこれだけは聞かねばなるまい。
「俺?
 いやぁ、会長のお使いでね。
 平唯、あんたにメッセージだ。
 【あまり組織と関わるな】
 だってよ、俺としてはあいつら嫌いじゃないってか良い奴だと思うんだけどな。
 あと今のあんたの能力?あれも黒服には絶対見せない方が良いぜ。
 良いように使われるから。
 そんじゃあ。」

田井中は面倒臭そうにあくびをしながらトンネルから出て行った。
それを確認すると私達、メリーさんと久世由美と私の三人は久瀬由美の家に向かったのであった。

【平唯の人間観察 第四話「呼」】

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