「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-15

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だれでも歓迎! 編集
 あなた方は幸せを望んでいる
 あなた方は幸せを喜んでいる
 それだけならば、まだ良いのです

 何故、あなた方は誰かの不幸を望むのでしょう
 何故、あなた方は誰かの不幸を喜ぶのでしょう


 誰かの不幸を望む事で
 誰かの不幸を喜ぶ事で
 その不幸が、あなた方にも帰ってくるかもしれないのに



                  Red Cape




 きゃいきゃいと、クラスメイトたちが談笑している
 その輪に適当に加わりながら、私は繁華街を歩いていた
 前方を、男子たちも適当に集団になって歩いている
 …あぁ、もう、道に広がってだらだら歩いて
 他の人達の迷惑じゃない
 そう、ぼんやりと考えながらも…私は、その集団の中の一人をぼんやりと見つめていた

 集団の隅で、他の男子たちとは、ほんの少し距離をとって
 やや、眠たそうに歩いている…彼を

「いいんちょー?どうかしたの?」
「…いえ、何も」

 ぼんやりしすぎていただろうか
 隣を歩いていた子に話し掛けられた
 なんでもないの、と曖昧に笑って返す
 何を考えているのだろう、私は
 確かに、彼には助けてもらった
 でも、もうそのお礼はしたし
 …これ以上、彼を気にする必要なんて、ないのに

「なぁ、ゲーセン寄っていかね?」
「俺はやめとく。ゲーセン好きじゃないんだよ」
「え~、なんでだよ」
「電子音が大音量で鳴り響いてて、苦手なんだよ。頭痛くなってくる」

 …そうか、彼、ゲームセンターが苦手なんだ
 ほんの、些細な彼の情報
 それがわかっただけで、どこか嬉しい

 …これが、恋と言う物なのだろうか
 私には、よくわからない
 ただ、少なくとも、彼の方は特にこちらを意識などしてくれていないだろう、ということはわかっていた
 ただのクラスメイトの一人
 そうとしか思われてない
 その事実が、どこか寂しいと思う

「ねぇねぇ?このワンピース可愛くない?」
「あ、本当。可愛い~!」

 ふと、皆の声に、視線を皆と同じ方向に向ける
 ブティックの店先に展示されているワンピース
 今は、あぁいうのが流行っているのだろうか?

(……私も)

 私も
 あぁいう服を着れば、少しは可愛くなるのだろうか
 少しは、可愛くなれれば

 …彼に、少しは意識してもらえるのだろうか?
 ほんの少しの、淡い希望


 翌日
 学校が休みだったから、私はブティックになど顔を出していた
 こんな店、来るのは初めてで…緊張してしまう
 …これだ、この、ワンピース
 皆が可愛いと言っていた
 私も、可愛いと思う…けど、私なんかに、似合うだろうか
 鏡の前で合わせてみるが、ピンと来ない
 …やっぱり、試着してみないと、わからないか
 でも……うん
 悩んでいた私
 試着室に行こうか、どうしようか
 悩んでいた…その時

「………!?」

 店の、外に
 彼の姿が見えた
 隣に居るのは…化学の先生だろうか?
 ちょっと服装のイメージが違うけど、そうだけと思う
 ど、どうして彼が…!?
 別に、彼がこちらを見た訳でもない
 でも、万が一、彼がこちらを見て、私に気付いたら…

 それが、なんだか恥ずかしくなって
 私は、試着室に逃げ込んだ
 ほっと、息を吐いて…
 ……直後

「………え?」

 私の視界は、闇に包まれた



 気がついたら、真っ暗な部屋だった
 ここが、どこなのか
 思考が、そんな事を考え出した時…

「………っひ!?」

 私の思考は、恐怖に支配された
 私は、拘束されていた
 よくわからない台の上で、裸で拘束されている

 ……そして
 私に、近づいてきている、男
 ぺたり、足音を響かせて
 その手に…血塗れの、ノコギリを持って……!!

 悲鳴をあげる
 その悲鳴に、男はニタリ、笑って
 こちらに、手を伸ばして……

「………ッ花子さん!!」

 …多分、幻聴なのだろう
 彼が、誰か…多分、女の人の名前を叫んだ声が、聞こえてきた
 どぉんっ!!と
 轟音が聞こえてきて……っふ、と
 私の意識は、再び闇に落ちた


 花子さんが操る激流が、扉を押し流す
 中にいた男が、ぎょろり、こちらを睨んできた

「…っ委員長!?」
「み?けーやくしゃの知り合い?」

 …あぁ、もう、なんでまた委員長が!?
 俺は舌打ちして、花子さんと一緒に部屋の中に飛び込んだ
 俺達という乱入者に、男はノコギリを構えて警戒態勢をとってくる

 試着室で、女性が消える
 そんな、都市伝説がある
 消えた女性は、何者かに誘拐されて売り飛ばされるのだと

 …そして、その都市伝説と関係がある、とされる都市伝説がある
 ダルマ女
 両手足を切り落とされ、見世物にされていた女
 それは、かつて試着室から忽然と姿を消した女だった…

 二つの別々の都市伝説
 しかし、関係が深そうに見えるが故に、こうやって一つの都市伝説にまとまっている事がある
 この辺りの店の試着室から、女性が消えた…と言う話を聞いて
 この辺だと、クラスメイトも利用しそうな店で、クラスメイトが巻き込まれたら目覚めが悪いよな…と思ったのだ
 だから、退治しようと
 …そう、思ってはいたが
 まさか、委員長が捕まっているなんて!
 ぶっちゃけ、委員長におしゃれとか死ぬほど似合わなそうなのに
 本人の前で口にしたら往復ビンタでも喰らいそうなことを考えつつ…俺は、花子さんと共に男を睨みつける
 べたり、べたり
 男は、ゆっくりと、こちらに近づいてくる

「…男はいらぬ。その餓鬼は小さすぎる…どちらも、いらん。解体して捨てるか…」

 物騒な事を呟いている
 嫌なこだわり持つな、畜生が
 まぁ、都市伝説は、ある種のこだわりが強い者が多いらしいが

「けーやくしゃをかいたいなんてさせないの!」

 花子さんが俺の前に立ち、健気に両手を広げてくれている
 俺を護ろうとしてくれているのだろう
 相変わらず、いい子だ

「………死ね!!!」

 男が、ノコギリを振り上げた
 相手は、戦闘向きではないようだし、戦闘慣れもしていないようだ

 …もし、男が戦闘向きの能力を持っていれば
 もしくは、少しは俺達のように、戦闘慣れしていれば

 あの人の気配に、気付けただろうに

 ばしゃんっ!!と
 男が振り上げたノコギリに、茶色い泡立った液体がかかった
 直後……ノコギリは、じゅう!と音をたてて融けていく

「………!?」
「マジでこんなもんも溶かせるんですね、そのコーラ」
「うん、そうだよ」

 にこにこと笑いながら、不良教師……の、弟さんが、部屋に入ってきた
 手に持っているのは、コーラの入ったペットボトル
 試着室の都市伝説を探していたら、たまたま、顔を合わせて
 …相手の潜伏場所に心当たりがあるから、と連れて来てもらったのだ
 そこで、軽く立てた作戦が、俺たちがハデに中に侵入し…弟さんに、背後から攻撃してもらう、と言う物
 まさか、ここまでうまく行くなんて
 …ごぽ、ごぽ、と
 弟さんが持っているペットボトルからは、コーラが溢れ続けている

「さぁ、逃げられないよ?」
「やっつけるの!」

 武器を失えば、最早まともに戦う事もできまい
 花子さんと、不良教師の弟さんのコーラ
 二つの都市伝説に囲まれ…男は、歯軋りをしている

「おのれ……おのれおのれおのれおのれぇえええええ!!」

 叫ぶ男
 その、足元に
 穴が、出現した

「……っ!?」

 誰か、他の都市伝説の攻撃能力?
 いや、違う
 …逃げるつもりか!?
 花子さんが、俺が持ち込んでいたトイレットペーパーを男に放つ
 弟さんも、コーラで追撃したが…一歩、遅かった
 男は、穴に吸い込まれて、姿を消す
 …逃げられた!

「大丈夫、僕の知り合いがね、他の契約者を別の潜伏場所に、待機させてるはずだから」
「…そっちで、何とかしてくれると?」
「うん、してくれると思うよ」

 にこにこと、弟さんは笑っている
 …あの不良教師と同じ顔で、こうやってにこにこと笑われると…なんて言うか、凄い違和感が
 あの不良教師、ほとんど笑った事ないし…と言うか、笑い顔見た事ないし

「だいじょーぶなの?あのおじさん、誰かがやっつけてくれる?」
「うん、そうだよ」

 かっくん、首を傾げた花子さんを、弟さんが撫でている
 …そうか
 なら、いいか
 多分、大丈夫だろう
 それよりも、委員長を解放してやらないと
 そう考えて、俺は台に拘束されている委員長に視線をやって…

「…!?」

 委員長の、格好を見て
 俺は、急いで委員長から視線を外す

「み?けーやくしゃ、どうしたの?」
「あ、いや、別に」
「初心だなぁ」

 にこにこ笑ったまま、弟さんがさっさと委員長に近づいて拘束を解いてやっている
 …大人だなぁ
 単に、高校生なんぞに興味が無いだけか?
 ひとまず、俺は息子を冷静にさせるべく
 首をかしげている花子さんの前で、小さく深呼吸したのだった


 …ずるりっ
 男は、先ほどまでいた部屋とほぼ同じ作りの…しかし、かなり離れた位置に存在する部屋に、出現していた
 おのれ、餓鬼共めが
 男にも小便臭い餓鬼にも興味がない
 自分が作り上げる作品は、女でなければならないと言うのに…!!
 苛立ちながら、男がここに置いてあった予備のノコギリを手にとろうとした、その時

「………め、かごめ」
「…………!?」

 どこからか、聞こえてきた歌声
 男が辺りを見ますが、誰も居ない
 歌声は、続き、続いて

 ………っざん!!と
 男の首は、男の背後に出現した何者かによって、一撃で切り落とされ
 ごろり、静かに床に転がったのだった


「…お疲れ様でした」

 室内に、黒いスーツにサングラスといういでたちの男性は入り込んだ
 刀を持った青年に対して、小さく拍手する

「お見事。噂通り、強力な力のようですね」
「お世辞はいりませんよ」

 黒服の言葉に、青年は苦笑してきた
 あの「はないちもんめ」の少女を囮にした事がある、という話を聞いて軽く怒りは湧いていたが
 …まぁ、いいだろう
 あの少女には、慰めにケーキなりなんなりを奢ってやるか
 そんな事を考えながら、黒服は青年と共に、主を失った部屋を後にしたのだった


「ん……」

 …意識が、浮上する
 ここは…病室?

「あ、目、覚ましたか、委員長」
「え………え!?」

 え?
 ど、どうして、彼がここに
 そして…どうして、私はここに?

「わ、私…どうして」
「ブティックの試着室で倒れてたんだよ。店員さん、焦ってたぞ。
 勉強か何かのし過ぎで、寝不足だったのか?」

 あれ?…あれ?
 私が、倒れていた?

 ……じゃあ
 あれは、夢?

「------っ!」

 ぞくり
 全身を走り抜ける、悪寒
 リアルな感覚が、蘇る
 夢?
 あれは、本当に、夢だった?

「うなされてたけど、悪夢でも見てたのか?」

 彼が、そう言って来た
 うなされて……あぁ、そうか
 私は、悪夢を見ていたのか
 彼の言葉に、私はそう納得する

 …自分に、そう言い聞かせる

 そう、あれは夢だったのだ
 タチの悪い、悪夢
 そうに決まっている

 あれは、悪夢だったのだ
 あんなことが、現実にありえるはずがない…!
 試着室に入ったら、どこかに連れて行かれて
 そこで、殺されそうになっただなんて
 そんな事が、現実にあってたまるか……!

「んじゃあ、俺はこれで。委員長の家の方にも連絡しといたから、後で親御さんが来ると思うけど」
「------あ」

 立ち去ろうとした、彼の後ろ姿に
 私は、声をかける

「……あ、ありがとう」
「ん?…あ、どういたしまして」

 私の言葉に、彼はそう返事して…病室を、後にした


 …一瞬
 彼の横に、おかっぱ頭の小さな女の子がいたように、見えたのは
 気のせい、だったろうか
 そう、まるで、「トイレの花子さん」のような姿の…

「……っ」

 小さく、首を振る
 何を考えているのだ
 夢の中で、彼は「花子さん」と叫んでいた
 その花子さんが、彼の横にいたなんて
 …そんな事があるはずがないのだ
 それを、認められるはずが無いのだ
 それを、認めてしまったら

 私は、あの悪夢が現実のものであったのだと、認めてしまう事になるから




 私たちはここにいます
 どうして、気付いてくれないのですか

 私たちは、あなたが他のすぐ傍にいます
 どうして、私たちを見てくれないのですか


 あなた方が私たちを生み出したというのに
 どうして、あなた方は私たちを見て見ぬふりをするのでしょう
 私たちが血に染まるのも、また、あなた方のせいだと言うのに




                  Red Cape



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