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連載 - 恐怖のサンタ-a02

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uranaishi

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恐怖のサンタ 日常編 02


 タコ妊娠の契約者、藤崎が翼と誠と戦闘を終えてから約10分。
 人目を避けるように歩いていた彼女に、声をかける人間がいた。

「やーやーやー、ちょっとそこのお方!」
「…………?」

 声が降ってきた方向は、上。
 ――――何故、声をかけられるまで気付けなかったのか。
 警戒しつつも、彼女は首を巡らせた。

「…………誰?」
「誰と言われましてもまだ名前がないので何とも言えないわけなんですがー」

 ちょうど彼女の、上空。
 ふわりと浮かびながら、「それ」は首を傾げた。
 逆光のせいで影としか見受けられないそれは、かろうじて女性、それもまだ未成年程度の少女であるだろう事しか分からない。
 「それ」は、とんっと降りてきて

「ちょっとお尋ねしたい事がありましてー。いや、ちょっとと言うよりがっつりと?」
「はぁ…………」

 明るい笑顔で、そう少女は尋ねてきた。
 その少女の服装は、この冬空の中、赤いミニのワンピース。
 ついでに、かなり豊満な胸。
 低身長ながら、スタイルの良い彼女に、藤崎はちょっとだけ何かの感情が胸の内に湧き上がるのを覚えた。

「あのですね。先程男性にタコ妊娠の力を使ってたでしょう?」
「…………えぇ」

 自分を追って来た、組織の人間なのか、と。
 彼女は警戒を強め、密かに「コークロア」によって支配された人間を周囲へと配置していった。

「で、ですね。ほら、その隣にいたでしょう? 男の人が、もう一人」

 男の隣にいた、別の男。
 それは、つまり――――

「清川君…………?」
「そうですそうです。誠様です」
「はぁ…………」

 誠、様……?
 藤崎は彼女が清川をそう呼んだ事に、軽く首を傾げた。

「それで、先程誠様に殴られたでしょう?」
「それ、は――――」

 この少女は、一体どこまで見ていたのか。
 この少女は、一体何をするつもりなのか。
 この少女は、そもそも一体なんなのか。
 藤崎の頭の中に、様々な疑問がふっと湧いては、消える。
 どう答えるべきか、と彼女は一瞬悩んで

「あー、いや、やっぱりいいです。今の質問には答えなくても」
「――――は?」

 しかし質問をしてきた側の少女によって、中断させられた。

「別にそれは直接の質問には関係ないと言うかなんといいますか、ちょっと誠様に殴られた事が羨ましいというか何というか、むしろ私が殴られたかったと言いますか、つまりは取りあえず別に答えなくてもいいです」
「はぁ…………」

 よくわからない、少女のノリ。
 彼女はもう、相槌を打つことしか、出来なかった。

「つまり私が聞きたいのはですね。あなたにとって誠様は敵と言うか、今会いたくない相手なのかな―、と思いまして」

 ――――清川が、敵か、味方か。
 ようやく彼女は明確に答えられる質問を受け、少しほっとした。

「もちろん、清川君と今は……ううん、出来ればずぅっと、会いたくない」

 どこか、憎しみを込めた笑顔で
 彼女はそう、答えた。

「うんうん、そうでしょうそうでしょう」

 ばさり、と。
 少女はどこからか白い袋を取り出して、言った。
 ――――一体、何をするのか。

「あなたが今、一番会いたくない相手は、誠様……!」

 袋を開く少女の顔は、期待に満ちた、笑顔。
 そこには、どこか藤崎と似通ったものがあった。
 それは、相手を想う、笑顔。
 それは、「普通」などとは形容し難い、笑顔。

「つまり! 今この袋を開けば、出てくるのは……!」

 袋を縛っていた紐を解き、少女は大きく、明け放つ。
 一瞬、その袋の中が光ったような、藤崎にはそんな気が、した。
 ――――そして

「……何だ、ここは」

 その袋の中から立ち上がった、人間。
 逆光を浴びながら、立ち上がった、人間。
 その、人間は。
 その、男は――――

「清川君…………?」

 ――――つい先ほどまで対峙していた、男だった。
 思わず呟いた彼女に、男……誠は、はっと気づいて

「藤崎……また、てめぇかぁっ!」

 何かしらの誤解と共に、飛びかかった。
 常人を遥かに凌ぐ速さで
 周囲に配置していた「コークロア」に支配されていた人間でも反応すらできない、そんな速さで
 ……そして、それが彼女へと到達しようとした、その時

「こんにちは、愛しの人よぉおおーーーっ!」

 それ以上の速さで迫った、何かが

「ぐふっ……!」

 走っていた誠に、腰から飛びついた。
 もんどり打って、転げる二人。
 一定の速さで走っていた人間に、さらなる速さで飛びつけば、それは当然の帰結。

「………………」

 その様子を、半ば茫然と見ていた藤崎。
 しかしすぐに、はっと気付いて逃げ出した。
 数秒と経たず、その姿は路地へと消え、見えなくなる。

「待ち、やがれ…………っ!」

 立ち上がり、その後を誠はすぐに追おうとして

「待って下さい、愛しの人よ」

 むんず、と足を掴まれ、再び転んだ。

「ここで会ったのも何かの縁、ちょっとお茶でもしていきましょう」
「誰がっ、てめぇなんかとっ、お茶なんかっ、するかっ!」

 げしげしと、足を掴まれた手を蹴り返す、誠。
 しかし、少女はそれを全く意に介していない様子だった。

「恥ずかしがらなくてもいいんですよー。全く、誠様はお茶目なんだから」
「………………」

 無言で、しかし「げしげし」が、「げしっ! げしっ!」へと変わる。

「あっ、ちょっ、強いっ、強いっ! でももっとっ!」
「………………」

 無言で蹴りを強めていく誠と、嬉しそうに声を上げる少女。
 そのやり取りは、暫く続いたそうな。

【終わればいい】




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