「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 三面鏡の少女-34

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三面鏡の少女 34


不気味な静けさの中、沈黙が支配するカラオケボックスの一室
別の部屋から陽気な歌声こそ聞こえてくるものの、その場にいる全員がまるで耳に入ってこなかった
蛇城の不審人物っぷりと、花子さん、白蛇という都市伝説存在が会話に加わるという状況から、余計な目撃者を出して騒ぎにならないようにという配慮だった
不審人物丸出しな蛇城を見ても全く動揺せずに対応したカラオケボックスの店員は、店員の鑑と賞賛されるべきか、犯罪防止のための危機感を持てと厳重注意をされるべきか微妙なところだったが
ともあれ第三者のいない状況で少し安心したのか、とりあえずマスクは外してウーロン茶を飲んでいる蛇城
どうやら緊張のあまり喉が渇いていたらしい
「……詳細は若から伺っております。蛇の都市伝説の引き取り手を探しているとか」
「は、はい、この子なんですけど……ほら、出てきて」
ようやく沈黙が破られ、なんだかほっとした空気が満ちる中、襟元を引っ張って服の中に声を掛ける逢瀬
身長差もあってか向かい合った席に座っていると微妙に胸元が見えたりしそうになり、花子さんを構う振りをして視線を逸らす獄門寺
声を掛けてすぐに胸元からにょろりと頭だけ出した白蛇は、丸い目で蛇城をじっと見詰める
「この建物にも厠があるので、このような形で失礼する」
「大きくて喋る以外は普通の白い蛇ですね」
多少霊感があってもここまではっきりとした形で対面するとやはり珍しいのか、蛇城はしげしげと白蛇を眺めている
「白蛇は諏訪神社の神使であったり弁才天の使いだったりと神聖な存在らしいですが」
「残念ながら別の都市伝説と混ざったが故に記憶が混濁しておるのだ。はっきりとした出自は判らぬ」
「そうですか」
特にこれといった感想は言わずに、蛇城は姿勢を正し
「それで、契約とはどのようにすれば良いのでしょうか」
「その辺は都市伝説によって違うな。現象系の都市伝説は、特殊な契約書が必要らしいが」
「我はそのような手間は掛からぬ。我の巫女として共にある事を認めるだけで良い」
「なんか巫女に拘りがあるよね、きみは」
くりくりと指先で小突かれながらも、白蛇は胸を張るように身体を反らす
「神聖なものでありたいという我の志だと思うがよい」
「ついでにその偉そうな性格も直しなさい。面倒事だっていう自覚はあるのかな?」
「契約を交わしてしまえばさほど迷惑は掛けまいて。契約者が望まぬ時は離れて過ごす事も可能であるし、呼ばれれば即座にその元に現れる事が出来る。何より幸運を与えたり水を操る力を共有する事ができるのだぞ?」
「私は納得しています、大丈夫ですよ。何より若を守る力を得られる事がとても嬉しいのですから」

―――

丁度その時、カラオケボックスの前を通り掛った女がふと足を止めた
「……もげろという怨念の気配がしたような気がしたんだが」
首を捻りながらも、まだ残業のある職場へコンビニ袋に入った夜食と共に歩いていく『もげろ』の契約者
「あー町を歩いてるカップルが全て妬ましく見えてくる。疲れてんなぁ」
この後、残業中に『目が合う自殺者』『エレベーターで待つ男』『殺人鬼が変装した警備員』などを片っ端からもぐ事になるのだが、それはまた別のお話

―――

「みー、どうしたのですか、けーやくしゃ?」
「いや、今すげぇ悪寒が」
きょろきょろと辺りを見回す獄門寺
「ともあれ、本人が契約は口頭の同意で良いって言ってる事だし。やってみようか、蛇城さん」
「そうですね」
言葉短く、やや緊張した面持ちで白蛇と向かい合う蛇城
「では……我はそなたと共にある事を、そなたが求める力を与える事をここに誓う。汝は我と共にある事を、我が求める力を与える事を誓えるか」
「誓いましょう」
自然と差し伸べられた手に、白蛇の鼻先が触れる
そして、少女の襟元からその身体をするすると這い出させ、テーブルの上にとぐろを巻いた
「おお、ようやく忌まわしい厠の拘束から外れる事ができた。この恩に報いるべく身命を賭して汝に尽くそうではないか。無論、我を導いてくれた巫女や契約者と引き合わせてくれた若君にもだ」
「トイレはいまわしくないのー」
「おお、これは失言だった。だが今まで我は厠から離れる事ができなかったのだ。契約者を得て共に自由に動ける喜びは知っておろう?」
その言葉に花子さんは、獄門寺の顔をみてにぱーと笑う
「蛇さん、良かったのです」
「うむ、実に晴れやかな気分だとも。さあ新しい巫女よ、今後とも宜しく頼むぞ」
嬉しそうに身をくねらせ、白蛇はするりと蛇城の腕に絡みつき、襟元からその中へ
「待てー!?」
逢瀬がすぐさまその首を引っ掴んで引き戻し、顔を付き合わせるようにして怒鳴りつける
「トイレに引っ張られないなら身体に巻きつく必要無いよね!?」
「おお、そうであった。ここしばらくこれで慣れておったものでな」
「しかし、見える人間もいると考えればそのまま連れて行くわけにもいきませんが」
「今更でかい白蛇ぐらい気にする人間いるのか、この町」
呆れたように呟く獄門寺に、蛇城は僅かに俯きながら顔を赤くする
「目立つのは……困ります」
それはひょっとしてギャグで言っているのか
何かこう劇画っぽいギャグ漫画顔になって、声には出さずにツッコミを入れる獄門寺と逢瀬
その横で花子さんは、飲み物と一緒に頼んだアイスを食べながらよくわからないといった感じで首を傾げていたのだった


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