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連載 - 三面鏡の少女-35

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三面鏡の少女 35


世はまさにバレンタインデー
女が男にチョコレートを贈るという製菓会社の陰謀も、昨今では既に絶対防衛線を割り込んで男から女に贈る事すらあるという
便乗する商店には数々では特設コーナーが設けられ、そこを訪れる多くの女性と幾許かの男性の淡い恋心や濃い打算が渦を巻いてた
「みんな凄いなー、本命でも義理でもあれだけあげる人がいるんだ」
レジに並ぶ人々の買い物カゴの様々なチョコレートの数々に、三面鏡の少女こと逢瀬佳奈美は溜息を吐いた
「あたしはあげる人もあんまりいないしなー。お父さん以外は……お世話になってる人だと、やっぱりHさんだよね。相談に乗ってもらった獄門寺くんとか」
財布の中身とにらめっこしながら、可愛らしい造形のチョコレートを一つ二つ三つとカゴに入れる
「Hさんは歌手のおねーさんがいるし、獄門寺くんは委員長とか白蛇引き取ってくれたおねーさんとか怪しいよね。あと花子さんとか」
まあ人の恋路の事を気にしても仕方ない
感謝の気持ちを贈る事に専念しよう
少女は念のためいくつか余分にチョコレートをカゴに放り込む
渡す事が無ければ自分で食べてしまおうと考えながら

ラッピングされたチョコレートの入った紙袋を提げて、寒空の下を身体を竦めて歩いている少女
いつも帰り道に前を通る公園では、いつもの如く元気に遊ぶ子供達がおり
「やっほー、お姉ちゃーん!」
いつものように元気に駆け寄ってくる、『ファンタゴールデンアップル』の契約者、手塚星
「星くん!?」
即座にスカートをガードする佳奈美
「今日はスカートめくんないから安心してよお姉ちゃん」
「今日は!? 今日限定の優しさなの!?」
「それよりさ、バレンタインデー近いじゃん。最近は逆チョコもあるから、俺もお姉ちゃんにあげようと思って用意してたんだ!」
嬉しそうに鞄を探り、チョコレートのパッケージを取り出す
「ほら、チョコレートあげるから、あーんってして!」
「ふぇ?」
「ほら、早く! 食べさせてあげるからしゃがんでしゃがんで!」
「あ、うん。それじゃ14日に会えるかわかんないし、お姉ちゃんからもチョコをあげよう」
屈んだついでに紙袋からチョコレートを取り出し、まずは少年からチョコを受け取ろうと口を開けたところで
少女の口に差し出しかけたアーモンドチョコを、少年はぱくんと口に放り込んで少女の首に手を回し
「ふ、んむ?」
重ねられた唇と、舌で運ばれ押し込まれる甘いチョコレート
「んー」
「んむ――――――――!?」
唇を食むように愛撫しながら舌を絡めてきたところで、突き飛ばしはしないものの肩を掴んで少年を引き剥がす
「こらー!? そういう事をどこで覚えてくるの!?」
「今時普通じゃない?」
ぺろりと唇を舐めて、無邪気に微笑む少年
「俺は本気だっていっつも言ってるじゃん」
「だだだだだからってねー!?」
「俺だっていつまでも遠慮しないかんなー」
「星くんにはまだ早いっ!」
ぺし、と可愛いラッピングをされたチョコレートの箱で、少年の頭を叩く少女
「もっと人生経験を積んで、色んな人と接して、それでもお姉ちゃんがいいならその時に改めて来なさいっ」
「それまでにお姉ちゃんが他の男に取られたらどーすんだよー」
「あたしみたいなちんちくりんを好きだなんて物好き、星くんぐらいだってば」
少年にチョコレートを押し付けるように渡すと、耳まで真っ赤になりながら少女は立ち上がる
「赤いのは寒いからだかんね!?」
「まだ何も言ってないって。かわいーな、お姉ちゃんは」

―――

「ドクターはバレンタインのチョコレートとか贈らないんですか?」
「どうした、藪から棒に。ボクの愛が欲しくなったのならそう言ってくれれば、チョコレートと言わずにだな」
「今の俺は女なんで貰う側じゃないです」
「君が女でなければ誘いはせんよ」
「どこまでが本気ですか」
「どこまでも本気だが」
ドクターはそう言って、お茶請けに出されたチョコレートをはむと頬張る
「まあこの通り、ボクは大体貰う側だがな」
受付で微笑んでいるメアリーとミツキ
ちなみに茶飲みに現れるご近所のご老人方にもチョコレートは振舞われている
「そういえば君にわざわざ配送でチョコレートが届いてるぞ。学生時代のご縁かね?」
「マジですか。あいつらも律儀だな」
メッセージカードに添えられた名前は、ドイツの大学にいた頃の学友達だ
手作りの食品を海外から輸送するのは衛生上問題ありという事で、わざわざ日本に旅行にきた折に作ったとの事だった
「随分と慕われてるではないか、ん?」
「力仕事とかよく引き受けてた程度の間柄ですよ。知ってるでしょ、あっちにいた時は彼女いたって」
ふとよく見ると、団体名義の大きな箱の横に小さな箱が二つ
「こっちは何なんですか?」
「匂いではチョコレートだと判断するが」
「密封されてるっぽいのによく判りますね」
ドクターの言葉に箱を一つ手に取り――即座に床に叩き付けるバイトちゃん
ラッピングに挟まれたメッセージカードには、マッドガッサー事件で女体化された旧友の名が刻まれていたからだ
《一応今は女だしイベントに乗っかってみた。愛だの恋だのは死んでもありえねぇので安心して食え》
「バカやってんじゃねぇよこいつは!?」
「食べ物に罪は無いぞ。食べないならボクにくれ、何か入っていても効かないしな」
「叩き付ける前に言って下さい……もう一つは差出人不明か」
「怪しいならボクがだな」
「ドクターそんなに甘いもの好きでしたっけ? 一応食べますよ、こっちは」
差出人は不明だが、なんとなく大丈夫な気がした
バイトちゃんはお茶を啜りながら、箱を開けて手作りらしい歪なチョコを口に放り込んだ

―――

「やあ同僚、折角だから義理チョコをあげよう」
「手ぇ火傷だらけにして何やってんだお前。くれるんなら貰うが」
アメリカの黒服女が小さな包みをぽんと放り、同僚の黒服男が片手でキャッチする
「いやー、失敗しまくると思って材料山ほど用意したのに思いのほか上手くいっちゃって。しょうがないからあちこちで配ってるのよ」
「お前、もしかして日本の元彼に送ったのか」
「そりゃまあね、今でも好きだし。会ったら殺すけど、仕事上」
「難儀な関係だな」
「まったくだわ」


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